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第一章 出会い編
プロローグ 告白の月曜日
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春。それは出会いの季節。
「い、一年の頃から好きでした!つ、つつ、つ、付き合ってください!」
まだ桜が息吹く校舎裏。そこで一人の男子高校生が、目の前の女子高生に愛の告白をしていた。
「えっと、根東、司…くんですよね」
「あ、名前覚えててくれたんですか!」
「うん。だって同じクラスでしたし」
確かに一年生、そして二年生へと進級した現在、二年にわたって彼と彼女は同じクラスだったが、会話らしい会話はほとんどしたことがなかった。
顔は知っているけど、詳しいことは知らない。この綺麗な黒髪をした女子高生からすれば、そんなよく知らない相手から告白されたところで普通なら即決でイエスと返事などできるわけがないだろう。
冷静に考えれば、ノーと言われて当然の出来事。しかし一時の感情と勢いに身を任せてその男子生徒、根東司は壬生来沙羅に玉砕覚悟で告白した。
玉砕するつもりなら最初から告白なんてするなよ、絶対迷惑じゃん、という感情が一瞬脳裏によぎったが、もう告白してしまったものはしょうがない。とにかく相手の言葉を待つことにした。
「うーん、どうしよかっなあ」
…?迷ってる?もしかしてイケるのか?
そんな淡い希望を抱きつつ彼女を見る。
本当に美人だと思う。
身長こそ平均的だが、それ以外は群を抜いて美少女と呼べる容姿をしている壬生さん。
腰まで届きそうな長い黒髪に、白く透き通るような透明感のある肌。強さを感じさせる凛とした眼差し。しなやかでクビレのある腰に、制服を盛り上げる大きい胸。そんな女性らしさをこれでもかって感じさせる体つきに目を見張る男子も多くいることだろう。
その清楚そうな見た目に相応しく、壬生来沙羅という女子生徒は成績も優秀で、校内で一、二を争うほどの学力を修めている。
彼女の優秀さは学力以外にも発揮されている。壬生さんは部活はテニスをしているそうで、その実力はかなり高いらしく、大会に出れば上位の成績を残すほどの活躍をしているとか。
正直な話、高嶺の花だ。自分とは月とすっぽん。勉強もスポーツもそれほど得意でない男子生徒からすれば、まさに住む世界が違う相手。そんな自分よりもランクが明らかに高い、上位クラスの相手に告白をするというのだから、まさに無謀といって差支えないだろう。
よほど厄介な性癖でも持っていない限り、十人が十人、彼女のことを好きになるだろう容姿をしたこの美少女は、告白してきた男子の方をじっと見つめながら、考え込む。
嫌なら嫌と早く言ってくれればいいのに。一体なにを悩んでいるのだろう?そればかりは彼女でないとわからないことだった。
「うーん…いいですよ」
「…え?」
「だから、いいですよ、って言ったの」
「えっと、それは結構ですという意味のいいですか?」
「イエスという意味ですけど?」
イエス、イエス、それは肯定を意味する単語。つまりこの場合では、告白はOKだった、という認識で良いのか?え、マジで?本当に付き合えるの?普通に無理だと思っていたんですけど!
「ほ、本当に!付き合ってもらえるんですか!」
「ええ、いいですよ。今日からお付き合いしましょう、根東くん」
――ただし、と彼女は付け加えた。「条件がありますわ」
「条件、ですか?」
あ、やっぱそう簡単には行かないか。
「ええ、といってもそんなに難しいことではありませんよ。私、嘘をつかれたり、詮索されたり、疑われたり、そういうのって苦手なんです。わかります?」
「それは、僕も苦手ですね」
それはそうだろ。誰だってあれこれ詮索されるなんて嫌だ。嘘をつかれたり疑われて喜ぶ奴なんて普通はいない。いるとしたら特殊な人間だ。
「私、人のことを疑う人って苦手なの。私がどんなことをしても疑わず、信じてくれるなら、付き合いましょ」
なんだ、そんなことか。
「うん、いいよ。僕、壬生さんのこと、絶対疑わない。信じるよ!」
「本当に?ふふ、嬉しいな」
――じゃあ、今日からお付き合い、始めましょうね、根東くん。
彼女のその一片の曇りもない柔和な笑顔はその時、僕にはとても眩しく思えた。こんな素敵な女性が、疑われるようなことなんてするわけがない、そう信じていた。
「い、一年の頃から好きでした!つ、つつ、つ、付き合ってください!」
まだ桜が息吹く校舎裏。そこで一人の男子高校生が、目の前の女子高生に愛の告白をしていた。
「えっと、根東、司…くんですよね」
「あ、名前覚えててくれたんですか!」
「うん。だって同じクラスでしたし」
確かに一年生、そして二年生へと進級した現在、二年にわたって彼と彼女は同じクラスだったが、会話らしい会話はほとんどしたことがなかった。
顔は知っているけど、詳しいことは知らない。この綺麗な黒髪をした女子高生からすれば、そんなよく知らない相手から告白されたところで普通なら即決でイエスと返事などできるわけがないだろう。
冷静に考えれば、ノーと言われて当然の出来事。しかし一時の感情と勢いに身を任せてその男子生徒、根東司は壬生来沙羅に玉砕覚悟で告白した。
玉砕するつもりなら最初から告白なんてするなよ、絶対迷惑じゃん、という感情が一瞬脳裏によぎったが、もう告白してしまったものはしょうがない。とにかく相手の言葉を待つことにした。
「うーん、どうしよかっなあ」
…?迷ってる?もしかしてイケるのか?
そんな淡い希望を抱きつつ彼女を見る。
本当に美人だと思う。
身長こそ平均的だが、それ以外は群を抜いて美少女と呼べる容姿をしている壬生さん。
腰まで届きそうな長い黒髪に、白く透き通るような透明感のある肌。強さを感じさせる凛とした眼差し。しなやかでクビレのある腰に、制服を盛り上げる大きい胸。そんな女性らしさをこれでもかって感じさせる体つきに目を見張る男子も多くいることだろう。
その清楚そうな見た目に相応しく、壬生来沙羅という女子生徒は成績も優秀で、校内で一、二を争うほどの学力を修めている。
彼女の優秀さは学力以外にも発揮されている。壬生さんは部活はテニスをしているそうで、その実力はかなり高いらしく、大会に出れば上位の成績を残すほどの活躍をしているとか。
正直な話、高嶺の花だ。自分とは月とすっぽん。勉強もスポーツもそれほど得意でない男子生徒からすれば、まさに住む世界が違う相手。そんな自分よりもランクが明らかに高い、上位クラスの相手に告白をするというのだから、まさに無謀といって差支えないだろう。
よほど厄介な性癖でも持っていない限り、十人が十人、彼女のことを好きになるだろう容姿をしたこの美少女は、告白してきた男子の方をじっと見つめながら、考え込む。
嫌なら嫌と早く言ってくれればいいのに。一体なにを悩んでいるのだろう?そればかりは彼女でないとわからないことだった。
「うーん…いいですよ」
「…え?」
「だから、いいですよ、って言ったの」
「えっと、それは結構ですという意味のいいですか?」
「イエスという意味ですけど?」
イエス、イエス、それは肯定を意味する単語。つまりこの場合では、告白はOKだった、という認識で良いのか?え、マジで?本当に付き合えるの?普通に無理だと思っていたんですけど!
「ほ、本当に!付き合ってもらえるんですか!」
「ええ、いいですよ。今日からお付き合いしましょう、根東くん」
――ただし、と彼女は付け加えた。「条件がありますわ」
「条件、ですか?」
あ、やっぱそう簡単には行かないか。
「ええ、といってもそんなに難しいことではありませんよ。私、嘘をつかれたり、詮索されたり、疑われたり、そういうのって苦手なんです。わかります?」
「それは、僕も苦手ですね」
それはそうだろ。誰だってあれこれ詮索されるなんて嫌だ。嘘をつかれたり疑われて喜ぶ奴なんて普通はいない。いるとしたら特殊な人間だ。
「私、人のことを疑う人って苦手なの。私がどんなことをしても疑わず、信じてくれるなら、付き合いましょ」
なんだ、そんなことか。
「うん、いいよ。僕、壬生さんのこと、絶対疑わない。信じるよ!」
「本当に?ふふ、嬉しいな」
――じゃあ、今日からお付き合い、始めましょうね、根東くん。
彼女のその一片の曇りもない柔和な笑顔はその時、僕にはとても眩しく思えた。こんな素敵な女性が、疑われるようなことなんてするわけがない、そう信じていた。
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