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第一幕 断罪からの始まり

vs8 牽制

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それを凄い形相で外から見ていたマリアは、何気無く自然に近寄る。
目の端でそれを見て、マリミエドはハッと気付いた。
確か、前世でもこうして勉強の話などをしていた事があった。
が、そうすると必ずマリアがやってきて皆に用事を言ったり転んだ振りをして水を掛けられたりしたのだ。
〈…トレイの上にはカップ…まさか熱い紅茶でもわたくしに掛けようと⁈〉
思わず身構えようとすると、スーツに着替えた皇后陛下直属の騎士がスッと現れてマリアをその近くの席に座らせた。
「レディ、ここが空いてますよ」
「ど、どうもありがと~」
天使の笑みで言い、紅茶を飲みながら、ちらちらこちらを見ている…。
〈男性全員に愛想を振りまいているから、こんな時には有利ね…〉
マリアは、どんな男性からの好意も断らない…。
自分を良く思わせる為に。
熱い紅茶を掛けられなくて済んでホッとしたマリミエドは、口元を拭いてトレイを手に立ち上がる。
「わたくし、お先に失礼しますわ。皆さん、ご機嫌よう」
そう言い片足を後ろに下げるだけの軽い挨拶をして、優雅に去っていった。
それを、男3人が見送る。

「…やっぱ、あの噂本当だな」
とクリフォードが言うと、レアノルドが言う。
「〝クソ王太子には勿体無い〟ってヤツか?」
「ああ。食事も優雅、喋りも優雅、去る時まで優雅。完璧なレディだ…」
「おいおい、まだ王太子の婚約者なんだから、手は出すなよ?」
ユークレースが笑いながら言うと、クリフォードが言う。
「…お互いな」
そう言い、三人は牽制するように笑い合ってから、少し近寄って小声で話す。
「やっぱり、〝天使の涙〟着けてたな」
とクリフォード。
「学院長が話してたのは本当だったか…」
ユークレースがチラリとマリアを見て言う。
授業中に、水晶で学院長が〝天使の涙〟事件を話したのだ。
マリアに好意を寄せた近衛兵が〝天使の涙〟をマリアにあげようとしたが、マリミエドがそれを阻止。
マリミエドは〝天使の涙〟を皇帝陛下のもとへ持っていったので、午前中は来ない…と。
マリアに非は無いので、責めないように…と担当の教授が言っていたが。

「…また近くにいるな…」
ため息をつきながらユークレースが言う。
「行こう。話してもいられない」
そのクリフォードの言葉に頷いて、3人は出ていった。


〈あら? わたくし、先程いい感じでお話出来ていたわ!〉
天然で気付くのが遅くなったが、あの三人と話すのに成功していた。
〈この調子で他の方々ともお話すればいいんだわ!〉
さあ、頑張りましょう!
そう思いながら、マリミエドは図書館へと向かう。
あの人達と話すには、様々な知識が必要となる。
薬草や毒草は勿論、歴史や文学、絵画に音楽…今まで受けてきた教育の中には無かった物を。
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