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泣き腫らしたローゼリア
リチャードを振り切って公爵家から出た馬車の中、ローゼリアは声を殺して泣いていた。それ程までにレイドルートに愛妾がいるという事実が受け入れられなかった。リチャードにも言い放ったように、王族にだけは一夫多妻が認められている。これは後継問題のため。事実、レイドルートにも二人の妃がいた過去がある。昔いたと、今現在いるとでは、心に響く大きさが違った。馬車がガタンと音を立て止まる。侯爵邸の使用人が扉をあけると、そこには目を真っ赤にしてうつむくローゼリアがいた。何事かと思い、使用人はすぐさま侯爵夫妻を呼ぶ。
「ローゼリア!」
「っ・・・お父様」
「どうしたの?何があったの・・・」
「・・・お母様」
淑女の仮面などとうに外れ、泣き腫らした目をしたローゼリアを心配そうに見つめる二人。
「お見苦しいところをお見せしてしまって・・・申し訳ありません」
思わず侯爵夫人はローゼリアを抱きしめ、侯爵も、背中をさする。
「歩けるか?」
「はい」
二人に付き添われて、ローゼリアは自室へと戻ると、一人にして欲しいと部屋にこもってしまった。
「あなた・・・」
「一体何があったと言うのだ・・・」
侯爵はその足ですぐさまレヴィス公爵家へと向かった。一部始終目撃していた使用人達もおり、すんなりと中へ案内された。
「お待たせして申し訳ない」
「公子様・・・伺いも立てずに来てしまったのはこちらです」
「ローゼリア嬢の事・・・ですよね?」
「えぇ、ずいぶんと泣き腫らして帰ってきました。一体何があったのかと」
「泣き・・・腫らした?」
「?・・・こちらで何かあったからではないのですか?」
「こちらを出るまでは泣いてなどおられませんでしたので」
「そうですか・・・」
きっかけが何だったのか。何故ローゼリアは泣いていたのか、本人に聞かねばわからないかもしれないと侯爵は諦める。
「もしかしたら私のせいかもしれません」
「公子様のですか?」
侯爵はピクリと眉を動かす。
「陛下の事について言及したのです。愛妾がいるようだと」
「愛妾ですと?」
侯爵は信じられないとばかりに怪訝な表情をリチャードに向ける。
「離宮に何度も出入りをされております。何時間も滞在される事もありますし、離宮を出てこられる際には何度も振り返っては名残惜しそうに去って行かれるのです。あれは・・・誰かを隠して囲っているに違いありません。ですから、関わらない方がいいと進めたのです」
リチャードが険しい表情で言う。その表情を見ていて、侯爵は思う。これは、ローゼリアに気があるのだと。レイドルートの事が事実か、はたまた印象を落とそうとしているのか。真剣にローゼリアを心配しているのか。今はまだ本音を計り知れない。侯爵は、話の続きを促した。
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