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第一部 勇者パーティ追放編
16 記念式典のチケットをもらう
マグナルツォ建国百周年の記念式典が開催されることになった。国内の貴族はもちろん周辺国の王侯貴族も招待する。マグナルツォ王国の名に恥じぬ盛大なものだ。
陰の目玉と言われているのは、伝説の勇者パーティの立役者で、表舞台から突然姿を消したと言われる大魔法使いさまに三年ぶりにお目にかかれるというもの。
これは絶対に行かなくっちゃ!
そう思っていたのに。
どうして、どうして、どうしてなのー!?
私、ロザリーは建国式典の招待チケットが手に入らず絶望していた。
「どうした。いつもの元気がないな」
魔道具屋でカウンター席に頬杖をついたまま上の空でいたところを、ロウに珍しく心配された。
「建国式典のチケットの抽選に外れたんです……! おそらく一生に一回の大魔法使いさまに会えるチャンスだったのに……!」
「そんなことか」
「そんなこと、じゃないわ! こんな機会を逃すなんて、本当ついてない!」
あまりに悲しくて、顔を手で覆った。
応募が殺到して、手に入りづらいと聞いていたけれど、落選してしまったのは残念すぎる。
彼の姿を見るには、式典の会場に出待ちするしかないの!?
いいえ。出待ちしたとしても、彼の得意な転移魔法を使うはずだからきっと会えない。くうぅっ!
ロウはおもむろにカウンターの引き出しから紙を取り出した。それを私の前でヒラヒラ振る。
「これ、やるよ」
ありえないものが目に入った。急に意識が覚醒して、手を伸ばす。
「――え!? これ、式典のチケットじゃないですか!? もらっていいんですか!?」
そう聞きつつも、離さないようにしっかりと握りしめた。
「ああ。いいよ」
夢じゃない。王国の刻印の推してある本物のチケットだ。
「どうやってチケットを手に入れたの? まさか、当選したとか?」
「……人からもらった。予定が入って行けなくなったからお前にやる」
「やったぁー!!!」
大きな声だったようで、ロウが「うるさい」と自分の耳を手で塞いだ。
「かなりの高額で転売されていると聞きますよ? タダで譲ってもらってもいいんですか?」
「タダとは言っていないが」
「そんなぁ……」
残念。もちろん言い値で買うつもりはあるが、嬉しさが半減する。
私の反応に満足したらしく、ロウはフッと口に笑みを滲ませた。
「……冗談だ。タダでやるよ」
「えええー? 優し過ぎるのもなんか怖い」
裏があるのではと疑ってしまう。世の中ではタダより高いものはないらしいし。
「はあぁ? 大人をおちょくってるな?」
「最初に意地悪を言ってきたのはロウの方じゃない?」
私の主張に何も言えなくなったのか、ロウはしばし口を閉ざした。
「チケットがほしいのか?」
「ほしいです」
「それで良い。大事にしまっておけ」
「ありがとうございます」
見事交渉が成立した。
それから数日後。
「……ロウ、相談があるんです」
「何だ?」
私が思い詰めた顔をしているのを見たロウは、私が話し出すのを待ってくれた。
「ずっと悩んでいるんです」
「言ってみろ。まあ、俺で解決できるとは限らないが……」
「それなら言います……。大魔法使いさまは何を渡したら喜んでくれますかね?」
「はああああ? そんなことで悩んでいたのかよ。というか、それを俺に聞くか?」
同じ男性からの意見を頂戴したかったけれど、見込みが甘かっただろうか。いや、説得すれば参考になることを教えてくれるかもしれない。一人で悩んでいるよりはましだ。
「だって、命の恩人に会えるんですよ? 手ぶらで会いに行くわけにはいかないじゃないですか! 好みがわからないので、選ぼうにも迷ってしまって……」
私の話を聞いたロウは呆れたように息を吐いた。
「だいたいなぁ。式典で主賓の席に座っている奴に近づいて贈り物を渡せるわけがないだろ? 変質者だと思われて捕まってしまうかもしれないぞ」
「変質者ですか? そんなぁ……」
「ったく。それに、大魔法使いもロザリーのことを覚えているとは限らない。物を贈ろうとか、考えなくていいんじゃないか?」
「それは……そうかもしれません。五年も前のことですし、私のことを覚えていませんよね」
大魔法使いにしてみれば助けた村人の一人だ。記憶に残っていなくてもおかしくはない。
シュンと落ち込んだ私を見ていられなくなったのか、ロウは優しい言葉をかけてくれた。
「……渡せるかはわからないが、念のために用意しておけばいいんじゃないのか?」
「ロウ、良いこと言うね。そうね、渡すタイミングがあるかもしれないわ。 それで、話は戻るけど、男目線ではどんな贈り物がいいと思う?」
ロウは露骨に嫌そうな表情になった。
あれ? もしかして大魔法使いさまに嫉妬してるのかな?
嫉妬したところで、ロウでは大魔法使いさまには敵わないけどね!
一人で納得したところ、ロウは小さく呻くように言った。
「……それは俺に聞くな」
「え? どうして?」
ロウの目を見つめると、私の眼力の圧に負けたようで渋々答えてくれた。
「……心がこもっていればどんなものでも嬉しいんじゃないか?」
「うわぁ。良いこと言うね。ロウに相談して良かった!」
内容はフワフワしてるけれど、ヒントがもらえたような気がする。大魔法使いさまが喜びそうな贈り物は自分の頭で考えなくちゃね。
陰の目玉と言われているのは、伝説の勇者パーティの立役者で、表舞台から突然姿を消したと言われる大魔法使いさまに三年ぶりにお目にかかれるというもの。
これは絶対に行かなくっちゃ!
そう思っていたのに。
どうして、どうして、どうしてなのー!?
私、ロザリーは建国式典の招待チケットが手に入らず絶望していた。
「どうした。いつもの元気がないな」
魔道具屋でカウンター席に頬杖をついたまま上の空でいたところを、ロウに珍しく心配された。
「建国式典のチケットの抽選に外れたんです……! おそらく一生に一回の大魔法使いさまに会えるチャンスだったのに……!」
「そんなことか」
「そんなこと、じゃないわ! こんな機会を逃すなんて、本当ついてない!」
あまりに悲しくて、顔を手で覆った。
応募が殺到して、手に入りづらいと聞いていたけれど、落選してしまったのは残念すぎる。
彼の姿を見るには、式典の会場に出待ちするしかないの!?
いいえ。出待ちしたとしても、彼の得意な転移魔法を使うはずだからきっと会えない。くうぅっ!
ロウはおもむろにカウンターの引き出しから紙を取り出した。それを私の前でヒラヒラ振る。
「これ、やるよ」
ありえないものが目に入った。急に意識が覚醒して、手を伸ばす。
「――え!? これ、式典のチケットじゃないですか!? もらっていいんですか!?」
そう聞きつつも、離さないようにしっかりと握りしめた。
「ああ。いいよ」
夢じゃない。王国の刻印の推してある本物のチケットだ。
「どうやってチケットを手に入れたの? まさか、当選したとか?」
「……人からもらった。予定が入って行けなくなったからお前にやる」
「やったぁー!!!」
大きな声だったようで、ロウが「うるさい」と自分の耳を手で塞いだ。
「かなりの高額で転売されていると聞きますよ? タダで譲ってもらってもいいんですか?」
「タダとは言っていないが」
「そんなぁ……」
残念。もちろん言い値で買うつもりはあるが、嬉しさが半減する。
私の反応に満足したらしく、ロウはフッと口に笑みを滲ませた。
「……冗談だ。タダでやるよ」
「えええー? 優し過ぎるのもなんか怖い」
裏があるのではと疑ってしまう。世の中ではタダより高いものはないらしいし。
「はあぁ? 大人をおちょくってるな?」
「最初に意地悪を言ってきたのはロウの方じゃない?」
私の主張に何も言えなくなったのか、ロウはしばし口を閉ざした。
「チケットがほしいのか?」
「ほしいです」
「それで良い。大事にしまっておけ」
「ありがとうございます」
見事交渉が成立した。
それから数日後。
「……ロウ、相談があるんです」
「何だ?」
私が思い詰めた顔をしているのを見たロウは、私が話し出すのを待ってくれた。
「ずっと悩んでいるんです」
「言ってみろ。まあ、俺で解決できるとは限らないが……」
「それなら言います……。大魔法使いさまは何を渡したら喜んでくれますかね?」
「はああああ? そんなことで悩んでいたのかよ。というか、それを俺に聞くか?」
同じ男性からの意見を頂戴したかったけれど、見込みが甘かっただろうか。いや、説得すれば参考になることを教えてくれるかもしれない。一人で悩んでいるよりはましだ。
「だって、命の恩人に会えるんですよ? 手ぶらで会いに行くわけにはいかないじゃないですか! 好みがわからないので、選ぼうにも迷ってしまって……」
私の話を聞いたロウは呆れたように息を吐いた。
「だいたいなぁ。式典で主賓の席に座っている奴に近づいて贈り物を渡せるわけがないだろ? 変質者だと思われて捕まってしまうかもしれないぞ」
「変質者ですか? そんなぁ……」
「ったく。それに、大魔法使いもロザリーのことを覚えているとは限らない。物を贈ろうとか、考えなくていいんじゃないか?」
「それは……そうかもしれません。五年も前のことですし、私のことを覚えていませんよね」
大魔法使いにしてみれば助けた村人の一人だ。記憶に残っていなくてもおかしくはない。
シュンと落ち込んだ私を見ていられなくなったのか、ロウは優しい言葉をかけてくれた。
「……渡せるかはわからないが、念のために用意しておけばいいんじゃないのか?」
「ロウ、良いこと言うね。そうね、渡すタイミングがあるかもしれないわ。 それで、話は戻るけど、男目線ではどんな贈り物がいいと思う?」
ロウは露骨に嫌そうな表情になった。
あれ? もしかして大魔法使いさまに嫉妬してるのかな?
嫉妬したところで、ロウでは大魔法使いさまには敵わないけどね!
一人で納得したところ、ロウは小さく呻くように言った。
「……それは俺に聞くな」
「え? どうして?」
ロウの目を見つめると、私の眼力の圧に負けたようで渋々答えてくれた。
「……心がこもっていればどんなものでも嬉しいんじゃないか?」
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