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第四章 地下に眠る太陽のカケラ
61 愛の子の誕生
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******
かつて世界に『人』と呼ばれる存在は、三つだけ──。
海から産まれし人魚。
大地より産まれしドワーフ。
空に産まれし妖精。
三種族は、三つ巴の戦いを続けていた。
戦いの理由は特にない。
だからこそ戦いはいつまで経っても終わらない。
ある時代の、ある時期──戦いを望まない者たちが現れる。
彼らは密かに集結し、平和へ向けた話し合いが持たれた。
そして三種族が一つになるために、ある研究を始めたのだ。
それは──種の垣根を超えて、子を作るというもの。
様々な動植物を参考に、実験は続いた。
長い、長い年月を費やし、とうとうその日が──。
最初の父となったドワーフと、最初の母となった人魚の間に産まれたのが──最初の『人間』アスカである。
人と人の『間』に産まれし『人間』──愛の子の誕生だ。
******
──「これはおそらく、二千年以上前……神話の時代と言ってもいいほど昔の話だ」
カイトは遺跡から解読した古代文字を、その根拠として示していく。
古代文字が読めるヘイレンとアイビスは、紙の束を次々と広げては、絶句したり唸ったりを繰り返している。
そして解説が必要な他の者たちも、遺跡に描かれていた絵の写しを見せられ、カイトの唱える説が妄想ではないと思い知らされる。
カイトが語った内容そのままが、絵になって並んでいるのだ。
三つ巴の戦い──三者会談──そして三種が一つになり、新しい種が萌芽するまでが。
「ただし……これはあくまで、ドワーフに伝わる歴史に過ぎない。歴史は都合よく改変されるものだし、欠けるものだ。権力者の私見が混じることもある」
仲間たちのあまりの動揺っぷりを見て、カイトはそう補足したが、彼自身はこの遺跡の信ぴょう性はかなり高いと考えているようだった。
「特にここから先は、俺が導き出した一つの仮説だということを念頭に置いて、聞いてくれ」
カイトは仲間たちに、思考を止めるなと忠告する。
真実は自分の目で見極めろ、と。
「まずは大前提として、遺跡の描写から推測できることが一つ──ドワーフだけでなく人魚も妖精も、元々は生殖機能を持たない種だったのではないか、ということ。ドワーフが岩から産まれるように、人魚も海から、妖精も空から──比喩ではなく、本当に言葉通りに……」
「にん、ぎょも……?」ユエの怖々とした囁きにカイトは容赦なく頷く。
「大地から海から空から、自然に産まれる、一代限りの種──俺たちが『純血』と呼ぶ存在」
アスカを知らなければ、思いつきもしない推測だろう。しかしその前例を知る一行にとっては、「まさかっ?!」よりも「そうなのか……」という諦観に近い納得だった。
「そんな『純血』しか存在しない世界が、かつてあった。そして争いを続ける三種族を、一つにまとめるために考えられたのが──三種の血を交えることだった。だがそれは例えるなら、魚と獣と鳥の間に子どもを作るようなものだ」
「そんなこと不可能──」
「その不可能を可能にするために、当時の人々は、まず三種族の平均化を目指した」
「平均化……?」
「例えばドワーフなら、まずドワーフの大地の力を抜いてから、人魚の力と妖精の力を入れる。三つの力が均等になった状態を創り出す」
『抜く』やら『入れる』という表現に、ピンとこなかった何人かが首を傾げると、ヘイレンが「こういうことか?」と、三つのガラスのコップと三種類の酒を持ってきた。
一つのコップになみなみと赤ワインを注ぎ、「これが大地の力満タンのドワーフ。ここからまず、その力を抜く」と言って、三分の一を残してゴクゴクと飲んでしまった。
そして残り二つのコップに、透明な清酒と黄金色の蜂蜜酒をそれぞれ三分の一注ぎ、「これが人魚の力と妖精の力」
赤ワインのコップに、その二つの酒を投入し、「こういうこったな」と混ぜ合わせた液体を掲げてみせた。
三つの酒のブレンドは、どう見ても赤ワインの一人勝ちではあったが、言わんとしていることは伝わったらしい。
「そして平均化と同時に、生殖機能を持たせるために、植物や動物から雌雄という要素を取り入れる」
カイトは最後に、三酒ブレンドに、鉛筆として使っていた木炭を砕いてパラパラと浮かべた。
「これがアスカとユエの今の状態だ」
そしてドワーフのフェリックス、人魚のシィランも、こうして最初の父と最初の母になったのだ。
その二人の間に産まれたアスカは、ドワーフと人魚の血を引き、なおかつ妖精の力も備えた存在──三種が一つになった新しい種『人間』の誕生だ。
アスカは、ドワーフのように地下深くには行けず、人魚のように水中で息はできず、妖精のように空を飛ぶことはできなかった。
しかし、そんな三種の長所を失った代わりに短所も補われ、さらに生殖機能を生まれつき備えていて、さらに次世代へ血を繋ぐことができるようになったのだ。
***
──「と、ここまでが遺跡から読み解けた、人間の誕生史だ」
カイトは紙の束を脇に避けて、もう一度赤い革の表紙をめくる。
「人間の誕生後の歴史については、遺跡には詳しく残されていなかった。『新しい世界への扉が開いた』だの『平和を閉じ込めた』だの……抽象的な表現ばかりでな。だからその先は、クリストバル・トリエンテの記録が唯一の参考となる」
三つ巴の戦いの中に現れた、第四の存在『人間』──彼らは自分たちの意思で子どもを増やすことができる。
たちまち、三種に並ぶまでに膨れ上がった。
その結果、今から千五百年前には、四つの勢力が均衡し、一時的な平和の時代が訪れる。
しかしトリエンテの時代には一転、再びその均衡が崩れる。
純血が産まれなくなったのだ。
大地から、海から、空から──自然に任せるまま、人口を一定に保っていたが、いつからか子の数が少なくなっていく。
人間の数が三種を上回ると同時に、三種と人間の関係も崩れていく。
元々は他種間で子を成すための『鍵』だったが、同種間でも子どもができるという恩恵もあった。
純血が産まれなくなったことで、他種間よりも同種間で子どもを作る流れが加速していくことになった。
「そっか……生殖機能がないんだから、ドワーフ同士で子どもを作ろうと思っても、『鍵』を使うしか方法がないのか……」
クレインの分析をカイトが引き継ぐ。
「そうだ。おそらくこれは、『鍵』が創られた当初には想定していなかった事態だろう。同種間の子どもを望んだドワーフは、『鍵』をそのまま流用した。その結果産まれたのが──今のドワーフ王国の先祖だ」
「ドワーフは……?それじゃあ、人魚と妖精はどうしたの?」
その質問がユエからされたことを、カイトは意外に思ったのか、それまでの淀みのなさが少しだけかげる。
「妖精は……トリエンテの記録には全く言及がないから分からん。人魚は…………」
「人魚は?」
「おそらく、だが……人魚は『鍵』に何かしらの手を加えたのではないか、と俺は思う」
「『鍵』に?」
「他種間ではなく同種間で子を作りたいのなら、平均化は必要ない。生殖機能だけでいいワケだ。姿形や能力をなるべく保ったまま、生殖機能だけを持たせるように、『鍵』の力を……──俺の想像だが、な」
カイトもあまり自信はないのか、言い切ることはなかった。
「いずれにしても、『鍵』をそのまま使うか、手を加えるか──その違いが、現在の二種の差に繋がったのだろう。ドワーフが人間との間に子を作れるのに対して、人魚は作れない、という差に」
「どうして、人魚とドワーフでそんな違いが出たんだ?」
アイビスの問いには、調子を取り戻したカイトがスラスラと答える。
「平均化、と言っても、ドワーフに比べて人魚は失うモノが大き過ぎるだろう?ドワーフが地下深くまで行けなくなることと、人魚が水中で息ができなくなることは、同列に語れない」
「……ドワーフは、地下を捨てても太陽を求めたんだな……」
フェザントの呟きは、哀しみの中に憐れみも含まれていた。
『地下の太陽』を信仰してきたドワーフたちは、本物の太陽に目が眩んだのだ。喪うものが目に入らないほどに──。
こうして三種は、それぞれ別の道を歩むこととなった。
他種間に産まれる子、同種間に産まれる子、人間の間に産まれる子、三種と人間の間に産まれる子──血は複雑に多様になっていく。
遺跡の時代はとてもシンプルだった。
大地から産まれればドワーフ。海からなら人魚、空からなら妖精。そして人から産まれた者は人間、と。産まれが全てだったのだ。
しかし次第に、それだけでは分類できなくなっていく。
産まれだけでなく、姿形や能力、血縁や国──
カイトは無造作に近くの紙を手繰り寄せ、白紙の部分に三つの点を打って、それぞれ『人魚』『ドワーフ』『妖精』と書き込んだ。
「純血の三種はこの点だ。それぞれが独立していて接点がない。だが──」
点と点を結ぶように線が引かれると、三種を頂点とした三角形ができる。
「人間の誕生が三種を繋げた。この三角形の内側が、今、俺たちが生きる世界だ」
世界の縮図が、そこにはあった。
「三角形の中での立ち位置を決めるのは、血縁と能力。例えばフェザントたちドワーフは、ここ」
カイトは『ドワーフ』の頂点のすぐ内側に指を立てる。
「純血のドワーフの子孫であり、その血と能力を受け継ぐ者たち」
「そうか……つまり亜種というのは、いわゆる先祖返りなんだな」
ヘイレンの考察に、カイトは頷きを返す。
「そうだろう。そもそも人間全てが三種の血を引いているのだから、誰が亜種として産まれてもおかしくはない」
カイトは三角形の中心に指を置き、「ここが平均的な人間だとするならば、亜種は中心から少しズレた存在だな」
『人魚』と書いた頂点に、少しだけ指を近づけて「ここがクレイン」、次は『妖精』の方へズラして「ラーク」
名を呼ばれた二人は、複雑な表情でその指を見つめた。
カイトは静かに本を閉じ、裏表紙に描かれた波のたゆたいを優しく撫でる。
「そして約千年前──まずはドワーフの純血が絶える。トリエンテが最後の一人になって──」
「約千年ぶりに産まれたのが、アスカ、か」
「そうだ。トリエンテの記録は彼の死と共に終わる。その時点で人魚と妖精はまだ純血が残っていたようだが……」
「人間の起源や純血という存在が、現在に伝わっていないことを考えると、どちらもその後、同じように産まれていないんだろうな」
カイトとヘイレンの会話を、他の九人はカイトが撫でる波に揺られているような、心許ない気分で聞いていた。
アスカの存在を知った時にドワーフたちが感じた不安が、やっと今、身を以て分かったのだ。
──アイデンティティの喪失。
だがそれだけではない。
「……な~んだ。じゃあさ、ドワーフも人魚も人間も、あんまり変わんないってことじゃん」
あっけらかんと言い放ったヘロンに、はっと気づかされる。
──もっと大きなものを取り戻したのだ。
人魚とドワーフと妖精。
三種と人間。
人間の中の亜種。
無数に引かれた境界線は、ただ人の心ひとつで簡単に消せるものだった。
世界は思っていたよりずっと、ひとつだったのだ。
******
世界の深層に足を踏み入れた十一人は、大きな光と闇を背負って、その夜を過ごした。
めいめいにその真実と向き合って、ある者は語り明かし、ある者は文字を追い、ある者はひとりで、ある者は寄り添って──そうして受け容れていったのだ。
夜を明かした者たちが眠りにつく頃、久しぶりにしっかりと身体を休めたカイトは、ひとりで風に吹かれていた。
一足先に真実を知った彼には、頭を整理する時間はたっぷりとあった。
仲間への報告が済んで、やっと肩の荷が下りたような気分で、その表情もどこかすっきりとしている。
「カイト……こんなとこにいた」
そこへ、寝起きの目を擦りながらユエが登場する。
彼もまた、議論飛び交う中で早々に夢の中へ旅立ったツワモノだった。
「……他は、そろそろ寝たか?」
「うん。アスカが外に出られたのを確認してから、寝たみたい」
「ふ、そうか」
あれだけの衝撃の事実の後に、アスカが太陽の陽を浴びて笑ったという些細なことで、大騒ぎして喜ぶことができる仲間たちを、カイトは微笑ましく思っているようだ。
ゆったりと身体を木の幹に預けるカイトの隣に、ユエはちょこんとしゃがんで、思いがけないことを言い出した。
「ねぇカイト……『人魚の鍵』が出てこないのは、俺のせい、かな……?」
「……どういう意味だ?」
「俺が……人魚に戻りたいと思ってない、から?」
ユエの脈絡のなさは、ある意味いつも通りだった。さすがにカイトも慣れてきて、面食らった後すぐに立て直す。
「トリエンテの本には『想像力』やら『意思』やらと書いてあったが、俺が思うに、『鍵』を使うために必要なのは『知っていること』なんじゃないか」
「……知ってる?」
「『鍵』についての正しい知識があるかどうか──だがお前が人間になった時、こんなことになるとは思ってなかっただろう?」
「うん」
あの時のことなら、はっきりとユエも断言できる。
ユエは人間になりたいなどと思っていなかったし、そもそも予期すらしていなかった。
「一つ考えられるのは、あの時、お前以外の何者かの意思が介在したのではないか──ということ。『鍵』を開けたのはお前ではないのだから、お前の意思で閉めることはできない……」
「……よく、分からないよ」
カイトは説明する気があるのか、ないのか──ユエを見つめた後に、「『似ている気がした』と言ったな?」
「え?」
「アスカと自分が似ている、と言っていただろう?」
カイトがいきなり掘り起こした話題に、ユエは自分でも忘れていたのか、「……ああ」と思い出すまでにしばらく時間がかかった。
アスカ奪還作戦において、ユエが積極的に参加した理由を聞かれて、そう答えたのだ。
「俺も、そう思った」
「えっ?!」
「アスカの顔を初めて見た時、どこかで見たことがあるような気になった。その後お前と並んだ時、確かに──似ている、と」
「それが、どうかしたの?」
どうして今更、そしてどうして今、この話を蒸し返すのか、ユエには皆目見当もつかず、戸惑いは大きくなるばかりだ。
「自分で、どこが似ていると思ったんだ?」
「どこって……境遇とか……」
「他は?」
「他?う~ん……雰囲気、とか?」
「アスカが纏う、か?」
「ううん。アスカじゃなくって、周りの、かな……アスカの周りの人たちの空気──あ、そっか」
そこでユエにも、それまでモヤモヤとしていたものの正体が、少しだけ見えてきた。
「……アスカに対する周りの態度が、俺のと、似てたんだ……」
「どういう意味だ?」
「海の……故郷の一族が俺に対する態度と、王弟の部下の人たちがアスカに対する態度、それが似てたんだと思う」
ユエは本当に久しぶりに、海を思い出した。
懐かしい海と共に、何も知らずにいた当時の自分が蘇り、苦味が口の中に広がる。
(俺は世界のことも何も知らなかったけど、それ以上に、自分のことも何も知らなかった……)
ユエが過去を語ったのは、これが初めてであることに思い至ったカイトは、
「……お前、あまり自分のことを話さないな」
自分のことは棚に上げて、思わずそう口走ってしまった。
案の定、「カイトには言われたくないよ」とユエに返されて、カイトにも苦笑いが浮かぶ。
二人がこれほど穏やかに対峙するのは、いつ以来だろうか。周りに取り繕う必要のないカイトは、自然体でユエに接している。
仲間に対しても、長年の付き合いであるヘイレンに対しても、カイトが常に引いている一線が、ユエと二人の時だけは消えている。
そのことに気づかないフリは、いつまで続けられるだろうか。
カイトは意識して、口調を事務的に切り替える。
「……お前は、族長の息子だと言ったな」
「……うん」
「それは、確かなことか?」
「え……?」
「族長は本当に、お前の親なのか?」
「な、に……」
「アスカとお前は、似ているのではなく──同じ存在なんじゃないか?」
『鍵』がもたらす結果は、三種の平均化と生殖機能の追加──それはないからこそ、与えられるものなのではないか?
「お前も『純血』なんじゃないか?」
『鍵』にはそれに呼応した『鍵穴』がある。
『ドワーフの鍵』に呼応したのはアスカ。
では『人魚の鍵』に呼応するのは……?
カイトの思考はすでに、誰よりも先へと向かっていた。
かつて世界に『人』と呼ばれる存在は、三つだけ──。
海から産まれし人魚。
大地より産まれしドワーフ。
空に産まれし妖精。
三種族は、三つ巴の戦いを続けていた。
戦いの理由は特にない。
だからこそ戦いはいつまで経っても終わらない。
ある時代の、ある時期──戦いを望まない者たちが現れる。
彼らは密かに集結し、平和へ向けた話し合いが持たれた。
そして三種族が一つになるために、ある研究を始めたのだ。
それは──種の垣根を超えて、子を作るというもの。
様々な動植物を参考に、実験は続いた。
長い、長い年月を費やし、とうとうその日が──。
最初の父となったドワーフと、最初の母となった人魚の間に産まれたのが──最初の『人間』アスカである。
人と人の『間』に産まれし『人間』──愛の子の誕生だ。
******
──「これはおそらく、二千年以上前……神話の時代と言ってもいいほど昔の話だ」
カイトは遺跡から解読した古代文字を、その根拠として示していく。
古代文字が読めるヘイレンとアイビスは、紙の束を次々と広げては、絶句したり唸ったりを繰り返している。
そして解説が必要な他の者たちも、遺跡に描かれていた絵の写しを見せられ、カイトの唱える説が妄想ではないと思い知らされる。
カイトが語った内容そのままが、絵になって並んでいるのだ。
三つ巴の戦い──三者会談──そして三種が一つになり、新しい種が萌芽するまでが。
「ただし……これはあくまで、ドワーフに伝わる歴史に過ぎない。歴史は都合よく改変されるものだし、欠けるものだ。権力者の私見が混じることもある」
仲間たちのあまりの動揺っぷりを見て、カイトはそう補足したが、彼自身はこの遺跡の信ぴょう性はかなり高いと考えているようだった。
「特にここから先は、俺が導き出した一つの仮説だということを念頭に置いて、聞いてくれ」
カイトは仲間たちに、思考を止めるなと忠告する。
真実は自分の目で見極めろ、と。
「まずは大前提として、遺跡の描写から推測できることが一つ──ドワーフだけでなく人魚も妖精も、元々は生殖機能を持たない種だったのではないか、ということ。ドワーフが岩から産まれるように、人魚も海から、妖精も空から──比喩ではなく、本当に言葉通りに……」
「にん、ぎょも……?」ユエの怖々とした囁きにカイトは容赦なく頷く。
「大地から海から空から、自然に産まれる、一代限りの種──俺たちが『純血』と呼ぶ存在」
アスカを知らなければ、思いつきもしない推測だろう。しかしその前例を知る一行にとっては、「まさかっ?!」よりも「そうなのか……」という諦観に近い納得だった。
「そんな『純血』しか存在しない世界が、かつてあった。そして争いを続ける三種族を、一つにまとめるために考えられたのが──三種の血を交えることだった。だがそれは例えるなら、魚と獣と鳥の間に子どもを作るようなものだ」
「そんなこと不可能──」
「その不可能を可能にするために、当時の人々は、まず三種族の平均化を目指した」
「平均化……?」
「例えばドワーフなら、まずドワーフの大地の力を抜いてから、人魚の力と妖精の力を入れる。三つの力が均等になった状態を創り出す」
『抜く』やら『入れる』という表現に、ピンとこなかった何人かが首を傾げると、ヘイレンが「こういうことか?」と、三つのガラスのコップと三種類の酒を持ってきた。
一つのコップになみなみと赤ワインを注ぎ、「これが大地の力満タンのドワーフ。ここからまず、その力を抜く」と言って、三分の一を残してゴクゴクと飲んでしまった。
そして残り二つのコップに、透明な清酒と黄金色の蜂蜜酒をそれぞれ三分の一注ぎ、「これが人魚の力と妖精の力」
赤ワインのコップに、その二つの酒を投入し、「こういうこったな」と混ぜ合わせた液体を掲げてみせた。
三つの酒のブレンドは、どう見ても赤ワインの一人勝ちではあったが、言わんとしていることは伝わったらしい。
「そして平均化と同時に、生殖機能を持たせるために、植物や動物から雌雄という要素を取り入れる」
カイトは最後に、三酒ブレンドに、鉛筆として使っていた木炭を砕いてパラパラと浮かべた。
「これがアスカとユエの今の状態だ」
そしてドワーフのフェリックス、人魚のシィランも、こうして最初の父と最初の母になったのだ。
その二人の間に産まれたアスカは、ドワーフと人魚の血を引き、なおかつ妖精の力も備えた存在──三種が一つになった新しい種『人間』の誕生だ。
アスカは、ドワーフのように地下深くには行けず、人魚のように水中で息はできず、妖精のように空を飛ぶことはできなかった。
しかし、そんな三種の長所を失った代わりに短所も補われ、さらに生殖機能を生まれつき備えていて、さらに次世代へ血を繋ぐことができるようになったのだ。
***
──「と、ここまでが遺跡から読み解けた、人間の誕生史だ」
カイトは紙の束を脇に避けて、もう一度赤い革の表紙をめくる。
「人間の誕生後の歴史については、遺跡には詳しく残されていなかった。『新しい世界への扉が開いた』だの『平和を閉じ込めた』だの……抽象的な表現ばかりでな。だからその先は、クリストバル・トリエンテの記録が唯一の参考となる」
三つ巴の戦いの中に現れた、第四の存在『人間』──彼らは自分たちの意思で子どもを増やすことができる。
たちまち、三種に並ぶまでに膨れ上がった。
その結果、今から千五百年前には、四つの勢力が均衡し、一時的な平和の時代が訪れる。
しかしトリエンテの時代には一転、再びその均衡が崩れる。
純血が産まれなくなったのだ。
大地から、海から、空から──自然に任せるまま、人口を一定に保っていたが、いつからか子の数が少なくなっていく。
人間の数が三種を上回ると同時に、三種と人間の関係も崩れていく。
元々は他種間で子を成すための『鍵』だったが、同種間でも子どもができるという恩恵もあった。
純血が産まれなくなったことで、他種間よりも同種間で子どもを作る流れが加速していくことになった。
「そっか……生殖機能がないんだから、ドワーフ同士で子どもを作ろうと思っても、『鍵』を使うしか方法がないのか……」
クレインの分析をカイトが引き継ぐ。
「そうだ。おそらくこれは、『鍵』が創られた当初には想定していなかった事態だろう。同種間の子どもを望んだドワーフは、『鍵』をそのまま流用した。その結果産まれたのが──今のドワーフ王国の先祖だ」
「ドワーフは……?それじゃあ、人魚と妖精はどうしたの?」
その質問がユエからされたことを、カイトは意外に思ったのか、それまでの淀みのなさが少しだけかげる。
「妖精は……トリエンテの記録には全く言及がないから分からん。人魚は…………」
「人魚は?」
「おそらく、だが……人魚は『鍵』に何かしらの手を加えたのではないか、と俺は思う」
「『鍵』に?」
「他種間ではなく同種間で子を作りたいのなら、平均化は必要ない。生殖機能だけでいいワケだ。姿形や能力をなるべく保ったまま、生殖機能だけを持たせるように、『鍵』の力を……──俺の想像だが、な」
カイトもあまり自信はないのか、言い切ることはなかった。
「いずれにしても、『鍵』をそのまま使うか、手を加えるか──その違いが、現在の二種の差に繋がったのだろう。ドワーフが人間との間に子を作れるのに対して、人魚は作れない、という差に」
「どうして、人魚とドワーフでそんな違いが出たんだ?」
アイビスの問いには、調子を取り戻したカイトがスラスラと答える。
「平均化、と言っても、ドワーフに比べて人魚は失うモノが大き過ぎるだろう?ドワーフが地下深くまで行けなくなることと、人魚が水中で息ができなくなることは、同列に語れない」
「……ドワーフは、地下を捨てても太陽を求めたんだな……」
フェザントの呟きは、哀しみの中に憐れみも含まれていた。
『地下の太陽』を信仰してきたドワーフたちは、本物の太陽に目が眩んだのだ。喪うものが目に入らないほどに──。
こうして三種は、それぞれ別の道を歩むこととなった。
他種間に産まれる子、同種間に産まれる子、人間の間に産まれる子、三種と人間の間に産まれる子──血は複雑に多様になっていく。
遺跡の時代はとてもシンプルだった。
大地から産まれればドワーフ。海からなら人魚、空からなら妖精。そして人から産まれた者は人間、と。産まれが全てだったのだ。
しかし次第に、それだけでは分類できなくなっていく。
産まれだけでなく、姿形や能力、血縁や国──
カイトは無造作に近くの紙を手繰り寄せ、白紙の部分に三つの点を打って、それぞれ『人魚』『ドワーフ』『妖精』と書き込んだ。
「純血の三種はこの点だ。それぞれが独立していて接点がない。だが──」
点と点を結ぶように線が引かれると、三種を頂点とした三角形ができる。
「人間の誕生が三種を繋げた。この三角形の内側が、今、俺たちが生きる世界だ」
世界の縮図が、そこにはあった。
「三角形の中での立ち位置を決めるのは、血縁と能力。例えばフェザントたちドワーフは、ここ」
カイトは『ドワーフ』の頂点のすぐ内側に指を立てる。
「純血のドワーフの子孫であり、その血と能力を受け継ぐ者たち」
「そうか……つまり亜種というのは、いわゆる先祖返りなんだな」
ヘイレンの考察に、カイトは頷きを返す。
「そうだろう。そもそも人間全てが三種の血を引いているのだから、誰が亜種として産まれてもおかしくはない」
カイトは三角形の中心に指を置き、「ここが平均的な人間だとするならば、亜種は中心から少しズレた存在だな」
『人魚』と書いた頂点に、少しだけ指を近づけて「ここがクレイン」、次は『妖精』の方へズラして「ラーク」
名を呼ばれた二人は、複雑な表情でその指を見つめた。
カイトは静かに本を閉じ、裏表紙に描かれた波のたゆたいを優しく撫でる。
「そして約千年前──まずはドワーフの純血が絶える。トリエンテが最後の一人になって──」
「約千年ぶりに産まれたのが、アスカ、か」
「そうだ。トリエンテの記録は彼の死と共に終わる。その時点で人魚と妖精はまだ純血が残っていたようだが……」
「人間の起源や純血という存在が、現在に伝わっていないことを考えると、どちらもその後、同じように産まれていないんだろうな」
カイトとヘイレンの会話を、他の九人はカイトが撫でる波に揺られているような、心許ない気分で聞いていた。
アスカの存在を知った時にドワーフたちが感じた不安が、やっと今、身を以て分かったのだ。
──アイデンティティの喪失。
だがそれだけではない。
「……な~んだ。じゃあさ、ドワーフも人魚も人間も、あんまり変わんないってことじゃん」
あっけらかんと言い放ったヘロンに、はっと気づかされる。
──もっと大きなものを取り戻したのだ。
人魚とドワーフと妖精。
三種と人間。
人間の中の亜種。
無数に引かれた境界線は、ただ人の心ひとつで簡単に消せるものだった。
世界は思っていたよりずっと、ひとつだったのだ。
******
世界の深層に足を踏み入れた十一人は、大きな光と闇を背負って、その夜を過ごした。
めいめいにその真実と向き合って、ある者は語り明かし、ある者は文字を追い、ある者はひとりで、ある者は寄り添って──そうして受け容れていったのだ。
夜を明かした者たちが眠りにつく頃、久しぶりにしっかりと身体を休めたカイトは、ひとりで風に吹かれていた。
一足先に真実を知った彼には、頭を整理する時間はたっぷりとあった。
仲間への報告が済んで、やっと肩の荷が下りたような気分で、その表情もどこかすっきりとしている。
「カイト……こんなとこにいた」
そこへ、寝起きの目を擦りながらユエが登場する。
彼もまた、議論飛び交う中で早々に夢の中へ旅立ったツワモノだった。
「……他は、そろそろ寝たか?」
「うん。アスカが外に出られたのを確認してから、寝たみたい」
「ふ、そうか」
あれだけの衝撃の事実の後に、アスカが太陽の陽を浴びて笑ったという些細なことで、大騒ぎして喜ぶことができる仲間たちを、カイトは微笑ましく思っているようだ。
ゆったりと身体を木の幹に預けるカイトの隣に、ユエはちょこんとしゃがんで、思いがけないことを言い出した。
「ねぇカイト……『人魚の鍵』が出てこないのは、俺のせい、かな……?」
「……どういう意味だ?」
「俺が……人魚に戻りたいと思ってない、から?」
ユエの脈絡のなさは、ある意味いつも通りだった。さすがにカイトも慣れてきて、面食らった後すぐに立て直す。
「トリエンテの本には『想像力』やら『意思』やらと書いてあったが、俺が思うに、『鍵』を使うために必要なのは『知っていること』なんじゃないか」
「……知ってる?」
「『鍵』についての正しい知識があるかどうか──だがお前が人間になった時、こんなことになるとは思ってなかっただろう?」
「うん」
あの時のことなら、はっきりとユエも断言できる。
ユエは人間になりたいなどと思っていなかったし、そもそも予期すらしていなかった。
「一つ考えられるのは、あの時、お前以外の何者かの意思が介在したのではないか──ということ。『鍵』を開けたのはお前ではないのだから、お前の意思で閉めることはできない……」
「……よく、分からないよ」
カイトは説明する気があるのか、ないのか──ユエを見つめた後に、「『似ている気がした』と言ったな?」
「え?」
「アスカと自分が似ている、と言っていただろう?」
カイトがいきなり掘り起こした話題に、ユエは自分でも忘れていたのか、「……ああ」と思い出すまでにしばらく時間がかかった。
アスカ奪還作戦において、ユエが積極的に参加した理由を聞かれて、そう答えたのだ。
「俺も、そう思った」
「えっ?!」
「アスカの顔を初めて見た時、どこかで見たことがあるような気になった。その後お前と並んだ時、確かに──似ている、と」
「それが、どうかしたの?」
どうして今更、そしてどうして今、この話を蒸し返すのか、ユエには皆目見当もつかず、戸惑いは大きくなるばかりだ。
「自分で、どこが似ていると思ったんだ?」
「どこって……境遇とか……」
「他は?」
「他?う~ん……雰囲気、とか?」
「アスカが纏う、か?」
「ううん。アスカじゃなくって、周りの、かな……アスカの周りの人たちの空気──あ、そっか」
そこでユエにも、それまでモヤモヤとしていたものの正体が、少しだけ見えてきた。
「……アスカに対する周りの態度が、俺のと、似てたんだ……」
「どういう意味だ?」
「海の……故郷の一族が俺に対する態度と、王弟の部下の人たちがアスカに対する態度、それが似てたんだと思う」
ユエは本当に久しぶりに、海を思い出した。
懐かしい海と共に、何も知らずにいた当時の自分が蘇り、苦味が口の中に広がる。
(俺は世界のことも何も知らなかったけど、それ以上に、自分のことも何も知らなかった……)
ユエが過去を語ったのは、これが初めてであることに思い至ったカイトは、
「……お前、あまり自分のことを話さないな」
自分のことは棚に上げて、思わずそう口走ってしまった。
案の定、「カイトには言われたくないよ」とユエに返されて、カイトにも苦笑いが浮かぶ。
二人がこれほど穏やかに対峙するのは、いつ以来だろうか。周りに取り繕う必要のないカイトは、自然体でユエに接している。
仲間に対しても、長年の付き合いであるヘイレンに対しても、カイトが常に引いている一線が、ユエと二人の時だけは消えている。
そのことに気づかないフリは、いつまで続けられるだろうか。
カイトは意識して、口調を事務的に切り替える。
「……お前は、族長の息子だと言ったな」
「……うん」
「それは、確かなことか?」
「え……?」
「族長は本当に、お前の親なのか?」
「な、に……」
「アスカとお前は、似ているのではなく──同じ存在なんじゃないか?」
『鍵』がもたらす結果は、三種の平均化と生殖機能の追加──それはないからこそ、与えられるものなのではないか?
「お前も『純血』なんじゃないか?」
『鍵』にはそれに呼応した『鍵穴』がある。
『ドワーフの鍵』に呼応したのはアスカ。
では『人魚の鍵』に呼応するのは……?
カイトの思考はすでに、誰よりも先へと向かっていた。
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