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第一部 勇者パーティ追放編
17 大魔法使いさまへプレゼントを作成する
妖精のリアが魔道具屋に入りたがらないので、私とロウの話していた内容を知らなかった。
「え? 魔道具屋の店主に大魔法使いさまの贈り物の相談をしたんですか!?」
家に帰ってから話を聞いたリアは驚きの声を上げた。
リアはロウのことを頑なに「魔道具屋の店主」と呼ぶ。ま、どう呼んでも自由なんだけどさ。
「そうよ。男の気持ちがわかるのはやっぱり男なんじゃないかと思ったのよ」
「そ、それは……何というか……」
リアは声を詰まらせた。心配そうな顔。でも、心配ご無用。その結果、相談してよかったことだしね。
「ロウは大魔法使いさまとお知り合いらしいし、何か参考になるかなって思ったのよ」
「あの……魔道具屋の店主は何て言っていましたか?」
「心がこもっていればどんなものでも嬉しいんじゃないかって。いいこと言うよね」
「そうですよね。ご主人さまからもらえるものなら、どんなものでも嬉しいと思います」
「もう! リアは私に甘いんだから……」
どんなものでも嬉しいと言われても、本当に喜ばれるものを渡したい。
どうせなら家に飾っておくものよりは役立つものがいい。そうしたら、おおよそ「身につけられるもの」に絞られてきて。食器とかタオルとかはありきたりでしょう?
「聖女の加護付きのピアスとかどうかなって思ったの。五年前にお会いしたときは、魔道具のようなピアスを左耳に付けていたから、日常的に付ける人かなって」
涙のような形のピアスが耳に揺れていて、彼によく似合っていた。魔法使いは魔道具を身につけて、ピアスの穴を開けている人も多い。私は魔道具に魔力を吸われる感じが嫌で、最小限しか付けないタイプだけど。ロウから買ったカチューシャの魔道具が初めての魔道具だ。
そういえば、ソニアとかいう聖女はジャラジャラした装飾具のような魔道具を付けてたなぁ。あ、嫌な女のこと思い出しちゃった。
話は戻して、と。
私の瞳の色と同じ、深い青色の石が埋め込まれたピアスはどうかなって。思わせぶりかって? だって、渡せるのは一瞬のタイミングでしょ? 記憶に残ってほしいし、少しでも意識してほしいんだもん。
「ピアスが良いと思います。きっと喜んでもらえますよ!」
「ありがとう。そうと決まったら、ピアスの石を探さなくちゃ。……そういえば」
宝石の店へ探しに出かけようとしたが、思いとどまった。勇者パーティにいた頃、ダンジョンで拾った深い青色の綺麗な天然石があったのを思い出したのだ。数個持ち帰って、食器棚の一角に飾っている。今は手を加えていないが磨けば光るだろう。
食器棚から石を取り出すと、リアは「わぁ。綺麗な石ですね」と声を上げた。
「これを加工して、ピアスに仕立て直そうかな」
「私、磨きましょうか?」
「リア、そんなことができるの?」
ヤスリで数日かけて形を整えようかと思っていた。リアの力を借りるのは申し訳なく感じるけれど、自然については精霊の方がプロフェッショナルだ。頼れる時は頼った方がいいのかもしれない。
「石の精霊に交渉して、了承がもらえれば、石の精霊の力を借りて磨くことができます」
「じゃあ、お願いできる?」
「はい!」
リアは銀色の光に向かって、身振り手振りを交えながら精霊の言語で話しかけた。
すぐに交渉は成立したようで、私の肩まで羽をパタパタさせながら戻ってくる。
リアの手には石の精霊の加護が付いたのか、手元が銀色に輝いていた。
「了解もらえました! 早速やりましょう! 宝石のように表面にカットを入れることもできますが、どうされますか?」
「カット面は特にいらないわ。表面を磨いてもらえればそれでいいの」
「承知しました。磨かせてもらいますね」
そう言って、リアが天然石に手をかざすと銀色の光で包み込まれた。石の表面の細かい傷がみるみるうちに滑らかになっていく。形はほとんど変わらず楕円のままの天然石が完成した。
「できました。こんな感じでよろしいでしょうか」
差し出された天然石を触ってみると、ひんやりとしてツルッと滑らかだ。
「想像以上の出来だわ。ありがとう! 石の精霊さんもありがとうね」
石の精霊――銀色の光に向かって手を振ると、小さく点滅して返事してくれた。
「どういたしまして、と言っています」
ヤスリを使ってここまで仕上げるには丸一日はかかってしまっただろう。
「さあ、次は私の出番ね。どんな加護を付けようかしら」
聖女の加護を石に施して、ピアスにして完成だ。さて、どんな加護にしようかな。
冒険者だったら、「強運」とか「魔獣よけ」の加護を付与するんだけどな。大魔法使いさまが冒険者になったという噂は聞かないから、冒険者としては完全に引退されてしまったのだろう。
だとしたら「家内安全」か「無病息災」がいいかな? どちらも大事だけど。うーん悩むところ。
「大魔法使いさまの希望したことが叶いますように……って加護を付けるのはどうかな」
「そんな加護を付けられるのですね! それがいいと思います!」
思いつきで言ったことだけど、リアにも賛成してもらったらそれが一番いいような気がしてきた。優柔不断だけどさ。
「よーし、決まり!」
そうと決まれば、湧き水を私の魔法で聖水に変えて、その中に石を沈めてお祈りすれば加護付きの石の出来上がり。魔法だけで加護を与えるよりは、聖水に浸ける方が加護の効能が高くなる。水に弱い石にはこの方法は使えないけれど。
加護を与えた後は、装飾具屋にその石を持ち込んでピアスに仕立ててもらえば完成だ。
「え? 魔道具屋の店主に大魔法使いさまの贈り物の相談をしたんですか!?」
家に帰ってから話を聞いたリアは驚きの声を上げた。
リアはロウのことを頑なに「魔道具屋の店主」と呼ぶ。ま、どう呼んでも自由なんだけどさ。
「そうよ。男の気持ちがわかるのはやっぱり男なんじゃないかと思ったのよ」
「そ、それは……何というか……」
リアは声を詰まらせた。心配そうな顔。でも、心配ご無用。その結果、相談してよかったことだしね。
「ロウは大魔法使いさまとお知り合いらしいし、何か参考になるかなって思ったのよ」
「あの……魔道具屋の店主は何て言っていましたか?」
「心がこもっていればどんなものでも嬉しいんじゃないかって。いいこと言うよね」
「そうですよね。ご主人さまからもらえるものなら、どんなものでも嬉しいと思います」
「もう! リアは私に甘いんだから……」
どんなものでも嬉しいと言われても、本当に喜ばれるものを渡したい。
どうせなら家に飾っておくものよりは役立つものがいい。そうしたら、おおよそ「身につけられるもの」に絞られてきて。食器とかタオルとかはありきたりでしょう?
「聖女の加護付きのピアスとかどうかなって思ったの。五年前にお会いしたときは、魔道具のようなピアスを左耳に付けていたから、日常的に付ける人かなって」
涙のような形のピアスが耳に揺れていて、彼によく似合っていた。魔法使いは魔道具を身につけて、ピアスの穴を開けている人も多い。私は魔道具に魔力を吸われる感じが嫌で、最小限しか付けないタイプだけど。ロウから買ったカチューシャの魔道具が初めての魔道具だ。
そういえば、ソニアとかいう聖女はジャラジャラした装飾具のような魔道具を付けてたなぁ。あ、嫌な女のこと思い出しちゃった。
話は戻して、と。
私の瞳の色と同じ、深い青色の石が埋め込まれたピアスはどうかなって。思わせぶりかって? だって、渡せるのは一瞬のタイミングでしょ? 記憶に残ってほしいし、少しでも意識してほしいんだもん。
「ピアスが良いと思います。きっと喜んでもらえますよ!」
「ありがとう。そうと決まったら、ピアスの石を探さなくちゃ。……そういえば」
宝石の店へ探しに出かけようとしたが、思いとどまった。勇者パーティにいた頃、ダンジョンで拾った深い青色の綺麗な天然石があったのを思い出したのだ。数個持ち帰って、食器棚の一角に飾っている。今は手を加えていないが磨けば光るだろう。
食器棚から石を取り出すと、リアは「わぁ。綺麗な石ですね」と声を上げた。
「これを加工して、ピアスに仕立て直そうかな」
「私、磨きましょうか?」
「リア、そんなことができるの?」
ヤスリで数日かけて形を整えようかと思っていた。リアの力を借りるのは申し訳なく感じるけれど、自然については精霊の方がプロフェッショナルだ。頼れる時は頼った方がいいのかもしれない。
「石の精霊に交渉して、了承がもらえれば、石の精霊の力を借りて磨くことができます」
「じゃあ、お願いできる?」
「はい!」
リアは銀色の光に向かって、身振り手振りを交えながら精霊の言語で話しかけた。
すぐに交渉は成立したようで、私の肩まで羽をパタパタさせながら戻ってくる。
リアの手には石の精霊の加護が付いたのか、手元が銀色に輝いていた。
「了解もらえました! 早速やりましょう! 宝石のように表面にカットを入れることもできますが、どうされますか?」
「カット面は特にいらないわ。表面を磨いてもらえればそれでいいの」
「承知しました。磨かせてもらいますね」
そう言って、リアが天然石に手をかざすと銀色の光で包み込まれた。石の表面の細かい傷がみるみるうちに滑らかになっていく。形はほとんど変わらず楕円のままの天然石が完成した。
「できました。こんな感じでよろしいでしょうか」
差し出された天然石を触ってみると、ひんやりとしてツルッと滑らかだ。
「想像以上の出来だわ。ありがとう! 石の精霊さんもありがとうね」
石の精霊――銀色の光に向かって手を振ると、小さく点滅して返事してくれた。
「どういたしまして、と言っています」
ヤスリを使ってここまで仕上げるには丸一日はかかってしまっただろう。
「さあ、次は私の出番ね。どんな加護を付けようかしら」
聖女の加護を石に施して、ピアスにして完成だ。さて、どんな加護にしようかな。
冒険者だったら、「強運」とか「魔獣よけ」の加護を付与するんだけどな。大魔法使いさまが冒険者になったという噂は聞かないから、冒険者としては完全に引退されてしまったのだろう。
だとしたら「家内安全」か「無病息災」がいいかな? どちらも大事だけど。うーん悩むところ。
「大魔法使いさまの希望したことが叶いますように……って加護を付けるのはどうかな」
「そんな加護を付けられるのですね! それがいいと思います!」
思いつきで言ったことだけど、リアにも賛成してもらったらそれが一番いいような気がしてきた。優柔不断だけどさ。
「よーし、決まり!」
そうと決まれば、湧き水を私の魔法で聖水に変えて、その中に石を沈めてお祈りすれば加護付きの石の出来上がり。魔法だけで加護を与えるよりは、聖水に浸ける方が加護の効能が高くなる。水に弱い石にはこの方法は使えないけれど。
加護を与えた後は、装飾具屋にその石を持ち込んでピアスに仕立ててもらえば完成だ。
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