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33.メリザンドを獲得しようとする冒険者
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どうやら、僕たちが【山雀のハーブ】を25株も手に入れたことは、冒険者街でちょっとした噂になったようだ。
数日後にギルドの受付へと向かうと、ギルド長マックスが僕たちに歩み寄ってきた。
「リューノ君にメリィ君……いま、時間は大丈夫かな?」
「ええ、大丈夫ですが、いかがなさいましたか?」
「実はね……冒険者ギルドの1つ、ローゼンウィップからメリィ君に移籍を勧める話が来ているんだ」
僕がメリザンドに視線を向けると、彼女はすぐにギルド長に聞き返した。
「それは……我がチームごと……ということでしょうか?」
「いいや、君ひとりだ。どうやらギルド長や中隊長が君のことを気に入ったら……」
「せっかくのお申し出ですが、お断りします」
きっぱりと答えたので、僕も驚いてしまった。
いくら僕の恋人とはいえ、同じギルドにいる必要はないはずだ。条件などを話し合うくらいのことはするのかと思っていたが、メリザンドは最初から取り合う気もないようだ。
ギルド長も、少し動揺した様子でメリィに言った。
「い、いいのかい……? 相手は植物クエストを多く受注する指折りのギルドだよ?」
「このギルドほど、中間マージンの少ない場所はありませんからね。それに働きやすいですし……」
「わ、わかった。彼らにはそのように伝えよう」
とりあえず、これで話も終わったので、僕たちは受付に行ってソフィアから仕事はないか聞くことにした。彼女の話によると、今日は他のギルドからドダミク草を集めるクエストを受けているという。
その仕事を引き受けるとやることは一つだ。
森の中でクエストをこなしているフリをしながら修業である。今日も筋トレなどのメニューをこなしていると、女神がメッセージを伝えてきてくれた。
【今日で御神籤が引けますね】
「わかりました」
メリザンドやアビゲイル……更にシグレ号を呼んで、みんなの前でガチャをしてみることにした。
大吉 小金貨1枚
末吉 努力の破片(経験値上昇:小)
小吉 女神のお守り
中吉 女神のお札
末吉 努力の破片(経験値上昇:小)
吉 小銀貨4枚
末吉 努力の破片(経験値上昇:小)
大吉 小金貨1枚
小吉 女神のお守り
吉 大銀貨1枚
そして……最後の1枚は!?
凶 誰かの暴食の記憶
最後の凶御籤を手に取ると、僕は「ああ~~」という言葉をもらしていた。飲酒から恋愛、更には仕事上のストレスなど、色々な要因が考えられるが、暴食をすると翌日には腹痛や胃のもたれを起こすんだ。
凶御籤となって現れるということは、これが原因で医者にかかることにでもなったのだろうか。だとしたら他人事とは思えない記憶だと思う。
「……もう少しで大凶が手に入るね」
「そ、そうですね」
御神籤を引き終えたし、そろそろ戻ろうとしたとき……妙な空気を感じた。
何だろう。このザラっとした刺々しい空気は。
まるで誰かが、僕たち……いや、僕には真っ赤な敵意を向け、メリザンドやアビゲイルには邪な黒い敵意を向けているように感じる。
そう思ったとき、リットウシグレ号は低い声で言った。
「この距離で気付くなんて……いい勘してるね」
視線だけをシグレ号に向けると、彼は口元は笑っていたが目は怒っていた。
「こいつら、メリィお姉さんやアビィお姉さんに、悪さするつもりだと思うよ」
「複数形か……どんな連中だ?」
「冒険者パーティー……とはいっても、正面切って獲得とかに乗り出せないような4流のオランウータンだよ」
その直後に、シグレ号は恐ろし気な声を出した。
「だけど……バカという人種は時として、自分の利益のためならば平気で他人を傷つけられるよね?」
その言葉を聞いて、僕はシグレ号の実力をより認め、敬意を払いたくなった。
コイツが本当に味方で良かったと思う。感覚は鋭いし力はあるし、何より賢いのだ。こういう奴がもし敵にいたとしたら……なんて、考えただけでも恐ろしいものだと思う。
「その敵の心を看破する……お前の方がよっぽど恐ろしいってもんだよ!」
「ありがと!」
シグレ号は、そう僕に笑いかけると、やがて笑っていない冷たい笑顔で森の奥を睨んだ。
「さて……敵冒険者は、どんなおもしろいアビリティを持っているのかな?」
数日後にギルドの受付へと向かうと、ギルド長マックスが僕たちに歩み寄ってきた。
「リューノ君にメリィ君……いま、時間は大丈夫かな?」
「ええ、大丈夫ですが、いかがなさいましたか?」
「実はね……冒険者ギルドの1つ、ローゼンウィップからメリィ君に移籍を勧める話が来ているんだ」
僕がメリザンドに視線を向けると、彼女はすぐにギルド長に聞き返した。
「それは……我がチームごと……ということでしょうか?」
「いいや、君ひとりだ。どうやらギルド長や中隊長が君のことを気に入ったら……」
「せっかくのお申し出ですが、お断りします」
きっぱりと答えたので、僕も驚いてしまった。
いくら僕の恋人とはいえ、同じギルドにいる必要はないはずだ。条件などを話し合うくらいのことはするのかと思っていたが、メリザンドは最初から取り合う気もないようだ。
ギルド長も、少し動揺した様子でメリィに言った。
「い、いいのかい……? 相手は植物クエストを多く受注する指折りのギルドだよ?」
「このギルドほど、中間マージンの少ない場所はありませんからね。それに働きやすいですし……」
「わ、わかった。彼らにはそのように伝えよう」
とりあえず、これで話も終わったので、僕たちは受付に行ってソフィアから仕事はないか聞くことにした。彼女の話によると、今日は他のギルドからドダミク草を集めるクエストを受けているという。
その仕事を引き受けるとやることは一つだ。
森の中でクエストをこなしているフリをしながら修業である。今日も筋トレなどのメニューをこなしていると、女神がメッセージを伝えてきてくれた。
【今日で御神籤が引けますね】
「わかりました」
メリザンドやアビゲイル……更にシグレ号を呼んで、みんなの前でガチャをしてみることにした。
大吉 小金貨1枚
末吉 努力の破片(経験値上昇:小)
小吉 女神のお守り
中吉 女神のお札
末吉 努力の破片(経験値上昇:小)
吉 小銀貨4枚
末吉 努力の破片(経験値上昇:小)
大吉 小金貨1枚
小吉 女神のお守り
吉 大銀貨1枚
そして……最後の1枚は!?
凶 誰かの暴食の記憶
最後の凶御籤を手に取ると、僕は「ああ~~」という言葉をもらしていた。飲酒から恋愛、更には仕事上のストレスなど、色々な要因が考えられるが、暴食をすると翌日には腹痛や胃のもたれを起こすんだ。
凶御籤となって現れるということは、これが原因で医者にかかることにでもなったのだろうか。だとしたら他人事とは思えない記憶だと思う。
「……もう少しで大凶が手に入るね」
「そ、そうですね」
御神籤を引き終えたし、そろそろ戻ろうとしたとき……妙な空気を感じた。
何だろう。このザラっとした刺々しい空気は。
まるで誰かが、僕たち……いや、僕には真っ赤な敵意を向け、メリザンドやアビゲイルには邪な黒い敵意を向けているように感じる。
そう思ったとき、リットウシグレ号は低い声で言った。
「この距離で気付くなんて……いい勘してるね」
視線だけをシグレ号に向けると、彼は口元は笑っていたが目は怒っていた。
「こいつら、メリィお姉さんやアビィお姉さんに、悪さするつもりだと思うよ」
「複数形か……どんな連中だ?」
「冒険者パーティー……とはいっても、正面切って獲得とかに乗り出せないような4流のオランウータンだよ」
その直後に、シグレ号は恐ろし気な声を出した。
「だけど……バカという人種は時として、自分の利益のためならば平気で他人を傷つけられるよね?」
その言葉を聞いて、僕はシグレ号の実力をより認め、敬意を払いたくなった。
コイツが本当に味方で良かったと思う。感覚は鋭いし力はあるし、何より賢いのだ。こういう奴がもし敵にいたとしたら……なんて、考えただけでも恐ろしいものだと思う。
「その敵の心を看破する……お前の方がよっぽど恐ろしいってもんだよ!」
「ありがと!」
シグレ号は、そう僕に笑いかけると、やがて笑っていない冷たい笑顔で森の奥を睨んだ。
「さて……敵冒険者は、どんなおもしろいアビリティを持っているのかな?」
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