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第一幕 断罪からの始まり
vs40 変わった理由
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翌日。
マリミエドは馬車の中で繰り返し挨拶の練習をした。
〈教室に入ったら、笑顔で〝おはよう〟…偉ぶらないで、冷たくならないように、優しく!〉
イメージトレーニングを何度もする。
いざ教室の前で、マリミエドは息を呑んで拳を胸の前で握り締める。
〈おはよう、皆さんおはよう、皆さん〉
心で呪文のように唱えていると、後ろからポンと肩を叩かれる。
「おはよう」
「おはきゃー⁉」
変な悲鳴に皆が注目した。
そしてくすくすと笑われてしまう。
後ろを見ると、レアノルドがいた。
「すまない…そんなに驚くなんて思わなくて…」
「だ、大丈夫ですわ…お、おはようございます、ヴァルムント令息。そして皆さん」
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
クラスの皆が笑顔で挨拶をしてくれた。
マリミエドはホッとして教室に入ってソフィアの側に行く。
すると、別のクラスの筈のレアノルドも着いてきた。
「…ヴァルムント令息?」
「友達だろう? 気にしないで」
「けれどクラスが…」
「ああ…メイナード令嬢は知らないのか。選択授業の日は一日掛かるから、自由に移動していいんだよ」
レアノルドが言うと、ソフィアも頷いて、挨拶をする。
「おはよう、メイナード令嬢、ヴァルムント令息」
「おはよう、あ!」
マリミエドはゴソゴソとプレゼントの箱を取り出して、3人に渡す。
「これ、良かったら貰って頂けないかしら?」
「え…?」
3人は驚いて戸惑う。
「あの、お友達としてプレゼントしたいだけなの。決して賄賂とかではないわ、安心して」
「ありがとう」
レアノルドが言い、箱を開ける。
「…品の良いスカーフリングだね、ありがとう」
そう言いレアノルドは早速スカーフリングを着ける。
「わあ、綺麗な模様…」
アメリアも喜んで早速着けた。
「嬉しいわ、ありがとう…」
ソフィアは礼を言い、少し悩んでいた。
リボンにするのが制服として好ましいが、スカーフリングも着けたい。
マリミエドの贈り物ともなれば、家の名誉にも繋がる。
なので、リングをしながらリボンにしてみた。
すると周りにいた子女達が寄ってくる。
「まあ素敵ですね」
「スカーフリングもオシャレね」
そう和気あいあいとしている姿を、マリアが遠くから見る。
〈あんな〝スチル〟無かった…〉
昨日は余り眠れずに、目の下にくまを作っていた。
昨日もあんなに邪険にされたのは初めてで、一晩中泣いていたのだ。
〈もうギルなんて落とさなくていいや…〉
しかしそうなると隠しキャラが出てこない。
〈まさか、アップデートでもあったの…?〉
自分の死後にアップデートでもあったのだろうか?
そもそも死んだかどうかも分からない。
確か、会社帰りに道に飛び出した子猫を助けようとして車に引かれたのは覚えているが…。
それはどうでもいい。
このゲームは何度もやったのだ。
ギルベルトも攻略したし、隠しキャラも攻略した。
全員コンプリートしたのだから、必ず出来る筈なのだ。
なのに出来ない…。
イベントが違うから、動き方まで変わってきている。
…何かおかしいのは、前回から…だろうか?
少しだけマリミエドの最後が違った。
逆ハーレムエンドでは、マリミエドは国外追放の筈だったのに、処刑されたのだ。
〈何故かしら…〉
斬首刑なんて望んでいない。
なのに何故そうなったのか?
ゲームのシナリオが何処かおかしい。
何かが変わったーーー。
何が…?
〈そういえば…〉
前回の〝逆ハーレムエンド〟の時、ユークレースが〝世界樹の枝〟を取ってきてそれをコサージュにしてくれたのだが…。
卒業パーティ前日、それを落としてしまい、マリミエドが拾ったのだ。
「落ちましたわよ」
「あ、ありがとう…」
手渡しされた時に、針の部分に触れてしまい、2人共指を刺してしまったのだ…。
あんなイベントは無かった筈。
〈…あれが、何かあったのかな…。あのコサージュまた貰いたいな…今からでもユーク落とせるかなぁ…〉
そんな事をぼんやりと思いながら、マリアは別の教室に移動した。
マリミエドは馬車の中で繰り返し挨拶の練習をした。
〈教室に入ったら、笑顔で〝おはよう〟…偉ぶらないで、冷たくならないように、優しく!〉
イメージトレーニングを何度もする。
いざ教室の前で、マリミエドは息を呑んで拳を胸の前で握り締める。
〈おはよう、皆さんおはよう、皆さん〉
心で呪文のように唱えていると、後ろからポンと肩を叩かれる。
「おはよう」
「おはきゃー⁉」
変な悲鳴に皆が注目した。
そしてくすくすと笑われてしまう。
後ろを見ると、レアノルドがいた。
「すまない…そんなに驚くなんて思わなくて…」
「だ、大丈夫ですわ…お、おはようございます、ヴァルムント令息。そして皆さん」
「ああ、おはよう」
「おはようございます」
クラスの皆が笑顔で挨拶をしてくれた。
マリミエドはホッとして教室に入ってソフィアの側に行く。
すると、別のクラスの筈のレアノルドも着いてきた。
「…ヴァルムント令息?」
「友達だろう? 気にしないで」
「けれどクラスが…」
「ああ…メイナード令嬢は知らないのか。選択授業の日は一日掛かるから、自由に移動していいんだよ」
レアノルドが言うと、ソフィアも頷いて、挨拶をする。
「おはよう、メイナード令嬢、ヴァルムント令息」
「おはよう、あ!」
マリミエドはゴソゴソとプレゼントの箱を取り出して、3人に渡す。
「これ、良かったら貰って頂けないかしら?」
「え…?」
3人は驚いて戸惑う。
「あの、お友達としてプレゼントしたいだけなの。決して賄賂とかではないわ、安心して」
「ありがとう」
レアノルドが言い、箱を開ける。
「…品の良いスカーフリングだね、ありがとう」
そう言いレアノルドは早速スカーフリングを着ける。
「わあ、綺麗な模様…」
アメリアも喜んで早速着けた。
「嬉しいわ、ありがとう…」
ソフィアは礼を言い、少し悩んでいた。
リボンにするのが制服として好ましいが、スカーフリングも着けたい。
マリミエドの贈り物ともなれば、家の名誉にも繋がる。
なので、リングをしながらリボンにしてみた。
すると周りにいた子女達が寄ってくる。
「まあ素敵ですね」
「スカーフリングもオシャレね」
そう和気あいあいとしている姿を、マリアが遠くから見る。
〈あんな〝スチル〟無かった…〉
昨日は余り眠れずに、目の下にくまを作っていた。
昨日もあんなに邪険にされたのは初めてで、一晩中泣いていたのだ。
〈もうギルなんて落とさなくていいや…〉
しかしそうなると隠しキャラが出てこない。
〈まさか、アップデートでもあったの…?〉
自分の死後にアップデートでもあったのだろうか?
そもそも死んだかどうかも分からない。
確か、会社帰りに道に飛び出した子猫を助けようとして車に引かれたのは覚えているが…。
それはどうでもいい。
このゲームは何度もやったのだ。
ギルベルトも攻略したし、隠しキャラも攻略した。
全員コンプリートしたのだから、必ず出来る筈なのだ。
なのに出来ない…。
イベントが違うから、動き方まで変わってきている。
…何かおかしいのは、前回から…だろうか?
少しだけマリミエドの最後が違った。
逆ハーレムエンドでは、マリミエドは国外追放の筈だったのに、処刑されたのだ。
〈何故かしら…〉
斬首刑なんて望んでいない。
なのに何故そうなったのか?
ゲームのシナリオが何処かおかしい。
何かが変わったーーー。
何が…?
〈そういえば…〉
前回の〝逆ハーレムエンド〟の時、ユークレースが〝世界樹の枝〟を取ってきてそれをコサージュにしてくれたのだが…。
卒業パーティ前日、それを落としてしまい、マリミエドが拾ったのだ。
「落ちましたわよ」
「あ、ありがとう…」
手渡しされた時に、針の部分に触れてしまい、2人共指を刺してしまったのだ…。
あんなイベントは無かった筈。
〈…あれが、何かあったのかな…。あのコサージュまた貰いたいな…今からでもユーク落とせるかなぁ…〉
そんな事をぼんやりと思いながら、マリアは別の教室に移動した。
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