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10、初めての騎乗、のち緊張
しおりを挟むアリエルは、騎士達に、近くにあった荷物を運ぶように指示をし、リシェリアを馬まで運ぶと固まってしまった。どう乗せるかの正解がわからなかったのだ。
「団長、女性を乗せるときは横向きですよ。ドレスで馬は跨げませんから」
「わ、わかってる!」
アリエルは前方にリシェリアを乗せ、身軽に後方へ跨った。
「すまないが、揺れるので支えようと思うが、触れても大丈夫か?」
「はい、ご迷惑をかけます」
アリエルはそっとリシェリアの腰に手を添えて片手で手綱を引く。馬を歩かせ始めると、リシェリアがぎゅっとアリエルの服の胸のあたりを掴んできた。
「!?」
「馬の上って、こんなに高いのですね」
「高いのが怖いか?」
「・・・はい、初めて乗ったので」
「そうか・・・目を」
「?」
「目を瞑っていればいい」
「わかりました」
馬に揺られるたびに、リシェリアの金の髪が、後方のアリエルへふわふわといたずらに靡いてくる。目を瞑ったリシェリアは、揺れと腰に当てられたアリエルの大きな手のひらのあたたかさに、次第に眠気に襲われていく。完全に眠ってしまったリシェリアの体がぐらっと倒れそうになる。アリエルが慌てて背中に手を回すと、意識のないリシェリアの身体は、そのままアリエルの胸にしなだれかかるような体勢にになった。
「うっ!」
リシェリアは安心しきった顔で、すぅすぅと寝息を立てている。
「団長、なに感じてるんですか?」
「馬の上で欲情しないでくださいね」
リシェリアが自身の胸にしなだれかかった事に驚いて出た声に、騎士達は欲情して漏らした声じゃないかとからかってくる。
「そんなわけあるか!」
騎士達にイライラをぶつけていると、カイルが並走してきて声をかけてきた。
「あぁ、彼女寝ちゃったんですね。王都から来たんでしたら一人とは考えにくいですが、近くには誰もいなかったですし、誰かを探している様子もありませんでしたね」
「あぁ、そう言われてみれば確かにな」
辺境の騎士達は、辺境出身、又は隣接する領の出身者が多い為、王都や貴族の顔を知らない者も多い。カイルも隣接領の子爵家の次男で19歳、マルクは辺境出身の男爵家の三男で17歳だ。歳が近くても、王都を出た事がないリシェリアの顔を知る者は、この辺境にはほとんどいないだろう。
「それにしても、まさか団長をお選びになるとは思いませんでした」
「あぁ、俺が生きてて初めて、いや、2回目だな」
「おや?2回目ですか」
「ふっ、あれを1回と言っていいかわからんが、4、5歳くらいの小さな令嬢だった。あんなに小さかったのに、俺を怖がらなかったからな」
アリエルは昔あった出来事を思い出し懐かしく語っていた。
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夕方更新予定!
【アリエルside】
彼女の金の髪に懐かしさを覚えていたら、なぜ安心しきっているんだ!?
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