絶対に寝取られない僕の彼女・壬生さん 【R18版】

カワサキ萌

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第五章 享楽編

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 七月の下旬。例年に比べて内容の濃い一学期がついに終了し、明日から夏休みを迎える。

 今までと違い、今年の夏休みは彼女がいる。そう、僕は彼女がいる夏休みを過ごせるのだ。

 だというのに、終業式のある今日この日、教室に僕の彼女の壬生さんはいなかった。

 なにしろアゴが外れてしまったのだ。とても終業式を受けてる場合じゃなく、彼女は現在、病院で治療を受けている。

 これから夏休みということで、教室の雰囲気はとても明るく、わくわくとした期待に満ちた空気が場を支配していた。

 こんながやがやと明るい雰囲気のある教室で、僕だけが素直にその明るい空気を受け入れられずにいる。

 そらそーよ。とても夏休みを祝える気分ではない。

 本当に、本当に申し訳ない、壬生さん。でもね、すごく気持ちよかったよ、壬生さん。だからありがとうと感謝の念を伝えてあげたい。

 もっとも本当に感謝のメッセージなんて送ろうものならば今度はガチで殴られるかもしれないので実際には送りはしないが。

 高校二年生の夏休みをアゴを外した状態で迎えるだなんて、壬生さんのパーフェクトな黄金の人生に汚点をつけてしまったのではないのか、そんな不安が溢れて止まらなかった。

 スポーツ万能、成績優秀、おまけに美少女。そんな三拍子がそろった神に愛されてる美少女の壬生さんになんてことをしてしまったのだろう。

 冷静に考えると僕はとんでもない過ちを犯してしまったのかもしれない。本当にごめんね、壬生さん。

 でもしょうがないよ、気持ち良いものは気持ち良いんだから。

 正直、めちゃくちゃ興奮した。こんな見た目だけなら清純派な美少女を僕の色に染めたという、美少女を征服したような支配感があった。

 なんだか本当に彼女を自分のモノにしたような気分である。男としての価値が一つ上がったような気さえする。

 まあ、だからってアゴを外して良い理由にはならないんだけどね。

 どうしよう?もし今回の経験のせいで、もう二度とこんなことしてあげないなんて言われたら!

 …まずい。それは本当にまずい。どうにしかしてそれは回避したい。

 しかしどうすれば?

 やがて終業式は恙なく終了し、ついに夏休みが始まる。

ぴろん♪

 終業式は授業も特にないので、お昼ごろには学校ですべき予定はすべて終了。僕たちは帰宅することになる。

 そんな時、スマホに連絡が入った。画面を見れば、宗像さんだった。

 おや、なんだろう?

『今から会える?』

 …さて、どうしよう?

 宗像さんの誘いということは、ほぼ確実にその要件はエロだ。もう間違いなくエロだね。それ以外ないよ。エロ=宗像さんといっても過言ではない。そして僕はそんな宗像さんが大好きなのであった。

 正直、受けたい。宗像さんの誘いは全部受けたい気分ではある。この誘いを受けると、きっとエロい目に遭うこと間違いなし。

 しかし良いのだろうか?昨日、僕は壬生さんの本心を知った。

 勝負で負けたから仕方がないと頭では納得はしているが、感情面ではやっぱり怒っていた壬生さん。

 果たしてこれ以上、壬生さん以外の女の子とエロいことをして良いものなのだろうか?もちろん、性欲に従うならしたい。当たり前だ。あんな可愛い女の子とエロことができるのだ。なぜ拒否をする?断るとか馬鹿じゃね?とさえ思う。

 でも、やっぱり壬生さんの気持ちの方が大事だよね。

 よし、丁重に断ろう、と思った矢先。再びメッセージが来る。

『来沙羅の許可は取ってるよ』

 …そっか、許可は取ってるのかあ。じゃあ問題ないか!

 僕はスマホをタップして返信をした。『うん、わかった!行く行く!!』

 宗像さんと僕は同じ学年だが、ただ僕が進学科であるのに対して彼女は総合科ということもあってか、教室がまったく違う場所にある。

 進学科の教室は古い第一校舎で、総合科の教室は新しい第二校舎を使用している。なぜ真面目に勉強している進学科が古い校舎を使わないといけないのだろう?ちょっと理不尽な気がしたが、まあそういうシステムなのだから仕方ないだろう。

 僕は宗像さんに言われた場所に行く。そこには宗像さんと百崎さんが待っていた。

「あれ?百崎さんも一緒なの?」

「おう。いたら悪いか?」

「ううん、むしろ嬉しいよ」

「え!あの、お、おう。そうか、なら問題ないな!」

 百崎さんは一瞬動揺しつつも、「へへ」と明るい笑みを浮かべる。

「それで今日はどうしたの?」

 僕は宗像さんの方を見て聞く。夏の制服を着ている宗像さんは、うっすらと微笑を浮かべると、年上感のあるお姉さんボイスで僕に語りかける。

「えっとね、実は来沙羅に相談されちゃって…とりあえず場所を変えようよ」

 おや?壬生さんが一体どうしたのだろう?彼女は今、アゴの件で療養しているはずだが。っていうかこの二人はそのことについてどこまで知っているのだろうか?

 既に夏休みムードが蔓延しているだけに、学校中がどこか浮ついている。がやがやと生徒たちの明るい声が響きわたり、楽し気な雰囲気の中で生徒たちは帰宅していた。

 そんな生徒の波に逆行する形で僕たちは歩いている。ただでさえ目立つ二人の美少女なだけに、彼女たちと一緒に歩いているとなんだか場違い感がすごい。

 廊下を歩いていると、男子が彼女たちをチラチラ見た後、僕の方を見て妙な表情をするということがよくあった。

「え、あれって宗像様?」

「なんで宗像様があんな普通の男と?」

「あんな奴より俺の方がイケメンだろ!」

「やめとけお前ら。あれ、お前ら童貞が勝てる相手じゃないから。渋谷先輩クラスじゃないと…」

「うっほ。彼が例の新人か…俺の菊の紋章が疼くぜ」

 ぶる!なぜだろう。とんでもなく嫌な予感がした。背筋に走る悪寒が半端ない。一刻も早くここから離れたい気分だった。

「あら?根東くん、なんだか歩くの早くないかしら?」

「ごめん、とにかく急ごう」

「まあ今日暑いからな。早くクーラーのある部屋に行こうぜ」

 急に僕が早歩きなどするから宗像さんが怪訝そうな表情をするが、百崎さんのフォローのおかげで特に疑問に持たれることなく、僕らは急ぎ足で目的の場所へ向かえた。

 なぜかはわからないが、痴漢に遭う女性の苦しみがちょっとだけわかった気がした。

 廊下を歩いていると、やがて目的の場所についたようで、宗像さんがそこの扉を開けて中に誘導する。

 そこは教室よりもやや小さい部屋で、中央に囲むような形で4つの机と椅子が並べられていた。

「ここってなんの部屋なの?」

「生徒会室よ」

「え?勝手に入っていいの?」

「大丈夫だよ。許可取ってるから」

 ああ、そうなんだ。許可があるなら安心だね。

「ふぅ、気持ち良いー。やっぱクーラー最高だな!」

 部屋に入ると、百崎さんは机の上にバッグを置き、椅子にどっかりと座り込んだ。確かに今日、暑いもんね。この涼しさは助かる。

 生徒会室は冷房が完備されているみたいで、暑い廊下と違って中はよく冷えて気持ち良かった。

 …なんで冷房が稼働しているのだろう?誰か使ってたのかな?

「根東くん、そんなところで立ってないで、こっちに座ったら?」

「あ、うん、そうだね、ありがとう」

 僕は扉を閉めて、宗像さんに誘導されるがままに椅子に座る。その椅子の横に宗像さんが別の椅子を置いて、彼女はそこに座る。すると、百崎さんも椅子を移動させて、僕の横に座る。

 おや、いつの間にか二人の美少女の間に挟まれてサンドイッチみたいになってる。これは一体どういうことだろう?

 ぱん、と肩を叩く音がする。百崎さんが僕の肩に手を置いている。

「司、お前昨日、なんだか来沙羅に酷いことをしたらしいな?」

「根東くん、あんなことをするだなんて、酷いわね」

 え、もしかして僕、糾弾されてる?

「ちょ、ちょっと待って!なんか誤解してるから!たぶん二人とも、勘違いしてると思うんだよね!」

「来沙羅のアゴ、外れちゃったらしいわね」

「一体なにをしたらそうなるのやら、詳しく聞きたいよな」

 あれ?もしかしてまったく誤解とかしてない感じ?これはあれかな、もう正確に内容を知ってるやつかな?

「あの、なんかあの、すいませんでした!」

 僕はとりあえず謝ることにした。そうだよね、悪いことしたら謝らないといけないよね。たとえ気持ちよかったとしても、悪いことは悪いことなのだ。

 頭を下げて謝罪する。そんな僕を見下ろす彼女たちは、「くくく」「ぷぷ」と笑い始める。

「あはは!ごめんね、根東くん、冗談だよ」

「くっくっく…司、お前、デカすぎだろ…くく」

 あ、よかった、ただの冗談か。ふぅ、助かった。

「ねぇ、根東くん。私も欲しいかな」

「なあ司、俺もお前のが欲しいんだけど」

 あれ、助かってないな。なんか二人の目つきが女豹のようだ。

「根東くんが気持ちよくなれるように、私たち、いーっぱい協力したのに、なんのお礼も無いだなんて、それはないんじゃないの?」

「そうだぞ、司。俺たちはお前らの性癖を満たす道具じゃないんだぞ?いろいろ協力してやったんだから、それ相応のご褒美、欲しいかな?」

 う、うん、そうだよね、確かにこの二人には寝取られプレイをするにあたっていっぱい協力してもらったし、なにかお礼をした方が良いよね。

「あ、あの、じゃあ焼肉でも奢りましょうか?」

「あら素敵。じゃあ私は根東くんのお肉が欲しいかな?」

「そうだな。俺も司の肉を食べたい気分だな。奢れよ」

 あの、僕は食べ物じゃないんですが?

 ガシ、と僕の両腕を二人の美少女に掴まれる。ポニーテールの美少女と、フェロモン系な美少女が両方から僕の腕を掴んで、その胸を押し付けてくる。

 ブラウス越しに彼女たちの胸の感触が伝わってきて、彼女たちのブラの形や固さを僕の二の腕から感じ取ることができた。

 女の子の甘い香りが空気を支配して、僕の鼻孔をくすぐってくる。ああ、これはまずい。興奮させられる!

 でも、ダメだ。断らないと!もう壬生さんにあんな感情を抱かせるわけにはいかない!壬生さんのためにも、耐えるんだ!

「ごめん、ダメだよ、だって僕、壬生さんを…」

「来沙羅の許可なら取ってるよ」

「…ならいいか」

 うん、そうだよね。あくまで壬生さんの心を傷つけたくないから彼女たちとエッチなことをするのは良くないってだけで、うん、壬生さんから許可が降りてるならまったく問題ないか!

 百崎さんと宗像さん。タイプこそ違うが、二人の美少女が口をパクパクさせる。その顔はなんだか赤く染まっていて、発情しているみたいだった。なんていやらしい顔をしているのだろう。こんな可愛い美少女を前に我慢するとか馬鹿のすることだね。よし、欲望を開放しよう!

 宗像さんが僕のズボンのファスナーにそっとその細い指を伸ばしてきて…

「ちょ、神聖な生徒会室で何してるんですか!」

 突然、生徒会長の四条さんが現れた。

「おい、彩夢。空気読めよ。なんだよお前、一番良いときに出てくんじゃねえよ」

「そうだよ、彩夢ちゃん。だいたい自分が男遊びを見学したいって言うから男を連れてきてあげたのに、なんで止めるの?」

 突然のハプニングだというのに、僕を残して他の二人が当たり前のように対応をする。

 あれ?この二人、もしかして知ってた?っていうか見学ってどういうこと?

 確かに彼女が出てきた場所。明らかに廊下からではない。だいたい扉は閉まったままだ。では彼女はどこから?

 僕は四条さんの後ろにあるロッカーを見る。ロッカーの扉、開いてるね。ああ、なるほど、、あそこにいたんだ。

「だって、だって、ふぇふぇふぇふぇふぇふぇ…くう、言えないよ、こんな卑猥なこと…」

「ふぇ、ら」

「杏ちゃん、言わないでよ!」

「落ち着け彩夢。だいたいお前、本当は知ってるだろ、知らないフリしてんじゃねえよ、このむっつりスケベが」

「むっつりじゃないもん!ただちょっと、あの、大きないちもつに興味があるだけだもん!」

「彩夢ちゃん。それを世間ではむっつりって言うのよ?」

 なんだろう、この状況?よくわからない。とりあえず、四条さんが落ち着くまで待つことにしよう。そうだよね、それが一番だ。とりあえず時間さえ置けば、僕の興奮もきっと落ち着くに違いない。

 ぎゃーぎゃーと騒がしい生徒会室の中で僕はそっと、興奮を落ち着けるのだった。

 …危なかった。危うく四条さんに見せるところだったじゃないか。
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