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第二幕 回避の為=世界の為

vs01 ランチ

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 ランチにはパスタのレストランを選んだ。
マリミエドが楽しみだと言うので、三人でレストランに入る。
「羊肉のソテーとトマトパスタかな」
メニューを見ながらギルベルトが言う。
「ムニエルとラザニアで。…君は?」
ユークレースが注文してからマリミエドに聞く。
「迷いますわ……鶏肉のリゾットもいいし、鴨肉のポワレやパニーニも美味しそうで…」
「ではそれらと…後は任せよう」
ギルベルトがそう注文する。

前菜が運ばれたので、ハムを食べながらギルベルトが言う。
「明日はテストだったな…学年一位は誰になるやら」
「去年は誰でしたの?」
チーズを食べながらマリミエドが聞くと、ユークレースがサラミを食べながら言う。
「ギルベルトだな。…今年は妹に負けるのか」
「一点差で君に負けるかもな」
笑いながらギルベルトが言う。
冗談を言い合える仲なのだなとマリミエドは微笑ましく見つめた。
「そういえば、アルビオンは来るのかね」
ギルベルトが問い掛けると、ユークレースは唸る。
「あいつも君と同じく宰相の息子だからな…君が来れば来るさ」
「何だか意味深に言うな。俺はアルビオンとは張り合わないよ」
「向こうは張り合うだろう? どちらの家が主権を握るか決まるかもしれないんだから」
ユークレースが言った所でサラダやリゾット、スープとパスタが運ばれる。
トマトパスタを食べながらギルベルトが笑って言う。
「学院のテスト如きで主権が握れるなら、容易い国だな」
「握れるだろう? 向こうの家は軍事にまで手を出しているらしいからな。国でも乗っ取る気じゃ無いのか? …おっと、ご令嬢の前で話す事では無かったな」
ユークレースがスープを飲んで言うと、マリミエドがリゾットを食べながら言う。
「いいえ大丈夫ですわ。お兄様が未来の宰相でしたら、安心ですわね」
「…どうかな」
ユークレースが否定気味に言うと、ギルベルトが微笑んで言う。
「どうだろうな。…噂をすれば何とやら、あそこにいるのはアルビオンじゃないか」
見ると、向かいのカフェテリアにアルビオンとフォンディ男爵令息のライアン、フレーズベルグ辺境伯令息のクリフォードが居た。
「クリフォードの奴は顔が広いな」
ユークレースが苦笑して言う。
〈確かに、友好が幅広いわ〉
マリミエドが思う。
この前もレアノルドと共にお茶会に来ていた。
クリフォードと共にいる二人とは、まだ会話も出来ていない…。
マリミエドは鶏肉を食べながら、その3人を見つめる。
〈もうマリアさんとはお話してるでしょうね…〉
もうマリアの味方なのだろうか?
しかし、前と違う。
ベルンハルトは夏の海のパーティーでマリアと出会う筈だったのに、基礎体力の授業で出会っている。
もしかしたら、前とは違う道を歩んでいるのかもしれない。
〈そうだとしたら、予測が出来ないわ…〉
そう考えているとギルベルトの声がする。
「大丈夫か?」
「え? 何がです?」
「…リュミの好きなティラミスが来ているのに、一口も食べずに考え込んでいるから心配になってね…まだ具合が悪いんじゃないか?」
「そんな事は…いただきますわ」
何かを言い掛けてティラミスを見て、〝美味しそう〟だと思い、素直に食べる事にした。
そんな所が、まだ14歳の少女らしかった。
ギルベルトとユークレースは微笑してマリミエドを見る。
ユークレースはハッとして自分もティラミスを食べた。
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