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笑いが止まらないのは
しおりを挟む「くくっ、ぷはっ!」
「お父様!いつまで笑っているのですか!笑いすぎにも程があります!」
「すまん、すまん・・・しかしな・・・くくっ、ははっ・・・あはははっ!」
辺境伯であるクレイドルと娘であるエルサは執務室に来ていた。今、机を挟んで立っているエルサの前で、執務室のデスクの椅子に座るクレイドルは必死に笑いを堪えていたが、たまらず大笑いしてしまう。
「本当にすまん!・・・だがな、あれだけわかりやすく好意を寄せられていると言うのに、何とも思わないなんてな」
「仕方がないではありませんか。本当に何とも思わなかったのです」
「ソルディオの様に献身的に支えてくれるものもダメ、あのように皆の目の前で大々的に好意を寄せられてもダメ。お前は一体、どんな男なら納得するのだろうな」
クレイドルは、頬杖をついてふっと笑う。
「愛の請い方などどうでも良いのです。辺境伯令嬢である私を、見た目や地位ではなく、中身を理解して欲しいのです。共に辺境を守り、盛り立て支え合える方でないとだめなのです」
「そうか。まぁ、急かしはせん。お前の納得のいくようにすればいい。後継などおらずとも、どうとでもなるさ。お前の後は誰か適任者を見つければいいだけだ。俺がそうだったようにな」
「・・・そういうわけには・・・」
「では、結婚を視野に入れていると?」
「い、いずれかはと思っております。すぐにとはいきませんが、いずれかは・・・」
エルサはプイッとそっぽを向く。辺境伯になった自身の元に娘として生まれてきてくれたエルサ。亡くなった最愛の妻との間にできたたった一人の子で、たった一人の娘。普段は、辺境を継ぐのだと強い意志を持って何事にも立ち向かう。そんな娘もまだまだ子どものような反応を見せる。クレイドルは、その様子を嬉しく思っていた。早くに亡くなった妻。男手一つで娘の成長を見てきた。もちろん使用人や騎士達もいる。だが、母親の代わりには完全にはならなかっただろうと思う。それなのに、娘は真っ直ぐに、素直に、そして辺境を思ってくれる大人へと成長してくれた。出来のいい娘も、まだまだ手のかかる部分があったのだなと微笑ましく顔を眺めていた。亡くなった妻である、元王女のナタリア。エルサは成長するにつれてナタリアにそっくりに育っていった。国王が執着するのもわからないでもない程に。
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