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38、俺の気がすまないだけ

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「アル様、私まだお嫁さんじゃないですよ?」

「いや、もう、嫁だ」

「ふふっ」

「うん、俺の嫁はやっぱりかわいい」

「私の旦那様はとっても優しいです」

「よめぇぇぇ!!!」


アリエルはぎゅうぎゅうにリシェリアを抱きしめる。


「しかし、アイツら許せんな・・・それを野放しにしてる兄上もいかん」

「でも、もういいのですよ?アル様に全てを受け入れて貰えて、ホッとして全身の力が抜けたみたいです」

「そうか・・・安心しろ。これからは絶対俺が守ってやる」

「はい、頼りにしてます」

「でも、悪い事した奴には罰を与えんとな・・・リシェ、辛いかもしれんが、一度だけ王都に行けるか?」

「どうしてです?」

「まずはご両親に会いに行こう。リシェが無事だと会わせてやらんとな」

「いいのですか?」

「むしろ、俺が行く必要がある」

「えっ?」

「お嬢さんを僕にくださいってやつだ」

「あっ・・・はい」


リシェリアの頬がほんのり赤くなる。


「まぁ、ご両親とのほうが歳が近いんだがな・・・悲しいが」

「私、年上の男性好きですわよ?」

「なにっ!?じゃあ、俺の敵は範囲が広すぎるじゃないか!!」

「アル様、違いますわ。他の人はアル様のライバルにはなれません」

「どうしてだ?」

「アル様にしか魅力を感じませんもの」

「・・・俺の嫁が、心臓を撃ち抜きにくるんだが・・・苦しいぃぃ」

「じゃあ、私が癒して差し上げますわ」

「なら、ずっと苦しいままでいるか。リシェがずっとかまってくれそうだ」

「あら、アル様はずっと病人でいるつもりですの?」

「あぁ、そしたら、看病やら、心配やらしてもらえるのだろう?」

「アル様、狼さんにはなりませんの?」

「・・・リシェ、俺はお前の可愛さに、天に召されてしまいそうだぞ・・・」

「それはいけません。まだダメですわ!私を幸せにして頂けるんでしょう?私だってアル様をもっと幸せにしたいです」

「はぁ・・・俺の嫁は最高だな・・・さぁ、乗り込むとするか」

「乗り込む?」

「あぁ、次の夜会に参加する。リシェを着飾って、皆に自慢してまわる。それでだ・・・リシェ・・・」

「はい」

「さっきの話だが、皆に知られることになるかもしれんが・・・いいか?」

「フラムウェル殿下と側近のお二人の事でしょうか?」

「あぁ、皆に知られると噂ですぐに広まるだろう。でも、絶対にリシェは守る。リシェを酷い目にあわせた奴は、社交界に出てこれんようにする。その為にも貴族連中の膿を全部出し切りたい。側近二人の家もこのままにはしておけん。多少の断罪はするべきだ。それに側近にも婚約者がいたり、家の事業などに影響が出る。報復も考えられる・・・少し危険かもしれんが、腐りきった王家と貴族を一斉に掃除してやろうと思うんだ」

「アル様・・・私もお力添えしたいですわ。私の事は全てアル様が受け止めてくれました。もう、誰に何を言われても怖くありませんわ。私には世界一強い旦那様がついてますもの!」

「はぁ・・・俺の嫁は俺を喜ばせる天才だな!なぁ、リシェ・・・キ、キス・・・したいんだが・・・いいか?」

「はい、あの・・・初めてなので・・・その・・・きゃぁっ!」


リシェリアは気付けばソファに押し倒されていた。


「う、嘘だろ?キス・・・初めてなのか?」

「は、はい・・・キスはしたこ・・・んんっ」


嬉しさのあまりにアリエルはリシェリアの唇を塞いでしまった。


「わ、悪い・・・もう、リシェに初めてはないと思ってたから・・・その・・・俺も初めてで・・・」


アリエルは勢いでキスしたが、自分も初めてだった事に、次第に顔が赤くなっていく。初めてのキスをした。その実感が段々と自身の中に湧いてきたのだ。


「アル様・・・もう一回」

「へっ?」

「もう一回」

「・・・この・・・小悪魔めぇぇ!!」

「んんっ」


再び唇が重なり離れていく。


「アル様には初めてがいっぱいありましたよ?」

「何がだ?」

「お父様以外の男性で初めて手を繋ぎましたし、お父様以外の男性に初めて抱き上げられました。初めてお姫様だっこもして貰って、それにお膝に座らせて貰ったのも初めてですわね。つい、服を掴んでしまったのも・・・膝枕も初めてでした。それから・・・」

「ま、まだあるのか!?」

「はい、アル様・・・愛称で呼び合うのも初めてなんです」

「そうか・・・知ってからするのと、知らなかったのでするのとはえらく違うものだな・・・」

「?」

「俺は俺に嫉妬している。初めてをした俺に嫉妬している・・・なんだこの気持ち・・・」

「あら、でしたら、昔のアル様に嫉妬させればいいのですわ」

「昔の俺に嫉妬させる?」

「はい、昔のアル様にはできない事がありますの」

「それはなんだ?」

「私を嫁にするんでしょう?誰かのお嫁さんになるというのは初めてなので、これからのアル様にしかできない事ですわ」

「・・・リシェ・・・すまん・・・」

「んっ・・・ん・・・あっ・・・」


初めてのキスは、勢いにまかせた触れるだけのキス。自分に嫉妬するという変な事を言い出したアリエルに、昔の自分に嫉妬させればいいと、嫁を手にするのだと言ったリシェリア。


嬉しくて、愛おしくて、誰にも渡したくない・・・そんな気持ちが幾重に重なって、深く深く、甘いキスをした。





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次回

なんだ!?俺、なんか気にさわることしたか?


た、たまたま、通りかかったんだ


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