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32.亀裂

945.序章

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こちらの章ではシバがかなり可愛そうな目にあいますし、暴力表現も多めになっていきます。
苦手な方は薄目で見ていただけると嬉しいです。


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ダーク様に進言したリクルート部署はトントン拍子に進められて、かなり大詰めのところまで来ている。
人狼は個体差はあるけど力も強いし、機敏だし、どうしても肉体労働とかの仕事ばから就く羽目になるのだが、そういう仕事は危なくてキツい仕事が多くて、それなのに賃金は人間の半分くらいにされてしまっていた。

それをバスターさんが突破口を作ってくれたのだ、ファンシーショップのプチバズリが延焼しつつあって…ちょっとしたテレビ局の取材や有名You○uberさんが取り上げたりして、もうお店は人気店と化してる。
どうやら裏でこっそりとアキラさんやダーク様も動いている気がするのだが…

今は人間社会での接客業の人狼の求人が急上昇している。ただ時給はまだ安いままなので、そこらへんをどうにかしようっと今日は打ち合わせの予定だ!人狼にも人間並み最低賃金を適用されたらいいんだけど

しかも、俺達にはすごく大きな進展があって、さっき昼休憩時に母ちゃんから電話があったのだ!

『あの…バスターさん、すごく組合で頑張ってるみたいね、この前の合同組合活動で北部会の方から素敵なお嫁さんねって言われたのよ…あぁ~、まだ番うことは認めてはいないわよ!ただ今度時間があるときにでも、一緒に顔でも出しに来なさい!
うちの三匹もすごくお世話になってるから、ご飯でもご馳走したいのよ…』


なんて言ってたから!これはかなりいい感じなんじゃないの?母ちゃんもバスターさんに歩み寄ってきてくれてて、番うの認めてくれるのも時間の問題なんじゃないの?うぅ~、早く帰ってバスターさんに教えたい!

俺はそんなちょっと早る気持ちで訓練施設の裏の職員専用玄関の前でカズマさんを待っているけど…遅い!
今日は週末のダーク様との提示報告の日で、カズマさんに送ってもらう予定なのに…

カズマさんはいつもは不真面目そうな言動をしているけど、時間にはいつもキッチリしている。仕事も特にアキラさんのポーションに関する仕事には恐ろしいほど真面目だ
普段の態度と、私生活が、特に下関係が最低なだけで!!仕事面では信頼できる人なのに…

だから今までも遅刻するなんてなかったし、あるとしたらアキラさん関係で仕事が長引いているのかもしれない…もうそろそろ転移しないとまずい時間なので、一度アキラさんに確認をっとスマホを取り出したところ…


ガサガサッ!!っと近くの茂みを分け入って飛び出るように現れたのが、ボロボロのショッキングピンクのリボンにところどころ破れたひらひらのスカート、最後にあったときよりも落ち窪んだ目はギラギラとした瞳で頬は痩けていて、明らかに毛艶のよくないキティさんで、その右頬は腫れ上がり鼻血を垂らしてて、誰かに暴行されたのは間違いない姿で


「シバさん!助けてください!!拐われがげだのぅぅ!!お願いじまずぅ、だすけてぐだざぃ!!これをぅぅ!!だすげぇぇぇ、あのぅごれぇぇ!」

「えっ?ちょっと大丈夫ですか?助けてって…ちょっと、これって…」


キティさんが手に持っていた物に血の気が引いていく、それは破らた白い布の切れ端で、その切れ端は服の切れ端だとしたら一番に思い当たるのは白衣しかなくて、この施設で白衣を着ているのは、研究室にいる三人だけで…

俺はすぐに鼻を布に必死にくっつけて嗅ぐと誰の匂いかまではわからないけど、鉄臭がして…これは血の臭いに間違いなく、血の気が更に引いていく


「あの…私の他に二人いたの!私は諦められなくて、まだスパイしてて、そしたら白衣の二人を殴って無理矢理に連れ去られそうになってて…私も見てたのがバレて連れ去られぞうになっだのぅ!暴れまくって逃げてきたのぅ!ごわかったあぁ!!」

「キティさん!とりあえず他の職員にこのことを伝えてください!応援をお願いしてください!その場面はどこで見たんですか?あっちですか?」


キティさんはまったく信用してないけど、殴られた痕から暴行されたのは確実で、白衣に血の臭いは信憑性が強すぎて、二人の白衣って…絶対に一人はアキラさんだ!
アキラさんは必ず誰かとペアで動くようにしているから、特に施設外では
もしかしたら何処かからの帰りに拉致られかけた?カズマさんやシノダ教授では太刀打ちできない相手だった?

どちらにしろ、捕まったのがアキラさんということは、1秒でも早く助けないと…あの人の体は冒険者や他の者に比べたら決して強くない!
あんな細い体で数発でも冒険者に本気で殴られただけで、致命傷になりかねないのだ、それになにより拉致られるのを阻止しなければ、俺だけでは相手を倒せないにしろ時間稼ぎができる!

俺はキティさんが逃げてきた茂みの中を掻き分けて、間に合ってくれっと願いながら山道を駆け出していた。
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