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31.番う軌跡

943.人種問題  (sideシバ)

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「シバ、時給はあれでよかったのか?ここらへんの平均時給はもう少し高いんだぞ?もう少し高くても…」

「その平均時給には時給が高い居酒屋とかバーとか夜の店の時給も入ってじゃないですか、人狼は飲食店では基本的に雇われないし、それにこの時給は人狼の平均時給からしたら本当に破格ですよ!」


バスターさんが難しい顔をして契約書を眺めている。きっと弟達にもっと働きやすくできないか考えてるんだろうな…


「なぁシバ…俺は知らなかったんだよ、人狼ってこんなに人間社会では生き難かったんだな…、お前もこんな目にずっと合ってきたんだな…」

「えっ?あぁ~、俺は実力主義の冒険者にすぐにバスターさんがスカウトしてくれたから、そんなには苦労していませんよ?バイトなんて短期間しかしてなかったから、飲食店で雇われないのは、やはり毛の混入とかあるから仕方ない部分もあるし…
そんな顔しないでくださいよ、バスターさんが悪いわけじゃないでしょ?」


眉間にシワを寄せて痛みに耐えるような顔をしているバスターさんの頬に手を添える。すぐにその手を大きな手で包むように優しく握ってくれる。


「でも…知らなかったんだよ、ずっと私達は一緒にいたのに、人狼が不遇に扱われてることすら気づかなかったんだよ…これだって罪なことなんじゃないのか?」

「ありがとうございます。そうやって感じてもらえるだけで十分ですよ…人狼は人狼でいろいろ配慮が必要なこともあるし、俺達が閉鎖的な人種だったのも問題だと思います。
ただ…俺はこれからは他種族との共存は大切だと思う、だからそのために俺達が何ができるか、一緒に考えてもらえるのがすごく嬉しいです。」


俺の言葉に真剣な顔で小さく頷くと、メモ用紙にカリカリと何かを書き出している。
ちらりと見れば、賃金の違いや配慮に必要なことなど、これからの対策を書き出してくれているみたいで。この人は本当に…って頬が緩んでしまう
ただ丸で囲われて一番大きく書かれた『可愛い推し!』の言葉は見なかったことにした。


≈≈≈≈≈≈≈≈≈


「とりあえず人間の最低賃金では雇って欲しいんだよ、仕事は一緒なのに賃金が低いっておかしいだろう?
既番ならそれほど配慮はいらないし、特に雌なら終業時間になれば雄がほぼほぼ迎えにくるから…」


あれから数週間たって、バスターさんのファンシーショップはかなりの盛況だ
バスターさんが細々とやっていたお店のSNSに弟達を載せたら、三匹のシバ犬店員がプチバズったみたいで、女子高生に特に人気がある!
今はお姉さんと電話で何か打ち合わせをしていて、俺はそれを聞きながら昼ご飯の用意をしている。


「シバ、とりあえず姉さんの工場で五人を雇用する予定なんだが、チロル部会長を通して話をすればいいかな?募集とか雇用条件とかの相談も姉さんがシバにしたいみたいなんだが、来週末くらいにいいかな?」

「えぇ、週末は予定は何もないから大丈夫ですよ、五人くらいならチロル部会長で問題ないかと、もっと人数が増えてきたら本部通さないとダメかな?変な疑いかけられたら嫌だし…人狼を違法に斡旋してるとかね?」

「うわ…そういう問題もでてくるのか、あぁ…なら会社への報告もしなきゃまずいかな?一応副業とかは禁止されてないが、人種間の問題とか政治活動とかに取られると厄介かな?んんぅ~そういえばこういうことにめっぽう強い人が一人いたな…」
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