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モテ男、戸惑いの初恋
いらないなら僕にください
しおりを挟むセーラはリュシアンの髪を梳きながら頭を撫でた。セーラがポツリポツリと話し出す。
「クレマン副騎士団長、ありがとうございます。嬉しかったです・・・小さい頃から女の子らしい事は全然できなくて・・・兄が習っていた剣術を、一緒に習い、のめり込みました。周りの男性からは可愛げがないとか・・・女らしくないとか・・・君は強いから一人で生きていけるとかいろいろと言われたものです・・・初めてです・・・私の生き方を褒めてくださったのは・・・私を芯のある女性だと、素晴らしいと言ってくださったのは・・・クレマン副騎士団長が初めてです・・・」
「貴女は素敵です・・・凛としていて素敵です・・・こんなダメな僕にも優しい・・・男が惹かれないはずがないですよ。そんな事いった奴らは馬鹿ですね。でも感謝します。僕だけが貴女の魅力に気付いている。他の男はこのまま気付かなければいいんです。言わせておけばいいんです。貴女の魅力は、僕だけが知っていればいいんです」
「クレマン・・・副騎士団長・・・」
リュシアンは勢いよく立ち上がる。立ち上がってセーラに背を向ける。
「格好悪いところをお見せしました。好きでもない男にこんな事言われても迷惑ですよね・・・すみません」
「迷惑では・・・ない・・・です」
「へっ?」
リュシアンはゆっくりと振り向く。
「こんなに褒めて頂いて、一生分の幸せが降りかかってきたようでした。今死んでも後悔しなくてすみそうです」
「ダ、ダメです!死んだらダメです!」
「私くらいが死んでも、代わりなんていくらでもいますよ?」
「代わりはいません!セーラ嬢の代わりになる女性なんて、世界中探し回ったっていませんよ!セーラ嬢がその命いらないって言うなら、僕にください。僕が毎日可愛いねって、愛でさせて貰います。毎朝セーラ嬢の声で目覚めて、おやすみって言って抱きしめて眠るんです。セーラ嬢の綺麗な髪を、櫛で梳かすのは僕の日課にします。セーラ嬢に似合うドレスやワンピースは僕が選びます。アクセサリーや宝石は、僕の瞳の色と同じ赤いルビーにしましょう。甘くておいしいお菓子と、香りのいい紅茶を準備してテラスでお茶をするんです。毎日花を贈って、セーラ嬢に愛を伝えます。セーラ嬢を甘やかすのを僕の生きがいにします。だから・・・だから・・・いらないなら・・・僕にください」
「それは甘やかしすぎでは?」
「いえ、まだまだ足りません!セーラ嬢が座る定位置は僕の膝の上です。本を読む時は、僕をクッションにしてもたれかかってください。お昼寝は膝枕にしましょう。歩くのが億劫な時は、僕が抱きかかえて移動します。眠る時は、僕の腕を枕にしてください。眠れない時は僕を抱き枕にしてください・・・頑張って・・・大人しくします・・・ので」
「そこは頑張るところなのですね?」
「頑張ります・・・多分・・・大丈夫だと・・・思います・・・多分」
「ふふっ、クレマン副騎士団長は面白いのですね」
微笑んだセーラを見て、見えない矢が胸に刺さったリュシアンは、再度床に倒れた。
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次回
僕、胸に爆弾かかえてるなんて知りませんでした
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