絶対に寝取られない僕の彼女・壬生さん 【R18版】

カワサキ萌

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第五章 享楽編

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 四条彩夢さんの突然の脅迫なのか誘惑なのかよくわからない提案に僕は息を呑み、そして僕はあらためて彼女を見る。

 そろそろ夕日が沈み始める時間帯。それでも街中に人は多く、僕らの周りには休日を謳歌する通行人で溢れている。

 そんな人混みの多い街中には可愛い女性も多くいるのだが、そんな周りの人と比べても四条彩夢という女の子は十分に可愛い女の子に見えた。

 彼女は壬生さんみたいにキラキラしていないと言っていたが、見た目に関していえば十分にキラキラしている美少女の一人である。

 もっともその真面目な性格と、生徒会長というポジションのせいで、あまり男性からチヤホヤされる経験が無さそうだな、とは思う。そういった周囲の環境もまた彼女があまり遊べない原因なのでは、という気がした。

 僕がなにも言わないと、不安になったのか、落ち着かない様子でソワソワし始める四条さん。

「えっと、あの、その、だ、ダメですか?」

 自分がとんでもないことを言ったことをようやく理解したのか、急に頬を赤く染め、きょろきょろと視線を忙しなく動かし始める四条さん。そんなあたふたと困惑している彼女の様子を見て、ちょっとだけ可愛いなと思った。

 僕は考える。

「四条さん」

「は、はい!」

 僕に名前を呼ばれた途端、ビクっと震え、背筋をピンと伸ばして僕の方を見る。やっぱりこの娘、根は真面目なんだろうな。さっきの提案も、ちょっと火遊びがしたい程度のものなのかもしれない。

「男遊びって言われても僕、そんなに経験が豊富ではないけど、それでもいいの?」

「え、それは大丈夫です。だって私も経験ないし」

「いや、僕も経験は無いんだけど」

「え?」

「え?」

 この娘は僕を一体なんだと思っているのだろう?

「え、だって来沙羅ちゃんの彼氏さんなんですよね?だったら経験人数も三桁超えるぐらいの遊び人じゃないんですか?」

 ちげーし。なにそれ?君は僕をヤリチンかなにかと勘違いしてませんか?

「いやいや、それは誤解だから。そもそも経験人数すら0ですよ、僕は」

「え、そうなんですか!だってあの来沙羅ちゃんの彼氏なんですよね!それなのに経験無いんですか!0なんですか!」

 あの、あんまり大きな声で経験0をアピールしないで欲しいんですけど。別に僕、童貞であることを恥じてはいませんよ。恥じてはいないけどさ、童貞であることを誇りに思ってるわけでもないからね!どちらかといえばこんなもん、さっさと捨てた方が良いと思ってるぐらいだよ!

「あのですね、確かに壬生さんは暇さえあれば遊びまくるような遊び人かもしれないいですよ。でも別にエッチの経験が豊富とか、そういうわけではないですよ」

 と僕は信じている。そうであって欲しいと思っている。

 …そりゃそーよ。だって、壬生さんは本当は他の男に抱かれまくっている可能性がありますよ、なんてこんな真面目そうな女の子に言えやしないよ。

 確かに寝取られプレイのことを考えれば、もしかしたら壬生さんってめちゃくちゃド淫乱ですごいスケベな娘なのでは?って疑惑はある。でも所詮、疑惑は疑惑だから!

 僕は信じてるから!確かによく他の男と遊ぶし、下着姿だろうと堂々と他の男に見せるし、そうやって僕の脳を徹底的に破壊しにくる娘だけども!

 それでも僕はまだやってないって信じてるから!

「そ、そうなんだあ。来沙羅ちゃんは次々と彼氏を変えてるから、私てっきり、来沙羅ちゃんはもう…あの、うん、やだもう、言わせないでください!」

 誰も言えとは命令してないでしょ。

「あ、でもエレベーターではすごい激しいキスしてたじゃないですか」

「キスぐらいはするでしょ、恋人同士なんだから」

「そ、そうですよね。キスぐらいならしますよね」

 ——はは、私なに言ってるんんだろう、キスぐらいならするよね、と乾いた笑いをする四条さん。

「私はしたことないけど…」

 ん?今なにか言ったか?小声すぎて聞こえなかった。

 それにしても、この娘は本当に真面目で初心な娘なんだろうなあ。とても恋人以外の女性とキスしてますとか、そんな彼女たちの寝取られ報告を待ってるだなんて言えないよ。

「そうだよね、いくら来沙羅ちゃんだって、エッチまでしないよね。ふぅ、よかった」

 とりあえず彼女の中でなにか納得のいく結論に到達したようだ。

「じゃあ、そろそろ遅いし、帰ろうか?」

「あ、はい……あの、連絡先、交換しませんか?」

「え?」

「遊ぶだけなら良いって言ってくれましたよね?」

 いや、まあ確かにそんなこと言った気がしたけど。

 いいのかな?それって浮気にならないのかなあ。うーん…

 …っていうか他の女の子と遊んでる時点で世間では浮気じゃないのかな?

 僕は今、衝撃の事実に気が付いた。

 そうだよ。世間ではこれ、完全に浮気じゃん。やっべえ、最近寝取られプレイばっかりしているせいで、女の子と遊ぶ程度のことじゃ浮気になるわけねえ、って思ってたけど、これ冷静に考えたら普通に浮気だったわ。

 ははは、まいったね。うーん、どうしよう。よし、隠し通そう。

「うん、いいよ、その代わり、今日のことはみんなに内緒だよ!」

「そうですね。でも根東くんが私のこと構ってくれなくなったら、バラしちゃうかもしれないですね」

 ええ、生徒会長が脅迫していいんですか?いや、生徒会長に限らず、誰だろうと脅迫はダメでしょ。

「冗談ですよ。でも今日はとても楽しかったです。根東くんは私の周りにいる男の子とはぜんぜんタイプが違うから、なんだか新鮮で、その、また遊びたいです」

「へえ、そうなんだ」

 ああ、まったく男っ気がないってわけではないのか。

「一緒に遊んでくれそうな男の人は周りにあんまりいないの?」

「うーん、どうだろう。野球部の幼馴染がいるけど、いつも私の悪口ばっかり言ってきて、一緒にいてすごく嫌なんです」

「え、そうなの?それはひどいね」

 おいおい、こんな可愛い女の子の悪口を言うやつがこの世界にいるのか?本気かよ。

「そうなんです。私のこと、お前みたいな真面目でつまらない奴と一緒にいてくれる男なんて俺ぐらいだとか、生徒会のつまんない仕事してる暇があるなら俺の練習でも見ろよとか、なんかひどくて」

「そっか。それは確かにひどいね」

 うん、確かにひどいといえばひどい悪口なのだが、うーんなぜだろう?今のセリフを聞いてなぜかアニメに出てくるツンデレキャラを脳裏に描いてしまった。

 いや、ないよね。そもそもツンデレキャラは美少女だって相場が決まってるし、野球部の男子がツンデレなわけないか。うん、そうだよ、今のは本当にただの悪口だよね。

「でも根東くんは違いますね。ずっと私の良いところを見つけてくれるし、すごく優しいし、来沙羅ちゃんが根東くんのことを好きになる理由、わかる気がします」

 …とても言えないよね。壬生さんが僕のことを好きになっている理由の一つとして、寝取られ性癖があるだなんて。

「やっぱり羨ましいなあ」

 四条さんはぽつりと小さく呟く。

「根東くん、また遊んでくださいね」

「うん、いいよ」

 やがて駅に到着し、四条さんを僕は見送った。その去り際に連絡先を交換した。

 四条さんとは別のホームにおり、僕は電車に乗る。その時、スマホに着信があった。見れば、宗像さんからだった。

『根東くん、選んでくれてありがとう。明日、放課後は空いてる?』

『空いてます!』

『なら、放課後にデートしましょう。根東くんが喜ぶ話、いっぱいしてあげるね』

 ドクン、心臓が高鳴った。

 きた、ついに来た。一体この瞬間をどれほど待ち望んでいたか。

 …いや、待っちゃいないけどね。待ってはないよ、でもさ。すごい興奮するだよね!

 宗像杏さん。女子テニス部で、壬生さんの友達。そして…

 優しく、柔和な顔立ちをしている、まるで年上のお姉さんのような包容力を感じさせる女性で、メロンみたいな巨乳と、桃のようなお尻をしている素敵な女性。

 壬生さんと違って宗像さんは僕の彼女ではない。しかし、今の僕にとって大事な友達の一人でもある。

 そんな彼女が温泉旅行で、一体どんな目に遭ったのか?気になる。気になって気になってしょうがない。

 …いや、遭ってないかもしれないじゃん。もしかしたら本当にただ、温泉を楽しんできただけかもしれないでしょ。

 むしろその可能性の方が高くない?エロ漫画じゃないんだからさ。

 …そもそも、僕は一体なにを期待しているのだろう?

 いや、もう誤魔化すのは止めよう。

 はっきり言って、期待している。彼女が僕以外の男性に抱かれ、寝取られている姿を。

 恋人ではない。でも、僕は宗像さんが他の男に抱かれることに対して、どうしようもないほどの苦しみを感じている。

 恋人ではないなら、誰とエッチしようと宗像さんの自由だ。なのに、なぜこんなにも心が苦しいのだろう?

 そして同時に、なぜこんなにも心が舞い踊って喜びに満たされているのだろう?

 苦しい、でも興奮している。見たくない、でも見たい。まったく正反対の感情が僕の体内を巡りまわって暴れまわっている。

 どうしよう?興奮しすぎて今日、眠れないかもしれない。修学旅行前の小学生のように僕は今、浮かれていた。

 ダメなのに。こんな感情、抱いたらダメなのに、それでも僕の興奮は止められなかった。この瞬間だけなら、僕はもしかしたら壬生さん以上に宗像さんへの想いが溢れているかもしれない。

 なんて恐ろしい、これが寝取られの魔力か。すごいな、寝取られって。

 逸る興奮をなんとか収め、僕はその晩、就寝につく。その前に宗像さんに『明日、楽しみにしています』とメッセージを送ったら『私もだよ』とメッセージと一緒にエッチな画像を送ってもらった。

 へえ、そんな場所にホクロがあるんだあ、なんて感想を抱いた。

 宗像杏さん。君は本当に素敵な女性だね。

 そして次の日。七月の暑い月曜日が始まる。

 学校へ登校し、教室に入ると、すでに壬生さんが登校していた。教室には他に誰もいない。

「あ、壬生さん、おはよう!」

「おはよう、根東くん。昨日はよく眠れた?」

 夏服の制服に着替えている壬生さんは今日もとても可愛い。そんな彼女が昨日まで温泉旅館に行き、そこで寝取られたかもしれない、そう思うとせっかく一夜かけておさめた興奮が再び盛り上がってきた。

 どくん、どくん。心臓の音がうるさく、血流が体内を熱く巡っている。

「って聞くだけ無駄だね。興奮して眠れなかった?」

「…うん」

「へえ、私以外の女でも興奮できるんだ?」

 壬生さんはニタニタと笑いつつも、目が笑っていない。なんだかサディスティックな眼差しで僕の目を見てくる。

「ごめん、壬生さん。でも信じてほしい。今は壬生さんで興奮している」

「…へ?ああ、うん、そうなんだ。杏じゃないの?」

「え?いや、今は壬生さんだけど?」

「ああ、うん、そうなんだ…本当に変態なんだね」

 それは真実なので否定できないね。

「壬生さんのことはもちろん信じてるよ。壬生さんはやってないって信じてる。でも想像を止められなくて」

「ふーん、そう。杏よりも私が寝取られる姿に興奮してるの?」

「うん、ごめんね変態で」

 まだ教室に人がいない時間帯でよかった。こんな話、人前ではとてもできないよね。

「本当だね。でもいいよ、彼女だから許してあげるね」

「ありがとう」

「今日は楽しんできてね。根東くんが喜んでもらえるように、私、すっごい頑張ったから」

「え、それはどういう意味…」

「私、ネタバレしない主義だから、教えてあげないよ💓」

 そんな!僕、ネタバレとかぜんぜん気にしないタイプだから、教えてくれても問題ないのに!

 どうやら壬生さんは本当に教えるつもりがないらしく、どんなに頼んでも口を割ってくれなかった。

 一体どんな寝取られプレイをするつもりなんだろう?期待と興奮、不安と苦痛、さまざまな感情が入り混じって僕の脳がおかしくなりそうだった。

 今が期末テスト後のゆるい時期で助かった。こんな精神状態ではとても授業なんて受けられないよ!

 やがて教室に人が集まり、授業が始まる。といっても期末試験が終わったばかりなので、授業らしい授業はほとんどなく、授業の内容は試験の答案の返却と答え合わせなどがメインだった。

 そんな感じでサクサクと授業を消化し、一通り答案用紙の返却が終了する。

 …ふむ、良い結果だな。

 僕は改めてテストの結果を見る。

 ほとんど90点以上だ。得意科目の英語と歴史に関していえば100点だ。こんな快挙、人生で初めてだよ。

 おお、すごい。こんな寝取られのタイミングでなければ、素直に喜べたんだけどなあ。なんだか複雑な気分だった。

「根東くん、テストの結果、すごく良かったね」

「うん、これも壬生さんのおかげだよ!いつも勉強教えてくれてありがとね!」

「!…えっと、うん、その、どういたしまして」

 おや?なんか壬生さんの反応がおかしい。教室にいるときはクールフェイスが板についている壬生さんなのだが、今の壬生さんは頬をピンク色に染めていて、なんだか落ち着きがない。

「もう、急に褒めないでよ……恥ずかしいな」

 体をもじもじさせながら小さく呟く壬生さん。はて、なんて言ったのだろう?小さくてよく聞き取れなかった。

 こほんと咳をすると、壬生さんはいつも通りのクールフェイスに戻る。

「私、部活に行くね。根東くんは杏と楽しんできてね」

「うん、壬生さんも部活がんばってね!」

「…うん、じゃあ行ってくるね」

 なんか様子が変な気がしたが、僕は壬生さんが部活へ行く後ろ姿を見送ると、気合を入れて今日の目的地へ向かう。

 校舎を出て外へ。そして正門に向かうと、そこには夏の半袖の制服を着ている美少女がいた。宗像さんだ。

「あ、根東くーん!」

「宗像さん!ごめん、待たせちゃったかな?」

「ううん、今ついたところだよ」

 本当かな?七月で日差しが暑いせいか、宗像さんの額や首筋がしっとり汗に濡れている。

 それは制服も同じで、白いシャツの下にあるブラの色が汗のせいで浮かんで見えた。

 …宗像さん、今日は赤のブラしてるんだ。すごく大人っぽくて、エッチだ。

「なーに見てるのかな?」

「え、あ、いや、その、これは違って。そ、それより暑いから何か飲みに行こうよ」

「もう、エッチだね。でもそうだね。じゃあネカフェに行こうよ」

 ——そこなら誰にも邪魔されないでお話ができるよ、と宗像さんは僕の手を取って耳元で囁いた。

 彼女は僕の腕にそのしなやかな腕を絡ませてくる。宗像さんの体の感触と体温が伝わってきて、甘い香りが鼻腔を刺激してきた。

「温泉旅館にはね、男のお客さんがたくさんいたよ」

 とネカフェに向かう途中で宗像さんが教えてくれた。

 僕の興奮はかつてないほど盛り上がっていた。

 友達が他の男に抱かれる姿で興奮するなんて、正直最低だと思う。でもダメだと思えば思うほど想像は止められず、僕の興奮は煽られていった。
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