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第九話
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――株式会社EDGE 情報システム部主任 外山伊織
その下にあるのは、会社支給の携帯番号。出てくれるだろうか? スマホに打ちこんでからしばらくその番号を眺め、理は白い指を伸ばして通話を押した。
ワンコールもしないうちに、伊織の声が聞こえる。
『はい、外山です』
「……」
耳元で聞こえる声に、一瞬息が止まる。
『……中林さん?』
「何でわかったんだ?」
『やっぱり当たった。勘ですよ、勘。昨日の今日で、呼んでもらえるとは思いませんでしたけど。嬉しいです』
「そういうつもりじゃっ――」
『じゃあどうしました?』
「……外山さんのおかげで、うまくいったんだ。若杉も、取引先も。それで、お礼をと思って」
『それはどういたしまして。人を頼るのも悪くないでしょう?』
「まぁ、な……。じゃあ、それだけ――」
『いつでも呼んでくださいね』
くそ……っ! 心臓が跳ねる。そんなつもりで電話したわけじゃない。そうじゃないっ!
ありがとう、ただそれだけを伝えたかったはずなのに……。
「……伊織」
『やっぱり欲しいんですね』
「うん」
伊織に名前を呼ばれると、童心に戻ってしまう。「うん」だなんて子どものころにすら言った覚えはない。
『理はちゃんと言うことが聞けるいい子ですね』
「いいこ、じゃない。まだ、こわい……。月曜の会議だって――」
『大丈夫。少しくらい間違えたって若杉は死にませんよ。それより今は俺の言葉を聞いて。いま、どんな格好?』
「浴衣……」
『今度俺とも温泉行きましょうね」
あれ? 温泉だなんて話しただろうか? 浴衣と言ったから、勝手にそう思ったのか?
不思議に感じていると、伊織は言葉を続けた。
「それじゃあ帯を解いて、見せて』
「え? でも……」
ビデオ通話でもないのに、見せろと言われてもと戸惑う理に、伊織はくすくすと笑い声をあげた。
『実際に見られなくて残念なのは、俺も同じです。今日は想像だけで我慢しますから。昨日見せてくれなかった全部を見せて』
「ん、わかった……」
するすると帯を解き、浴衣をするりと脱いだ。下着は、身に着けていなかった。
「できた」
『今どうなってるか教えて』
「裸、何も着てない。風呂上りで、少し湿ってる……」
『どこが?』
「髪……と、陰毛」
『そう。そこは、どうなってますか? 詳しく教えて』
「ちょっと、勃ってる……」
濡れた陰毛の間にある理の陰茎は、ほんのわずか兆しを見せていた。耳元でささやかれる伊織の声だけで、反応してしまったのかと思うと、また少し熱があがる。
『オナニー、してみましょうか。いつもどうやってるか、教えて』
「……胸、触って――」
まただ。命令されると、いつもなら絶対に口にしない言葉が自然とあふれでる。
友人がいない理に猥談相手なんていないから、こんなことを口にするのははじめてだ。
清潔な布団の上で全裸になった理は、スピーカーにしたスマホを枕元に置いてぺたりと座るとおもむろに胸に手を当てた。
『胸? 乳首が好き?』
「ん、好き……、乳首、つまむの……」
口にしたことと同じことをする。
白い肌に突き出た、赤く腫れそぼった先を慣れた手つきでつまむ。
『そう。それは誰に教えてもらったんですか?』
「元カノ、が……」
『ふぅん。彼女、Domだったのかもしれませんねぇ』
「知らない……命令、されたことないから」
旅行中に理をフった彼女は、ワガママがかわいい普通の女の子だった。ただ少しセックスは積極的だった。
ノーマルなセックスばかりをしてきた理に刺激的だったのは、間違いない。
『じゃあ命令されなくても乳首弄って気持ちよくなるのが好きなんですね。教えられたのは、乳首だけですか? 他は?』
「ほか……? 先っぽも、彼女が……ずっと触るから。あと、後ろも……」
本当に刺激的な彼女だった。
『後ろ? 俺は見えないからはっきり言わないと分からないですよ』
「お尻……と玉の間、とんとん、するの」
彼女が口淫する際、よく触れていたそこが会陰と呼ばれる場所だと知ったのは、彼女と別れた後だった。
理は触りやすいようにうつぶせになり腰を浮かすと、片手を会陰へと伸ばした。
『中を弄ったことは?』
「……」
『理、黙ってないでちゃんと言って』
「……っ、彼女と別れてから、ひとりでしてて、それで……指が滑って。毎回じゃない、たまに、ちょっとだけっ、んっ、伊織」
親しい友人のいない理にはネットと元カノだけが、性知識の源だった。
そのネットで調べ、会陰も男の性感帯だと知った。さらにその先もまた、男に快楽を与える場所だと知って、理は安堵した。
自分がどこかおかしいのではないかと思ったからだ。
それ以来、自慰の際、会陰やその先にある窄まりに触れるようになった。
『どこまで入りましたか? もっと入れられますか?』
「爪の先、だけっ、無理……、こわいっ」
挿入すればもっと快楽を得られる。その知識はあっても、自分では到底出来そうになかった。
だから浅いところに指を押し付けるだけで、満足していた。
『大丈夫、俺に任せてって言ったでしょう? 息をゆっくり吸って。ほら、指に吸い付いてくるのが分かりますか? そしたら吐いて。どんどん指が奥に入ってく』
伊織の言葉通りに息を吸うと、押し付けていた指がつぷりと吸い込まれる。
さらに息を吐けばその指を食むように収縮し、第一関節まで挿入ってしまった。
「ふ、あぁっ……、いおり、いおりっ!」
『気持ちいい?』
「いい、いいっ、いおり、もっと……っ」
『いい子ですね。理はお尻で気持ちよくなっちゃう、かわいい子なんですよ。ナカもとんとんしてみて』
言われた通りに会陰にするように、中に挿入した指で内側をとんとんと叩くと、腰が自然に動いてしまう。
陰茎をシーツに押し付けて、声をあげた。
「や……ッ、変、っ、なんで? これ、止まんないっ」
『いいんですよ。止めちゃだめです。いい子の理はそこだけでイけるようになれますから、指を増やして。もっと早く動かしてみてください』
二本目はすんなり挿入った。
それもさっきより深く。
とんとんと叩くだけでなく、勝手に動く腰のせいで出入りする指が、理の理性を失わせた。
その下にあるのは、会社支給の携帯番号。出てくれるだろうか? スマホに打ちこんでからしばらくその番号を眺め、理は白い指を伸ばして通話を押した。
ワンコールもしないうちに、伊織の声が聞こえる。
『はい、外山です』
「……」
耳元で聞こえる声に、一瞬息が止まる。
『……中林さん?』
「何でわかったんだ?」
『やっぱり当たった。勘ですよ、勘。昨日の今日で、呼んでもらえるとは思いませんでしたけど。嬉しいです』
「そういうつもりじゃっ――」
『じゃあどうしました?』
「……外山さんのおかげで、うまくいったんだ。若杉も、取引先も。それで、お礼をと思って」
『それはどういたしまして。人を頼るのも悪くないでしょう?』
「まぁ、な……。じゃあ、それだけ――」
『いつでも呼んでくださいね』
くそ……っ! 心臓が跳ねる。そんなつもりで電話したわけじゃない。そうじゃないっ!
ありがとう、ただそれだけを伝えたかったはずなのに……。
「……伊織」
『やっぱり欲しいんですね』
「うん」
伊織に名前を呼ばれると、童心に戻ってしまう。「うん」だなんて子どものころにすら言った覚えはない。
『理はちゃんと言うことが聞けるいい子ですね』
「いいこ、じゃない。まだ、こわい……。月曜の会議だって――」
『大丈夫。少しくらい間違えたって若杉は死にませんよ。それより今は俺の言葉を聞いて。いま、どんな格好?』
「浴衣……」
『今度俺とも温泉行きましょうね」
あれ? 温泉だなんて話しただろうか? 浴衣と言ったから、勝手にそう思ったのか?
不思議に感じていると、伊織は言葉を続けた。
「それじゃあ帯を解いて、見せて』
「え? でも……」
ビデオ通話でもないのに、見せろと言われてもと戸惑う理に、伊織はくすくすと笑い声をあげた。
『実際に見られなくて残念なのは、俺も同じです。今日は想像だけで我慢しますから。昨日見せてくれなかった全部を見せて』
「ん、わかった……」
するすると帯を解き、浴衣をするりと脱いだ。下着は、身に着けていなかった。
「できた」
『今どうなってるか教えて』
「裸、何も着てない。風呂上りで、少し湿ってる……」
『どこが?』
「髪……と、陰毛」
『そう。そこは、どうなってますか? 詳しく教えて』
「ちょっと、勃ってる……」
濡れた陰毛の間にある理の陰茎は、ほんのわずか兆しを見せていた。耳元でささやかれる伊織の声だけで、反応してしまったのかと思うと、また少し熱があがる。
『オナニー、してみましょうか。いつもどうやってるか、教えて』
「……胸、触って――」
まただ。命令されると、いつもなら絶対に口にしない言葉が自然とあふれでる。
友人がいない理に猥談相手なんていないから、こんなことを口にするのははじめてだ。
清潔な布団の上で全裸になった理は、スピーカーにしたスマホを枕元に置いてぺたりと座るとおもむろに胸に手を当てた。
『胸? 乳首が好き?』
「ん、好き……、乳首、つまむの……」
口にしたことと同じことをする。
白い肌に突き出た、赤く腫れそぼった先を慣れた手つきでつまむ。
『そう。それは誰に教えてもらったんですか?』
「元カノ、が……」
『ふぅん。彼女、Domだったのかもしれませんねぇ』
「知らない……命令、されたことないから」
旅行中に理をフった彼女は、ワガママがかわいい普通の女の子だった。ただ少しセックスは積極的だった。
ノーマルなセックスばかりをしてきた理に刺激的だったのは、間違いない。
『じゃあ命令されなくても乳首弄って気持ちよくなるのが好きなんですね。教えられたのは、乳首だけですか? 他は?』
「ほか……? 先っぽも、彼女が……ずっと触るから。あと、後ろも……」
本当に刺激的な彼女だった。
『後ろ? 俺は見えないからはっきり言わないと分からないですよ』
「お尻……と玉の間、とんとん、するの」
彼女が口淫する際、よく触れていたそこが会陰と呼ばれる場所だと知ったのは、彼女と別れた後だった。
理は触りやすいようにうつぶせになり腰を浮かすと、片手を会陰へと伸ばした。
『中を弄ったことは?』
「……」
『理、黙ってないでちゃんと言って』
「……っ、彼女と別れてから、ひとりでしてて、それで……指が滑って。毎回じゃない、たまに、ちょっとだけっ、んっ、伊織」
親しい友人のいない理にはネットと元カノだけが、性知識の源だった。
そのネットで調べ、会陰も男の性感帯だと知った。さらにその先もまた、男に快楽を与える場所だと知って、理は安堵した。
自分がどこかおかしいのではないかと思ったからだ。
それ以来、自慰の際、会陰やその先にある窄まりに触れるようになった。
『どこまで入りましたか? もっと入れられますか?』
「爪の先、だけっ、無理……、こわいっ」
挿入すればもっと快楽を得られる。その知識はあっても、自分では到底出来そうになかった。
だから浅いところに指を押し付けるだけで、満足していた。
『大丈夫、俺に任せてって言ったでしょう? 息をゆっくり吸って。ほら、指に吸い付いてくるのが分かりますか? そしたら吐いて。どんどん指が奥に入ってく』
伊織の言葉通りに息を吸うと、押し付けていた指がつぷりと吸い込まれる。
さらに息を吐けばその指を食むように収縮し、第一関節まで挿入ってしまった。
「ふ、あぁっ……、いおり、いおりっ!」
『気持ちいい?』
「いい、いいっ、いおり、もっと……っ」
『いい子ですね。理はお尻で気持ちよくなっちゃう、かわいい子なんですよ。ナカもとんとんしてみて』
言われた通りに会陰にするように、中に挿入した指で内側をとんとんと叩くと、腰が自然に動いてしまう。
陰茎をシーツに押し付けて、声をあげた。
「や……ッ、変、っ、なんで? これ、止まんないっ」
『いいんですよ。止めちゃだめです。いい子の理はそこだけでイけるようになれますから、指を増やして。もっと早く動かしてみてください』
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