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おじさんとお兄さん

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そして翌日、レイバンはイズヴァンドの地へと向かって行った。隣領と言うこともあり、辺境伯であるクレイドルが同行することになった。イズヴァンドに着いたレイバンが見たもの。それは、荒れ果てて、人が住んでいるとは思えないほど寂れた土地だった。唯一の救いは手付かずにはなっているが自然があり水が綺麗な事。


「レイバン、この地を見て何を思う?」

「・・・」


レイバンはクレイドルの問いかけにすぐには答える事が出来ず、じっと荒れた土地を見ていた。今でも脳裏に焼き付く両親の最期、逃げ惑う民の姿。そして攻め入ったソハナスの兵に、自領の民の裏切り。沢山の事が一気に脳内を駆け巡る。


「・・・悔しい・・・とだけ」

「そうか」


クレイドルはレイバンが見つめるように同じ方向を見て一言だけを返した。


「・・・俺にできるでしょうか?」

「何がだ?」

「この地を元に、いえ・・・前よりも良い土地に」


クレイドルはゆっくりとレイバンの方を見る。視線に気付いたレイバンもクレイドルの顔を見る。


「できると断言はできない・・・が、やるしかないだろう?お前はここを任された。他の誰でもない陛下にだ。それに会えばそんな事も言ってられんさ」

「会う・・・」

「あぁ、お前を待っている人がいる。たった数人かもしれんが、お前を信じて、お前の無事を願って、ここで待ち続けた人間がいる」


レイバンはその言葉に、つい涙腺が緩みかけたが、必死に堪えた。


「これから会いに行くぞ」


クレイドルはレイバンの背中を大きな手でバンっと軽く叩く。一歩を踏み出せと言うクレイドルの手の暖かさに、レイバンは気持ちを新たに教会へと向かって行った。乗ってきていた馬に再度跨り、しばらく進むと小さな教会が見えてきた。庭で遊ぶ小さな子ども達が、クレイドル、レイバン、そして引き連れていた数名の騎士達に気付く。


「おじさん達だぁれ?」

「はっはっはっ!おじさん達か。坊や、俺はおじさんだが、こいつらはまだお兄さんだ」


クレイドルの大きな笑い声に、少し大きな少年が壮年の男性を慌てて連れてきた。賊か何かと思われてしまったようだ。


「神父様!こっちです!」

「これこれ、待ちなさい!」

「早く!大きな男の人達が沢山いるんです!アルトやダンが連れ去られちゃう!」

「なんだと!?」


子どもに手を引かれ慌てて出てきた男性とレイバンの目が合う。


「・・・レイバン・・・か?レイバンなのか!?」


驚く男性を前に、レイバンの瞳からは静かに涙が流れ出ていた。







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