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第四幕 νήμα(ニーマ) 紡ぐ

νήμα20 パーティー

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 翌日。
朝食の後、婚約者が居る者は帰るので、ギルベルトとエレノワールはマリミエドにハグをする。
「リュミ………気を許しても、キスまでにするんだよ」
「お兄様⁈」
「もう、リュミも結婚する年だ……叱りはしないよ」
「……けれど…」
「リュミ…野獣を手懐ける練習をしないとね」
そう言ってギルベルトはマリミエドの頬にキスをして行く。

 パーティーは、海辺で行われる。
陸と水上にコテージがあり、そこで話をする。
クリフォードはソフィアとコテージのソファーでワインを片手に盛り上がっている。
レアノルドとベルンハルトも他の令嬢と話していた。
ユークレースとアルビオンは2人でトランプのスピードゲームをしていた。
出してあるカードに、大きい数か小さい数を出していき、自分の手持ちのカードを無くせば勝ちだ。
「…勝ったら一時間」
そう言いアルビオンがカードを出す。
「……もしも、どちらも選ばれなかったら?」
ユークレースが言い、カードを出す。
「…正妻と側室ですか?」
見ていたライアンが言う。
すると2人が睨んだ。
「…それは無いだろう」とユークレース。
「俺が正妻ならば許してもいいがな」
とアルビオンが言う。
「愛人ですね、よく舞踏会で密会して燃え上がるという。夫よりそっちがいいとご婦人方が噂してますよね」
ライアンがドキドキして笑って言う。
「ライアン、頼むから黙っててくれ…」
ユークレースが言うとアルビオンも言う。
「聞き捨てならないな…気が散るからその話は止めてくれ」
「はい、済みません。黙って見てます」
ライアンは黙って勝負の行方を見守った。


 マリミエドは一人でコテージの床に座って海に足を浸けて魚を見ていた。
そこに飲み物を持ったユークレースがやってきて隣りに座る。
「シャンパンとワインでは、とちらがいいかな?」
そう聞くとマリミエドは悩みながら微笑んで言う。
「シャンパンでお願いしますわ」
「どうぞ」
ユークレースがマリミエドにシャンパンを渡して、マリミエドの髪を撫でる。
「…っあ、の…」
「海の光が反射して綺麗だな」
「ありがとう…ございます…」
マリミエドは真っ赤になりながら小声で言い、シャンパンを飲む。
「すまない、俺はアルビオンのように上手く話せないから……不快な思いをしたら、言って欲しい」
「不快だなんて思いませんわ」
その言葉に頷き、ユークレースは海を見ながら言う。
「俺は無愛想で、人に対して不器用だから、昔から女性に嫌われていて…俺も、女性はお喋りで煩いと思っていたから、それで良かったんだが………君は違ったんだ」
そう言いユークレースはマリミエドを見て喋る。
「聡明で何でも取り組む君に感心させられて……気が付くと、惹かれていた」
そう言うと、ユークレースはマリミエドの左頬を手で撫でで顔を近付けて言う。
「君の姿が眩しいんだ」
「ユ…ユークレース公子…」
マリミエドは真っ赤になっている。
ユークレースはそんなマリミエドの右頬に顔を近付けて、耳の側に口付ける。
「…っ!」
「君が好きだよ、マリミエド嬢」
そう言い顔を離して目を見つめるユークレースも、頬を赤らめていた。
「…俺を選んでくれるなら、これを飛ばしてくれ」
そう言いユークレースはポケットから紫の〝恋文蝶〟の紙を渡す。
恋文蝶は魔力を込めた相手に届く物で、連絡用にも使われたが、主に手紙の返事が欲しい時に同封するので〝恋文〟と呼ばれた。
「あの…」
「ランチの後でいいんだ。…ゆっくり考えてくれ」
そう言い、もう一度頬にキスをしてからユークレースは微笑んで行ってしまう。
マリミエドはドキドキする胸を押さえてその後ろ姿を見送る。
〈パーティーって、こういうものなの…?〉
紙を丁寧に折ってポケットにしまい、シャンパンを持ちながら周りを見てみる。
男女がカップルで話し、男性がアピールをして〝恋文蝶〟を渡して去っていき、他の男女となる…そんなパーティーなようだ。
ソファーに座ると、今度はアルビオンが来る。
「いいかな」
「は、はいっ」
すでに緊張した声に笑いながらアルビオンが隣りに座る。
「…パーティーから帰ったら爵位を継ぐ事になったんだ」
「それは……」
おめでとうとも言い難く俯くと、アルビオンが苦笑した。
「君とギルベルトには感謝しているんだ。共に、父を改心させるべくベストを尽くしてくれた事」
「わたくしは何も…」
「君が居なかったら、あのまま我が家は取り潰しとなる未来を辿っていただろう。君が勇気を出して真実を打ち明けてくれたから、今の俺がある…だから、ありがとうマリミエド嬢」
そう言いアルビオンが頭を下げる。
「アルビオン公子…こちらこそ、信じて下さってありがとうございます」
マリミエドも頭を下げる。
すると、アルビオンの手が伸びてマリミエドの頬を軽く上げて、左耳の側にキスをする。
「…っ‼」
マリミエドは真っ赤になって耳を押さえた。
〈キスばかりして…っ〉
マリミエドは何か言おうとしてドキッとする。
アルビオンがギルベルトのような微笑みを向けてきていたからだ。
「その…っ」
「…これから先も、ずっと俺の側に居てくれないか?」
「アルビオン公子…」
「君の笑顔を守れるよう精一杯、努力する。…だから、婚約者になってくれないか?」
そう言い、アルビオンは赤い〝恋文蝶〟を渡す。
「心が決まったら、これを飛ばしてくれ」
そう言い、アルビオンは微笑んで行ってしまう…。
〈…わたくし……〉
マリミエドは胸を押さえてその後ろ姿を見送っていた。
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