夢から覚めるなら殺して〜虐待を受けてきた白狼、天才科学者はなんとか助け出すが、歪んだ性知識と無知な性知識、いつになったら幸せになれるの？

23.逃げる君

607.目が冷めたとき

頭がぼぅっとして、体が重くて酷い倦怠感がするけど…


違う、さっきまでとはまったく違う
さっきまではひたすら、自分がしたことが許せなくて自分を消したくてしかたなくって
それでもアキラの優しい声と、酷い眠気とフワフワした感覚に
そのどうしようもない暗い気持ちが薄められていたのに


その頭にこびり着いて離れなかった暗い気持ちが消えていった。


あの地獄みたいな異常な行為のとき、僕は明らかにおかしかった
夢の中のような感覚で痛めつけられるアキラを見ていた
無理矢理に抱かれるアキラを、必死で呼びかけても、声すら出せずに指一本すら動かなかった


『違う、ジョン君がやったんじゃない
ジョンが悪いわけじゃないんじゃよ』


どういうことだったんだろう…
僕は本当はどうなってたの？
怠い体をベッドの上で起こしていけば、すぐに気づいてマサトさんが駆け寄って来てくれる。


「ジョン君、大丈夫？もしかして、暗示が解けたのかな？
気分はどう？薬をね使ったんだよ
睡眠薬とか、精神安定剤とかね
ジョン君があまりにキツそうだったから、倦怠感とかはあるだろうけど」


「マサトさん…、アキラはどこ？
体が怠いけど、大丈夫…さっきまで、なんだか消えたくてしかたなかったけど
今はそうは思わないよ、僕は何をしたの？どんな状態だったの？
…あのっ…アキラは無事なの？」


マサトさんが肩の力を脱いて、よかったっと安堵のため息を洩らしていく。


「たぶんアキラさんがアイツを倒したんだね…
よかった、危機は去ったのかな？大丈夫だよきっとすぐに……あっ、ほらっ？」


マサトさんの言葉に促されてドアを見ると、アキラとシノダ教授が入ってくるけど……
アキラの姿を見ると、ブワッっと毛が全部立ち上がっるくらい驚いてしまった。


「なっなっなんで歩いてるの？
駄目だよね！その顔に、その手と足…
あれはやっぱり夢とかじゃなかったんだよね！
わあぁ！歩かないで…だって、その足！折れてたよね？」


もう大慌てで駆け寄ろうとして、ベッドからどべちっと無様に転げ落ちて、顔をぶつけた。痛い……


「ふふっよかった、暗示は完全に解けてるね？
ジョン…慌てなくていいよ、今は痛みはないから大丈夫なんだよ
ジョン……ごめんね、辛い思いさせちゃったね」


アキラがしゃがんで僕の頭を撫でてくれる。
その声はいつもよりしゃがれてしまっていて、僕の好きな透き通るようなボーイソプラノじゃないけど
ずっと僕を呼んでくれていた優しさそのままで


アキラの方がずっと痛くて苦しくて辛い思いしたのに、なんでアキラが謝るの？
僕は体を起こして、アキラに向き合って　


「ねぇ…抱きしめていい？体とか大丈夫？僕が怖いとかない？
僕はアキラに酷いことをしたんじゃないの？
アキラを触っても、許されるの？」


自分の声が思いの外、震えていて小さくて驚いてしまった。
アキラがクシャリっと顔を崩して、今にも泣きそうな顔で僕を抱きしめてくれる。


「アキラ………ごめんなさい……
僕はアキラに、酷いことしたんだよね？
アキラをこんなに傷つけたのは、僕なんだよね？」


僕はアキラを抱きしめ返しながら、それでも許されるようにアキラは背中を撫でてくれる


「違うよ…アレはジョンがやったんじゃないよ
ジョンはどうしようもなかったんだよ…………でもっっ…ジョン…」