天然公女は諦めない！〜悪役令嬢(天然)VS転生ヒロイン〜

第四幕 νήμα（ニーマ） 紡ぐ

νήμα08 ユークレースの誘い

　翌日。
ギルベルトはマリミエドをエスコートして街に出た。
まだ学院に行っても騒がれるだけだからだ。

「魔王が、女神像が欲しいと言ってね。また〝コレだ〟という品を探すのを、手伝ってくれないか？」
「いいですわよ」
マリミエドは笑顔で答えた。
エレナとアメリアも加わり、２人でまた女神像を探す。
今度は露店から見てみた。
「このお店は？」
「焼き物か…」
色々な陶芸品か置いてある。
店主の足元に、30センチ大の女神像を見つけた。
「店主、それを売ってくれ！」
そう言い買っている所に、マリミエドが小さな焼き物を手にしてやってくる。
「お兄様、これ可愛いの」
そう言うマリミエドが可愛いので、共に買ってあげた。

ギルベルトが教会に寄る間に、マリミエドが小物のショーウインドウを見ていると、前方からランチに来たユークレースが来た。
「マリミエド嬢！」
「あ…ユークレース公子、ご機嫌よう」
そう言いカーテシーをすると、ユークレースは周りを見た後でボウ＆スクレープをして言う。
「宜しければ、お食事でも…」
「あの…」
戸惑っていると、遠くから見ていたギルベルトが微笑んでアメリアに何かを言ってそっと帰っていく。
そしてアメリアがマリミエドに寄る。
「あの、ギルベルト様は用が出来て先に帰られました」
「まあ…」
「ランチは、もう？」
「あの、これからですの」
「…お手を」
「…はい」
マリミエドは赤くなりながらもその手を取った。
「何か、食べたい物はありますか？ 俺はクロック・ムッシュがいいと思ったのですが…」
緊張で敬語になってしまう。
「かじりつくのは余り…」
「ああそうか！ えっと…切って食べる物……」
ユークレースは周りのレストランを見て、マリミエドをエスコートしながら聞く。
「ラザニアはどうかな？」
「いいですわね！」
やっといつもの笑顔が見れたので、ユークレースはホッとしてレストランに入る。
食前酒が出されたので飲むと、マリミエドがためらう。
「飲んでもいいのかしら…」
「食事の前に嗜たしなむから…これは苦いから、シャンパンを頼もうか？」
「いえ、そちらを下さい」
「ああ…」
カンパリは薬膳酒のような物で心配なので、少し渡した。
「ん、ニガイ…」
「大丈夫か？」
ユークレースは水を注ぐ。
「ユークレース公子、そんなに世話を焼かれなくても一人で出来ますわ」
笑いながら言い、サラミを食べた。
そこにスープとパスタが運ばれてくる。
「マリミエド嬢は、野菜は何が好きなんだ？」
「トマトとか、ブロッコリーとか…レタスとか…？」
「嫌いな物はあるか？」
「いえ…」
「そうか…」
ユークレースは頬を赤らめながらパスタを食べる。
「…マリミエド嬢、この後、デ…デートを、して頂けないか？」
そう聞くと、マリミエドはボッと顔を真っ赤にしてラザニアを見つめた。
「…は、はい…」
その答えを聞いてユークレースはテーブルの下で小さく拳を握る。
〈良し、次は場所だ…〉
何処が好きだろうか？
何を見たら喜ぶだろうか？
こんな事を考えるのは人生で初めてで、ユークレースも緊張しながら運ばれてきたコーヒーを飲んで喋る。
「その、動物は好きだろうか？」
「ええ」
「聖魔塔が運営をスタートさせる、〝動物園〟と〝水族館〟という物があって…。〝動物園〟は、森を囲んで移動出来るようにしてあって、そこで保護した動物などを育てているんだ。〝水族館〟は、海の中を移動出来るようにパネルを繋いであって、海中の魚を見られる仕組みの物があるんだが…」
「まあ素敵！ どんな動物がいますの？」
紅茶を飲んでいたマリミエドが笑顔で言う。
「あ、アルパカとかリャマとかカピバラとか…えぇと、キリンや象やサイなどの密猟者から守った動物で…」
焦って説明をすると、マリミエドが目を輝かせる。
「どんな姿なのかしら…」
「い、行こうか！」
ユークレースはガタンと立ち上がって言う。
「はい、公子」
微笑んで言い、マリミエドは頬を赤らめながらもそっとユークレースの手を取った。