大型犬Subのしつけは射精管理が大事

三谷玲

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第九話

 俺は会社には帰らせてもらえず、堂本に引っ張られてマンションへと連れ込まれていた。手を繋ぐとか肩を組むとかじゃなく、文字通り俺のカバンの紐を引っ張るから、犬の散歩のようで、正直興奮した。
 堂本も楽しかったのか、今にもスキップしそうだ。

「さて、サブにはお仕置きしないとな」
「え?」
「僕以外のDomに従おうとした罰」

 率先して従おうとしたわけではないのだが……。ご機嫌そうに罰しようとする堂本に反論する気はない。玄関の扉が閉まると俺は服を脱いでいた。もう癖になってる。
 ブリーフ一枚で玄関にひざまずくと脱いだばかりのウィングチップが目に入った。さっき俺を助けてくれたに感謝のキスをする。

「僕には?」

 見上げるとむすっとした顔の堂本がいた。俺はそのまま身体を伸ばし、堂本の足に口付けた。
 これでいい? と伺うように顔を上げると、まだ堂本の顔は晴れない。
 あれ? 間違ってた?
 落ち着かない気持ちはそのまま態度に現れて、俺はおろおろと顔を上げ下げしていた。

「そこでもいいんだけど、こっち」

 堂本は俺の前にしゃがみ込むと静かに目を閉じた。
 え? そっち? いいの?
 ふわふわとした茶色い髪は、地毛だったのかまつ毛も少し茶色がかっていて、彫の深さをやわらげ涼しげにみせていたのだと分かる。
 これまで堂本の顔を見ているようで、ちゃんと見ていなかったのかもしれない。
 だって、いま、堂本がかわいく見えた。
 これまでだってきれいだとは思っていたし、整った顔立ちはほれぼれしていたけれど、こんなにドキドキすることはなかった。
 いいんだよな。命令? だもんな?
 おそるおそる顔を近付けると、息が触れる。それだけで、俺の股間ははちきれんばかりに盛り上がる。
 あと少しで唇に触れるというところで、ばちりと堂本の目が開いた。

「遅い」

 ぐいっと後頭部を掴まれて、勢いよく唇を押し付けられる。完全にふさがれ乾いた唇を湿らすように舐めとられ、その舌が俺の咥内へと侵入してきた。
 女の子とは違う、積極的なキスに翻弄される。侵入してきた舌におびえながら応えるように絡ませると、堂本が笑った気がした。
 後頭部にあった手が、俺の頭を撫でる。
 いいんだ。これで。
 安堵した俺は、口の中で追いかけっこをするように堂本の舌の動きに追従する。
 玄関にふたりの荒い息がこだまする。
 俺だけじゃなくて、堂本も興奮してるんだと思うと、いつものマグマが噴出す気配がした。

「んぁっ……」

 暴発する気配を感じたのかはわからないが、堂本が俺のペニスを握った。

「ここで、出すなよ?」

 痛いけれどありがたかった。じゃなきゃキスだけでイくところだった。少し息を切らした堂本はすぐに手を離して、立ち上がる。目の前には、俺のと変わらないほど盛り上がった堂本の股間があった。
 思わず、顔を擦り付けて、匂いを嗅いだ。

「……ここじゃ、ダメだって言っただろ?」

 その割に、堂本の腰が揺らめいて、誘っているように見えた。もう一度匂いを嗅ぐ。
 男の匂いだ。
 汗とすえた匂いは、不思議と臭いとは思わなかった。いまならこの匂いだけで抜ける気がする。

「サブ……」

 呆れた声が聞こえたかと思うと、俺の顔に衝撃が走る。
 デコピンされた。
 強い力じゃないけれど、少しよろめくと、堂本はさっさとソファへと行ってしまった。俺は四つん這いのまま、後を追った。
 ソファの脇には堂本が脱いだジャケットと、ネクタイが無造作に放られていた。
 ソファに座った堂本の開いた足元に座る。
 ここでなら、いいんだよな?
 俺はさっきの続きとばかりに、股間に顔を埋めて匂いを嗅いだ。やっぱりこれだけでイけそう。

「くすぐったいな」

 鼻先を擦り付けていると、堂本が少し上擦った楽しげな声で言った。もっと楽しませたくて、俺はそこを甘噛みした。
 はじめて男のナニを噛んだが、面白い感触だった。硬いのに柔らかい。歯ごたえはあるのに、その歯が沈み込んで吸い込まれそうな、そんな感触。噛めば噛むほど、硬さが増していくのが、楽しくなる。

「スーツ、汚れる」

 俺が夢中になって食んでいると、堂本の手がベルトに掛かる。ゆっくりとした動作で、バックルを外すと、チャックに手が伸びる。
 ズボンの下の黒いボクサーパンツがぴたりと張り付いていて、くっきりと堂本のペニスの形が浮き出ていた。
 匂いが強くなる。
 男の匂いに興奮する日が来ることになろうとは。
 堂本は両脚を揃えて上げると、今度は一気にズボンとパンツを引き抜いた。筋肉質のきれいな足はまっすぐ天を向き、その根本にある窄まりがはっきりと見えた。
 最前列で行われているストリップに俺は釘付けだ。
 堂本は上げた足をそのまま俺の肩へと置くと、踵で引き寄せた。

「続き」

 促されるまま俺は、スーツ越しとは違う、淡い陰毛に覆われた生生しいペニスに顔を寄せる。涼しげな顔には似つかわしくない雄々しい姿だが、まったく嫌悪感はなかった。
 その根本に鼻を押し付け、すんすんと匂いを嗅ぐと、肩に置かれた堂本の足が俺を叩いた。急かされてる気がして、口を開く。舌で舐めとると、いつも涼しい顔をしている堂本に似合わない、汗の味がした。
 癖になる味だ。
 何度もその汗を味わうように舐めていると、俺の涎まみれになってしまった。味の変わったペニスを今度は、横から噛んでみる。
 この感触はやっぱり面白い。
 生で噛むと、より柔らかさと硬さが混じる不思議な触感で、楽しくなってくる。犬がガムを噛む気持ちが少しわかった。
 俺は、夢中だった。
 堂本の様子を気にする暇もなかった。
 食めば食むほど、硬さは増して角度が上向く。まるで俺の口から逃げるようにぷるんと跳ねるのが悔しくて、俺は逃さないとばかりに、咥えた。
 どうだ、これで逃げられないだろう。
 そう思って、今度は口の中で食んだ。
 すると汗とは違う味が、口の中に広がった。苦味の混じる塩味。その出所を探るように、舌で探索すると先端に行き当たる。あぁここかと、もっと味合わせろと押しつぶす。
 身体が締め付けられているような気がするが、気にしていられない。
 もっと欲しい。もっと……。
 熱中していた俺を引き戻したのは、堂本の叫び声だ。

「――サブっ! も、イくっ!」

 その音とともに、俺の喉奥に熱いものが当たる。ねばついたそれは喉に膜を張り、口の中に広がる。知ってる味だ。生臭さが鼻を衝くのに、なぜか俺は嬉しくなった。
 口の中で味わってから、ごくりと飲むと蹴られた。

「……勝手……ばかり、しやがって」
「あ……すいませんっ! 俺、夢中で……っ」
「お前、本当に……犬、なんじゃ、ないのか?」

 イったばかりだからか、堂本の文句は切れ切れで、怖くはないのに、俺は別の意味で怖くなった。言いつけを守れなかったからだ。これは、駄犬と言われても仕方ない。しゅんとなった俺の前には、力なく開いた足とまだ先端に白濁の残るペニスがあった。
 舐めたい。
 Yシャツ一枚でぐったりとソファに身体を預ける堂本の顔をちらりと見上げ、もう一度ペニスを見る。
 やっぱり、舐めたい。
 そうっと近づいて舌を伸ばす。
 ペロリと舐めとると、堂本の身体が跳ねた。

「サブっ!」

 怒られる! とっさに頭を抱えると、はぁと溜息が聞こえた。

「……お仕置き、覚悟しろよ」

 残念な俺の愚息は、その言葉でちょろりと漏らした。
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