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様子のおかしいエルサ
しおりを挟むクレイドルの執務室から、コルテオの手を引いて、エルサは屋敷の中をグングンと進んでいく。コルテオは自分はどうするべきか考えあぐねていた。これから意中の男に結婚の話をしに行くのだろうと思っている。何故自分が引っ張られて同行させられているのかがわからない。
「エルサ嬢?」
「・・・」
「あの・・・エルサ嬢?」
「・・・」
何度呼び掛けてもエルサは反応しない。コルテオは掴まれていた手をグッと引いて立ち止まる。
「っ!?」
突然の事で驚いたエルサがよろめいて、コルテオの胸に身体を預ける形となった。
「わっ!わっ、す、すみません!」
そこまで強く引っ張ったつもりはなかったが、まさか抱き止める形になるとは思わなかった。
「・・・」
「エルサ嬢?・・・どう、されたのですか?」
尚もエルサは何も答えない。そしてまたコルテオの手を引いて歩き出す。コルテオは、今は従うしかないのだろうなと、着いていく。たどり着いた先は、エルサの自室だった。
「エルサ嬢・・・ここにはさすがに入ることはできません。夫婦でもなければましてや婚約者でもないんです」
「大丈夫です」
エルサはコルテオの手をグイグイと引っ張り部屋へと招き入れた。所在なさげに立っているコルテオに、ソファに座るように促す。そしてコルテオは固まった。
「んなっ!?」
エルサがコルテオの膝に座り、首に抱きついてきたのだ。いったい何が起きている。コルテオは思考が固まってしまった。
「ごめんなさい・・・」
「えっと・・・何に謝っているのでしょう?」
急に謝罪をしたエルサ。コルテオは何故謝られたのかがわからなかった。まさか部屋に招き入れたことに対してではないだろうし、皆目見当がつかない。
「私、先走ってしまって・・・何も話しておりませんでした」
ボソボソと耳元で呟くエルサの声に、コルテオは居心地のよさと嬉しさが込み上げる。だが、これから自分は振られるのだ。なのに何故エルサはこんなにもベタベタと触れてくるのだろうか。最後の想い出に。そう言われればしっくりくる。
「そうですね、急に結婚などと言い出すものですから驚きましたよ。エルサ嬢には想い人がいたのですね・・・さぁ、勘違いされてはなりませんから、早く離れた方がいいです」
コルテオは、これ以上このままでは諦めもつかなくなるし、振られたダメージが大きくなるだけだとエルサに離れるように促す。
「嫌です」
「い、嫌って・・・」
「勘違いしてください」
「・・・は?」
エルサはいまだに顔を上げない。一体どんな表情をしているのか。コルテオはただただ困惑するばかりであった。
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