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それぞれの想い

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「今日も元気に追いかけっこかい?」


「えぇ、断られようが邪険にされようが構わないみたいです。ずっとあの調子ですね」

「へぇ・・・」


騎士の稽古場にいるエルサを追いかけ、マクシミリオンが絶えず好意を寄せている事を伝えている。それを副騎士団長であるソルディオが何度となく睨みつけ牽制をする繰り返しの毎日だ。コルテオは静かに稽古場を眺めていたレイバンに声をかけた。


「恋は盲目とは言うが、随分な変わり様だね」


コルテオは呆れ半分、羨ましさ半分、マクシミリオンを眺めていた。


「いっそ受け入れればいいのにな」


後ろから低く心地の良い声がした。


「辺境伯殿・・・」


コルテオとレイバンの振り向いた先にクレイドルがいた。クレイドルは、仕方の無い奴らだなとばかりに、呆れながらその光景を見ていた。


「結局のところ、エルサが引き起こしている事態だ。マクシミリオンを手酷く振るわけでもなく、他の者からの好意も受け入れない。いずれかは結婚し、子を成す事は理解していても、最後の決定打に欠ける。そんな状況なんだろうと思う。辺境伯として、本来ならば後継者となるエルサに婿入りする相手を、幼い頃より決めていなければならなかったのだろうが・・・俺自身もそう、乗り気にはなれなかったんだ。結局俺も、エルサを誰かに取られたくはなかったんだろう。愛した女が唯一残した宝だ。誰でも良いわけではない。見目や地位ではない。譲れないところは母親に似たんだろうな。エルサに結婚を急かすつもりないが・・・いつまでもこのままというわけにはいかない」


クレイドルは少しだけ寂しそうな表情を覗かせた。


「後はご令嬢次第という事ですね?」

「あぁ、全てとはいかないが、エルサが納得する相手でないとダメだろう」

「きっとおりますよ」


どれだけ恋焦がれようとも、エルサが求める相手でなければいけない。コルテオの心にズシリと重い何かがのしかかった。エルサが何を求めているのか。最後の決定打は何なのか。父である辺境伯が分からずいる最後の砦。自分自身がわかるはずもなく、エルサはどんな男を選ぶのだろうか。マクシミリオンに追いかけられ、邪険に扱うエルサを眺めながらそう考えていた。その横でレイバンも何かを考えているようで、じっとある方向を見つめていた。一抹の望みをかけ、イズヴァンドがあるであろう方角を。イズヴァンドへ移るその日を明日に控えて。



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