夢から覚めるなら殺して〜虐待を受けてきた白狼、天才科学者はなんとか助け出すが、歪んだ性知識と無知な性知識、いつになったら幸せになれるの？

32.亀裂

967.誰がための救い？ 2 (sideバスター)

「うわああぁぁ！バスターさん！バスターさん！！嫌だ、嫌だ！…怖い！怖い！バスターさん！どこ？？嫌だ！バスターさんがいない！バスターさん！！」


シバの叫び声に慌てて病室に飛び込む、シバはベッドの上で藻掻くように暴れてて、なんとか落ち着かせようと看護士達達が数人で抑えつけようとしている。
シバに入れられている点滴台がガチャガチャと揺れていて…

「シバっ！私はここだよ？すまない…側にいなくて、大丈夫だから、落ち着いてくれ、点滴が、針が折れてしまったら危ないからな！！」

「ゔぇぇ～、バスターさん、怖い…嫌だ！もう嫌なんだよ、怖い…ココは嫌だ…バスターさん！」


シバを抱きしめて背中を擦れば、グズグズとまだ泣いてはいるが暴れるのはやめて大人しくしている。今のうちに看護士達が点滴を刺し直したりしている。
もう数日間、シバはこの状態が続いていて、鎮静剤が切れて意識がはっきりしてくるとパニックのように暴れてしまうのだ…


あの現場からダークさんの病院に運ばれて、各所の治療後、丸一日は薬の影響でシバは眠り続けていた。
そして朝方になって目を覚ました瞬間に断末魔のような叫び声を上げたのだ、大量の涙も鼻水も涎も溢れさせて、パニックを起こして号泣をしだしてしまって…


「大丈夫だから！シバ…もうココは安全だから！もうお前を傷つけるやつなんていないから！」

「ゔぇぁぁ！！いやだぁ、痛い！苦しぃ！気持ち悪い！！もう嫌だ！！終わらせて…もう嫌だぁ！気持ち悪い！気持ち悪い！！
バスターさん！バスターさん！！助けて！バスターさん！！」

「大丈夫だから…シバっ、ほらっ！私は側にいるよ、シバっ？もう誰もお前を傷つけるようなヤツはいないから！ほらっ…落ち着いて…」


傍にずっと付いていた私が慌てて抱きしめれば、しがみついてガタガタと震えていて、とても私以外の人には触られるのも拒んでしまって、それでもなんとかなだめている間に看護士に呼ばれた医師が鎮静剤の投与をしてくれた。
薬が効きだせはまたうつらうつらと寝てしまったのだが、その間にダークさんに連絡をいれてもらった。


ダークさんの病院はかなりの大きな建物で大病院と言ってもいい大きさだ
診療所の方がおまけのように思えるが、それは何か政治的な都合があるらしく、こちらの病院の方が診療所に付属している。


「完全に急性ストレス反応ですね、慢性化してPTSDにならないといいですが、とりあえずバスターさんがなるべく側についていてください、あと精神安定剤と抗うつ剤を処方しましょうそれと…あのクソ野郎のことは絶対に話に出さないようにお願いしますね！」

「はいっ、わかりました。あの…本当にあの話は進めていいのでしょうか…、私はどうしても…シバを…」

「バスターさん、私は何人も無理矢理に番にされて、奴隷のような生活をさせられた人狼を見てきました…」


ダーク様の話では、人狼は奴隷のように扱われても、痛ぶられても、人狼は耐えられずに逃げ出しても、またしばらくすれば、番を求めて戻ってしまうらしい…


「どんなに痛めつけられても、売春のようなことをさせられても、子を奴隷として売られても…
人狼は番からは離れられないですよ
地獄の様な日々でも、番を求めて番の側にいたくて自ら身を捧げてしまうんです。
しかし、そんな生活が幸せなはずがない！
シバさんはあのクソ野郎といるよりも、絶対に貴方といた方が幸せです！」


ダークさんのような穏和で冷静でスマートな方がクソ野郎・・・・などと汚い言葉を使うのに違和感を感じていた。
ダークさんはきっと、そのような連中を心の底から軽蔑しているのだろう


「私は…それでも、シバに…やめておきます。もう、望むだけ悲しくなりますから…」

「お気持ちはお察しします。ただ貴方は間違っていません…どうか、シバさんのためにも、気持ちを強く持ってください！」


本当にそれがシバのためなのだろうかと、自分の欲望を満たすためではないのだろうかと、何回目かわからない自問を繰り返していた。