たとえば禁忌からはじまる小さな英雄譚

おくり提灯LED

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第一部・二章

壊された街、自分達にやれること

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 <門>が現場の街の中心部へと繋がった。
 騎士達は各々が現場へと踏み出してゆく。だが、最後尾にいたアレクセイはその場についた途端に、その光景を前に立ち尽くし、唖然とした。
 龍が舞い降りてから、わずか数分だ。
 すでに王弟殿下自慢のかつての美しい街の姿は、そこにはなかった。
 ここから離れた位置にある城はまだ無事だが、ここはもう街ではなく瓦礫だった。

 龍がはばたく。
 ただ、それだけで、その風圧によって街はただの瓦礫の山と化していた。

「まるで陽光を浴びて流れる水のような――そんな言葉で形容されていた街が……」

 若い騎士のティモフェイがつぶやく。

「これが龍の力ってやつか……」

 騎士達の後に<門>から出てきたイゴールも、この巨大な破壊の跡に驚いていた。続く冒険者達もまた同様だった。

「全員整列ッ!」

 ライヤの隣に立つ副団長エヴゲーニーの号令がかかり、アレクセイもハッとして整列する。今彼らが立っている足元も建物の破片に埋まっている状態だ。

「人命を最優先に救助活動を開始する。これまでの統計では街を破壊した後に、龍が再びやってきたという例はほとんどない。だが、もし再飛来があった場合は、すぐに避難しろ」
「イエスマムッ!!」

 ライヤの指示に応える騎士達。
 だが、龍がまたやってきたら、一体どこに避難すればいいというのだろうか――?

 その疑問には誰も答えを出さない。小型<門>がすぐに出せれば、逃げることはできるかもしれない。だが、小型<門>は場所指定はできず王城直通だ。龍が<門>をくぐれる大きさではないとはいえ、龍が放つ衝撃を王城へと送りかねない。

『団長のライヤ殿はいらっしゃるか?』

 不意に聞き覚えのない声が全員の<遠い耳>へと届いた。動き出した騎士達の数名がライヤへ振り返ったが、彼女は手で自分の仕事をしろと指示を出し、

「こちら白鉄騎士団団長ライヤ。そちらは?」

 そう返事をすると、会話は二人だけのものとなった。

『この地を任せられているレオニードだ。早速駆けつけてくれて礼を言う』
「これは閣下、ご無事でなによりです」

 ライヤはまだ無事な城の方へ振り返り、短く一礼をした。

『住民の避難について報告があるのだが……』

 レオニードから軽く説明を受けて、ライヤは感心した。

 この街の対応は早かった。
 龍が目撃された時から、レオニードの命令で龍の飛来の際の避難方法は街中にアナウンスしていたのだ。
 龍が急降下してそのままこの街にやってきたのであれば、避難などまったく意味もなく多くの命が失われていただろう。だが、その存在が近くで確認された後、龍はこの街の上空を何度も旋回していた。
 その時すぐに民衆の避難活動は始まった。
 避難先は城だ。
 間に合った者達は、身分に関係なくすでに城内へ逃れていた。

「全員聞け。王弟殿下がやってくれたぞ。住民のほとんどは城にすでに避難済みだ」

 ライヤから報告で歓声が上がった。騎士達の顔色も少しよくなる。到着した時に見た光景の印象よりも、人的被害は少ない、それだけでも救いがある。
 だが、だからと言って死者がいないということでもない。

「誰か! 誰かいませんかッ!?」

 騎士達は瓦礫と化した家に向かい、生存者を探そうと声を張る。

「痛みで動けない人は声をあげてください! お願いします!」

 そうやって声を張り上げている騎士と共に進む冒険者が、一メートル程度の甲殻類を駆除して回っていた。シロイロリュウガニだ。

「旨いらしいですよ、このカニ」
「ほぉ。なら殺せるだけ殺して、帰ったら全員で喰らうとするか」

 イゴールは仲間と共に剣を振るう。軽口は単なる強がりだ。
 この壊れてしまった風景は、やはり心に痛手を負わせてくる。
 それでも正確にリュウガニを殺して回る。相手は決して弱い生物ではない。硬い甲羅を避けて、間接や足の付け根を狙って剣を突き刺す。他の冒険者達も思い思いの方法で駆除してゆく。
 だが、足場が悪く、戦いづらい中、リュウガニの数はあまりにも多く、かなり手間取ることになりそうだ。

 そんな中を、地道に、だが手際よく救助活動をする騎士達に、イゴールは改めてたいしたものだと感心していた。
 この絶望的な破壊の跡の中で、誰一人として心を飲まれてしまっていない。

 一方、アレクセイはライヤの命令でサーシャと共にいた。
 もうすぐサーシャと<結ぶ>仲間、災害救助に適した者達が現場へと出てくる。
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