上 下
996 / 1,158
32.亀裂

992.番えなかった朝 (sideシバ)

しおりを挟む
「私も…シバと番いたかったっ…」


ポツリっとバスターさんの呟きが漏れるとっ、背中に回された腕の力が強くなり俺の胸にバスターさんの顔がより深く埋もれていく


「番いたかったっ…シバと番いたかった。もう嫌なんだよぅ、あんな不安なのは…苦しぃのは嫌なんだよぅ…シバを誰にも奪われたくなっ…ふぅ、うっゔぅ…シバにずっと愛されてっいたっ…しばぁ…」

「はいっ!ずっと一緒ですから、ずっとずっと愛していますから、バスターさん、番いたいですね?俺もすごくすごく番いだいぃ」


やっとバスターさんが俺の胸で隠れていた気持ちを溢してくれた。きっとそれはバスターさんの中で大きなトゲが刺さったように、ずっと痛くて苦しんでた気持ちのようで

人狼は番ってしまえば気持ちに関係なく、番を求めてしまうから、バスターさんはずっと俺が誰かに奪われるのが不安でしかたなくて、だからこんなにも俺と番たがってくれていて…

バスターさんはそれを身勝手なワガママだと言うけど、そんなこと言い出したら本能だけでバスターさんを求めている俺なんて我儘以下だ、獣そのままだ!

『番いたかった。悲しい』

っと二人で朝方まで抱き合いながら泣いて、その後はずっと慰め合うようにキスをして、二人で沈むように眠りについていった。



==========


「うわぁぁ!!シバ!シバ!!ちょっと起きておくれ!お前の顔がすごいことになってるから、すぐにダークさんのところに行っておいで、シバ!!」

「ふはぁ~ふ、はふぁ、おはようございます。バスターさん、ふふっ…バスターさんも目が腫れちゃって、ちょっと面白可愛い顔ですよ?ふふっ…」

「ゔぅ、私のは…泣いたからで、しかたがないだろう?シバのは違うから!ほらっ…ずっと痛かっただろう?ごめんな…気づかなかった。」


促されるままに鏡の中の俺を見れば、確かにすごい顔になっている。目はパンパンに腫れて半分以上開いてないし、右の頬もパンパンに腫れてしまっている。めちゃ面白い顔に思わず笑ってしまうが、確かに熱を持ち出してジクジクと右頬が痛い


「ほらっ、診療所は土曜日の午前なら開いてているだろう?ダークさんがいるといいが…
それは回復士じゃないと無理だなっ、折れてしまってるな…」


痛々しそうにバスターさんが見てくる、確かに歯が2本バスターさんの項に噛みついたときに折れてしまった。防御力に阻まれて噛みつきが通らないのはわかるけど、歯が折れるまでいくとは思わなかったから、本当にびっくりしたけど…


「ごめんなっ、歯が折れるほど強く噛みつこうとしてくれてたんだなっ…なのに私のスキルがそれをっ、本当に…」

「ほらっ、そんな顔しないでくださいよ!俺は反対にバスターさんの強さに惚れ直しちゃいましたからね?俺の雌は本当に強いって!!さてと、バスターさんのご飯だけでも用意して…」

「簡単に自分で何か食べるからいいよ、シバは急いで診療所に電話をして行っておいで、シバはそんな歯じゃろくに食事もとれないだろ?ほらっ、早く私の可愛いシバに戻っておくれ…」


追い立てられるように用意をさせられて、家を出されてしまった。

本来なら番った後なら誠心誠意で雌の面倒は雄がみるのに…まぁ番えてないけど!
雌のお世話ができるという雄のファースト特権なのに…まぁ番えてないけど!

バスターさんの朝ご飯すら用意できなかったことに、ぐちぐちと少し卑屈な考えをしながらも、診療所に電話をかけていった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【SM多め】短編集。 【R18】

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:70

夫の浮気相手と一緒に暮らすなんて無理です!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:681pt お気に入り:2,710

僕の番が怖すぎる。〜旦那様は神様です!〜

msg
BL / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:385

【完】君を呼ぶ声

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:87

不完全防水

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

【R18】私の担当は、永遠にリア恋です!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:376

処理中です...