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第六章 追憶の海に花束を浮かべて
番外編 発情誘発薬 前編
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「発情誘発薬?」
その不穏な名前を繰り返して、カイトは小瓶に入ったどろっとした液体に目を向ける。
「はい。本来は女性の排卵期に男性の発情期を合わせるために使います。その期間が合わなければ子どもができませんから」
瓶を持ってきた人魚はごく真面目に説明してくれる。
「なんとか少子化に歯止めをかけようと、一族の威信をかけて開発されたものです。東の一族、門外不出の品です」
「……それって言っちゃえば媚薬──っいってぇ!!」
言いにくい単語をぶっちゃけたヘロンは、フェザントから教育的指導を受けてたんこぶのできた頭を抱えた。だが下を向いて顔を隠しながら、なんだか面白い展開になりそうだとにやつきは抑えられない。
***
一行が人魚の島を訪れて、はや三日。
そしてここでの滞在は、どうやらまだまだ長引きそうになってきた。
東の族長はかなり慎重な人物のようで、『人魚の鍵』の検証はまだまだ続いているし、純血についてもまだ確証を得ることを諦めていない。
ユエの出生についての証言を得ようと、中央の一族へ使者を送る準備を着々と整えているらしい。ユエは「無駄足になる可能性が高いと思います……」と正直に進言したが、送るだけ送ってみようというのだ。
東の一族と中央の一族とは交流が断たれて久しい。
例え証言が得られなくても、これを機に何か関係が変わればという思惑もあるのでは、と分析したカイトたちは、それ以上反対せず成り行きを見守ることに決めている。
そしてもうひとつ、純血の検証として人魚たちが提案してきたのが、今カイトの手にある『発情誘発薬』である。
「あー、つまり……これを飲んでユエが発情するかどうか検証してみようと?」
「その通りです。これを服用すれば本来は不定期に起こる発情期を無理やり起こすことができますから」
「……からだに悪影響はないのか?」
媚薬とうたわれるものは大抵、依存性があったり副作用があったりの裏社会御用達という印象が強いカイトは、うろんげに液体を揺らしてみる。
「もちろん、そのあたりはきちんと試験済みです。これまで何十人もの人魚が使ってきましたが、一度も体調に異常をきたしたという報告はありません」
きっぱりと言い切る人魚だが、カイトはまだ完全には信用できず、正体を見極めようとコルク栓を抜いてくん、と匂ってみる。
(匂いは酒っぽいな。あとバニラと蜂蜜……?他にもなにか香辛料のような……)
何でできているのか直接人魚たちに聞いてしまえば早いが、門外不出というからには人間に教えてくれそうにはないし、いかにも怪しんでいるというカイトの態度が、さらに人魚たちの口を固くしてしまったのは失策だった。
天秤の『試してみる』側に、『人魚との友好』と、『それほど危険とは思えない匂い』、その上に『純血にはなにも起こらないはず』という予測が重なって乗って、『危険だ、やめておけ』側を凌駕した。
「……ユエ、飲んでみるか?」
「おれは別にいいけど」
周囲の仲間からも特に反対はない。
この時は誰しもがカイトと同じように、ユエは純血であるから発情が起こるはずがない、という思い込みがあったのだ。
──もしかしたらこの場でもっとも腹が据わっていたのは、瓶の中身をぐいっと一気に飲み干したユエだったのかもしれない。
******
早ければ一時間ほどで効果が現れるということで、一行は人魚たちに見張られるようにその日の夕食を済ませることとなった。
停泊している船の近くで人間組は横にした丸太をイスにして座り、ユエはお皿と一緒に川にプカプカと浮かんでいる。食材は船に積んできた保存食と、人魚から提供された魚介類、そして暇を持て余したヘロンやアスカが木登りして収穫した木の実や果物である。
ちなみに、メイとクウェイルは一足先に帰宅の途についた。
これ以上領地を留守にはできないからと、ヘイレンから借りた別の船で昨日出発したのだ。
完全な和解にはまだ時間がかかりそうだが、「いつでも帰ってきなさい」とメイに声をかけた後、族長は確かに「……二人で」と付け加えていたから、クウェイルとの結婚を少しは認める気になったのかもしれない。
そしてクウェイルはクウェイルで、「必ず近いうちに、人間と人魚が結婚できる法を作ってみせる。そしてメイが堂々と人前に出られるよう……いや、人魚全員が安心してどこの海でも泳げるよう、我が領地から意識改革を……!」などと壮大な願望を別れのあいさつに語っていった。
ついでにヘイレンはというと、人魚との貿易に向けて各方面への調整に勤しんでいる。
こちらもまだ本決まりではないが、さすがのヴァンダイン商会の名は人魚にも届いていて、取引相手としては悪くないという印象を持ってもらえたようだ。
一行が一時休息をとったあの島を拠点として整備すべく、ヘイレンは船で行ったり来たりしていて、今はちょうど不在だ。
そしてアイビスもそれに付き合わされていて、この場にはいない。
どうやらヘイレンは商会へ勧誘する目標として、アイビスに狙いを定めたらしい。
「この調子じゃあアイビスがヘイレンの思惑に気づいた時には、もう断れないところまで引っ張り込まれてそうだな」
アイビスに同情しながらも、ヘイレンのターゲットが自分たちから逸れたことはほっとするクレインに、ヘロンが茶々を入れる。
「ついでに、クレインもジェイも一緒にヘイレンの部下になっちゃえば?」
うししっ!と他人事に楽しむヘロンに、クレインは「うらやましいなら、ヘロンが商会に入れば?」つん、とそっぽを向く。
「えー、やだよ、あんなめんどくさそうなところ!」
「なんだよ、どこがめんどくさそうなんだ?」
フェザントに聞かれて、ヘロンは即答する。
「ヘイレンが牛耳ってる組織だぜぇ?!ぜったい、めんどう!!」
あの得体の知れない、つかみどころのないニヤニヤ笑いを思い出して、全員が「あぁ……」と同意した。
「でもさ、でもさ!オレ、あっちはちょっと興味あるんだよなー」
「『あっち』?」
キョトン顔のラークにヘロンが向けるのはいたずら小僧の笑顔。
「盗賊団のほう!」
「と、盗賊団って……」
「人魚を助けたり、貴族からお宝奪ったりすんだろ!?すっげぇ楽しそう!それに、オレに向いてそう!!」
盗賊団を「楽しそう」という子どもに、大人として説教するべきかフェザントだけは迷ったが、他はヘロンなら大丈夫だろうという謎の安心感があって笑ってしまう。
そんなこんなで一時間が経ったが、ユエの体調に変化は見られない。
本人も「ちょっとぽかぽかはするけど。お酒飲んだ時みたいに」という感想だ。
一応、もう少し様子を見てみようということで、雑談は続く。
「そいえばさ思ったんだけど、人魚ってもしかしておっぱい大きくなるまで男女の見分け、つかねぇの?」
「いや、そんなことはない」
ヘロンの疑問に答えるのは、もちろんカイト。
「むしろ人魚は、生まれてくる前に子どもが男か女かわかる」
「えっ、生まれる前に?」
「男女で妊娠期間がかなり変わってくるんだ。生まれてくるのが女の子ならだいたい八ヶ月くらい、男の子なら十一ヶ月以上になる」
「ふぅん、それって人間に比べると早いの?遅いの?」
「人間は十月十日と言われている」
「ドワーフもだいたいそんなもんだな」
娘のことを思い出しているフェザントだったが、その心中は切なさよりも懐かしさが勝って、自然と優しい笑みが浮かんでいた。
「へぇ~、お母さんって大変なんだなー。そんなに長い間、子どもをお腹の中で育てるなんて」
「ね。それに産む時、すっごく痛いんでしょう?マイナも言ってたよ。剣で斬られた時より何倍も痛かったって!」
あのマイナがそこまで言うなんてよっぽどだと、ラークは痛みを想像して顔をしかめている。
「確かに、あの痛みはなんとも言えないわね」
さらっと会話に参加してきたのは、見張り役の人魚のひとり。そして、周りから見つめられてから自分が声を出していたことに気づいて、はっと口を押さえている。
「へぇ!そこは人魚もおんなじなんだ?やっぱすっげぇ痛いの?!」
しかし当たり前のように会話を続けるヘロンに、その人魚も思わず返事をしてしまう。
「え、ええ。まあ……他に例えようのない痛みというか」
「うっわ、タイヘンだなぁ!あ、じゃあさじゃあさ、人魚にも双子っているのっ?!」
「えっ、双子?」
「そう、双子!」
「そりゃあもちろん、双子もいるし三つ子だって──」
「ええ?!三つ子?!」
大げさに驚いたヘロンはバッと振り返って、「人間にも三つ子っているのかっ?!」とカイトに詰め寄った。
「っ、ああ、人間にも生まれる──おい、近いぞ、落ち着け」「えぇーー?!知らなかった!!オレ、三つ子なんて見たことねえぞ!」
大興奮のヘロンに若干引きながらも、他の面々も「話には聞いたことあるけど」「実際には見たことねえな」「え、じゃあ同じ顔が三人いるの?!」とそれぞれ感想を語る。
そこへさらにカイトから「噂だけなら、四つ子や五つ子なんてのもいると聞いたことが──」と聞かされて、「おぉー!!」と人魚も一緒に感嘆の声をあげる。
それで一気に打ち解けた雰囲気になり、それまで人間と馴れ合ってなるものかと距離を置いていた見張り役の人魚たちも、口調がくだけていく。
「へぇ、なんだか話を聞いていると、人間もあんまり変わらないのね」
「ほんと。全然ちがう生き物みたいに思ってたけど……」
そしてどこか神聖視していたユエとも、実は色々とおしゃべりしてみたかったらしく、少し年上の女性陣が一斉に距離感を詰めてきた。
「ね、ずっと聞きたかったんだけど、どうしてこんなに短い髪なの?」
「そうそう、私も不思議に思ってたわ。こんなに綺麗な髪なのに、どうして切っちゃったのよ?」
「えーと……邪魔だったから」
「ええ?!なんてもったいない……!」
「もう伸ばさないの?ううん、絶対伸ばしたほうがいいわよ!」
「そうよ、結わえるくらい伸ばして髪飾りをつけるといいわ。毎日ちがう髪飾りをつけるの。気分も変わるし、色々選ぶのも楽しいのよ」
「わかるわ~!でも私、不器用だからなかなか上手に作れないのよね……」
「そんなことないでしょ。今日のだって赤と白の貝がらがとってもきれい!」
「ほんとう?あなたに褒められるとうれしいわ」
男性陣がまったく口を挟めない中、アスカがするりと割って入る。
「これ、自分で作ったの?」
「ええ、そうよ。だいたいみんな、自分の髪飾りは自分で作るの」
「すごい、すごい!とってもかわいいっ!」
「あら、ありがとう」
「あなたもキレイな赤い髪ね。こんな色は人魚にはいないわ」
「そうなの?」
「白い貝がらが映えそう。それに黄色のヒトデや赤い鳥の羽根とか……」
「確かに、私たちの髪の色には合わないけど、あなたにはぴったりね!よければ作ってあげましょうか」
「えっ、ほんとう?!」
素直に目を輝かせたアスカに、お姉様方もこころよく約束する。
「もちろん!キレイだけど自分には似合わないと思って取っておいた素材があるの」
「うわーっ、ありがとうっ」
自分たちの髪飾りを見せながら「どんなのがいいかしら」と相談を始めた女子たちに対し、そのひとつをひょいと手に取ったカイトは情緒のかけらもないことを言う。
「……真珠に珊瑚、オパール、メノウ、ヒスイ──商売人にとっては垂涎ものだな」
「もしかしてヘイレンが人魚と取引しようとしてるものって?」
「これらも候補だろうな。海にはまだ人間が手をつけていないお宝がたくさん眠っている」
髪飾りはカイトからフェザントの手に渡り、ドワーフの目から見ても一級品だとお墨付きをもらっている。
「ヘイレン──商会ならあこぎな商売はしないだろうが、もしこの先他にも人間と取引するようになるなら、気をつけたほうがいい。人魚が相場を知らないからと騙し取る輩もいるだろうからな」
カイトは忠告に加えて親切にも、この真珠ひとつで酒樽いくつ分にはなるはずだとだいたいの相場を教え、さらにフェザントもどんな宝石が希少価値が高いかを簡単な範囲で教えた。
すると話題は、人魚たちが欲しいと思う人間の品物へと移る。海の中の世界では金貨、銀貨のような通貨はあまり流通しておらず、物々交換が基本なのだ。
人魚のひとりがふと、ユエの着ている藍染のシャツに手を伸ばす。
「実は……ユエ様が着ているのを見て、人間の服もいいなと思ったの」
仲間からの非難を覚悟していたのか小さな声だったが、意外にも周りから「実は……わたしも」「私もなの」と同意が得られて、自信を持ったその女性は「どうやってこんな色を?」と濡れても色落ちせず透けない布をしげしげと見る。
カイトが染色の技術について教えると、人魚たちはそろって感心する。
「人間の服は色んな色があってうらやましいわ」
「そうねー、でもこれってユエ様、水の中だと動きにくくないですか?」
『様』はやめてと何度言っても改めてくれないからユエもそろそろ諦めていて、今も訂正はしないでおく。
「慣れればそんなに……おれは服着てるほうが落ち着くようになっちゃったから」
人魚の男性は普通、上半身をなにかで隠したりはしない。だからユエも公式の場では服を脱ぐが、仲間の前では人魚の姿でも服を手放せなくなっていた。
「えーーっ、でもさあ」そこでなぜかヘロンから抗議の声があがる。
「人魚はぜったいアレのほうがいいよ!あの、貝がらの服!『人魚!』って感じだしっ」
豊満な胸を貝がらで覆った人魚たち──そんな夢のような妄想をしていたヘロンは、それを裏切る光景に嘆きが止まらないらしい。
目の前の人魚の女性たちの胸を覆うのは、貝がらではなく、水草で織った服である。そのためヘロンが期待していたほどの肌の露出はないのだった。
「貝がらって……やあね、あれはもう時代遅れよ」
「そうそう、重いし着心地は悪いし壊れやすいし」
「あんなのつけてらんないわ」
そして女性たちの容赦ない感想によって邪な妄想は粉々に砕け散る。
「くっそぉ!メイだけだと思ったのにっ!人間と暮らしてるから服着てるんだって……!まさかこんなに人魚がいるのに、ひとりもいないなんて……!!」
地面に拳を叩きつけて悔しがるヘロンに、ユエから救いの言葉。
「えーと……中央の一族はまだ貝がらだから──」「神よっ!!」
天を仰いだ助平は放っておくことにして、カイトは人魚の服に関心を向ける。
「水草の繊維か……撥水性がよさそうだし、なかなかいい素材だと思うが。人間の服の色や柄がうらやましいなら、これを染める方法を研究したらどうだ?」
「そんなことできるの?」
「さあ、どうだろうな。だが綿や麻に撥水性や速乾性を持たせるような加工を考えるよりは、そっちのほうが早い気がするがな」
カイトの助言を真剣に検討し始めた人魚たちは、完全に当初の目的を忘れかけていた。
「……そろそろ二時間経つな」
カイトのつぶやきにハッとして、パッと視線が一点に集中する。
しかしその先には、こちらも目的を忘れている──つまり、忘れるほどなにも変化が起こっていないユエがいた。
「……あの、体調に変化は?」怖々と尋ねられたユエは「う~ん」と考えてから、「やっぱりちょっとポカポカしてるだけみたい」
「二時間も経てば効果は最大になっているはず」
「ここまで待っても発情が起こらないとなると……?」
仕事の顔に戻った人魚たちは、短い協議の結果、ユエに『発情誘発薬』は効かなかったという結論に達し、これにて実験は終了となった。
***
「この結果を族長に報告してまいります」と頭を下げる人魚たちを見送ろうとした、その時──「あのさー」悪魔のささやきがヘロンからもたらされる。
「これって今ユエが人間に戻ったら、どうなんの?」
その瞬間、実験の延長が決まったのだった。
***
急きょ族長から『人魚の鍵』を借り受けると、ユエは腰元で結んで短くしていたシャツをほどき、人間に戻る準備を整える。
周囲の緊張をよそに、本人はためらいなく鍵を使おうとするから、クレインが慌てて「待った、待った!」と止めなければならなかった。
「ちょ、待って……!えっ、ここで?」
「クレイン?」
「や、こんな大勢の前で戻るのはまずいんじゃないの?だって……ねえ?」
わかるでしょ、と同意を求めるクレインだが、「ん?」と首をかしげるユエにはまったく伝わっていない。
『発情誘発薬』が人魚にしか効かないものであるなら何の問題もないが、もし人間にも効果があるものだったら──?
無性である人魚の姿のユエには効かなかったが、生殖器官ができた人間の姿では──?
すでに服用して二時間が経って効果が最大になっているというのなら、今人間の姿に戻ったらいきなりその最大の波が押し寄せるのでは──?
クレインの頭によぎった懸念と同じものをカイトもそっくりそのまま持っていたから、無言でユエを抱き上げると隔離するために船へと向かった。
船室へ消えてからほどなくして、カイトだけが再び仲間たちの前に姿を現わすと、甲板から無言の伝言を送る。
──大きく両手を交差させて、×印を。
「──そんじゃ、ま、ユエのことはカイトに任せて」
「当分、船には戻れないな。今日はこのまま島で野宿になりそうだな」
「そうだね。まあ、布団なしでも大丈夫な季節でよかったよ」
テキパキと次の行動に移る仲間たちを、置いてけぼりの人魚たちがポカンと見ているうちに、カイトはこっそりと船室へ戻っていった。
その不穏な名前を繰り返して、カイトは小瓶に入ったどろっとした液体に目を向ける。
「はい。本来は女性の排卵期に男性の発情期を合わせるために使います。その期間が合わなければ子どもができませんから」
瓶を持ってきた人魚はごく真面目に説明してくれる。
「なんとか少子化に歯止めをかけようと、一族の威信をかけて開発されたものです。東の一族、門外不出の品です」
「……それって言っちゃえば媚薬──っいってぇ!!」
言いにくい単語をぶっちゃけたヘロンは、フェザントから教育的指導を受けてたんこぶのできた頭を抱えた。だが下を向いて顔を隠しながら、なんだか面白い展開になりそうだとにやつきは抑えられない。
***
一行が人魚の島を訪れて、はや三日。
そしてここでの滞在は、どうやらまだまだ長引きそうになってきた。
東の族長はかなり慎重な人物のようで、『人魚の鍵』の検証はまだまだ続いているし、純血についてもまだ確証を得ることを諦めていない。
ユエの出生についての証言を得ようと、中央の一族へ使者を送る準備を着々と整えているらしい。ユエは「無駄足になる可能性が高いと思います……」と正直に進言したが、送るだけ送ってみようというのだ。
東の一族と中央の一族とは交流が断たれて久しい。
例え証言が得られなくても、これを機に何か関係が変わればという思惑もあるのでは、と分析したカイトたちは、それ以上反対せず成り行きを見守ることに決めている。
そしてもうひとつ、純血の検証として人魚たちが提案してきたのが、今カイトの手にある『発情誘発薬』である。
「あー、つまり……これを飲んでユエが発情するかどうか検証してみようと?」
「その通りです。これを服用すれば本来は不定期に起こる発情期を無理やり起こすことができますから」
「……からだに悪影響はないのか?」
媚薬とうたわれるものは大抵、依存性があったり副作用があったりの裏社会御用達という印象が強いカイトは、うろんげに液体を揺らしてみる。
「もちろん、そのあたりはきちんと試験済みです。これまで何十人もの人魚が使ってきましたが、一度も体調に異常をきたしたという報告はありません」
きっぱりと言い切る人魚だが、カイトはまだ完全には信用できず、正体を見極めようとコルク栓を抜いてくん、と匂ってみる。
(匂いは酒っぽいな。あとバニラと蜂蜜……?他にもなにか香辛料のような……)
何でできているのか直接人魚たちに聞いてしまえば早いが、門外不出というからには人間に教えてくれそうにはないし、いかにも怪しんでいるというカイトの態度が、さらに人魚たちの口を固くしてしまったのは失策だった。
天秤の『試してみる』側に、『人魚との友好』と、『それほど危険とは思えない匂い』、その上に『純血にはなにも起こらないはず』という予測が重なって乗って、『危険だ、やめておけ』側を凌駕した。
「……ユエ、飲んでみるか?」
「おれは別にいいけど」
周囲の仲間からも特に反対はない。
この時は誰しもがカイトと同じように、ユエは純血であるから発情が起こるはずがない、という思い込みがあったのだ。
──もしかしたらこの場でもっとも腹が据わっていたのは、瓶の中身をぐいっと一気に飲み干したユエだったのかもしれない。
******
早ければ一時間ほどで効果が現れるということで、一行は人魚たちに見張られるようにその日の夕食を済ませることとなった。
停泊している船の近くで人間組は横にした丸太をイスにして座り、ユエはお皿と一緒に川にプカプカと浮かんでいる。食材は船に積んできた保存食と、人魚から提供された魚介類、そして暇を持て余したヘロンやアスカが木登りして収穫した木の実や果物である。
ちなみに、メイとクウェイルは一足先に帰宅の途についた。
これ以上領地を留守にはできないからと、ヘイレンから借りた別の船で昨日出発したのだ。
完全な和解にはまだ時間がかかりそうだが、「いつでも帰ってきなさい」とメイに声をかけた後、族長は確かに「……二人で」と付け加えていたから、クウェイルとの結婚を少しは認める気になったのかもしれない。
そしてクウェイルはクウェイルで、「必ず近いうちに、人間と人魚が結婚できる法を作ってみせる。そしてメイが堂々と人前に出られるよう……いや、人魚全員が安心してどこの海でも泳げるよう、我が領地から意識改革を……!」などと壮大な願望を別れのあいさつに語っていった。
ついでにヘイレンはというと、人魚との貿易に向けて各方面への調整に勤しんでいる。
こちらもまだ本決まりではないが、さすがのヴァンダイン商会の名は人魚にも届いていて、取引相手としては悪くないという印象を持ってもらえたようだ。
一行が一時休息をとったあの島を拠点として整備すべく、ヘイレンは船で行ったり来たりしていて、今はちょうど不在だ。
そしてアイビスもそれに付き合わされていて、この場にはいない。
どうやらヘイレンは商会へ勧誘する目標として、アイビスに狙いを定めたらしい。
「この調子じゃあアイビスがヘイレンの思惑に気づいた時には、もう断れないところまで引っ張り込まれてそうだな」
アイビスに同情しながらも、ヘイレンのターゲットが自分たちから逸れたことはほっとするクレインに、ヘロンが茶々を入れる。
「ついでに、クレインもジェイも一緒にヘイレンの部下になっちゃえば?」
うししっ!と他人事に楽しむヘロンに、クレインは「うらやましいなら、ヘロンが商会に入れば?」つん、とそっぽを向く。
「えー、やだよ、あんなめんどくさそうなところ!」
「なんだよ、どこがめんどくさそうなんだ?」
フェザントに聞かれて、ヘロンは即答する。
「ヘイレンが牛耳ってる組織だぜぇ?!ぜったい、めんどう!!」
あの得体の知れない、つかみどころのないニヤニヤ笑いを思い出して、全員が「あぁ……」と同意した。
「でもさ、でもさ!オレ、あっちはちょっと興味あるんだよなー」
「『あっち』?」
キョトン顔のラークにヘロンが向けるのはいたずら小僧の笑顔。
「盗賊団のほう!」
「と、盗賊団って……」
「人魚を助けたり、貴族からお宝奪ったりすんだろ!?すっげぇ楽しそう!それに、オレに向いてそう!!」
盗賊団を「楽しそう」という子どもに、大人として説教するべきかフェザントだけは迷ったが、他はヘロンなら大丈夫だろうという謎の安心感があって笑ってしまう。
そんなこんなで一時間が経ったが、ユエの体調に変化は見られない。
本人も「ちょっとぽかぽかはするけど。お酒飲んだ時みたいに」という感想だ。
一応、もう少し様子を見てみようということで、雑談は続く。
「そいえばさ思ったんだけど、人魚ってもしかしておっぱい大きくなるまで男女の見分け、つかねぇの?」
「いや、そんなことはない」
ヘロンの疑問に答えるのは、もちろんカイト。
「むしろ人魚は、生まれてくる前に子どもが男か女かわかる」
「えっ、生まれる前に?」
「男女で妊娠期間がかなり変わってくるんだ。生まれてくるのが女の子ならだいたい八ヶ月くらい、男の子なら十一ヶ月以上になる」
「ふぅん、それって人間に比べると早いの?遅いの?」
「人間は十月十日と言われている」
「ドワーフもだいたいそんなもんだな」
娘のことを思い出しているフェザントだったが、その心中は切なさよりも懐かしさが勝って、自然と優しい笑みが浮かんでいた。
「へぇ~、お母さんって大変なんだなー。そんなに長い間、子どもをお腹の中で育てるなんて」
「ね。それに産む時、すっごく痛いんでしょう?マイナも言ってたよ。剣で斬られた時より何倍も痛かったって!」
あのマイナがそこまで言うなんてよっぽどだと、ラークは痛みを想像して顔をしかめている。
「確かに、あの痛みはなんとも言えないわね」
さらっと会話に参加してきたのは、見張り役の人魚のひとり。そして、周りから見つめられてから自分が声を出していたことに気づいて、はっと口を押さえている。
「へぇ!そこは人魚もおんなじなんだ?やっぱすっげぇ痛いの?!」
しかし当たり前のように会話を続けるヘロンに、その人魚も思わず返事をしてしまう。
「え、ええ。まあ……他に例えようのない痛みというか」
「うっわ、タイヘンだなぁ!あ、じゃあさじゃあさ、人魚にも双子っているのっ?!」
「えっ、双子?」
「そう、双子!」
「そりゃあもちろん、双子もいるし三つ子だって──」
「ええ?!三つ子?!」
大げさに驚いたヘロンはバッと振り返って、「人間にも三つ子っているのかっ?!」とカイトに詰め寄った。
「っ、ああ、人間にも生まれる──おい、近いぞ、落ち着け」「えぇーー?!知らなかった!!オレ、三つ子なんて見たことねえぞ!」
大興奮のヘロンに若干引きながらも、他の面々も「話には聞いたことあるけど」「実際には見たことねえな」「え、じゃあ同じ顔が三人いるの?!」とそれぞれ感想を語る。
そこへさらにカイトから「噂だけなら、四つ子や五つ子なんてのもいると聞いたことが──」と聞かされて、「おぉー!!」と人魚も一緒に感嘆の声をあげる。
それで一気に打ち解けた雰囲気になり、それまで人間と馴れ合ってなるものかと距離を置いていた見張り役の人魚たちも、口調がくだけていく。
「へぇ、なんだか話を聞いていると、人間もあんまり変わらないのね」
「ほんと。全然ちがう生き物みたいに思ってたけど……」
そしてどこか神聖視していたユエとも、実は色々とおしゃべりしてみたかったらしく、少し年上の女性陣が一斉に距離感を詰めてきた。
「ね、ずっと聞きたかったんだけど、どうしてこんなに短い髪なの?」
「そうそう、私も不思議に思ってたわ。こんなに綺麗な髪なのに、どうして切っちゃったのよ?」
「えーと……邪魔だったから」
「ええ?!なんてもったいない……!」
「もう伸ばさないの?ううん、絶対伸ばしたほうがいいわよ!」
「そうよ、結わえるくらい伸ばして髪飾りをつけるといいわ。毎日ちがう髪飾りをつけるの。気分も変わるし、色々選ぶのも楽しいのよ」
「わかるわ~!でも私、不器用だからなかなか上手に作れないのよね……」
「そんなことないでしょ。今日のだって赤と白の貝がらがとってもきれい!」
「ほんとう?あなたに褒められるとうれしいわ」
男性陣がまったく口を挟めない中、アスカがするりと割って入る。
「これ、自分で作ったの?」
「ええ、そうよ。だいたいみんな、自分の髪飾りは自分で作るの」
「すごい、すごい!とってもかわいいっ!」
「あら、ありがとう」
「あなたもキレイな赤い髪ね。こんな色は人魚にはいないわ」
「そうなの?」
「白い貝がらが映えそう。それに黄色のヒトデや赤い鳥の羽根とか……」
「確かに、私たちの髪の色には合わないけど、あなたにはぴったりね!よければ作ってあげましょうか」
「えっ、ほんとう?!」
素直に目を輝かせたアスカに、お姉様方もこころよく約束する。
「もちろん!キレイだけど自分には似合わないと思って取っておいた素材があるの」
「うわーっ、ありがとうっ」
自分たちの髪飾りを見せながら「どんなのがいいかしら」と相談を始めた女子たちに対し、そのひとつをひょいと手に取ったカイトは情緒のかけらもないことを言う。
「……真珠に珊瑚、オパール、メノウ、ヒスイ──商売人にとっては垂涎ものだな」
「もしかしてヘイレンが人魚と取引しようとしてるものって?」
「これらも候補だろうな。海にはまだ人間が手をつけていないお宝がたくさん眠っている」
髪飾りはカイトからフェザントの手に渡り、ドワーフの目から見ても一級品だとお墨付きをもらっている。
「ヘイレン──商会ならあこぎな商売はしないだろうが、もしこの先他にも人間と取引するようになるなら、気をつけたほうがいい。人魚が相場を知らないからと騙し取る輩もいるだろうからな」
カイトは忠告に加えて親切にも、この真珠ひとつで酒樽いくつ分にはなるはずだとだいたいの相場を教え、さらにフェザントもどんな宝石が希少価値が高いかを簡単な範囲で教えた。
すると話題は、人魚たちが欲しいと思う人間の品物へと移る。海の中の世界では金貨、銀貨のような通貨はあまり流通しておらず、物々交換が基本なのだ。
人魚のひとりがふと、ユエの着ている藍染のシャツに手を伸ばす。
「実は……ユエ様が着ているのを見て、人間の服もいいなと思ったの」
仲間からの非難を覚悟していたのか小さな声だったが、意外にも周りから「実は……わたしも」「私もなの」と同意が得られて、自信を持ったその女性は「どうやってこんな色を?」と濡れても色落ちせず透けない布をしげしげと見る。
カイトが染色の技術について教えると、人魚たちはそろって感心する。
「人間の服は色んな色があってうらやましいわ」
「そうねー、でもこれってユエ様、水の中だと動きにくくないですか?」
『様』はやめてと何度言っても改めてくれないからユエもそろそろ諦めていて、今も訂正はしないでおく。
「慣れればそんなに……おれは服着てるほうが落ち着くようになっちゃったから」
人魚の男性は普通、上半身をなにかで隠したりはしない。だからユエも公式の場では服を脱ぐが、仲間の前では人魚の姿でも服を手放せなくなっていた。
「えーーっ、でもさあ」そこでなぜかヘロンから抗議の声があがる。
「人魚はぜったいアレのほうがいいよ!あの、貝がらの服!『人魚!』って感じだしっ」
豊満な胸を貝がらで覆った人魚たち──そんな夢のような妄想をしていたヘロンは、それを裏切る光景に嘆きが止まらないらしい。
目の前の人魚の女性たちの胸を覆うのは、貝がらではなく、水草で織った服である。そのためヘロンが期待していたほどの肌の露出はないのだった。
「貝がらって……やあね、あれはもう時代遅れよ」
「そうそう、重いし着心地は悪いし壊れやすいし」
「あんなのつけてらんないわ」
そして女性たちの容赦ない感想によって邪な妄想は粉々に砕け散る。
「くっそぉ!メイだけだと思ったのにっ!人間と暮らしてるから服着てるんだって……!まさかこんなに人魚がいるのに、ひとりもいないなんて……!!」
地面に拳を叩きつけて悔しがるヘロンに、ユエから救いの言葉。
「えーと……中央の一族はまだ貝がらだから──」「神よっ!!」
天を仰いだ助平は放っておくことにして、カイトは人魚の服に関心を向ける。
「水草の繊維か……撥水性がよさそうだし、なかなかいい素材だと思うが。人間の服の色や柄がうらやましいなら、これを染める方法を研究したらどうだ?」
「そんなことできるの?」
「さあ、どうだろうな。だが綿や麻に撥水性や速乾性を持たせるような加工を考えるよりは、そっちのほうが早い気がするがな」
カイトの助言を真剣に検討し始めた人魚たちは、完全に当初の目的を忘れかけていた。
「……そろそろ二時間経つな」
カイトのつぶやきにハッとして、パッと視線が一点に集中する。
しかしその先には、こちらも目的を忘れている──つまり、忘れるほどなにも変化が起こっていないユエがいた。
「……あの、体調に変化は?」怖々と尋ねられたユエは「う~ん」と考えてから、「やっぱりちょっとポカポカしてるだけみたい」
「二時間も経てば効果は最大になっているはず」
「ここまで待っても発情が起こらないとなると……?」
仕事の顔に戻った人魚たちは、短い協議の結果、ユエに『発情誘発薬』は効かなかったという結論に達し、これにて実験は終了となった。
***
「この結果を族長に報告してまいります」と頭を下げる人魚たちを見送ろうとした、その時──「あのさー」悪魔のささやきがヘロンからもたらされる。
「これって今ユエが人間に戻ったら、どうなんの?」
その瞬間、実験の延長が決まったのだった。
***
急きょ族長から『人魚の鍵』を借り受けると、ユエは腰元で結んで短くしていたシャツをほどき、人間に戻る準備を整える。
周囲の緊張をよそに、本人はためらいなく鍵を使おうとするから、クレインが慌てて「待った、待った!」と止めなければならなかった。
「ちょ、待って……!えっ、ここで?」
「クレイン?」
「や、こんな大勢の前で戻るのはまずいんじゃないの?だって……ねえ?」
わかるでしょ、と同意を求めるクレインだが、「ん?」と首をかしげるユエにはまったく伝わっていない。
『発情誘発薬』が人魚にしか効かないものであるなら何の問題もないが、もし人間にも効果があるものだったら──?
無性である人魚の姿のユエには効かなかったが、生殖器官ができた人間の姿では──?
すでに服用して二時間が経って効果が最大になっているというのなら、今人間の姿に戻ったらいきなりその最大の波が押し寄せるのでは──?
クレインの頭によぎった懸念と同じものをカイトもそっくりそのまま持っていたから、無言でユエを抱き上げると隔離するために船へと向かった。
船室へ消えてからほどなくして、カイトだけが再び仲間たちの前に姿を現わすと、甲板から無言の伝言を送る。
──大きく両手を交差させて、×印を。
「──そんじゃ、ま、ユエのことはカイトに任せて」
「当分、船には戻れないな。今日はこのまま島で野宿になりそうだな」
「そうだね。まあ、布団なしでも大丈夫な季節でよかったよ」
テキパキと次の行動に移る仲間たちを、置いてけぼりの人魚たちがポカンと見ているうちに、カイトはこっそりと船室へ戻っていった。
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