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第六章 追憶の海に花束を浮かべて
95 新たな関係
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カイトとユエがそろって目の前に立った時、アイビスは一つの区切りを感じていた。
これまでの関係が終わり、そして、新たな関係が始まる予兆だ。
カイトは赤裸々に自分の気持ちを語った。
ヘイレンが予期していた離反よりも、アイビスが恐れた死よりも、カイトの苦悩は深かったこと、それをユエが救ったこと、カイトが求めるものが変わったこと──そして最後に、選択を委ねられる。
「俺たちは、俺の不老の解消のために『妖精の鍵』を求めることに決めた。お前たちも、今後どうするか各々が決めてくれ。どうしたいかを考えて、それで目的地が一致するのなら……一緒に行こう」
戸惑いは静かに広がっていくが、目に見えるほどの大きな混乱はない。
元々仲間たちは全員、それぞれ自分のために旅をしてきた。頭の目的が変わろうとも、そこは揺るがないのだろう。
しかしカイトはあえて、時間をかけて考えてくれと付け足す。
「時間はたっぷりある。明日、東の族長の元へ行き、それからメイとクウェイルを領地へ送ることになる。その時までに決めてくれればいいから」
どっしりと構えた態度は同じでも、今のカイトからはいっそうのゆとりが感じられる。深く根を張る大木が、さらに、風を受け流す術を覚えたように。
(変わった、な……)
アイビスがそう確信を持ったのは、次の台詞がカイトから発せられたから。
「もちろん、決めるのはお前たちだ。だが、俺としては……手伝ってほしい、と思っている」
「……え」
ぽかんと口を開けたクレインに、全員が倣う。カイトは仲間たちの反応に微苦笑を見せると、らしくないことをつっかえつっかえ話し始める。
「できれば、手を貸してほしい。直接でなく、後方支援のような形でもありがたい。……俺はずっと、秘密がバレたらそこで終わりだと思っていた。もう二度と会うこともない、と。だが……お前たちとはそんな別れにしたくない」
青臭く、真っ正直に、カイトは仲間たちを頼る。そこには、来る者拒まず、去る者追わずだった、孤独なカイトはもういない。
「どんな形でもいい。知恵を貸してくれるだけでも、情報を集めてくれるだけでも……なりふり構っていられないんでな、はっきり言おう。──『助けてくれ』ってな」
(……ずるいな、この男は)
脆い部分をさらけ出したことで、仲間たちが彼に失望することはなかった。反対に、頼られて嬉しいと奮い立ったり、俺たちが支えなければと気を引き締めたりと、結束が増した気さえする。
簡単に受け入れられつつある空気に、一番戸惑っているのはカイトだったのかもしれない。
「もっと悩め」と忠告したげに口を開きかけたカイトを、ユエが腕を引いて止めた。
無言で見つめ合う二人から、アイビスは目を逸らさないよう踏ん張った。微かに痛む胸を、無視するのではなく、受け入れる。
アイビスにはとてつもなく長く感じられたその時間は、実際にはほんの一瞬のことで、二人の仲をいじりたいとうずうずしていたヘロンが何かを言い出す前に、カイトがすっと話題を締める。
「俺からは以上だ。……ユエ」
「うん。あのね、後は俺から、メイとクウェイルに話があるんだ」
指名した夫婦を、できれば場所を移したいとユエは言って、隣のコテージに誘う。
話の内容はだいたい察していたため、夫婦は手を繋いで互いの決意を確認してから、カイトとユエに付き従った。
******
「……」「…………」「……………」
探り合いの後、最初の決意表明はクレインから。
「カイトの目的が変わろうが、俺たちは変わらないよ。『妖精の鍵』を見つけるまでは──ってことで」
隣でジェイも頷く。
「……まあ、カイトが勝手に縁を切るつもりだったのは、ちょっとイラっときたけど」
ボソッと付け加えたクレインに、自分が怒られたわけではないのにジェイがびくっと肩を揺らしている。
「俺は……あー……」
次いで手を挙げたのは、フェザント。
アスカとヘロンとラークを順繰りに見ると、申し訳なさそうに身を縮めて続ける。
「実はよ、俺もそうしようかと思ってんだ」
「そうしようって、どうするんだよ?」
「だからー、クレインとジェイみたく、『妖精の鍵』で旅に区切りをつけようかなって」
「ええーーっ?!なんでだよっ!なんで勝手に決めてんだよぉ!!」
ヘロンのわめき声を予想して、あらかじめフェザントは耳を塞いでいたが、「なぁ、なぁ!なんでだよ!」とその耳を塞いでいる手ごと身体をグラグラと揺らされて、「ま、ま、まて!ちょちょちょっと落ち着け!」と舌を噛みそうになっている。
「俺はなー、お前と違ってもうおっさんなんだよっ!そろそろ旅の生活はきついんだ!」
「うーわー、普段はおっさん扱いしたら怒るくせに、都合のいい時ばっかり言い訳に使いやがる」
「っ、それにだな!俺はラサージェ──アスカの両親からアスカのことを任されてんだっ」
「ああ?!アスカがなんだって?!」
「だーかーら!アスカの目的が『妖精の鍵』なんだったら、それが達成されたらどのみち一度、帰らなきゃなんねぇだろうが!」
「今度はアスカを言い訳にすんのかっ?!」
「そうじゃねぇよ……!カイトの目的が変わったってんなら、俺の旅の目的も変わっちまったんだ……!!」
ピタッとヘロンの勢いが止まる。
静かなうちに全部言ってしまおうと、フェザントは早口になる。
「最初は家族を失った村から離れたい一心だった。でも今は違う。今の最優先はアスカを無事に両親の元へ返すことだ。それが済んだら俺には旅をする意味がなくなる。だからその後は妻と娘の近くで──アスカ村でゆっくり過ごしてぇんだよ」
「でも」「だって」と俯いたヘロンの頭を、フェザントの大きな手ががしがしと撫でる。
「旅を抜けるからって、仲間じゃなくなるってことじゃねえ。さっきカイトも言ってたろう?後方支援ってやつだ。村からカイトたちを助けるさ。関わる形を変えるだけだ」
いい流れで納得しかけたところに、クレインが「あのさ」と言いにくそうに口を挟んだ。
「それってフェザント、アスカの意思も確認済みなの?」
クレインに向かって首をかしげる二人は、見た目は全然似ていないはずなのに、なぜか親子のようにそっくりにも見える。
「いや、だってさ……フェザントはアスカが、『妖精の鍵』を見つけたら村に帰るって前提で話してるから」
ヘロンとフェザントは同時に、視線をアスカへと移す。
「……アスカ、カイトの話、よく分からなかった」
「……そうか、そこからか」
フェザントが説明に回る傍らで、ヘロンは普段に増して大人しいラークの脇腹をつついて、「で、お前はどーなんだよ」とこそっと訊いている。
「僕は一緒に行くよ」
ラークはみんなにも聞こえる声で、きっぱりと言い切った。
「っ、そ、それってさっ──」
「でもそれは、とりあえず『妖精の鍵』を見つけるまでは、だから。その後のことは分からない」
同志を見つけた!と目を輝かせたヘロンを、すぐさまラークは凹ませる。
「なんだよ、ラークまでー……なんでみんな、そんなに終わることばっか考えてんだよー」
「……むしろ僕は、もっと先まで考えたからこそなんだけど」
「どーゆー意味?」
問われてラークは、ヘロンだけでなくその場の全員に向けて話し始める。
「僕はさ、カイトの目的がどうであれ、僕自身も『妖精の鍵』を──っていうよりも妖精の国を見つけたいと思ってる。でもさ、カイトたちは僕と違って、鍵を見つけることそのものが目的じゃないんだよ。鍵が見つかっても、カイトの……呪い?を解くことができなかったら、二人は探し続けるってこと、でしょう?」
「まあ、そうだよな」
「それってさ、もしかしたらすっごい長期戦になるかも、でしょう?」
「そう、かも?」
「それも……カイトたちには次の当てが今のところ、ないんじゃない、かなあ?」
ラークの指摘に、ヘイレンやアイビスまでもがそこまで考えていなかったという顔をする。
「カイトたちにも分からないのに、僕が勝手に『一緒に連れて行って』っていうのも、なんか違うかなって。それに僕も、今の段階で『妖精の鍵』が見つかった後のことまで考えられないもの」
「……つまり考えるのはその時になってからってこと?結論を後回しにしてるだけじゃねぇのぉー?」
ヘロンがまだぐだぐだと突っかかるのは、ラークの意見に納得できないからではなく、相棒が自分の知らないうちにひとりで大人になってしまって、置いていかれたような焦りからくるもの。
「結論は出してるよ」
ラークはねちっこいヘロンの言い方にもムッとした顔を見せずに、毅然とした態度を貫く。
「カイトを助ける、手伝えることがあるなら手伝いたい──それが僕の結論。それがどんな形になるかは分からないけどね。一緒に旅をしながら、なのか、フェザントみたいにどこか離れた場所から、なのか……それはカイトたちが僕にどうしてほしいかと、僕がどうしたいか、両方の兼ね合いによるものだから」
「……驚いたなぁ」
フェザントがどこか複雑そうに呟く。
そこには子どもの独り立ちを祝福するのと同時に、寂しさも感じているという、親目線の表情が見え隠れする。
フェザントだけでなく、他の仲間たちも、ラーク成長に目を見張っている。
カイトに依存して、変化を恐れてばかりだったラークが、いつの間にこれほど大局的なものの見方ができるようになったのか、と。
そんなラークに後押しされたように、これまで黙っていたアイビスが静かに口を開く。
「……俺はカイトの宣言をこう受け取った。──これからは頭としてではなく、一個人のカイトとして行動するつもりだ、と。だから俺たちも、今までより、自分の行動に責任を持たなくてはならないと思う」
堅苦しい言い方とは裏腹に、アイビスの表情はどことなくさっぱりとして見える。
「アイビスはどうするつもりなの?」
「……俺はもう決めてる」
それは問いかけたラークと同じく、具体的な行動を決めているというよりは、気持ちの上での決意に映る。
そしてアイビスは、その決意を今は言うつもりがないのか、再び黙ってしまう。
これまでのアイビスならこういう時、仲間たちの意見を聞いて、取りまとめ、方向性を決めるという仕切り役を買って出るところなのに──と、仲間たちは顔には出さずに心配していたが、それ以上問い詰めることはできなかった。
それからすぐに、アイビスがその場を離れたからだ。
部下の船が到着したという報せを受けて、船着き場に向かおうとするヘイレンに、アイビスは手伝いを申し出ると、「……ちょっと身体を動かしたい気分なんだ」という独り言を残して、部屋を出て行いった。
それはカイト同様に、アイビスが副官としての立場から一個人となって──いや、なろうとして取った行動だった。
意図して、責任を放棄したのだ。
******
船着き場への道すがら、ヘイレンは「ちょうどいい。聞きたいことがあったんだ」と軽い調子を装って訊く。
「どうしてお前は、カイトが死ぬつもりだって気づいたんだ?」
『カイトはもしかしたら、死ぬつもりなんじゃないか……?』──自分がその可能性を示唆したのが、ずいぶんと昔のことのように思えて、アイビスは少し思い出すように目を細める。
「ただの勘、か?」
「いや……確信には至っていなかったが、全くの勘でもない。……教会にいた時、カイトが妙に饒舌になっているように感じたことがあった」
「ふうん?」
「その後にも船の上で、カイトにしては口が軽い、というか……」
「でもよ、それって、秘密を明かす前触れみたいなもんだったんじゃね?カイトがどの時点で、全て話す決意をしたのかは分かんねえが、もう隠すつもりがなくなってたから、秘密主義を貫く意味もなくなった、と。俺はそう了解したがな」
「……俺にはそれが、まるで──自分がいなくなった後のことを想定しているように思えたんだ」
それも、不在の意味ではなく、死後の意味──すなわち、自分が果たせないことを、後に残す者たちに託しているようだと。
ずっと感じていた違和感を、一足飛びにその結論まで繋げた訳ではない。
教会の時点では、カイトが恋に浮かれて浮き足立っているようだ、という的外れなことを考えていたくらいだ。
アイビスがカイトの死を予感したのは、ヘイレンから『カイトはもしかしたらもう戻ってこないかもしれない』と聞かされた時。
ヘイレンはそれを、仲間からの離別という意味で言ったのだが、アイビスの頭に浮かんだのは『死別』という言葉だったのだ。
ヘイレンはアイビスのその説明を「ふうん」と、自分から訊いておきながら気のない返事をして、「可能性は三つあったんだな」と言い出した。
「三つ?」
「第一に、カイトだけがいなくなる。第二に、カイトがユエを連れて行く。第三、二人ともに仲間の元に戻ってくる。──最終的に三番目に落ち着いたのは、こりゃ完全にユエのお手柄ってな」
ヘイレンが提示した二番目の可能性に、アイビスは背筋がぞっとなる。
『カイトがユエを連れて行く』──暗に示唆しているのは、心中。
(まさかカイトがそんなこと……)と全否定しかけて──これが自分の改めなければならないところだと、アイビスはこっそりと唇を噛んだ。
自分のこの考えは、カイトに対する信頼ではなく、カイトの弱さの否定だ、と。
アイビスの葛藤は表情に出ていたが、ヘイレンはそれを見過ごしてくれた。
明日の出航へ向けて船の準備に勤しむ傍ら、アイビスの脳の一部は徐々に葛藤を処理していく。
ドワーフの一件からの積み重ねで、ヘイレンはアイビスの補佐能力をかなり評価しているのか、商会関係の仕事まで手伝わされることになったが、口で文句を言いながらもアイビスの手は活き活きと動いていた。
(ああ、そうか)
アイビスがそう思った時、葛藤は吹っ切れる。
(俺はこういうのが、けっこう好きなんだな)
他人から頼られること、誰かを補佐すること、何かを任されること──副官としての立場を、義務感や責任感でこなしているのではなく、やりたくてやっている自分に改めて気づいた。
明日、東の人魚の族長へ贈るためという酒を確認しながら、アイビスはぽつり、ぽつりと話し始める。
「カイトとユエ……二人が並んでいる姿を見て、俺は自分の気持ちをやっと理解した」
船室の備え付けの机では、ヘイレンが何やら書類に目を通してはサインをしているが、そこから相槌は聞こえない。
アイビスも別に聞こえてなくてもいいかと思い、背中を向けたまま続ける。
「俺のカイトに対する想いは、恋情じゃなかった」
アイビスはその告白を、誰かに聞いてほしいのではなく、ただ自分が言いたいだけだった。
「負け惜しみに聞こえるかもしれないが……恋ではなく──信仰に近いものだったと思う。神への信仰心。俺はカイトの恋人ではなく、神の理解者になりたかった」
アイビスが思い出すのは、アディーン大司教の死の直前に、ラフィール司教と過ごした短い時間のこと。
あの時の会話で気づかされたのは、己の矮小さや傲慢さだった。
「信仰を続けるためには、カイトに神様でいてもらわなければならない。だから俺は……カイトがユエに振り回されたり、辛い時に性欲に逃げたり、恋に浮かれているように見えたり──そういう……普通の男みたいな行動が、赦せなかったんだ」
アイビスはカイトに、神としての振る舞いを強要していた。理想像を押しつけ、それから逸脱することが赦せなかった。
「カイトさえもただの男にしてしまうのが、恋なんだろうな。そう思うとやっぱり、俺のこの気持ちは恋情ではないよ。俺はカイトのためにそこまで……自分を変えられない」
そう言いながらも、アイビスは無自覚に自分の胸を守るように手で覆う。
二人一緒の場面を思い浮かべると、微かにそこに痛みが走るのも事実。しかしそれを口にしないのが、アイビスの最後の矜持だった。
ユエの告白の後、不快感を露わにするアイビスに、ヘイレンが『それはユエだからか?』と尋ねたことがあった。
その時は何を問われているのか分からず答えられなかったが、今のアイビスになら答えられる。
──ユエだから、ではない。そして、カイトの相手が自分ならば良かった、でもない。
カイトの相手は、誰であっても赦せなかった。
アイビスは、カイトが恋愛をすること自体が赦せなかった。それは──例え相手が己であっても、だ。
果たして、アイビスに一分でも恋心があったとしても、それは叶うと同時に失うものだった。なぜならアイビスの恋心は、カイトの神格化の上に成り立っていたからだ。
カイトに神としての振る舞いを望んでいたアイビスは、カイトが恋愛という神に相応しくない行動を取ったとたんに、恋心が失望に変わってしまったことだろう。
それは本当に、カイトの気持ちなど考えていない身勝手な感情だ。
自分の弱さ、狡さを知ってしまったアイビスは、かなりの自己嫌悪に陥ることにもなった。
その弱さを、カイトのようにさらけ出してしまえば、楽になるのかもしれない。しかしアイビスが選んだのは、ひとりで呑み込む方法。
最後の、副官としての矜持。
(……こんなの、自己満足だけどな)
苦笑いで虚勢をはるアイビスに、ヘイレンからかけられた言葉は、これだけだった。
「……もしかして、抜けるつもりなのか?」
今度は即答する。
「いや、もう少し付き合うさ」
ラークだけじゃない。自分も少しは成長していかなくては、とアイビスは自分に期待する。
「カイトが俺の人生を変えたことは、間違いない。感謝してるし、手伝えることがあるなら手伝いたいからな」
カイトが変わり、アイビスも変わっていく。ならば二人の関係性も変わるはず。
アイビスはこれまでカイトとの関係を、個人と個人ではなく、仲間として集団の中で築いてきた。それをこれからは、一対一で築いていきたいと、そう思っている。
それでできれば──(相棒、のような関係になれれば……)そんな理想を思い浮かべて、アイビスは気恥ずかしく目を伏せた。
***
その後、夕方近くになって戻ったアイビスを、色とりどりの表情をした仲間たちが出迎えた。
なぜか気まずそうなカイト、羞恥心にまみれたユエ、さっぱりとした表情のクウェイルとメイ。
はしゃぐアスカとヘロン、何かを納得した表情のフェザント、まだ納得しかねているジェイ、口を真一文字に結んだクレインはそっぽを向いている。
「なんだ、どうしたんだ」
アイビスからは、さっきまでの感傷が一気に吹き飛んでいた。
「それが……」
おそらく、もっとも今の状況に適した表情は、ラークのこの『驚愕』だろう。
自分がいない間に語られた新たな推測に、アイビスもラークと同じ表情になって、「なん、だと……?」と絶句する。
その時にはアイビスがわざわざ頭を切り替えようと努力しなくても、事態は先へ先へと進んでいたのだった。
******
約束の三日後、一行は新しい船に乗り換えて、人魚が指定した海域へと到着した。
人間の手が及ぶ、最東端。
そこから案内人の人魚たちの力を借りて、さらに東へと向かう。
船の左右を、小さな無人島ばかりが通り過ぎていく。
複雑な潮を読んで、人魚たちが航路を教え、時には集団で泳ぐことで波を起こして、荒波を越えさせてくれた。
一日、二日と波に揺られ、三日目の夕刻になって、やっと東の族長が待つ島へと辿り着いた。それだけの時間がかかったことをヘイレンは、「たぶんわざと複雑な航路をとって、俺たちに場所を覚えられないようにしたんだろう」と予想した。
そして「それだけ人魚の警戒心は強い」と続け、気を引き締めるように一行に忠告する。
着岸した島に降り立つと、ユエは人魚の姿へと戻り、少しためらってから着ていたシャツに手をかける。東の族長と面会するにあたって、服を着ないことが『正装』だという考えのもと、こうすることを事前に決めていたのだ。
案内人の人魚たちが、ユエの変化にざわっと波立つ。
そしてユエの胸元に揺れる蒼い鍵に、期待と不安が入り混じった目を向ける。
その不躾な視線から逃れようと、ユエはすぐさまカイトに抱っこをせがむ。横抱きに抱えられて、頰をカイトの鎖骨に擦りつけると、緊張が少しは解ける気がした。
「……首、気をつけろ」
川に沿って島の中心へと歩き始めると、カイトが耳元でそう囁いてきた。
「んん?」
「だいぶ消えたが、まだあとが残っている」
「あと?」
「……噛み跡」
きつく歯を立てられた感触が蘇って、ユエのうなじがさわっと粟立つ。凹凸を探そうと、無意識に指が首をなぞったが、はっきりとした引っかかりは感じられない。
ついでのように自分の胸元に目を落とすと、そこにたくさん散らばっていた紅い痕も、いつの間にかよく見なければ分からない程度に薄れている。
情事の痕跡が人目につかないことはいいことのはずなのだが、痕がなくなってしまうのが寂しく思えて、「また、つけてね」とカイトに囁き返していた。
噛み合わない会話は、カイトの苦笑いで終わる。
会話は聞こえていなかったが、二人の関係性を見せつけるやり取りに、メイは呆れた目を向ける。
そんなメイは、案内人の人魚たちと一緒に川を泳いでいる。速度を合わせてかたわらを歩くクウェイルも、メイと同じ目をしていて、互いの価値観が似ていることが、とてもありがたいとしみじみ感じてしまう。
おそらくユエにそんな意図はないだろうが、人間との親密な様子を案内人に見せつけることは、それほど悪い効果ではなかった。
困惑を生んだことで、それまで満々だった警戒心が少し弛んだのだから。
人魚が治める島は、人間の土地とはやはり様相が違っている。
青々と茂った木々は手付かずで、森は鳥や獣たちのもの。道はなく、一行が歩く川沿いも、ヒトが足で歩くことを想定してはいない。
しかしその代わり、人魚にとっての道となる川は手をかけて整備されていて、これまで一行が見てきたどの川よりも美しい。
それも、ただ見世物のように美しいのではなく、生きている美しさがある。
流れる水、水底の砂や砂利、たゆたう水草、川岸に咲く花、そして魚やカニやカエルや昆虫たち──人魚だけが心地いい空間ではなく、水に生きるもの総てが共存することで、その美しさは成り立っている。
「うおぉ!!」「わあ……!」
いきなりひらけた視界に、歓声を上げたのはヘロンとアスカ。
二人ほど率直に声は出せなかったが、他の面々もそのおとぎ話のような光景に目を奪われる。
深い青と、悠々とした翠と、光を弾く透明──辿り着いた湖は水の色の奥深さを教えてくれている。
しかしその自然の美さえも、人魚たちを惹き立たせる背景になってしまっていた。
十、二十、三十……百人を超える人魚たちが一堂に会し、まるで睡蓮の花のように湖を彩っている。
そしてその全員の視線が、一行の一挙手一投足を見張るように注がれているものだから、さすがのカイトも圧倒されている。
「……人間の客人を招き入れるのは、いつ以来だろうか」
威厳ある低い声が、湖の中央から発せられた。
男ばかりが集まっていた一団から、声の主がすっと前へ泳ぎ出る。
男女問わず華奢な体型が多い人魚の中で、その人物のがっしりと筋肉質な上半身と、たくわえられたあごひげは異質だ。
東の族長は、周囲の制止を聞かず、一人で堂々と近づいてくる。
ユエを抱いたカイトも水際ぎりぎりまで近づくと、岸にユエを座らせて、その肩を支えるように横に寄り添った。
手を伸ばせば届く距離で、族長は止まる。視線はユエの瞳から外れない。
「……お初にお目にかかります。中央の一族のユエです。この度は無理なお願いを聞いていただいて、ありがとうございます」
礼儀として目下のユエから名乗る。族長は鷹揚に受け止めてから、つい、とカイトに目を移す。そのささいな仕草だけで、族長がカイトにも興味を持っていることが知れた。
「カイト、と申します。……私の素性に関しては、とても一言では語れないほど複雑なので、後ほど詳しく説明する時間をいただきたい」
これで、さらに族長の興味をかき立てることに成功する。ユエのおまけではなく、人間というひとくくりではなく、カイトという個人を認めた族長は、客人全員に向けて己こそが東の一族の族長だと名乗った。
そしてあいさつもそこそこに、「それが……」と『人魚の鍵』に手を伸ばす。
ユエは首から銀の鎖を外すと、素直にその手に鍵を渡した。
「……百年ぶりに我が一族の手に……!これでユラン様も、ようやく心安らかに眠ることができよう」
周囲の人魚たちから歓声が上がる。しかしそれはだんだんと、ひそひそとした囁きに変わっていく。
ジャン・ノーとの決着に居合わせた者や、先に報告に帰った案内人から、『人魚の鍵』がもたらす奇跡についてすでに話が回っていたようだ。
人魚を人間に変える──その噂の受け止め方は、年代によって二つに分かれている。
若者たちは好奇心でもって、早く確かめたいと沸き立ち、年配者たちは恐怖心によって、知りたくないと目を逸らす。
相手から話を向けられる前に、ユエがその場の主導権を握るべく声を張り上げる。
「あの!実はその鍵に関して、わたしたちからお伝えしなければならないことがあります。大切な話、です」
申してみよ、と簡単に促す族長に、ユエが「大切で……長い、長い話なんです」と神妙に返すと、族長は少しの思案の末、側近たちに何か指示を出す。
するとどこからともなく、桶のようなものを持った人魚たちが現れて、一行の前にそれを並べて置く。桶の中には海鮮物がぎっしり詰められている。
「人間の口には合わぬかもしれんが……ヤシから我らが造った酒もある。歓迎の証として振る舞うつもりだったのだが、時間がかかるというのならば、食し飲みながら話を聞こう」
族長の前にも、葦を束ねて浮かべて卓にして、そこに酒や食事が並べられていく。
機を逃さずに、ヘイレンが「こちらからも」とお近づきの印に持ってきた酒や果物を贈ると、緊張感をはらんだままの宴会が始まった。
***
説明は主にユエとアスカの口から語られた。二人はお世辞にも説明上手とは言えなかったが、そのたどたどしさがむしろ聴衆の集中を最後まで保たせた。
純血の存在や人間の成り立ちといった、壮大で唐突な内容を、もちろん人魚たちはすんなりと信じることはできず、族長も自分の手の中の『人魚の鍵』とアスカが持つ『ドワーフの鍵』を見比べるばかり。
しかし一行の目的はそこにはなかったから、人魚たちが信じていなくとも構わずに、混乱の上に混乱を畳み掛けていく。
「証拠のひとつをお見せします。『人魚の鍵』を」
広げたユエの手のひらに、族長は反射的に鍵を置いた。
鍵を大事に受け取ったユエに、カイトがさっと大きめのシャツを羽織らせる。その藍染の丈の長いシャツは、この時に備えてカイトが持ってきたものだった。
ユエは鍵をいったんカイトに預けて、シャツのボタンをしっかり止める。鍵を返してもらう際に、カイトの手がぎゅっとユエの手を握っていき、それに勇気をもらってユエの強張っていた表情も弛む。
百人の人魚が、ごくりと喉を鳴らしてその瞬間を待っていた。
ユエは一点に集まる視線を物ともせず、ごく自然な動きで、鍵を回す。光が収束する頃には、鱗から肌に変わった下半身が湖の水の冷たさを感じていた。
時間が止まったような空間の中、ユエだけがすっくと立ち上がる。
時間が動き出す前に、ユエは『人魚の鍵』を掲げて聴衆を見渡すと、事前に仲間たちと計画した通りに話を続けていく。
「これが人魚にとって、朗報なのか残念なことなのかは分かりませんが……おそらく、鍵を使うにはある条件が必要です」
条件?と全ての人魚の頭に疑問符が浮かぶのを待って、ユエはひと呼吸置いた。
「その条件とは──『純血であること』」
これまでの関係が終わり、そして、新たな関係が始まる予兆だ。
カイトは赤裸々に自分の気持ちを語った。
ヘイレンが予期していた離反よりも、アイビスが恐れた死よりも、カイトの苦悩は深かったこと、それをユエが救ったこと、カイトが求めるものが変わったこと──そして最後に、選択を委ねられる。
「俺たちは、俺の不老の解消のために『妖精の鍵』を求めることに決めた。お前たちも、今後どうするか各々が決めてくれ。どうしたいかを考えて、それで目的地が一致するのなら……一緒に行こう」
戸惑いは静かに広がっていくが、目に見えるほどの大きな混乱はない。
元々仲間たちは全員、それぞれ自分のために旅をしてきた。頭の目的が変わろうとも、そこは揺るがないのだろう。
しかしカイトはあえて、時間をかけて考えてくれと付け足す。
「時間はたっぷりある。明日、東の族長の元へ行き、それからメイとクウェイルを領地へ送ることになる。その時までに決めてくれればいいから」
どっしりと構えた態度は同じでも、今のカイトからはいっそうのゆとりが感じられる。深く根を張る大木が、さらに、風を受け流す術を覚えたように。
(変わった、な……)
アイビスがそう確信を持ったのは、次の台詞がカイトから発せられたから。
「もちろん、決めるのはお前たちだ。だが、俺としては……手伝ってほしい、と思っている」
「……え」
ぽかんと口を開けたクレインに、全員が倣う。カイトは仲間たちの反応に微苦笑を見せると、らしくないことをつっかえつっかえ話し始める。
「できれば、手を貸してほしい。直接でなく、後方支援のような形でもありがたい。……俺はずっと、秘密がバレたらそこで終わりだと思っていた。もう二度と会うこともない、と。だが……お前たちとはそんな別れにしたくない」
青臭く、真っ正直に、カイトは仲間たちを頼る。そこには、来る者拒まず、去る者追わずだった、孤独なカイトはもういない。
「どんな形でもいい。知恵を貸してくれるだけでも、情報を集めてくれるだけでも……なりふり構っていられないんでな、はっきり言おう。──『助けてくれ』ってな」
(……ずるいな、この男は)
脆い部分をさらけ出したことで、仲間たちが彼に失望することはなかった。反対に、頼られて嬉しいと奮い立ったり、俺たちが支えなければと気を引き締めたりと、結束が増した気さえする。
簡単に受け入れられつつある空気に、一番戸惑っているのはカイトだったのかもしれない。
「もっと悩め」と忠告したげに口を開きかけたカイトを、ユエが腕を引いて止めた。
無言で見つめ合う二人から、アイビスは目を逸らさないよう踏ん張った。微かに痛む胸を、無視するのではなく、受け入れる。
アイビスにはとてつもなく長く感じられたその時間は、実際にはほんの一瞬のことで、二人の仲をいじりたいとうずうずしていたヘロンが何かを言い出す前に、カイトがすっと話題を締める。
「俺からは以上だ。……ユエ」
「うん。あのね、後は俺から、メイとクウェイルに話があるんだ」
指名した夫婦を、できれば場所を移したいとユエは言って、隣のコテージに誘う。
話の内容はだいたい察していたため、夫婦は手を繋いで互いの決意を確認してから、カイトとユエに付き従った。
******
「……」「…………」「……………」
探り合いの後、最初の決意表明はクレインから。
「カイトの目的が変わろうが、俺たちは変わらないよ。『妖精の鍵』を見つけるまでは──ってことで」
隣でジェイも頷く。
「……まあ、カイトが勝手に縁を切るつもりだったのは、ちょっとイラっときたけど」
ボソッと付け加えたクレインに、自分が怒られたわけではないのにジェイがびくっと肩を揺らしている。
「俺は……あー……」
次いで手を挙げたのは、フェザント。
アスカとヘロンとラークを順繰りに見ると、申し訳なさそうに身を縮めて続ける。
「実はよ、俺もそうしようかと思ってんだ」
「そうしようって、どうするんだよ?」
「だからー、クレインとジェイみたく、『妖精の鍵』で旅に区切りをつけようかなって」
「ええーーっ?!なんでだよっ!なんで勝手に決めてんだよぉ!!」
ヘロンのわめき声を予想して、あらかじめフェザントは耳を塞いでいたが、「なぁ、なぁ!なんでだよ!」とその耳を塞いでいる手ごと身体をグラグラと揺らされて、「ま、ま、まて!ちょちょちょっと落ち着け!」と舌を噛みそうになっている。
「俺はなー、お前と違ってもうおっさんなんだよっ!そろそろ旅の生活はきついんだ!」
「うーわー、普段はおっさん扱いしたら怒るくせに、都合のいい時ばっかり言い訳に使いやがる」
「っ、それにだな!俺はラサージェ──アスカの両親からアスカのことを任されてんだっ」
「ああ?!アスカがなんだって?!」
「だーかーら!アスカの目的が『妖精の鍵』なんだったら、それが達成されたらどのみち一度、帰らなきゃなんねぇだろうが!」
「今度はアスカを言い訳にすんのかっ?!」
「そうじゃねぇよ……!カイトの目的が変わったってんなら、俺の旅の目的も変わっちまったんだ……!!」
ピタッとヘロンの勢いが止まる。
静かなうちに全部言ってしまおうと、フェザントは早口になる。
「最初は家族を失った村から離れたい一心だった。でも今は違う。今の最優先はアスカを無事に両親の元へ返すことだ。それが済んだら俺には旅をする意味がなくなる。だからその後は妻と娘の近くで──アスカ村でゆっくり過ごしてぇんだよ」
「でも」「だって」と俯いたヘロンの頭を、フェザントの大きな手ががしがしと撫でる。
「旅を抜けるからって、仲間じゃなくなるってことじゃねえ。さっきカイトも言ってたろう?後方支援ってやつだ。村からカイトたちを助けるさ。関わる形を変えるだけだ」
いい流れで納得しかけたところに、クレインが「あのさ」と言いにくそうに口を挟んだ。
「それってフェザント、アスカの意思も確認済みなの?」
クレインに向かって首をかしげる二人は、見た目は全然似ていないはずなのに、なぜか親子のようにそっくりにも見える。
「いや、だってさ……フェザントはアスカが、『妖精の鍵』を見つけたら村に帰るって前提で話してるから」
ヘロンとフェザントは同時に、視線をアスカへと移す。
「……アスカ、カイトの話、よく分からなかった」
「……そうか、そこからか」
フェザントが説明に回る傍らで、ヘロンは普段に増して大人しいラークの脇腹をつついて、「で、お前はどーなんだよ」とこそっと訊いている。
「僕は一緒に行くよ」
ラークはみんなにも聞こえる声で、きっぱりと言い切った。
「っ、そ、それってさっ──」
「でもそれは、とりあえず『妖精の鍵』を見つけるまでは、だから。その後のことは分からない」
同志を見つけた!と目を輝かせたヘロンを、すぐさまラークは凹ませる。
「なんだよ、ラークまでー……なんでみんな、そんなに終わることばっか考えてんだよー」
「……むしろ僕は、もっと先まで考えたからこそなんだけど」
「どーゆー意味?」
問われてラークは、ヘロンだけでなくその場の全員に向けて話し始める。
「僕はさ、カイトの目的がどうであれ、僕自身も『妖精の鍵』を──っていうよりも妖精の国を見つけたいと思ってる。でもさ、カイトたちは僕と違って、鍵を見つけることそのものが目的じゃないんだよ。鍵が見つかっても、カイトの……呪い?を解くことができなかったら、二人は探し続けるってこと、でしょう?」
「まあ、そうだよな」
「それってさ、もしかしたらすっごい長期戦になるかも、でしょう?」
「そう、かも?」
「それも……カイトたちには次の当てが今のところ、ないんじゃない、かなあ?」
ラークの指摘に、ヘイレンやアイビスまでもがそこまで考えていなかったという顔をする。
「カイトたちにも分からないのに、僕が勝手に『一緒に連れて行って』っていうのも、なんか違うかなって。それに僕も、今の段階で『妖精の鍵』が見つかった後のことまで考えられないもの」
「……つまり考えるのはその時になってからってこと?結論を後回しにしてるだけじゃねぇのぉー?」
ヘロンがまだぐだぐだと突っかかるのは、ラークの意見に納得できないからではなく、相棒が自分の知らないうちにひとりで大人になってしまって、置いていかれたような焦りからくるもの。
「結論は出してるよ」
ラークはねちっこいヘロンの言い方にもムッとした顔を見せずに、毅然とした態度を貫く。
「カイトを助ける、手伝えることがあるなら手伝いたい──それが僕の結論。それがどんな形になるかは分からないけどね。一緒に旅をしながら、なのか、フェザントみたいにどこか離れた場所から、なのか……それはカイトたちが僕にどうしてほしいかと、僕がどうしたいか、両方の兼ね合いによるものだから」
「……驚いたなぁ」
フェザントがどこか複雑そうに呟く。
そこには子どもの独り立ちを祝福するのと同時に、寂しさも感じているという、親目線の表情が見え隠れする。
フェザントだけでなく、他の仲間たちも、ラーク成長に目を見張っている。
カイトに依存して、変化を恐れてばかりだったラークが、いつの間にこれほど大局的なものの見方ができるようになったのか、と。
そんなラークに後押しされたように、これまで黙っていたアイビスが静かに口を開く。
「……俺はカイトの宣言をこう受け取った。──これからは頭としてではなく、一個人のカイトとして行動するつもりだ、と。だから俺たちも、今までより、自分の行動に責任を持たなくてはならないと思う」
堅苦しい言い方とは裏腹に、アイビスの表情はどことなくさっぱりとして見える。
「アイビスはどうするつもりなの?」
「……俺はもう決めてる」
それは問いかけたラークと同じく、具体的な行動を決めているというよりは、気持ちの上での決意に映る。
そしてアイビスは、その決意を今は言うつもりがないのか、再び黙ってしまう。
これまでのアイビスならこういう時、仲間たちの意見を聞いて、取りまとめ、方向性を決めるという仕切り役を買って出るところなのに──と、仲間たちは顔には出さずに心配していたが、それ以上問い詰めることはできなかった。
それからすぐに、アイビスがその場を離れたからだ。
部下の船が到着したという報せを受けて、船着き場に向かおうとするヘイレンに、アイビスは手伝いを申し出ると、「……ちょっと身体を動かしたい気分なんだ」という独り言を残して、部屋を出て行いった。
それはカイト同様に、アイビスが副官としての立場から一個人となって──いや、なろうとして取った行動だった。
意図して、責任を放棄したのだ。
******
船着き場への道すがら、ヘイレンは「ちょうどいい。聞きたいことがあったんだ」と軽い調子を装って訊く。
「どうしてお前は、カイトが死ぬつもりだって気づいたんだ?」
『カイトはもしかしたら、死ぬつもりなんじゃないか……?』──自分がその可能性を示唆したのが、ずいぶんと昔のことのように思えて、アイビスは少し思い出すように目を細める。
「ただの勘、か?」
「いや……確信には至っていなかったが、全くの勘でもない。……教会にいた時、カイトが妙に饒舌になっているように感じたことがあった」
「ふうん?」
「その後にも船の上で、カイトにしては口が軽い、というか……」
「でもよ、それって、秘密を明かす前触れみたいなもんだったんじゃね?カイトがどの時点で、全て話す決意をしたのかは分かんねえが、もう隠すつもりがなくなってたから、秘密主義を貫く意味もなくなった、と。俺はそう了解したがな」
「……俺にはそれが、まるで──自分がいなくなった後のことを想定しているように思えたんだ」
それも、不在の意味ではなく、死後の意味──すなわち、自分が果たせないことを、後に残す者たちに託しているようだと。
ずっと感じていた違和感を、一足飛びにその結論まで繋げた訳ではない。
教会の時点では、カイトが恋に浮かれて浮き足立っているようだ、という的外れなことを考えていたくらいだ。
アイビスがカイトの死を予感したのは、ヘイレンから『カイトはもしかしたらもう戻ってこないかもしれない』と聞かされた時。
ヘイレンはそれを、仲間からの離別という意味で言ったのだが、アイビスの頭に浮かんだのは『死別』という言葉だったのだ。
ヘイレンはアイビスのその説明を「ふうん」と、自分から訊いておきながら気のない返事をして、「可能性は三つあったんだな」と言い出した。
「三つ?」
「第一に、カイトだけがいなくなる。第二に、カイトがユエを連れて行く。第三、二人ともに仲間の元に戻ってくる。──最終的に三番目に落ち着いたのは、こりゃ完全にユエのお手柄ってな」
ヘイレンが提示した二番目の可能性に、アイビスは背筋がぞっとなる。
『カイトがユエを連れて行く』──暗に示唆しているのは、心中。
(まさかカイトがそんなこと……)と全否定しかけて──これが自分の改めなければならないところだと、アイビスはこっそりと唇を噛んだ。
自分のこの考えは、カイトに対する信頼ではなく、カイトの弱さの否定だ、と。
アイビスの葛藤は表情に出ていたが、ヘイレンはそれを見過ごしてくれた。
明日の出航へ向けて船の準備に勤しむ傍ら、アイビスの脳の一部は徐々に葛藤を処理していく。
ドワーフの一件からの積み重ねで、ヘイレンはアイビスの補佐能力をかなり評価しているのか、商会関係の仕事まで手伝わされることになったが、口で文句を言いながらもアイビスの手は活き活きと動いていた。
(ああ、そうか)
アイビスがそう思った時、葛藤は吹っ切れる。
(俺はこういうのが、けっこう好きなんだな)
他人から頼られること、誰かを補佐すること、何かを任されること──副官としての立場を、義務感や責任感でこなしているのではなく、やりたくてやっている自分に改めて気づいた。
明日、東の人魚の族長へ贈るためという酒を確認しながら、アイビスはぽつり、ぽつりと話し始める。
「カイトとユエ……二人が並んでいる姿を見て、俺は自分の気持ちをやっと理解した」
船室の備え付けの机では、ヘイレンが何やら書類に目を通してはサインをしているが、そこから相槌は聞こえない。
アイビスも別に聞こえてなくてもいいかと思い、背中を向けたまま続ける。
「俺のカイトに対する想いは、恋情じゃなかった」
アイビスはその告白を、誰かに聞いてほしいのではなく、ただ自分が言いたいだけだった。
「負け惜しみに聞こえるかもしれないが……恋ではなく──信仰に近いものだったと思う。神への信仰心。俺はカイトの恋人ではなく、神の理解者になりたかった」
アイビスが思い出すのは、アディーン大司教の死の直前に、ラフィール司教と過ごした短い時間のこと。
あの時の会話で気づかされたのは、己の矮小さや傲慢さだった。
「信仰を続けるためには、カイトに神様でいてもらわなければならない。だから俺は……カイトがユエに振り回されたり、辛い時に性欲に逃げたり、恋に浮かれているように見えたり──そういう……普通の男みたいな行動が、赦せなかったんだ」
アイビスはカイトに、神としての振る舞いを強要していた。理想像を押しつけ、それから逸脱することが赦せなかった。
「カイトさえもただの男にしてしまうのが、恋なんだろうな。そう思うとやっぱり、俺のこの気持ちは恋情ではないよ。俺はカイトのためにそこまで……自分を変えられない」
そう言いながらも、アイビスは無自覚に自分の胸を守るように手で覆う。
二人一緒の場面を思い浮かべると、微かにそこに痛みが走るのも事実。しかしそれを口にしないのが、アイビスの最後の矜持だった。
ユエの告白の後、不快感を露わにするアイビスに、ヘイレンが『それはユエだからか?』と尋ねたことがあった。
その時は何を問われているのか分からず答えられなかったが、今のアイビスになら答えられる。
──ユエだから、ではない。そして、カイトの相手が自分ならば良かった、でもない。
カイトの相手は、誰であっても赦せなかった。
アイビスは、カイトが恋愛をすること自体が赦せなかった。それは──例え相手が己であっても、だ。
果たして、アイビスに一分でも恋心があったとしても、それは叶うと同時に失うものだった。なぜならアイビスの恋心は、カイトの神格化の上に成り立っていたからだ。
カイトに神としての振る舞いを望んでいたアイビスは、カイトが恋愛という神に相応しくない行動を取ったとたんに、恋心が失望に変わってしまったことだろう。
それは本当に、カイトの気持ちなど考えていない身勝手な感情だ。
自分の弱さ、狡さを知ってしまったアイビスは、かなりの自己嫌悪に陥ることにもなった。
その弱さを、カイトのようにさらけ出してしまえば、楽になるのかもしれない。しかしアイビスが選んだのは、ひとりで呑み込む方法。
最後の、副官としての矜持。
(……こんなの、自己満足だけどな)
苦笑いで虚勢をはるアイビスに、ヘイレンからかけられた言葉は、これだけだった。
「……もしかして、抜けるつもりなのか?」
今度は即答する。
「いや、もう少し付き合うさ」
ラークだけじゃない。自分も少しは成長していかなくては、とアイビスは自分に期待する。
「カイトが俺の人生を変えたことは、間違いない。感謝してるし、手伝えることがあるなら手伝いたいからな」
カイトが変わり、アイビスも変わっていく。ならば二人の関係性も変わるはず。
アイビスはこれまでカイトとの関係を、個人と個人ではなく、仲間として集団の中で築いてきた。それをこれからは、一対一で築いていきたいと、そう思っている。
それでできれば──(相棒、のような関係になれれば……)そんな理想を思い浮かべて、アイビスは気恥ずかしく目を伏せた。
***
その後、夕方近くになって戻ったアイビスを、色とりどりの表情をした仲間たちが出迎えた。
なぜか気まずそうなカイト、羞恥心にまみれたユエ、さっぱりとした表情のクウェイルとメイ。
はしゃぐアスカとヘロン、何かを納得した表情のフェザント、まだ納得しかねているジェイ、口を真一文字に結んだクレインはそっぽを向いている。
「なんだ、どうしたんだ」
アイビスからは、さっきまでの感傷が一気に吹き飛んでいた。
「それが……」
おそらく、もっとも今の状況に適した表情は、ラークのこの『驚愕』だろう。
自分がいない間に語られた新たな推測に、アイビスもラークと同じ表情になって、「なん、だと……?」と絶句する。
その時にはアイビスがわざわざ頭を切り替えようと努力しなくても、事態は先へ先へと進んでいたのだった。
******
約束の三日後、一行は新しい船に乗り換えて、人魚が指定した海域へと到着した。
人間の手が及ぶ、最東端。
そこから案内人の人魚たちの力を借りて、さらに東へと向かう。
船の左右を、小さな無人島ばかりが通り過ぎていく。
複雑な潮を読んで、人魚たちが航路を教え、時には集団で泳ぐことで波を起こして、荒波を越えさせてくれた。
一日、二日と波に揺られ、三日目の夕刻になって、やっと東の族長が待つ島へと辿り着いた。それだけの時間がかかったことをヘイレンは、「たぶんわざと複雑な航路をとって、俺たちに場所を覚えられないようにしたんだろう」と予想した。
そして「それだけ人魚の警戒心は強い」と続け、気を引き締めるように一行に忠告する。
着岸した島に降り立つと、ユエは人魚の姿へと戻り、少しためらってから着ていたシャツに手をかける。東の族長と面会するにあたって、服を着ないことが『正装』だという考えのもと、こうすることを事前に決めていたのだ。
案内人の人魚たちが、ユエの変化にざわっと波立つ。
そしてユエの胸元に揺れる蒼い鍵に、期待と不安が入り混じった目を向ける。
その不躾な視線から逃れようと、ユエはすぐさまカイトに抱っこをせがむ。横抱きに抱えられて、頰をカイトの鎖骨に擦りつけると、緊張が少しは解ける気がした。
「……首、気をつけろ」
川に沿って島の中心へと歩き始めると、カイトが耳元でそう囁いてきた。
「んん?」
「だいぶ消えたが、まだあとが残っている」
「あと?」
「……噛み跡」
きつく歯を立てられた感触が蘇って、ユエのうなじがさわっと粟立つ。凹凸を探そうと、無意識に指が首をなぞったが、はっきりとした引っかかりは感じられない。
ついでのように自分の胸元に目を落とすと、そこにたくさん散らばっていた紅い痕も、いつの間にかよく見なければ分からない程度に薄れている。
情事の痕跡が人目につかないことはいいことのはずなのだが、痕がなくなってしまうのが寂しく思えて、「また、つけてね」とカイトに囁き返していた。
噛み合わない会話は、カイトの苦笑いで終わる。
会話は聞こえていなかったが、二人の関係性を見せつけるやり取りに、メイは呆れた目を向ける。
そんなメイは、案内人の人魚たちと一緒に川を泳いでいる。速度を合わせてかたわらを歩くクウェイルも、メイと同じ目をしていて、互いの価値観が似ていることが、とてもありがたいとしみじみ感じてしまう。
おそらくユエにそんな意図はないだろうが、人間との親密な様子を案内人に見せつけることは、それほど悪い効果ではなかった。
困惑を生んだことで、それまで満々だった警戒心が少し弛んだのだから。
人魚が治める島は、人間の土地とはやはり様相が違っている。
青々と茂った木々は手付かずで、森は鳥や獣たちのもの。道はなく、一行が歩く川沿いも、ヒトが足で歩くことを想定してはいない。
しかしその代わり、人魚にとっての道となる川は手をかけて整備されていて、これまで一行が見てきたどの川よりも美しい。
それも、ただ見世物のように美しいのではなく、生きている美しさがある。
流れる水、水底の砂や砂利、たゆたう水草、川岸に咲く花、そして魚やカニやカエルや昆虫たち──人魚だけが心地いい空間ではなく、水に生きるもの総てが共存することで、その美しさは成り立っている。
「うおぉ!!」「わあ……!」
いきなりひらけた視界に、歓声を上げたのはヘロンとアスカ。
二人ほど率直に声は出せなかったが、他の面々もそのおとぎ話のような光景に目を奪われる。
深い青と、悠々とした翠と、光を弾く透明──辿り着いた湖は水の色の奥深さを教えてくれている。
しかしその自然の美さえも、人魚たちを惹き立たせる背景になってしまっていた。
十、二十、三十……百人を超える人魚たちが一堂に会し、まるで睡蓮の花のように湖を彩っている。
そしてその全員の視線が、一行の一挙手一投足を見張るように注がれているものだから、さすがのカイトも圧倒されている。
「……人間の客人を招き入れるのは、いつ以来だろうか」
威厳ある低い声が、湖の中央から発せられた。
男ばかりが集まっていた一団から、声の主がすっと前へ泳ぎ出る。
男女問わず華奢な体型が多い人魚の中で、その人物のがっしりと筋肉質な上半身と、たくわえられたあごひげは異質だ。
東の族長は、周囲の制止を聞かず、一人で堂々と近づいてくる。
ユエを抱いたカイトも水際ぎりぎりまで近づくと、岸にユエを座らせて、その肩を支えるように横に寄り添った。
手を伸ばせば届く距離で、族長は止まる。視線はユエの瞳から外れない。
「……お初にお目にかかります。中央の一族のユエです。この度は無理なお願いを聞いていただいて、ありがとうございます」
礼儀として目下のユエから名乗る。族長は鷹揚に受け止めてから、つい、とカイトに目を移す。そのささいな仕草だけで、族長がカイトにも興味を持っていることが知れた。
「カイト、と申します。……私の素性に関しては、とても一言では語れないほど複雑なので、後ほど詳しく説明する時間をいただきたい」
これで、さらに族長の興味をかき立てることに成功する。ユエのおまけではなく、人間というひとくくりではなく、カイトという個人を認めた族長は、客人全員に向けて己こそが東の一族の族長だと名乗った。
そしてあいさつもそこそこに、「それが……」と『人魚の鍵』に手を伸ばす。
ユエは首から銀の鎖を外すと、素直にその手に鍵を渡した。
「……百年ぶりに我が一族の手に……!これでユラン様も、ようやく心安らかに眠ることができよう」
周囲の人魚たちから歓声が上がる。しかしそれはだんだんと、ひそひそとした囁きに変わっていく。
ジャン・ノーとの決着に居合わせた者や、先に報告に帰った案内人から、『人魚の鍵』がもたらす奇跡についてすでに話が回っていたようだ。
人魚を人間に変える──その噂の受け止め方は、年代によって二つに分かれている。
若者たちは好奇心でもって、早く確かめたいと沸き立ち、年配者たちは恐怖心によって、知りたくないと目を逸らす。
相手から話を向けられる前に、ユエがその場の主導権を握るべく声を張り上げる。
「あの!実はその鍵に関して、わたしたちからお伝えしなければならないことがあります。大切な話、です」
申してみよ、と簡単に促す族長に、ユエが「大切で……長い、長い話なんです」と神妙に返すと、族長は少しの思案の末、側近たちに何か指示を出す。
するとどこからともなく、桶のようなものを持った人魚たちが現れて、一行の前にそれを並べて置く。桶の中には海鮮物がぎっしり詰められている。
「人間の口には合わぬかもしれんが……ヤシから我らが造った酒もある。歓迎の証として振る舞うつもりだったのだが、時間がかかるというのならば、食し飲みながら話を聞こう」
族長の前にも、葦を束ねて浮かべて卓にして、そこに酒や食事が並べられていく。
機を逃さずに、ヘイレンが「こちらからも」とお近づきの印に持ってきた酒や果物を贈ると、緊張感をはらんだままの宴会が始まった。
***
説明は主にユエとアスカの口から語られた。二人はお世辞にも説明上手とは言えなかったが、そのたどたどしさがむしろ聴衆の集中を最後まで保たせた。
純血の存在や人間の成り立ちといった、壮大で唐突な内容を、もちろん人魚たちはすんなりと信じることはできず、族長も自分の手の中の『人魚の鍵』とアスカが持つ『ドワーフの鍵』を見比べるばかり。
しかし一行の目的はそこにはなかったから、人魚たちが信じていなくとも構わずに、混乱の上に混乱を畳み掛けていく。
「証拠のひとつをお見せします。『人魚の鍵』を」
広げたユエの手のひらに、族長は反射的に鍵を置いた。
鍵を大事に受け取ったユエに、カイトがさっと大きめのシャツを羽織らせる。その藍染の丈の長いシャツは、この時に備えてカイトが持ってきたものだった。
ユエは鍵をいったんカイトに預けて、シャツのボタンをしっかり止める。鍵を返してもらう際に、カイトの手がぎゅっとユエの手を握っていき、それに勇気をもらってユエの強張っていた表情も弛む。
百人の人魚が、ごくりと喉を鳴らしてその瞬間を待っていた。
ユエは一点に集まる視線を物ともせず、ごく自然な動きで、鍵を回す。光が収束する頃には、鱗から肌に変わった下半身が湖の水の冷たさを感じていた。
時間が止まったような空間の中、ユエだけがすっくと立ち上がる。
時間が動き出す前に、ユエは『人魚の鍵』を掲げて聴衆を見渡すと、事前に仲間たちと計画した通りに話を続けていく。
「これが人魚にとって、朗報なのか残念なことなのかは分かりませんが……おそらく、鍵を使うにはある条件が必要です」
条件?と全ての人魚の頭に疑問符が浮かぶのを待って、ユエはひと呼吸置いた。
「その条件とは──『純血であること』」
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