天然公女は諦めない！〜悪役令嬢(天然)VS転生ヒロイン〜

第三幕 想定外

vs18 拘束

　その後、マリアは聖女候補では無くなった。
「出て行け！」
神殿から追い出され、荷物を放り投げられた。
「いた……何これ…闇落ちなんて有り得ない……早く次に行かないと…」
マリアはヨロヨロと立ち上がって荷物を持ち、街道を見てパアッと笑顔になる。
「ギルベルト！」
そこに馬車があり、ギルベルトとマリミエドが居たのだ。
〈マリミエド邪魔…いいわ〉
「ギルベルト、来てくれたのね」
そう言って駆け寄ろうとすると、風に押し戻された。
「余り近寄らないでくれ。平民は嫌いなんだ」
涼しい顔でサラリと言う。
するとマリミエドがマリアに手を差し伸べた。
「行く所が無いのなら、共に…」
言い掛けたマリミエドの手を、マリアがはたく。
「貴様…！」
「お兄様！」
怒鳴ろうとするギルベルトを押さえてマリミエドが寄ると、マリアが叫ぶ。
「近寄らないで！ 悪役令嬢なんかに助けられるヒロインなんて嫌なの！ 私にはルネだって居るんだから！」
そう叫んでマリアは走って行った。
「…待つのかい？」
嫌そうにギルベルトが聞くと、マリミエドが頷く。
「コルネフォロスの所だな…」
呟いてギルベルトはマリミエドをエスコートして馬車に乗せた。


「ルネ！ 開けてよ‼」
バンバンと戸を叩くが、コルネフォロスはドアを開けなかった。
「帰ってくれ、ただの平民の君と関わる気は無い」
もう噂は街まで届いていた。
「号外～、聖女候補が不貞行為で地に落ちたよー！」
新聞屋が遠くで号外を売っていた。
「…ぐす………いいもん…ルーファだって居るんだから…！」
マリアは泣きながら歩いていく。


「きゃっ！」
レストランに行くと、締め出された。
「ここはお前のような売女が入れる店じゃ無いんだ！」
「待ってよ、エルガファル君に会わせてよ‼」
「誰だそれ」
そう言いマスターはドアを閉めた。
「ちょっと！ ルーファ居るんでしょ⁉ 散々人の事抱いといて無視しないでよっ！」
大声でそう言うと、森の方からフード付きマントを着た男が出てくる。
「あんま、そーいう事公言しない方がいいよ？」
「ルーファ！」
「…あんたの事好きだったけどさ……学院長やら神官やらと派手に寝てたらしいね」
しらっとした顔で言うと、マリアは怒鳴る。
「あんたがお菓子に高い値段吹っ掛けるからじゃん！ クッキーもマフィンも！ マフィン……あの好感度マフィン効果が無かったんだから！」
「うるさいよ。…とにかく、２度と関わんないから」
そう言ってエルガファルは森に消えた。
「待って…待ちなさいよ！ ふざけんなよ‼」
叫んでいると、店のドアが開いてマスターがマリアにバケツの水を掛けた。
「迷惑だ！」
そう言いバタンとドアを閉める。
「うっ…うえぇ～」
マリアは泣きながらも歩き出した。
荷物は、叫んでいる間に盗まれていた。
「ひっく、ひっく」
涙を拭いながら歩いていくと、マリミエドが見えた。
「マリアさん…」
「……あんたのせいよ…」
呟いてから、マリアは怒鳴る。
「あんたが大人しくしてないからイベントが変わったのよ！ なんで聖女の私がこんな目に遭うのよ⁈ おかしいでしょっ⁉」
「マリアさん落ち着いて。貴女が聖女の資格を失ったのよ」
「うるせーんだよ‼」
そう叫んでマリミエドに掴み掛かろうとすると、その手を横から来たアルビオンがはたく。
そして、マリミエドの側にギルベルトとユークレースが立つ。
その後ろにレアノルドとクリフォードが居た。
それを見てマリアが笑う。
「あぁ、何？ あんたがハーレムしてたんだ！ そいつらと寝て！ 好感度上げて喜んでたんだ！ イヤらしい女ね！」
あざ笑うマリアにアルビオンが怒鳴ろうとすると、マリミエドがそれを押さえた。
「アルビオン公子、落ち着いて下さい」
「名前呼び⁈ 婚約者がいるのに！」
マリアが自分の事を棚に上げてそう言う。
「マリアさん！」
「うるさいんだよ！ 名前で呼んでいいなんて言ってないよ！ あんたみたいな隠れビッチなんか死ねばいいのに！」
そんな罵詈雑言に耐えられなくなったユークレースが魔法でマリアを拘束した。
「もういい。現実だと分からせるなど無理なのだ。…連行しよう」
そう言ってユークレースはマリアを魔法で荷馬車に乗せた。
「ユークレース…やだ、マフィン効いてた？」
「…黙らせていいか？」
そう聞くとアルビオンが頷いたので、ユークレースは声が聞こえないようにする。
「なんて女だ…」
アルビオンが言い、ユークレースがため息を吐く。
「とにかく閉じ込めておこう。聖魔塔の近くに隔離する塔がある…そこでいいだろう」
その言葉に頷き、皆が馬車と馬に乗って隔離塔に向かった。