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自問自答と感傷

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「まぁ、落ち着けアイオロス。君が誰よりもミリア嬢を大事にしている事は周知の事実だよ?横から掻っ攫おうなんて思ってもないよ」

「す、すみません・・・ミリアの事になるとつい・・・」


アイオロスの小さくなった声に、コルテオは微笑ましくも嬉しい様子だった。


「それじゃあ、ウィルフレッドにもよろしく頼むよ」

「は、はい!承知しました!それでは失礼します」


真面目なアイオロスらしい挨拶をされ、コルテオも通信機を切る。だが、しばらくその場から動く事が出来なかった。疲れとかではなく、ただただ茫然としていたのだ。人の色恋の話はあれど、自分の事は何も言えなかった。アイオロスのように、一人だけを想って、婚約者も恋人も作らず、マクシミリオンのように面と向かって好意を出すこともできない。自分は当事者にはなれない。物語の主人公にはなれないんだと悲観していた。マクシミリオンのように堂々とできれば。廃嫡同然と言われようが、陛下からの温情をかけられている公爵令息。アイオロスは平民でありながらも功績を積んで近衛騎士になった。そして、次期騎士団長という肩書きもある。レイバンは今は爵位を持たないただの人間だが、いずれは領地を盛り立てて、叙爵するのだろう。自分には何があるのか。伯爵家の次男。政略が絡めば利用価値もあるだろう。だが、自分自身、そんな気にはなれなかった。爪弾きにされてきた伯爵家に、利用されての結婚など、肩身が狭いし、自由などないのだろうと思う。誰にも勝てるものなどなくて、自分という人間が何故存在しているのかなどと哲学の話に脳が向き始めていた。どれくらいそうしていただろうか。窓の向こうの景色をぼーっと眺めていたコルテオの視界に黒が広がっていく。


コンコンコン


窓を外からノックする音にはたと視線を下ろす。首を傾げるその表情に思わず表情も緩む。コルテオはゆっくりと窓を開けた。


「こんなことろで何なさってるんです?」

「エルサ嬢・・・特に何というわけではありません。いい景色だな・・・と」

「ここがですか?」


エルサが首を傾げるのも頷ける。コルテオがいた部屋の外は裏庭。雑然と草木が生い茂り、特に手入れもされていない。


「あ、いやっ、えっと・・・」

「ふふっ、コルテオ様もぼんやりとなさる事があるのですね」


ふわりと笑うエルサにコルテオは見惚れてしまった。何も言わないコルテオに、またしても首を傾げるエルサだった。






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