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37、黒幕は王妃
しおりを挟むバージル、ミーティア、テオドール、トーマスが話していたテラスに王妃エリアナが現れた。
「ミーティア、バージル、驚かせてしまったわね。陛下が一気に発表するのは、私も聞いてなかったから驚いたわ。でもね、こうする事はずっと前から動いていた事なのよ」
「お母様、ずっと前からって・・・」
「ジャンク騎士団長とバージルにはこの前話したわよね。私は10年前のあの日から、王妃としての力を惜しまず使う事にしたの。私ができる事は最大限すると決めたわ。急に知らせた形にはなってしまったけれど、マーガレットとカトレアの国外への嫁入りは私が動いた結果よ」
「お母様が?」
「ミーティアとバージルが、互いの手を取ることを決めたら、婚約の話を進めると両国には話をつけていたの。それまで保留にしていたお相手方には悪いとは思っていたけれど、マーガレットとカトレアもそれは納得の上。相手方も二人を望んでいたから、正式な話は進める事はできなかったけれど、きちんと気持ちは通わせていたから問題ではなかったわ。これも全て、ミーティアが選んだバージル、あなたの為よ」
「俺の為ですか?」
「えぇ、姉妹を国内に残せば、いらぬ火種を生みかねないわ。王位を奪おうと、有力貴族に担ぎ上げられて、傀儡の女王になりかねない。そんなことはあってはならない。
そして、バージル、あなたはきっと相手がミーティアである事に気後れする。相手は王女、自分は子爵家の次男。違いすぎると悩むと思ったのよ。そう、昔のハリーみたいにね」
「父が?しかし、王妃様は、そこまで俺を理解されておられるのですね」
「ミーティアと同等とは言えないかもしれないけど、王配にする事で地位を与えたかった。ミーティアを王女にすげれば、おのずとバージルは王配になる。そのためには、姉二人が国内の令息を婿に迎える事はありえない。
そんな私の思いが伝わったのか、ミーティアはあなたに星の妖精姫という名前を貰ってからは、とにかく知識をつけ、意欲を持って自分を高めていった。姉二人にはなかったことよ。
この10年、この子は頑張った。女王にするに申し分ないのよ。そのミーティアがあなたを選んだ。この子を成長させたのはバージル、あなたよ」
「・・・俺は何も」
「いえ、あの時のあなたの行動は、私の心を救ってくれた。そしてこの子を見つけ、導いてくれた。たくさんの者達の裏側に徹してくれた。全てにおいてあなたは、この国の女王の王配にふさわしい。王妃たる私のお墨付きよ」
「光栄です・・・なんだか実感はわきませんが」
「バージル、私の事は義母と呼んでくれるかしら?」
「恐れ多いですが・・・義母上」
「嬉しいわ。15年前に男児を産めなかった私に、こんなに大きな息子ができたわ。いつしか本当のお母様になれるように、私もいろいろ頑張らなくてなね」
にこやかに笑う王妃は、これまで見せていた笑顔で一番輝いていた。自身の過去、娘と義理の息子、これからの未来。この時のエリアナの心の内は誰にもわからなかったが、数年後、その行動力にまたみんなが驚かされる事になる。
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お知らせ
新作まもなく投稿開始します!
【お嬢さんはある日森の中熊さんに出会った】
第一王子アイスフォードの婚約者であるリシェリア・ブルスト侯爵令嬢。王子妃教育の為に毎日王宮に通っている。
ある日、王子妃教育の帰り、第二王子のフラムウェルの企みに巻き込まれる。
リシェリアは姿を消した。辿り着いたのは辺境地の森の中。歩き続けて疲れ切ったリシェリアは狼を前に死を覚悟する。
通りがかった騎士に助けられ、辺境に滞在する事となった。助けた騎士は、38歳になった今でも、女性に触れた事もない初心なオッサンだった!?
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