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25.怯える君

652.わからない激情

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「わぁ…、これは綺麗になったね
リビングはかなり荒れてたでしょ
ローテーブルは新しくしたの?
ガラス面が駄目になってたよね
壁紙も張り替えたのかな?すごい元通りだね」


僕がジョンに話しかけると、目を剝いて固まって、変な顔をしている。
あぁ…もしかして、暴行のときのことは聞いちゃだめな感じなのかな?
完全に気を使われている……


観葉植物に目をやると枝が折れてしまっていて、テーピングされている。
僕が研究室から植物用ポーションを持ってくると


「あぁ…それってポーションでも治るんだね?よかった…回復魔法しか無理だって言ってたから
枯れちゃわないか心配だったんだよ」


……誰がそれは言ったの?
喉まで出かけた言葉を飲み込んだら、棘が胸に刺さったような感覚に襲われた。
観葉植物の前で、しゃがんで固まってしまった僕を心配げにジョンが見てくるから


「…あのっ…おなか空いちゃったかな?おうどん一緒に食べたいな」


上手く言えてたかはわからないけど、絞りだすように出た僕の言葉に
ジョンは即座に晩ごはんの用意をしてくれだした。
それまではソファに座っててっと厳命されたため、大人しく言われた通りに座っている。


ふっと、白の毛足の長い絨毯に目がいった。
そういえば、これには絶対にシミができてると思ったけど
綺麗になってるな……すごいなぁ、一週間近く放置した血のシミが落とせたなんて……もしかして………


「ねぇ?ジョン……この絨毯のシミって清浄魔法で落ちたのかな?」

「えっ?あぁ……うん………えっ?なっ……」

ふっと思いついた言葉が、僕の口からこぼれ落ちていた。
言い淀むジョンの反応は明らかな肯定と受け止めて…、それからの自分の行動が信じられなかった。


絨毯を引っ剥がして、玄関から庭先に放り投げて……気づいたら服を着たまま、泣きながら冷水シャワーを頭から浴びていた。
一気に頭に血が登って、無言のまました奇行はジョンにはどのように見えただろう……
考えるだけでも、申し訳なくなってくるけど、涙と嗚咽が止まらなくて
どうしたらいいのか、わからなくて
ガタガタと冷水の冷たさに体を震わせていた。


「アキラ……、お願い、やめてよ
まだ熱が下がってないんだよ?
こっちに来て、体を拭こう
そしたら、ベッドに一緒に行こうよ……」


真っ青な顔でジョンが話しかけてくるけど、その笑顔も引きつっていて、申し訳ない……
きっと今の僕の顔は酷いものなんだろうな
なんでこんなに感情が制御できないんだろう?これもPTSDのせいなのかな?


ぐしょぐしょに濡れた服のままジョンの側に歩みを進めれば、すぐに抱きしめるようにタオルで包んでくれる。
少しだけその柔らかさに……冷たく固まっていた体が緩んだ気がした。
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