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第四幕 νήμα(ニーマ) 紡ぐ
νήμα15 友人として
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ダンスの後、エレノワールはクレメンス大公に招かれてガゼボに行った。
話をするのだろう。
ギルベルトが戻ると、アルビオンやベルンハルトに背を叩かれた。
「やったなギルベルト!」とアルビオン。
「おめでとうギルベルト!」とベルンハルト。
「式には呼んでくれよ?」
ユークレースも言い、レアノルドとクリフォードが背を叩く。
「痛い痛い、友人達、叩き過ぎだ」
「お兄様…エレナを幸せにしてあげて下さいね?」
マリミエドが涙ぐみながら言う。
「…幸せにするつもりだよ」
そう言い、皆は笑い合う。
午後には王太子殿下と王太子妃殿下に挨拶をしてからそれぞれの家に帰る。
屋敷に戻ると、マリミエドは着替えながらアメリアや他のメイドにエレナの事を説明した。
「エレナさんが…未来の侯爵夫人に!」
「ええ。だから、アメリアや他の皆の仕事が増えるかもしれないけれど、宜しくね」
「はい!」
答えてアメリアはマリミエドの髪を洗い、他の2人が体を洗う。
その間に噂が瞬く間に広まった。
翌日。
朝食を摂りながら父が言う。
「夜にアルビオン君が来るんだね?」
「ええ、昨日お話したと思いますが…駄目なら断りますので…」
「断らないよ。ギルベルトの片腕となって貰うのだからね…何を話すか考えなくてはな」
そう言い父はフフフと笑う。
何やら企んでいるように見えた。
「父上、アルビオンは真っ直ぐな男です…余り虐めないでやって下さいね?」
ギルベルトが言い、立ち上がる。
「俺はクレメンス家に行って参ります。リュミ、気を付けるんだよ」
「ええ」
頷くとギルベルトは出掛けた。
しばらくすると、執事のヴォルターがやってくる。
「ベルンハルト公子がお見えです」
「では、わたくしも行って参りますわ」
「リュミ、楽しんでいらっしゃい」
母が言う。
「はい」
マリミエドは笑顔で答えて歩いた。
マリミエドはベルンハルトのエスコートで王立歌劇団に行く。
世界樹の話は歌劇団のオリジナルでとても楽しかった。
ランチを摂りながらマリミエドが喋る。
「世界樹が恋に落ちた女性が王女様だなんて切ないですわよね、隣国の皇太子に嫁いでしまって……」
途中で、自分ばかり喋っているのに気付いてマリミエドは赤くなる。
「ごめんなさい、私ばかり話してしまって…お喋りでした?」
「いや、楽しく聞いていたよ。まるで君の姉君のようだね」
ちゃんと話を合わせてベルンハルトが言うと、マリミエドが両手を組んで言う。
「ええ、お姉様のように聡明で…。世界樹といえば、涙に弱いとご存じ?」
「涙に?」
「ええ。涙が葉に落ちてしまった事があって、そこが消えてしまったの! 謝って治したのだけれど、痛そうだったわ」
マリミエドが悲しげに言うと、ベルンハルトは感心する。
「そうなのか…知らなかった。そういえば、マリミエド嬢は世界樹の実を食べたんだよな…何か変化は?」
「それが分からなくて……子犬のお兄様が口に入れたから食べただけで、形も知りませんのよ」
「そうか…」
ベルンハルトは笑いながらソーセージを食べた。
店を出て馬車までエスコートすると、ベルンハルトが真顔で言う。
「…マリミエド嬢」
「はい?」
「俺では、幸せに出来ないと思うので…婿候補から外してくれて構わない」
突然そう言う。
「ベルンハルト公子…」
「俺は軍人だ。これから先、恐らくはギルベルトと共に魔界にも行くだろう。君の側に居てやれないと思う。…だから、どうかアルビオンかユークレースと、幸せになってくれ」
そう言ってベルンハルトはマリミエドの手の甲に口付けた。
「…公子…分かりましたわ。公子もどうか、お幸せに…」
「ああ、ありがとう。明日からは、友人として頼むよ」
「ええ!」
マリミエドは笑って答えて馬車に乗った。
ベルンハルトは微笑んでドアを閉め、馬車を見送った…。
話をするのだろう。
ギルベルトが戻ると、アルビオンやベルンハルトに背を叩かれた。
「やったなギルベルト!」とアルビオン。
「おめでとうギルベルト!」とベルンハルト。
「式には呼んでくれよ?」
ユークレースも言い、レアノルドとクリフォードが背を叩く。
「痛い痛い、友人達、叩き過ぎだ」
「お兄様…エレナを幸せにしてあげて下さいね?」
マリミエドが涙ぐみながら言う。
「…幸せにするつもりだよ」
そう言い、皆は笑い合う。
午後には王太子殿下と王太子妃殿下に挨拶をしてからそれぞれの家に帰る。
屋敷に戻ると、マリミエドは着替えながらアメリアや他のメイドにエレナの事を説明した。
「エレナさんが…未来の侯爵夫人に!」
「ええ。だから、アメリアや他の皆の仕事が増えるかもしれないけれど、宜しくね」
「はい!」
答えてアメリアはマリミエドの髪を洗い、他の2人が体を洗う。
その間に噂が瞬く間に広まった。
翌日。
朝食を摂りながら父が言う。
「夜にアルビオン君が来るんだね?」
「ええ、昨日お話したと思いますが…駄目なら断りますので…」
「断らないよ。ギルベルトの片腕となって貰うのだからね…何を話すか考えなくてはな」
そう言い父はフフフと笑う。
何やら企んでいるように見えた。
「父上、アルビオンは真っ直ぐな男です…余り虐めないでやって下さいね?」
ギルベルトが言い、立ち上がる。
「俺はクレメンス家に行って参ります。リュミ、気を付けるんだよ」
「ええ」
頷くとギルベルトは出掛けた。
しばらくすると、執事のヴォルターがやってくる。
「ベルンハルト公子がお見えです」
「では、わたくしも行って参りますわ」
「リュミ、楽しんでいらっしゃい」
母が言う。
「はい」
マリミエドは笑顔で答えて歩いた。
マリミエドはベルンハルトのエスコートで王立歌劇団に行く。
世界樹の話は歌劇団のオリジナルでとても楽しかった。
ランチを摂りながらマリミエドが喋る。
「世界樹が恋に落ちた女性が王女様だなんて切ないですわよね、隣国の皇太子に嫁いでしまって……」
途中で、自分ばかり喋っているのに気付いてマリミエドは赤くなる。
「ごめんなさい、私ばかり話してしまって…お喋りでした?」
「いや、楽しく聞いていたよ。まるで君の姉君のようだね」
ちゃんと話を合わせてベルンハルトが言うと、マリミエドが両手を組んで言う。
「ええ、お姉様のように聡明で…。世界樹といえば、涙に弱いとご存じ?」
「涙に?」
「ええ。涙が葉に落ちてしまった事があって、そこが消えてしまったの! 謝って治したのだけれど、痛そうだったわ」
マリミエドが悲しげに言うと、ベルンハルトは感心する。
「そうなのか…知らなかった。そういえば、マリミエド嬢は世界樹の実を食べたんだよな…何か変化は?」
「それが分からなくて……子犬のお兄様が口に入れたから食べただけで、形も知りませんのよ」
「そうか…」
ベルンハルトは笑いながらソーセージを食べた。
店を出て馬車までエスコートすると、ベルンハルトが真顔で言う。
「…マリミエド嬢」
「はい?」
「俺では、幸せに出来ないと思うので…婿候補から外してくれて構わない」
突然そう言う。
「ベルンハルト公子…」
「俺は軍人だ。これから先、恐らくはギルベルトと共に魔界にも行くだろう。君の側に居てやれないと思う。…だから、どうかアルビオンかユークレースと、幸せになってくれ」
そう言ってベルンハルトはマリミエドの手の甲に口付けた。
「…公子…分かりましたわ。公子もどうか、お幸せに…」
「ああ、ありがとう。明日からは、友人として頼むよ」
「ええ!」
マリミエドは笑って答えて馬車に乗った。
ベルンハルトは微笑んでドアを閉め、馬車を見送った…。
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