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試しの通信と惚気
しおりを挟む「あ、繋がったかな?」
「こちらアイオロスです」
「あぁ、アイオロスか。コルテオだ」
「コルテオ様!お久しぶりです」
コルテオ、マクシミリオン、レイバンの三人が辺境へとやってきて三日が経った。コルテオは報告も兼ねて王都の近衛騎士の副騎士団長になったアイオロスに通信を繋ぐ。
「今日は通信機がきちんと動作をしているかも兼ねての通信だ」
「はい、そちらはどうです?まだ数日でしょうが、住むのに環境はどうでしょう?」
「あぁ、悪くないよ。景色もいいし、手付かずの自然もまだ残っている。まぁ、辺境伯邸の近くは要だろうから、砦もあって物々しさもある。まるで要塞のようだね。でも、こちらの騎士達はいきいきとしている。辺境伯殿がしっかりと鍛えておられるし統率もとれていて素晴らしいよ」
「そうですか。環境がよさそうで何よりです。レイバン様とマクシミリオン様に至っては罰という意味も込められているとお聞きしていますが、コルテオ様だけは・・・」
アイオロスは少し言い淀んだ。コルテオに至っては罪もなく、罰もない。とばっちりではないかと思っているのだ。
「アイオロス、心配はいらないよ?僕はね、この環境にワクワクしているんだ。実家の伯爵邸にいるのは息がつまってね。ここでは僕を虐げる者はいない。好きなことができて幸せというものだよ」
「そうですか。コルテオ様がそう思われているのなら少しは安心できます」
「僕を心配してくれている気持ちだけで嬉しいよ。そうだ、ミリア嬢とはどうなんだい?出立前もあまりゆっくり話せなかったからね」
「ミリアですか?えぇ、毎日毎日可愛いです。日に日に可愛さが増していくので本当に困っているのですよ。これ以上俺を虜にしてどうするつもりなんでしょうね・・・本当に、天使みたい・・・いや、天使なんですよ。可愛くて、可愛くて・・・可愛いだなんて言葉だけじゃ足りないんです!」
ミリアという名が出ただけで熱く語り出す。もう、どこが?とか、どんな風にとか、詳しく聞こうものなら話が止まることはないのだろうとコルテオは思った。
「幸せそうで何よりだよ。本当によかったね、アイオロス」
「はい、本当に夢みたいで、今だに信じられずにいるんです。ミリアに出会って、ミリアを助けて・・・ミリアに恋をして・・・婚約者にまでなれて・・・本当に、本当に・・・幸せです」
噛み締めるように話をするアイオロス。その様子を、声だけだが、しっかりと感情は伝わった。清廉潔白で真面目で堅物で・・・恋愛には興味などないと言いたげだった青年は、一人の少女に恋をしてぐるりと価値観が変わってしまった。可愛いものに目がない・・・いや、可愛いと思っているものに目がないという言い方が正しいのだろうか。もう、彼の目にはミリアしか見えていないのだから。
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