囚われの狼は白兎の牙に溺れる

てんてこ米

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第二章

5 牙 ※R18

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 心臓の音がうるさいほどに高鳴る中、リュカオンはベストとシャツを脱ぎ捨てた。ひやりとした空気が肌を撫で、熱を帯びた視線が絡みついてくる。
 彼は期待に目を輝かせているエルシオンを見下ろし、虚勢を張って口の端を吊り上げた。

「この俺様が相手をしてやるんだ。ちったぁ楽しませろよ?」

 はだけた襟元を掴んで彼の体を引っ張り起こすと、リュカオンは勢いづいて唇を重ね、強引に舌をねじ込んだ。
 体だけでなく、口の中まで焼けるように熱い。驚きに強張る舌に自分の舌を押し付け、より深くまで入り込むと、エルシオンが縋るように腕を掴んでくる。
 だが、彼が大人しかったのは最初のうちだけだった。
 舌を絡めて唇を貪っていると次第に慣れてきたようで、少しずつ体から力が抜けてくる。それと同時に、縋りつく手は腰へと滑り落ち、尻尾を出すための穴に指先が引っかかった。
 腰の辺りでブチブチと縫い目が裂ける音がして、リュカオンは慌てて口を離す。

「ちょっ……何する気だよっ」

 嫌な予感がした彼は、慌ててエルシオンの腕を掴んだ。しかし、止めるのが一歩遅かった。
 ビリビリと痛ましい音と共に、尻が空気に晒される。エルシオンが力ずくでズボンと下着を破ってしまったのだ。

「あぁっ! これ高ぇやつだろ? もったいねぇ」

 文句を言うも彼の暴挙は止まらず、上等なズボンと下着は無残にも真っ二つに引き裂かれる。ほんの一瞬油断しただけで、リュカオンは脚にボロ布を引っ掛けた情けない格好にされてしまった。
 いくら獣人用のズボンは脆いからといって、まさか素手で引き裂いてしまうとは。

「まだたくさんあるから問題ない」

 荒い呼吸を繰り返しながら、エルシオンは文句を言う彼の体を強引に押し倒した。
 滑らかなシーツの感触を直に感じながら、自分に覆い被さる影を見上げたリュカオンはふと違和感を覚える。エルシオンの唇から、白く鋭い牙が覗いていることに気付いたのだ。

「お前……」

 手を伸ばして触れようとするも、指を甘噛みされてしまった。だが、ちくりと肌に刺さる感触は間違いなく牙だ。

「うさぎのくせに、なんで牙生えてんだ?」

 ところが、エルシオンはまるで話が聞こえていないようで、真下へ目を向けたまま固まってしまっている。
 様子のおかしい彼を訝しみながらも、リュカオンは恐る恐る視線を辿った。すると、ぼろ布に包まれたあられもない自分の下半身が目に映る。
 体勢が逆転して大股開きになったせいで、なけなしの布がずれて危うい所が見えそうになっているのだ。すぐに手で隠そうとしたものの、エルシオンはおもむろに彼の脚を掴み、ぐいと持ち上げた。
 腰が浮いて、リュカオンの尻が丸見えになる。
 突然のことに抵抗する暇すらなかった。あまりにも恥ずかしい体勢にさせられ、狼族のプライドはズタズタだ。
 隠すように尻尾を巻くも、エルシオンはそれすら許してくれなかった。空いた方の手で尻尾を掴み、邪魔とばかりに退かしてしまう。

「何しやがる! クソッ……放せって!」

 このまま好きにさせてたまるか。
 ジタバタと足をばたつかせ、リュカオンは必死で抵抗する。しかし、エルシオンの力はうさぎ族とは思えないほど強く、持ち上げられた脚は戻りそうにない。
 不意に尻の辺りに熱い吐息を感じ、彼は身を強張らせた。
 あろうことか、エルシオンは暴いた尻の蕾に口をつけ、たっぷりと唾液をまとった舌を捩じ込んできたのだ。
 熱いものがぬるりと中に入り込んでくる感触に、リュカオンは暴れるのも忘れて身を凍らせる。顔だけはカッと熱くなり、火が出ているのではと思うほどだ。

「や……めろよぉっ」

 情けないやら恥ずかしいやらで、涙が出そうだった。
 震える声で訴えるも、エルシオンの行為は止まるどころか一層激しさを増していく。まるで中に唾液を流し込もうとでもいうように、顔を押し付けてさらに奥へと舌を押し入れてきた。
 荒い吐息だけが響く中、羞恥心を煽るように卑猥な水音が響く。ぬるりとした舌の感触といやらしい水音に、リュカオンの体も次第に熱を持ちはじめる。
 されるがままに恥辱に耐え続けていると、どうしたことか、不意に腹の奥からじんじんと甘い痺れが湧き上がってきた。

「ふ……んぅっ」

 引き結んだ唇の隙間から甘い声が漏れ、彼は咄嗟に手で口を塞ぐ。だが、耳のいいエルシオンはそれを聞き逃さなかった。彼の舌は執拗にそこばかりを舐り、まるで硬く閉ざした蕾を舐め溶かそうとするかのようだ。
 甘い声は抑えようもなく、リュカオンはただ身を震わせてその恥辱に耐えることしかできなかった。甘い痺れはじわじわと広がり、腹の奥が疼いてくる。
 しばらくすると、エルシオンは満足したらしい。ようやく舌が引き抜かれ、押さえつけられていた体が自由になる。
 しかし、尻がシーツに着いてほっとしたのも束の間、今度は指が二本も入り込んできた。唾液で濡れたそこは指の侵入をやすやすと許し、体は再び甘やかな快楽の波に飲まれてしまう。
 もはや抵抗する力も出ず、されるがままだ。それをいいことに、エルシオンは柔らかくなった蕾を指で弄び始めた。



 探るように中を搔き回す指先がある一点に触れると、甘い声と共にびくりと腰が跳ねる。
 一体何が起きたのだろうか。困惑するリュカオンをよそに、エルシオンはその一点を執拗に攻め始めた。

「いっ……やだ、そこはっ」

 堪えきれず声が跳ねる。甘ったるいその声は自分のものとは思えなかった。抵抗しようと伸ばした手は届かず、指先を掠めることもできない。
 不意にぐずぐずに蕩けた蕾に熱い塊が押し当てられ、リュカオンは身を強張らせた。
 いよいよ彼のものが中に入ってくるのだ。とっくに覚悟は決めていたものの、それはリュカオンが想像していたよりもずっと大きかった。
 濡れそぼった蕾が目一杯押し広げられ、熱い塊が奥を目指して押し入ってくる。腹の中を圧迫され、彼は苦しさに眉をひそめた。

「うさぎのくせに……デカすぎ、だろ……」

 大きく深呼吸してなんとか腹に収めたものの、思った以上に余裕がない。リュカオンはのしかかってきた生意気な白うさぎを悔し紛れに睨んだ。
 ほんのりと赤く上気した頬は色っぽく、目が合うと非常に気まずい。甘い痺れをもたらす熱っぽい眼差しは、見つめ続けていると心まで蕩けてしまいそうだ。
 ところが、エルシオンのものはまだ全て入り切っていなかったらしい。彼は心を落ち着かせようとしていたリュカオンの尻を鷲掴みにすると、ぐいと腰を押し付けてきた。

「う、あっ……」

 内臓を押され、堪らず声が漏れる。

「リュカ、大丈夫そう?」

 今まで一言も漏らさず黙々と動いていたエルシオンが、今になってようやく声をかけてきた。あまりにも遅すぎるその言葉に、リュカオンは彼の胸を足蹴にして怒った。

「挿れた後に言うんじゃねぇ!」

 せめて前もって心の準備をする時間をくれたら、ここまで醜態を晒すこともなかったのに。
 だが、眉をひそめてじっとしているエルシオンは見るからに余裕がなさそうで、リュカオンは続く文句をぐっと呑み込んだ。
 初めての相手にあれこれと注文をつけるのも酷だと思ったのだ。とはいえ、今彼に動かれたら大惨事になる。

「いいか? 慣れるまで動くんじゃねぇぞ。『待て』くらいはできんだろ?」

 エルシオンは悲しそうにぺたんと耳を伏せ、瞳を潤ませながらも「分かった」と小さく声を漏らす。その健気な様子に愛おしさが込み上げてきて、リュカオンは両手を広げて彼を呼んだ。

「ほら、来いよ。落ち着くまでキスしててやるから」

 動かせないなりにやりようはある。リュカオンは内心、大きすぎてこれ以上は無理だと喚きたい気持ちでいっぱいだったが、先輩風を吹かして余裕の笑みを浮かべた。
 慰めの言葉を聞いたエルシオンは、感激してキラキラと目を輝かせる。
 しかし、彼の理性はこの状況にもしっかりと仕事をしていた。大喜びで飛びつくでもなく、気遣うようにゆっくりと倒れ込んでくる。余裕がないなりに、リュカオンの体を精一杯気遣おうとしているのだ。
 唇がそっと重なり、啄むようなもどかしい口づけを落とす。それでは物足りないだろうと、リュカオンは彼の逞しい背中に手を回し、腰に脚を絡めて抱きついた。

「鳥の餌じゃねぇんだ。もっとがっついてこいよ」

 醜態を晒した分、この辺りで挽回しなければと意気込んだ彼は、ニヤリと笑ってみせる。
 幸いなことに、エルシオンは初めての経験に戸惑っていて、何をするにもまだ覚束ない。先ほどはいいようにされたが、翻弄されてばかりではないと見せつけるチャンスだ。
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