人探し探偵

第一話

依頼人T

今回の依頼人は、中学生か高校生くらいの男の子。
「誰をお探しですか？」
俺は単刀直入に聞いた。
「まりさんです。」
「あなたとはどういった関係ですか？」
「えっと、赤の他人です。」
「え？」
「あの、信じてもらえないと思うんですけど。僕、触れた物の記憶が見えるんです。」
「え？」
何言ってんだ、こいつ。
「この本の記憶の中に、凄いものがあったんです。」
そういいながら、男の子は『禁断の黒魔術』という本を取り出した。
「この本は、駅の近くの古本屋に置いてあったものなんですけど、たぶん昔は違う古本屋で売られてんだと思います。」
駅前の古本屋は、俺もよく漫画を買いに行くから、よく知っている。
違う古本屋か。
この町にあるとすれば、もうつぶれたが町役場の近くにあった店かもしれない。
たしか、二階建てで一階が古本屋だったな。
あれ？あの店の店主って亡くなったよな。
たしか、死因は···
「この本は、本棚の一番上で店の全体がよく見える位置に置かれてたから、あの夜の状況もよくわかったんです。」
「あの夜？」
「はい、ここからはあくまでも僕の推測になるんですけど、あの夜っていうのは、店主が死んだ日の夜です。」
「店主が死んだ日？」
「はい。」
「たしか、店主って自殺したよな。」
「はい。警察の見解では、そうなっています。でも、この本は見ていたんです。」