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36、君は綺麗、そして可愛い
しおりを挟むマルクスがアイスフォードを詰所に連行すると、屋敷は静かになった。応接室を出て、二人でアリエルの部屋に入りソファに並んで座った。
「アル様、勝手に夫にするなどと言ってしまって申し訳ありませんでした。アイスフォード殿下に諦めてもらおうと勢いで言ってしまって・・・」
「いや、かまわない。しかし・・・」
アリエルは不安だった。夫にしたいのはアリエルだと言われた時は舞い上がっていた。だが、二人になり、リシェリアの口から出てきた言葉は謝罪だった。
「アル様?」
「リシェ・・・勢いで言ったと言うが、俺はお前の夫にはなれないのか?」
「アル様・・・私はずっとアル様と一緒にいたいです。でも、それを望んではいけないのです」
「どうして!俺はリシェがいい!リシェが他の男の元に行くなど我慢がならん」
アリエルはリシェリアの両肩を掴む。
「・・・いずれかはここを出ていかなくてはならないと思っています」
「なぜ出ていくのだ!ずっとここにいればいいだろう!」
「私は・・・アル様にはふさわしくありません・・・」
「それはない。リシェは俺にとってもう手放せない存在なのだ。俺の一部なんだ」
「・・・」
「リシェ・・・」
アリエルは肩を掴んでいた手を離し、リシェリアの手を包み込む。
「リシェ・・・俺は・・・お前を失う事が怖い。今までずっと一人だった。それでよかった。別にこの生活に不満なんてない・・・でも・・・リシェが来て、毎日が楽しくて幸せだった。リシェ・・・俺から幸せを奪うな。リシェがいることが生きがいになっている俺が、リシェを失うなど・・・生きていけいないぞ・・・」
リシェリアの手に雫が落ちてきた。話しながら、段々と俯いていったアリエルの瞳から涙が落ちたのだ。
「アル様・・・アル様が思う程、私は綺麗ではありません」
アリエルはバッと顔を上げた。
「何を言う、お前は綺麗だ。見た目はもちろんだが、心だって綺麗だ!」
「・・・そうではない所があるのです」
「そうではない所?なんだ?それ以外ってなんだ・・・リシェは全部綺麗だ」
「・・・綺麗なんて言ってもらえる資格がありませんわ・・・私は穢れています・・・」
「昼の事が気になっているのか?あんなの気にするな。お前が気にするというのなら、アイスフォードをこの世から消してやる」
「そんな事ダメです!違うのです・・・」
「じゃぁ、なんだ・・・何が穢れてると言うのだ。俺にはお前はキラキラ輝いて見えるぞ?眩しいくらいだ。朝起きた時に目の前にリシェがいて、毎日幸せな気分で一日が始まるんだ。一日頑張って、夜にはまたリシェを感じながら眠る。今までの俺には考えられなかった事だ。毎日リシェが可愛い。どんどん可愛くなっていく。お前はどこまで可愛くなるつもりだ?これ以上可愛くなって・・・俺はどうすればいい?」
「ア、アル様・・・私そんな可愛くは・・・」
「いいや、可愛いぞ!」
もの凄い勢いで全力で可愛いと言ってくるアリエル。リシェリアはこの人ならと意を決した。
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次回
【アリエルside】
ふさわしくないのは俺の方なんだが
俺から幸せを奪うなんて、リシェでも許さんぞ
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