32 / 32
32 エピローグ
しおりを挟む社内のリクリエーションでバーベキューが開催された。バーベキューのできる公園を貸し切りにして、ガヤガヤと盛り上がっている。三月後半のまだ肌寒い季節だったが、熱々の食べ物とアルコールで、それほど寒さは感じなかった。
福留くんは網でお肉を焼いている秋山課長に声を掛ける。福留くんはジーンズにパーカーのスタイルで、休日の見慣れた格好だった。
「焼きそばを作りましょうか」
「福留、頼むわ」
「はい」
福留くんが鉄板に油を敷くと、油の音がしてきた。
「福留くん、肉を入れちゃっていい?」
私は豚肉を持ってきて、福留くんにお手伝いを申し出る。
「お願いします」
ザアッと豚肉を入れると、油の上で肉が跳ねた。その美味しそうな香りに、杉原さんや秋山課長も幸せそうな顔になる。
福留くんは手際よく塩胡椒を振って、菜箸で肉をひっくり返しながら焼いていく。肉の次は野菜だ。切られた野菜ともやしの入っている野菜ミックスの封を開けた。
「野菜も入れるね」
「お願いします、あとは時間勝負ですね」
本当は野菜を切りたいのだけど、今日は沢山いるし仕方ない。肉からしみだした油の上に野菜を入れると、福留くんはしばらく待ってから混ぜ始めた。その方が、肉の油が野菜にいきわたるからだ。
普段から一緒に料理をしているからか、私たちは阿吽の呼吸だった。材料を追加で入れる時に、福留くんが少し手を止めてくれるのが愛おしい。
焼きそばのソースを入れると香ばしい香りが漂って来た。
私と福留くんの息の合ったやり取りを眺めていた秋山課長が、呟く。
「なんだか、随分前と変わったね、真島くん」
「そうですか?」
私はそう問いながら、少し嬉しかった。
「もしかして、二人って……」
と、杉原さんがコッソリと話しかけてくる。
私と福留くんは、顔を見合わせる。付き合っていることは会社では内緒だったけれど、もう、みんなに言ってもいいかなと思った。
秋山課長や杉原さんが、わぁ、と歓声を上げる。杉原さんはすこし目が赤くなっていたけれど、無理にでも笑ってくれた。こんなにいい子なら、また別の素敵なご縁があるのだろう。
その日以後、私たちは公認の仲となった。私たちはこれからも一緒に料理を作っていく。やがては、私達二人のためではなくて、私達二人の子どものために。
(おわり)
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
27
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
筑前煮美味しいですよね〜
好き好き!
福留くんの赤くなった顔、貴重ですね……!
ほんのりラブの香りかなあ( *´艸`)
筑前煮は体に優しい感じがして、たまに作ります!
福留くんの赤くなった顔は、普段頼りになるだけあって貴重ですよね(≧∀≦)
ラブに進展するかは、主人公ゆりが素直になれるかにかかっていそうです……!
ジャガイモの皮剥き、ピーラー使ってる!
包丁で剥く人を尊敬です……!
ジャガイモ①の最後のあたりの会話で「福留君の手調理」ってあるんですけど、手料理かな?と。違っていたらごめんなさい!
誤字でした……!直しました!
ジャガイモの皮、私も昔は苦手でしたが、特訓したら今では包丁でむけるようになりました!
リンゴの皮むきで一本につなげる切り方が苦手なのに(皮ごと食べるのでリンゴの皮むきの機会は少ないけれど)、ジャガイモはできるという……!
クラブハウスサンドイッチ作ったことないです……!
私、サンドイッチを切るのが苦手で……。
でも、すっごく美味しそうだったので、今度作ってみようかなあ。
サランラップ巻いたら切るのも上手く出来そうですね♪
クラブハウスサンド、休日の朝や昼に出てくると相方には反応が良いです。
サランラップ巻いて、えいやっ!と切るとできるかも…! サランラップ効果で中身が逃げないので普通のサンドイッチよりはやりやすいです♪