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新しい生活
「おかえりなさい、優太さま」
「ただいま、章人」
優太さまは玄関で鞄を受け取ろうとした私の手を握り、もう片方の手で私の肩を掴んで、頬にキスをする。
「今日の夕飯は」 「夏野菜のカレーをご用意いたしました。ご飯、先に食べますか」
「あぁー、お腹すいてるけど…駐車場からここまで歩いただけで汗かいちゃったから、先にシャワー浴びるね」
優太さまがネクタイを緩めながら微笑む。
優太さまと本契約を結んでから、生活は随分と変わった。
「これからは、使用人としてじゃなくて、僕の恋人として側にいてもらうから、覚悟しておいてね」
と、優太さまに宣告され、なんのことか分からないまま頷いた私は、それ以降「章人は僕の恋人なんだから、家事は二人で分担するよ」と、次々に言いくるめられていった。
会社へは優太さまが自分で運転していきたいと言うので、送り迎えの仕事もなくなった。
そして家の中では、やたらと私を隣においておきたがる。
パソコンで仕事中も、電話中も、目の届くところにいなさいと呼び寄せられる。
それから……これは全て私に原因があるけれど……少しだけ小言が増えた。
朝寝坊は好きなだけしてもいい、という代わりに、「早く寝なさい」と夜更かしは許してもらえない。
シャワーの後、髪を乾かさずにいるのが見つ かると、「身体が冷えるでしょ」と、無理やり座らされドライヤーをあてられる。
それから……食べ物の好き嫌いを絶対に許してくれない。
「章人。人参、残さないの。席に戻って」 「は、い」
なんとかバレないように、お皿の端に寄せておいたのに。
見つかってしまったからには、食べきるまで解放してもらえないので、頑張ってスプーンで人参を口に運んだ。
ほんの少し前に、私が自分のお皿にだけ野菜を避けていることがばれてしまった時には、夕食前にもかかわらず、その場でお説教とお仕置きだった。
それから、料理をよそうのは優太さまの役割になってしまった。
けれどお説教が増えた代わりに、お仕置きされることは減った。
それは「章人はもう十分頑張ってるから。何事も落ち着いてゆっくりね」と、優太さまに言われ続けて、単純に仕事での失敗が減ったからだとも思う。
お仕置きがなくなり、夜の時間は私が優太さまの寝室に行って、ただ一日お互い何をしていたかのお喋りになる。
最近では、そのまま同じベッドで一緒に眠りにつくので、私は自分の目覚まし時計を優太さまのベッドの枕元に置いている。
「章人」 きゅっと抱きしめられて、優太さまの匂いをいっぱいに吸い込むと、心が満たされる。
頬に触れる手の感触も、名前を呼ぶ声も、優太さまの全てが好きで、自分の内側がとろとろに溶けたチョコレートみたいになる。
けれど、どうしても……それ以上に進めない。それは全部、私のせいだ。
優太さまの優しさに包まれていても、どうしようもなく湧き上がってくる心の奥に根付いた恐怖心。「平気です」という私の嘘が、優太さまには通じない。
「やっぱり、するのは、やめておこうか」
と、言われるたびにどこかでほっとしながら、背反して傷つく私を、それとなく慰めようとしてくださる優太さまに、さらに申し訳なくなってしまう。
「僕はただ自分の隣で章人が眠ってくれていることだけで、幸せだから」
優太さまに背中を撫でられ、私はゆるやかに眠りにつく。
前は頻繁に見ていた悪夢は、見なくなった。
けれど、このままではいけないと思っていた。
優太さまは玄関で鞄を受け取ろうとした私の手を握り、もう片方の手で私の肩を掴んで、頬にキスをする。
「今日の夕飯は」 「夏野菜のカレーをご用意いたしました。ご飯、先に食べますか」
「あぁー、お腹すいてるけど…駐車場からここまで歩いただけで汗かいちゃったから、先にシャワー浴びるね」
優太さまがネクタイを緩めながら微笑む。
優太さまと本契約を結んでから、生活は随分と変わった。
「これからは、使用人としてじゃなくて、僕の恋人として側にいてもらうから、覚悟しておいてね」
と、優太さまに宣告され、なんのことか分からないまま頷いた私は、それ以降「章人は僕の恋人なんだから、家事は二人で分担するよ」と、次々に言いくるめられていった。
会社へは優太さまが自分で運転していきたいと言うので、送り迎えの仕事もなくなった。
そして家の中では、やたらと私を隣においておきたがる。
パソコンで仕事中も、電話中も、目の届くところにいなさいと呼び寄せられる。
それから……これは全て私に原因があるけれど……少しだけ小言が増えた。
朝寝坊は好きなだけしてもいい、という代わりに、「早く寝なさい」と夜更かしは許してもらえない。
シャワーの後、髪を乾かさずにいるのが見つ かると、「身体が冷えるでしょ」と、無理やり座らされドライヤーをあてられる。
それから……食べ物の好き嫌いを絶対に許してくれない。
「章人。人参、残さないの。席に戻って」 「は、い」
なんとかバレないように、お皿の端に寄せておいたのに。
見つかってしまったからには、食べきるまで解放してもらえないので、頑張ってスプーンで人参を口に運んだ。
ほんの少し前に、私が自分のお皿にだけ野菜を避けていることがばれてしまった時には、夕食前にもかかわらず、その場でお説教とお仕置きだった。
それから、料理をよそうのは優太さまの役割になってしまった。
けれどお説教が増えた代わりに、お仕置きされることは減った。
それは「章人はもう十分頑張ってるから。何事も落ち着いてゆっくりね」と、優太さまに言われ続けて、単純に仕事での失敗が減ったからだとも思う。
お仕置きがなくなり、夜の時間は私が優太さまの寝室に行って、ただ一日お互い何をしていたかのお喋りになる。
最近では、そのまま同じベッドで一緒に眠りにつくので、私は自分の目覚まし時計を優太さまのベッドの枕元に置いている。
「章人」 きゅっと抱きしめられて、優太さまの匂いをいっぱいに吸い込むと、心が満たされる。
頬に触れる手の感触も、名前を呼ぶ声も、優太さまの全てが好きで、自分の内側がとろとろに溶けたチョコレートみたいになる。
けれど、どうしても……それ以上に進めない。それは全部、私のせいだ。
優太さまの優しさに包まれていても、どうしようもなく湧き上がってくる心の奥に根付いた恐怖心。「平気です」という私の嘘が、優太さまには通じない。
「やっぱり、するのは、やめておこうか」
と、言われるたびにどこかでほっとしながら、背反して傷つく私を、それとなく慰めようとしてくださる優太さまに、さらに申し訳なくなってしまう。
「僕はただ自分の隣で章人が眠ってくれていることだけで、幸せだから」
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