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第二章
7 ケダモノ ※R18
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ひとしきり暴れ倒したリュカオンは、未だ自分にのしかかったままの憎たらしい白うさぎを見てふと疑問に思う。彼のゆっくりとした『やり方』は狼族ともうさぎ族とも違っていた。
「お前、本当にうさぎなのか?」
満足げな顔をしているエルシオンの口の中に指を突っ込み、唇をめくり上げる。すると、うさぎらしさの欠片もない鋭い牙が顔を覗かせた。
彼をうさぎたらしめているのは、ピンと天に伸びた長い耳と丸くてふわふわの尻尾だ。しかし、逆に言うと、それ以外の部分はほとんどが狼族に近い。
エルシオンはほんの少し身を引いてリュカオンの指を口から追い出すと、肉食獣らしい瞳孔がはっきり見える目を瞬かせた。
「私の父は狼だから、半分は狼の血が入っている」
今更何を言うのかと不思議そうにしている。
前にも一度、彼には父親が狼だと教えてもらったことがあった。だが、リュカオンはその言葉を『狼に育てられた』と受け取っていた。それが勘違いだと分かり、体からへなへなと力が抜けていく。
「父親が狼って、そのまんまの意味だったのか」
異種族間の子ども──俄には信じられないが、エルシオンのうさぎらしくない体格の良さや鋭い牙を見ると納得するしかなかった。
元々、獣人は動物と人間を祖先に持つ。そのため、異種族間でも子どもができないわけではないという。
だが、あくまでもそれは仮説にすぎない。リュカオンは今の今までお伽話の類いだと思っていた。
「じゃあ俺たち、しばらくこのままってことかよ……」
うさぎ族の交尾が秒で終わるのに対し、狼族は十分くらいは繋がったままになる。そのことを思い出したリュカオンは天を仰いだ。
恥ずかしくて穴があったら入りたい気分なのに、しばらくはエルシオンと顔を付き合わせることになるなんて、嘆かずにはいられない。
「私はずっとこのままでも構わない」
上機嫌な彼の言葉に、リュカオンはフンと鼻を鳴らす。
「そりゃ、お前はな! どさくさで中に出しやがって……後で覚えてろよ!」
じろりと睨みつけたものの、エルシオンは嬉しそうにニコニコしている。幸せいっぱいなその顔を見て毒気を抜かれたリュカオンは、やれやれとため息を吐いた。
甲斐甲斐しく世話を焼かれる日々に絆されつつあったが、今は腹の中までうさぎに征服された気分だ。唯一良かった点は、正直に答えないと外れないという、あの厄介な魔法の首輪が無くなったことくらいだろう。
「それで、発情期はもう治ったのか?」
話しているうちに当初の目的を思い出したリュカオンは、エルシオンの頬にそっと手で触れた。
透き通るように白い肌にはまだほんのりと赤みが差しているが、呼吸は落ち着いているようだ。触れてもらえるのが嬉しいのか、エルシオンはうっとりと目を細める。
ところが、彼の熱はまだ燻っているらしい。甘えたようにリュカオンの手のひらに頬をすり寄せ、静かに口を開いた。
「次はもっと上手くやるから、もう一回だけ付き合って」
お願い、と甘える声には有無を言わせぬ響きがあった。彼の赤い瞳は真っ直ぐにリュカオンを捉え、獲物を狙うようにぎらりと光る。
腹の中に収まったまま大人しくしていたエルシオンのものが、再び硬さを増していく。身の危険を感じたリュカオンは、両手で彼の胸を押して突っぱねた。
「ダメに決まってんだろ! いい加減にしろ!!」
エルシオンの動きは決して激しくも乱暴でもなかったのに、彼に抱かれたリュカオンは身も心もドロドロに溶けるほど感じて激しく乱れてしまった。もう一度そんな目に遭えば、彼なしでは生きられなくなってしまうかもしれない。
エルシオンは彼の抵抗に納得がいっていないらしく、ムッとして眉を顰めた。
「楽しませてほしいと言ったのはあなただ」
「そんなことっ……」
言ってないと返そうとして、リュカオンは動きを止めた。
思い返してみれば、大見得を切ってそんなことを言ってしまっていた。
口は災いの元だ。うさぎに負けてなるものかと意地を張ったのがまずかった。
「あ、あれはだな」
そう言いかけたものの、今更無かったことにするのもプライドが許さず、続く言葉に困る。
彼が怯んだと分かるや否や、エルシオンは一気に攻勢に出た。抵抗する手を物ともせず、全力で覆い被さってくる。
「次はもっと頑張るから」
どこからその自信が出てくるのか、エルシオンはやる気満々だ。言っていることは駄々を捏ねる子どもみたいなのに、やってることはちっとも可愛くない。
つい先ほど腰が抜けるほど彼に可愛がられたリュカオンとしては、むしろ手を抜いてほしいところだ。悔しいが、こうなったらもう認めるしかない。
「もう充分楽しんだ!!」
部屋に響き渡るほどの大きな声に、力づくで事に及ぼうとしていたエルシオンがぴたりと動きを止める。
間一髪で難を逃れたものの、それはリュカオンにとって敗北宣言に等しかった。
「あークソッ……初めてとは思えないくらい良かった! これで満足か!?」
恥ずかしすぎて逆ギレしながらも、素直に褒め称える。らしくないことをしたせいで、リュカオンの顔は真っ赤になっていた。
意表を突かれたエルシオンは、しばし呆然としていたものの、すぐに嬉しそうに目を輝かせた。きっと可愛らしい尻尾を千切れんばかりに振っていることだろう。
リュカオンは枕を引っ掴み、顔を覆い隠した。すると、頭上から喜びに満ちた声が降ってくる。
「それじゃあ、私の番になってくれる?」
日課になっている質問が首輪のないこのタイミングで来るとは。
枕で顔を隠しながら、リュカオンは考え込んだ。
ちょっと甘い顔をすればすぐに調子に乗るこの白うさぎのことを、リュカオンはやはり、どうしても嫌いになれなかった。
「きゅ、及第点!」
首輪のない今なら、本音を言っても誤魔化しようがある。それでも素直になれない狼は、突っぱねるでもなく、応えるでもない中間を取った。
だが、嫌だと断っていた今までよりは一歩前進だ。
「リュカ、顔を見せて?」
せがむ声と共にうさぎらしからぬ強い力で枕を引っ張られたが、リュカオンは必死に抵抗して頑なに手を離さなかった。目が合ってしまえば、心の内を見透かされてしまいそうだ。
「嫌に決まってんだろ!」
意地を張って顔を隠し続けていると、急に腹の中を占拠していた熱の塊がずるりと引き抜かれた。
てっきり抜けないようになっていると思っていたリュカオンは、思わずがばりと身を起こす。
「普通に抜けんじゃねぇか! よくも騙しやがったな!!」
怒りのままにそう叫んだ彼は、楽しげに細められた赤い目を見てハッとする。まんまとエルシオンの策略にはまってしまったのだ。
「騙したわけではない」
蕩けるように甘い声が鼓膜を揺らす。たったそれだけで、リュカオンの体は金縛りにあったかのように動けなくなる。
穏やかに目を細め、エルシオンはふっと笑った。
「まだリュカと繋がっていたかったから」
作り物めいた美しい顔がゆっくりと近付いてきて、慈しむように唇が重なる。始めは触れ合うだけだったその口づけは、次第に熱を帯び、息もできないほどに激しさを増してゆく。
太ももを撫でる熱い手のひらを感じ、リュカオンは慌てて体を引き離した。
「油断も隙もねぇやつだな! ヤらねぇって言っただろ」
グラグラと揺れる気持ちを奮い立たせ、持っていた枕をエルシオンに投げつける。危うく彼のペースに呑まれて体を許してしまうところだった。
リュカオンはぬるくなったシーツに横たわり、今日はもう何もするものかとエルシオンに背を向けた。突き刺さるような視線を感じるも、気付かないふりをする。
しかし、憎たらしい白うさぎは諦めが悪かった。すぐに追いかけてきた彼は、リュカオンの首元に顔を埋め、優しく甘噛みしてきた。
「本当に駄目なのか?」
問いかける声はどこまでも甘く、理性が揺らぎそうになる。
無視を続けるのも限界だった。熱を持ったエルシオンの手が脇腹をなぞるように這い、腰に絡みついてくる。
後ろから抱きしめられたリュカオンは、逃げ場を無くした熱を背中に感じて小さく息を呑んだ。熱っぽい吐息が汗ばんだ肌を撫で、理性を溶かす甘い林檎の香りが鼻腔を掠める。たったそれだけで、頑なだった体から力が抜けてしまいそうだ。
ふと、リュカオンは再び首に違和感を覚えた。恐る恐る指先で触れてみると、あの忌々しい首輪が再び首に巻きついているではないか。
「あぁっ! せっかく取れたのに!」
何を言っても本心がバレてしまう嫌な魔法だ。やっと解放されたばかりなのに、振り出しに戻ってしまった。
「リュカ、質問に答えて」
愕然とするリュカオンの耳元で、エルシオンは蠱惑的に囁いた。嬉しさの滲む声は、まるで答えが分かっているとでも言いたげだ。
「い、嫌だって言っただろっ」
「本当に嫌なのか? 尻尾が上がってるのに?」
その言葉と共に、尻尾で隠れているはずの尻の割れ目に熱い昂りがゆっくりと擦り付けられる。ぬるついた先端が焦らすように蕾を撫で、彼に抱かれていた時のことを嫌でも思い起こさせる。
堪えきれず吐息が漏れ、リュカオンはもじもじと太ももを擦り合わせた。どうにか抑えようと深呼吸するも、エルシオンの体から立ち込める林檎の香りに思考が甘く塗り潰されていく。
体の内側から熱が噴き出し、欲を孕んだ甘ったるい香りに眩暈がする。まるで、エルシオンの熱が移ったかのようだった。
シーツをぎゅっと掴んで身を震わせていると、沈黙を肯定と取ったのか、熱い塊が割れ目を押し広げて入ってくる。奥を目指す熱の塊に、リュカオンは堪らず甘い声を漏らした。
「あっ……や、だっ」
体を撫でる手のひらが、不意に硬くなったリュカオンのものを包み込んだ。滑らかな指先は蔦のように絡みつき、なけなしの理性が蕩けていく。
「心配しないで。さっきよりもずっと良くするから」
ほんの少し前まで童貞だったくせに、随分な余裕だ。
内心呆れつつも、自身の昂りを撫でる手のひらは妙に説得力があり、リュカオンは期待せずにはいられなかった。
「お前、本当にうさぎなのか?」
満足げな顔をしているエルシオンの口の中に指を突っ込み、唇をめくり上げる。すると、うさぎらしさの欠片もない鋭い牙が顔を覗かせた。
彼をうさぎたらしめているのは、ピンと天に伸びた長い耳と丸くてふわふわの尻尾だ。しかし、逆に言うと、それ以外の部分はほとんどが狼族に近い。
エルシオンはほんの少し身を引いてリュカオンの指を口から追い出すと、肉食獣らしい瞳孔がはっきり見える目を瞬かせた。
「私の父は狼だから、半分は狼の血が入っている」
今更何を言うのかと不思議そうにしている。
前にも一度、彼には父親が狼だと教えてもらったことがあった。だが、リュカオンはその言葉を『狼に育てられた』と受け取っていた。それが勘違いだと分かり、体からへなへなと力が抜けていく。
「父親が狼って、そのまんまの意味だったのか」
異種族間の子ども──俄には信じられないが、エルシオンのうさぎらしくない体格の良さや鋭い牙を見ると納得するしかなかった。
元々、獣人は動物と人間を祖先に持つ。そのため、異種族間でも子どもができないわけではないという。
だが、あくまでもそれは仮説にすぎない。リュカオンは今の今までお伽話の類いだと思っていた。
「じゃあ俺たち、しばらくこのままってことかよ……」
うさぎ族の交尾が秒で終わるのに対し、狼族は十分くらいは繋がったままになる。そのことを思い出したリュカオンは天を仰いだ。
恥ずかしくて穴があったら入りたい気分なのに、しばらくはエルシオンと顔を付き合わせることになるなんて、嘆かずにはいられない。
「私はずっとこのままでも構わない」
上機嫌な彼の言葉に、リュカオンはフンと鼻を鳴らす。
「そりゃ、お前はな! どさくさで中に出しやがって……後で覚えてろよ!」
じろりと睨みつけたものの、エルシオンは嬉しそうにニコニコしている。幸せいっぱいなその顔を見て毒気を抜かれたリュカオンは、やれやれとため息を吐いた。
甲斐甲斐しく世話を焼かれる日々に絆されつつあったが、今は腹の中までうさぎに征服された気分だ。唯一良かった点は、正直に答えないと外れないという、あの厄介な魔法の首輪が無くなったことくらいだろう。
「それで、発情期はもう治ったのか?」
話しているうちに当初の目的を思い出したリュカオンは、エルシオンの頬にそっと手で触れた。
透き通るように白い肌にはまだほんのりと赤みが差しているが、呼吸は落ち着いているようだ。触れてもらえるのが嬉しいのか、エルシオンはうっとりと目を細める。
ところが、彼の熱はまだ燻っているらしい。甘えたようにリュカオンの手のひらに頬をすり寄せ、静かに口を開いた。
「次はもっと上手くやるから、もう一回だけ付き合って」
お願い、と甘える声には有無を言わせぬ響きがあった。彼の赤い瞳は真っ直ぐにリュカオンを捉え、獲物を狙うようにぎらりと光る。
腹の中に収まったまま大人しくしていたエルシオンのものが、再び硬さを増していく。身の危険を感じたリュカオンは、両手で彼の胸を押して突っぱねた。
「ダメに決まってんだろ! いい加減にしろ!!」
エルシオンの動きは決して激しくも乱暴でもなかったのに、彼に抱かれたリュカオンは身も心もドロドロに溶けるほど感じて激しく乱れてしまった。もう一度そんな目に遭えば、彼なしでは生きられなくなってしまうかもしれない。
エルシオンは彼の抵抗に納得がいっていないらしく、ムッとして眉を顰めた。
「楽しませてほしいと言ったのはあなただ」
「そんなことっ……」
言ってないと返そうとして、リュカオンは動きを止めた。
思い返してみれば、大見得を切ってそんなことを言ってしまっていた。
口は災いの元だ。うさぎに負けてなるものかと意地を張ったのがまずかった。
「あ、あれはだな」
そう言いかけたものの、今更無かったことにするのもプライドが許さず、続く言葉に困る。
彼が怯んだと分かるや否や、エルシオンは一気に攻勢に出た。抵抗する手を物ともせず、全力で覆い被さってくる。
「次はもっと頑張るから」
どこからその自信が出てくるのか、エルシオンはやる気満々だ。言っていることは駄々を捏ねる子どもみたいなのに、やってることはちっとも可愛くない。
つい先ほど腰が抜けるほど彼に可愛がられたリュカオンとしては、むしろ手を抜いてほしいところだ。悔しいが、こうなったらもう認めるしかない。
「もう充分楽しんだ!!」
部屋に響き渡るほどの大きな声に、力づくで事に及ぼうとしていたエルシオンがぴたりと動きを止める。
間一髪で難を逃れたものの、それはリュカオンにとって敗北宣言に等しかった。
「あークソッ……初めてとは思えないくらい良かった! これで満足か!?」
恥ずかしすぎて逆ギレしながらも、素直に褒め称える。らしくないことをしたせいで、リュカオンの顔は真っ赤になっていた。
意表を突かれたエルシオンは、しばし呆然としていたものの、すぐに嬉しそうに目を輝かせた。きっと可愛らしい尻尾を千切れんばかりに振っていることだろう。
リュカオンは枕を引っ掴み、顔を覆い隠した。すると、頭上から喜びに満ちた声が降ってくる。
「それじゃあ、私の番になってくれる?」
日課になっている質問が首輪のないこのタイミングで来るとは。
枕で顔を隠しながら、リュカオンは考え込んだ。
ちょっと甘い顔をすればすぐに調子に乗るこの白うさぎのことを、リュカオンはやはり、どうしても嫌いになれなかった。
「きゅ、及第点!」
首輪のない今なら、本音を言っても誤魔化しようがある。それでも素直になれない狼は、突っぱねるでもなく、応えるでもない中間を取った。
だが、嫌だと断っていた今までよりは一歩前進だ。
「リュカ、顔を見せて?」
せがむ声と共にうさぎらしからぬ強い力で枕を引っ張られたが、リュカオンは必死に抵抗して頑なに手を離さなかった。目が合ってしまえば、心の内を見透かされてしまいそうだ。
「嫌に決まってんだろ!」
意地を張って顔を隠し続けていると、急に腹の中を占拠していた熱の塊がずるりと引き抜かれた。
てっきり抜けないようになっていると思っていたリュカオンは、思わずがばりと身を起こす。
「普通に抜けんじゃねぇか! よくも騙しやがったな!!」
怒りのままにそう叫んだ彼は、楽しげに細められた赤い目を見てハッとする。まんまとエルシオンの策略にはまってしまったのだ。
「騙したわけではない」
蕩けるように甘い声が鼓膜を揺らす。たったそれだけで、リュカオンの体は金縛りにあったかのように動けなくなる。
穏やかに目を細め、エルシオンはふっと笑った。
「まだリュカと繋がっていたかったから」
作り物めいた美しい顔がゆっくりと近付いてきて、慈しむように唇が重なる。始めは触れ合うだけだったその口づけは、次第に熱を帯び、息もできないほどに激しさを増してゆく。
太ももを撫でる熱い手のひらを感じ、リュカオンは慌てて体を引き離した。
「油断も隙もねぇやつだな! ヤらねぇって言っただろ」
グラグラと揺れる気持ちを奮い立たせ、持っていた枕をエルシオンに投げつける。危うく彼のペースに呑まれて体を許してしまうところだった。
リュカオンはぬるくなったシーツに横たわり、今日はもう何もするものかとエルシオンに背を向けた。突き刺さるような視線を感じるも、気付かないふりをする。
しかし、憎たらしい白うさぎは諦めが悪かった。すぐに追いかけてきた彼は、リュカオンの首元に顔を埋め、優しく甘噛みしてきた。
「本当に駄目なのか?」
問いかける声はどこまでも甘く、理性が揺らぎそうになる。
無視を続けるのも限界だった。熱を持ったエルシオンの手が脇腹をなぞるように這い、腰に絡みついてくる。
後ろから抱きしめられたリュカオンは、逃げ場を無くした熱を背中に感じて小さく息を呑んだ。熱っぽい吐息が汗ばんだ肌を撫で、理性を溶かす甘い林檎の香りが鼻腔を掠める。たったそれだけで、頑なだった体から力が抜けてしまいそうだ。
ふと、リュカオンは再び首に違和感を覚えた。恐る恐る指先で触れてみると、あの忌々しい首輪が再び首に巻きついているではないか。
「あぁっ! せっかく取れたのに!」
何を言っても本心がバレてしまう嫌な魔法だ。やっと解放されたばかりなのに、振り出しに戻ってしまった。
「リュカ、質問に答えて」
愕然とするリュカオンの耳元で、エルシオンは蠱惑的に囁いた。嬉しさの滲む声は、まるで答えが分かっているとでも言いたげだ。
「い、嫌だって言っただろっ」
「本当に嫌なのか? 尻尾が上がってるのに?」
その言葉と共に、尻尾で隠れているはずの尻の割れ目に熱い昂りがゆっくりと擦り付けられる。ぬるついた先端が焦らすように蕾を撫で、彼に抱かれていた時のことを嫌でも思い起こさせる。
堪えきれず吐息が漏れ、リュカオンはもじもじと太ももを擦り合わせた。どうにか抑えようと深呼吸するも、エルシオンの体から立ち込める林檎の香りに思考が甘く塗り潰されていく。
体の内側から熱が噴き出し、欲を孕んだ甘ったるい香りに眩暈がする。まるで、エルシオンの熱が移ったかのようだった。
シーツをぎゅっと掴んで身を震わせていると、沈黙を肯定と取ったのか、熱い塊が割れ目を押し広げて入ってくる。奥を目指す熱の塊に、リュカオンは堪らず甘い声を漏らした。
「あっ……や、だっ」
体を撫でる手のひらが、不意に硬くなったリュカオンのものを包み込んだ。滑らかな指先は蔦のように絡みつき、なけなしの理性が蕩けていく。
「心配しないで。さっきよりもずっと良くするから」
ほんの少し前まで童貞だったくせに、随分な余裕だ。
内心呆れつつも、自身の昂りを撫でる手のひらは妙に説得力があり、リュカオンは期待せずにはいられなかった。
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