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第二幕 回避の為=世界の為
vs32 出迎え
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会計で自分達と護衛騎士や御者、エレナとアメリアの分をまとめて払ったら、お土産にレープクーヘンをケーキの箱一杯に貰った。
折角なので、皆で一個ずつ食べた。
「このミニケーキ? みたいなレープクーヘン、スパイシーね…シナモンと胡椒かしら?」
「ジンジャーだわ…そっちは?」
とエレナとアメリアが護衛騎士達と話している。
「この後はどうする?」
ギルベルトが聞くと、マリミエドは一口かじったレープクーヘンを見つめながら言う。
「協力して下さる方を探さないと…」
「ユークレースかな」
そう言ってヒョイとそのレープクーヘンをマリミエドから奪い取って食べてギルベルトは馬車の中に箱を置く。
「あっ! 食べ掛け…!」
「苦手な味だろう? リュミは子供だから」
クスクス笑いながらギルベルトが言い、マリミエドの手を取る。
「では聖魔塔に向かおうか」
「…酔わないかしら…」
「2回目だから慣れてきてるさ」
そうギルベルトが言うと、マリミエドはやっと馬車の中に入る。
聖魔塔に着くと、ユークレースが走って出迎えに来てくれた。
ギルベルトが馬車からマリミエドをエスコートして降ろすと、ユークレースが近寄ってくる。
「…今日は、どうしたんだ?」
「そっちこそ走ってきてどうした?」
ギルベルトが笑いながら聞くと、ユークレースはギクッとして頭を掻いてあちこちを見る。
「あ、いや、その、馬車が見えたから…また何かの相談かと思ってな…」
「先月まで出迎えなんて一度も無かったがなぁ?」
少し殺気を込めて言うと、ユークレースは黙ってしまった。
「お兄様! 威圧なさらないで」
「………」
ギルベルトは仕方無く黙る。
「アーダルベルト令息、わたくしまた酔うかもしれませんが…」
「ああ、そう思って階段を用意した」
「階段…?」
訝しがって見ると、確かにいつもテレポートする場所に透明な螺旋階段がある。
「…階段があるなんて今まで知らなかったぞ」
「健常者には必要無いからな。魔法酔いを起こした人にもこうしている」
そう言って先に歩く。
すると階段を上がる前にギルベルトが止まる。
「…ユークレース、これは、下からドレスの中が見えるのでは…?」
「………。護衛を下がらせればいいだろう!」
「…下がっていろ」
そう命じて騎士を下がらせてから、マリミエドをエスコートして上がった。
中に入ると、ユークレースはティーセットを用意する。
「紅茶はアッサムでもいいか?」
「はい」
ソファーに座ったマリミエドが答える。
ギルベルトはユークレースの隣りに立って覗き込んだ。
「ユーク…女性は嫌いだとか何とか言ってなかったか…?」
「あれは……お喋りで品性の欠片もない女性が苦手なだけだ」
「ふぅん?」
「…お前も座れ」
ユークレースはカップをテーブルに置いて紅茶を注ぐ。
ギルベルトはマリミエドの隣りに座って紅茶を飲む。
「…ユークレース、もしもこの世界が歪められていて、それを正す手伝いが出来るとしたら、君はどうする?」
「…なぞなぞは好きじゃないぞ」
「事実なんだ。呪いを封印しなくては、時を繰り返すという世界になっているらしくてね。その封印に大量のアイテムが必要となる。それを集めるのを手伝って欲しい」
「それは、何処の情報だ?」
「世界樹だ」
ギルベルトの言葉を聞いてユークレースは唸る。
「済まんが信用に足りん…何か、証拠は無いか?」
「この前、ペン先を風で贈ったじゃないか」
「ああ…急にな。あれが何か」
「世界樹の枝だ。急に友人に贈らねばと思い立ってな…」
「あれが世界樹の…?」
そう言われても、ピンとこなかった。
持って分かる物なのに、あれは別になんとも思わなかったからだ。
「書き心地はいいがな…」
ボソリとユークレースが呟く。
使ってくれているのはいい事だとは思うが、信じてもらえないのは悲しい事だ。
ギルベルトは苦笑して顎に手を当てて考える。
〈…やはり疑り深い……さてどうしたものかな〉
信用を得なくては話が進まない。
折角なので、皆で一個ずつ食べた。
「このミニケーキ? みたいなレープクーヘン、スパイシーね…シナモンと胡椒かしら?」
「ジンジャーだわ…そっちは?」
とエレナとアメリアが護衛騎士達と話している。
「この後はどうする?」
ギルベルトが聞くと、マリミエドは一口かじったレープクーヘンを見つめながら言う。
「協力して下さる方を探さないと…」
「ユークレースかな」
そう言ってヒョイとそのレープクーヘンをマリミエドから奪い取って食べてギルベルトは馬車の中に箱を置く。
「あっ! 食べ掛け…!」
「苦手な味だろう? リュミは子供だから」
クスクス笑いながらギルベルトが言い、マリミエドの手を取る。
「では聖魔塔に向かおうか」
「…酔わないかしら…」
「2回目だから慣れてきてるさ」
そうギルベルトが言うと、マリミエドはやっと馬車の中に入る。
聖魔塔に着くと、ユークレースが走って出迎えに来てくれた。
ギルベルトが馬車からマリミエドをエスコートして降ろすと、ユークレースが近寄ってくる。
「…今日は、どうしたんだ?」
「そっちこそ走ってきてどうした?」
ギルベルトが笑いながら聞くと、ユークレースはギクッとして頭を掻いてあちこちを見る。
「あ、いや、その、馬車が見えたから…また何かの相談かと思ってな…」
「先月まで出迎えなんて一度も無かったがなぁ?」
少し殺気を込めて言うと、ユークレースは黙ってしまった。
「お兄様! 威圧なさらないで」
「………」
ギルベルトは仕方無く黙る。
「アーダルベルト令息、わたくしまた酔うかもしれませんが…」
「ああ、そう思って階段を用意した」
「階段…?」
訝しがって見ると、確かにいつもテレポートする場所に透明な螺旋階段がある。
「…階段があるなんて今まで知らなかったぞ」
「健常者には必要無いからな。魔法酔いを起こした人にもこうしている」
そう言って先に歩く。
すると階段を上がる前にギルベルトが止まる。
「…ユークレース、これは、下からドレスの中が見えるのでは…?」
「………。護衛を下がらせればいいだろう!」
「…下がっていろ」
そう命じて騎士を下がらせてから、マリミエドをエスコートして上がった。
中に入ると、ユークレースはティーセットを用意する。
「紅茶はアッサムでもいいか?」
「はい」
ソファーに座ったマリミエドが答える。
ギルベルトはユークレースの隣りに立って覗き込んだ。
「ユーク…女性は嫌いだとか何とか言ってなかったか…?」
「あれは……お喋りで品性の欠片もない女性が苦手なだけだ」
「ふぅん?」
「…お前も座れ」
ユークレースはカップをテーブルに置いて紅茶を注ぐ。
ギルベルトはマリミエドの隣りに座って紅茶を飲む。
「…ユークレース、もしもこの世界が歪められていて、それを正す手伝いが出来るとしたら、君はどうする?」
「…なぞなぞは好きじゃないぞ」
「事実なんだ。呪いを封印しなくては、時を繰り返すという世界になっているらしくてね。その封印に大量のアイテムが必要となる。それを集めるのを手伝って欲しい」
「それは、何処の情報だ?」
「世界樹だ」
ギルベルトの言葉を聞いてユークレースは唸る。
「済まんが信用に足りん…何か、証拠は無いか?」
「この前、ペン先を風で贈ったじゃないか」
「ああ…急にな。あれが何か」
「世界樹の枝だ。急に友人に贈らねばと思い立ってな…」
「あれが世界樹の…?」
そう言われても、ピンとこなかった。
持って分かる物なのに、あれは別になんとも思わなかったからだ。
「書き心地はいいがな…」
ボソリとユークレースが呟く。
使ってくれているのはいい事だとは思うが、信じてもらえないのは悲しい事だ。
ギルベルトは苦笑して顎に手を当てて考える。
〈…やはり疑り深い……さてどうしたものかな〉
信用を得なくては話が進まない。
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