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第十話
しおりを挟む「怖い、こわいっ、いおり、前も、触っていい?」
『前? それはどこのことですか? 教えて』
「……ちんちんっ、ちんちん、触ってい? イきたいっ、イかせて……っいおり、おねがい」
『ちんちん? かわいい言い方をしますね。赤ちゃんみたいだ』
「俺は、あか、ちゃんじゃないっ」
陰茎をちんちんなんて言ったことはない。ないのにどうして。もう自分で自分の言動がわからなくなっていた。
『ああ、そうですねぇ。理は成人した立派な男ですけど、今はちっちゃい子どもと同じですよ。グロテスクな陰茎をちんちんって言っちゃう、かわいい男の子なんです。自分のことを俺、じゃなくて理って言っちゃうような、ね。理のちんちんは今どうなってますか?』
そうだ。いまは子どもなんだ。だから、いいんだ……。この言葉に従えば、褒めてもらえる。
「お……、理、の、ちんちん、おっきくなってっ、びくびくしてるっ、触ってって言ってる」
『誰に? 誰に触って欲しいか、答えて』
心なしか伊織の語気が強くなった気がした。
「いおり、いおりさわって、ぎゅってして」
昨日、握られた感触が忘れられない。あんなに強く握られて痛みを感じたはずなのに、その締め付けが心地よかったのだ。
なのに、電話越しに伊織はため息をつく。その音はまるで伊織の髪のように、理の耳をくすぐった。
『残念。俺は今そこにいないから触ってあげられないな……。このままじゃ出せませんねぇ』
「や、出す、出したいっ……、ださせて、イかせてっ」
まるで駄々っ子のように叫んだ。
『じゃあ今度、理がいい子にしていたら俺の手でイかせてあげますね。だから今日は自分の手でがまんして。いい子だからできますね?』
「ん、理、いい子。だから、できる……、自分でする」
『じゃあいいですよ、お尻に指入れたまま、もうすぐイっちゃいそうな、かわいいちんちんごしごしして』
空いている片方の手で自身の陰茎を強く握った。伊織ほど大きな手ではなく、締め付けは微妙だが、いまにも爆発しそうだ。
手を動かす必要はなかった。
後孔に挿入した指が内部を擦るたび、どくどくっと脈を打ち、陰嚢からせりあがるものが抑えきれない。理の腰は止まらなくなっていた。
「あっ、あっ、いい、いおり、イくっ、ちんちん、イっちゃうっ、イく、っ……ン、ぁッ、あぁッ……」
『Good Boy、理っ、いい子だ……っ』
絶頂で白いもやのかかった理の脳内に、伊織の少しうわずった声が響く。
――Good Boy。いい子。
そう言われるたびに自分が本当にいい子だと思える。
かつて、どんなに頑張っても両親からはもらえなかった言葉だった……。
すべてを吐き出して理は息を整えながら、理性を取り戻し始めるとはたと気付く。この関係はこれでいいんだろうか?
伊織に迷惑をかけていないだろうかと。
「は、ぁ……はぁ……。なぁ、こんな、俺ばっかり気持ちよくて、いいのか? 外山さんにメリットが――」
『大丈夫ですよ、俺も十分満たされましたから。今日はゆっくり寝てくださいね、おやすみなさい』
あぁ、もう一歩も動けそうにない。明日の朝、また風呂に入ればいいだろう。
理はその日、久方ぶりの熟睡を満喫した。
すっかりリフレッシュした土日を挟んだ月曜日。
宣言通り若杉は頼んだ報告書をすでに作成済みで、内容にも問題はなかった。午後の営業会議は滞りなく進みそうで、ほっとした。
定時に集まりだした部下たちの中に、若杉を見つけ、労いの言葉をかけた。
「若杉、報告書よくできてる。ありがとう」
「課長のお手本があったからっす。課長、これ俺より若いころからやってたんっすよね? データ収集から。すごいな……。思っている以上に時間掛かってしまって」
「俺も最初のころは大変だったさ。はじめて作ったとは思えない出来で感心したよ。次もお願いするかな」
冗談めかした理の言葉に反応したのは、若杉よりさらに年下の部下だった。
「えぇ! 若杉さんだけひいきじゃないですかっ! 僕も作ってみたいですっ!」
「おいおい、それなら俺だってなぁ……」
次々に上がる声に理は驚きを隠せなかった。
まさか、こんな面倒な作業をやりたがるとは思ってもみなかったのだ。
「それなら持ち回りで担当しようか。前回の担当が教える形にすればミスも少ないだろう?」
「いいっすね、それ。でも全員に回るのに二年掛りますけど」
「それなら年功序列で――」
理が課長になって課内がこんなににぎやかなのははじめてかもしれない。これも、伊織のおかげか。
そう思ったらぶわっと顔が熱くなった。
営業会議でもこんなに心臓がドキドキすることはなかった。
――くそっ! なんだこれ……っ。まさか、もしかして俺、外山さんのことが……。
好き……?
そこまで考えて理は頭を横に振った。
社内恋愛なんてしかも伊織は年下。いやそんなことより男同士だ。ありえない。それに伊織のことはなにも知らない。名前と部署名だけで……。
でも……付き合うかどうかは別として、パートナーくらいはなってくれるだろうか?
医師もカウンセラーも必要だと言っていたではないか。これはとても名案のような気がして理は、うんうんと首を縦に振った。
普段無表情の理がひとり顔を赤くしたり横に縦にと頭を振っていると、課内全員から視線を向けられた。
「な、なんでもないっ! さ、仕事だ! 仕事っ!」
ごまかすようにして大きな声を出す理に、同じほど大きく威勢のいい返事が戻ってきた。
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