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第9話 崩れる世界
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昨夜の出来事は、夢ではなかった。
翌日の教室で、僕はそのことを、世界が生まれ変わったかのような鮮やかさで確信していた。僕と七海の間には、誰にも見えない、けれど僕たちだけにははっきりと見える、神社の星空で結ばれた光の糸のようなものが存在していた。時折、授業中に視線が合うと、彼女は神社で見せたのと同じ、秘密を分ち合う者のように、小さく、そして最高の笑顔で微笑みかけてくれる。そのたびに、僕の心臓は、甘く、そして少しだけ痛く、きゅっと締め付けられ、生きていることの実感が、胸いっぱいに広がっていくのだった。
柚希との間には、まだ、気まずさが解けないまま残っていた。目が合っても、お互いに針で刺されたようにすぐに逸らしてしまう。だが、その氷も、今日のこの太陽の下でなら、きっとすぐに溶けてしまうだろう。そんな何の根拠もない、しかし絶対的な楽観が僕の心にはあった。
なぜなら、今日は雲一つない、永遠に続いているかのように思える青空だったからだ。
三時間目の体育は、クラス全員でのドッジボールだった。
夏の始まりを告げる容赦のない日差しが、校庭の乾いた土を真っ白に照らし出している。むわりと立ち上る砂埃の匂い、校庭の隅の芝生の匂い。そして、クラスメイトたちの汗と興奮した笑い声の匂い。その全てが混じり合って、僕たちの日常という名の、二度と戻らない、かけがえのない時間を作り上げていた。
七海は、昨夜の涙の跡など微塵も感じさせない、太陽そのもののような笑顔で、コートの中を蝶のように軽やかに駆け回っていた。
「きゃーっ!」
「こっち来た!」
ボールを巧みによけながら、彼女は踊っているかのように楽しそうだった。その姿を見ていると、昨夜、彼女が僕にだけ打ち明けてくれた「時間が足りない」という悲しい告白が、まるで遠い世界の、悪い夢だったかのように思えてくる。
柚希もまた、水を得た魚のように躍動していた。彼女は男子顔負けの豪速球で、次々と相手チームを仕留めていく。その真剣な横顔には、昨日のような翳りは見えなかった。
僕はといえば、例によってコートの隅の方で、できるだけボールが飛んでこないように、石ころのように存在感を消していた。だが不思議と、今日の僕は、いつもより少しだけ勇敢だった。七海が、僕と同じチームだったからだ。彼女が敵のボールに狙われそうになると、僕は自分でも信じられないような速さで彼女の前に飛び出していた。赤いボールが、僕の腕を、灼けるように痛打する。痛い。でも、それ以上に誇らしかった。
「春樹くん、すごい! 大丈夫!?」
七海が駆け寄ってきて、僕の腕を心配そうにさする。その声援だけで、僕は、どんな屈強なヒーローにも負けていないような気がした。僕は、彼女を守れる。昨夜の誓いは嘘じゃない。
ゲームは白熱し、僕たちのチームに残っているのは、僕と、七海と、あと数人だけになっていた。敵陣に残るのは、最強のエースである柚希ただ一人。
僕がキャッチしたボールを、七海が「私にパス!」と、両腕を大きく上げ、僕に向かって叫んだ。
彼女にボールを渡す。七海は深呼吸を一つすると、柚希を、まっすぐに見据えた。その瞳には、真剣な、そして楽しげな闘志が、炎のように燃えている。
七海が、その華奢な身体の全てを使って、腕を大きく振りかぶる。その一瞬が、僕の目には、とても長いスローモーションの映像として焼き付いた。
風に舞う、彼女の柔らかな髪。宙を舞う、赤いボール。そして、ボールが彼女の手を離れたあとの、人生で最高の、一点の曇りもない輝くような笑顔。
――その、直後だった。
予兆など、何もなかった。
さっきまでの、あの太陽のような笑顔が、スイッチが切れたテレビのように、ぷつりと表情を失った。そして、彼女の身体から、全ての力が抜け落ちていく。糸が切れた操り人形のように、ゆっくりと白く乾いた地面に、彼女は崩れ落ちていった。
「えっ……?」
誰かが間抜けな声を上げた。その瞬間、僕の世界から全ての音が消えた。
クラスメイトたちの歓声も、先生のホイッスルも、遠くで鳴いている蝉の声も。全てが、分厚い壁の向こう側へと追いやられる。僕のいる世界は、完全な無音になった。
その、真っ白な頭の中で、僕の網膜には、スローモーションで再生される地獄の光景だけが焼き付いていた。
自分の胸を、小さな手で、強く鷲掴みにするように押さえつけ、か細い声にならない声で、何かを訴えるように喘ぐ七海の姿。
そして、その無音の世界に、たった一つだけ、鋭く、突き刺さってくる、恐ろしい音があった。
「ヒュッ、……ヒュッ、……カハッ、……ヒュッ……」
空気が、彼女の喉を、無理やり通り抜けていく。そんなおぞましい摩擦音。
命が、彼女の身体から、暴力的に引きずり出されていくような、絶望的な音だった。
止まっていた時間が、爆発したかのように動き出した。無音の世界が破られ、現実の音が、一気に僕の鼓膜を殴りつけた。
「きゃあああああ!」
誰かの絶叫。
「七海ちゃん!」
「どうしたんだ!」
「先生! 先生、早く!」
クラスは、一瞬で制御不能なパニックの渦に呑み込まれた。泣き出す女子生徒。どうしていいかわからず、うろたえる男子生徒。
「みんな、落ち着いて!」
「危ないから下がりなさい!」
体育主任の田中先生の怒声が飛ぶ。担任の村井先生が、血の気の引いた、しかし決して取り乱さない表情で七海に駆け寄る。その動きは、驚くほど冷静で、的確だった。
「七海さん、聞こえる? 大丈夫よ、大丈夫だからね」
その呼びかける声が、震えていることに気づいた者は少なかっただろう。彼女は、この事態をずっと恐れていたのだ。
「誰か、すぐに保健室へ連絡! 杉原、村下、お前たちで担架とAEDを取って来い!」
「もしもし、救急ですか!救急車を急いでお願いします!」
その、あまりにも手慣れた冷静な指示が、この事態が決して尋常なものではないことを、僕たちに残酷なまでに突きつけていた。
ボールを投げたまま敵陣で立ち尽くしていた柚希が、はっと我に返ったように七海に駆け寄ろうとする。その顔は、紙のように真っ白だった。彼女は、自分が投げたボールが、この惨劇の引き金になったのかもしれないという、恐ろしい罪悪感に苛まれているかのようだった。
「七海ちゃん! しっかりして! 七海ちゃん! あたしのせいだ、ごめん、ごめんね……」
その声は、恐怖と後悔で、みっともないほどに震えていた。
僕は。
神谷春樹は、その場で一歩も動けずにいた。
足が、まるで地面に根を張ってしまったかのように動かない。声を出そうにも、喉が凍りついて、何の音も発しない。
昨夜、僕は、彼女に何を誓った?
――「守る」と。
――「君のために書く」と。
――「いなくならないで」と。
その言葉たちが、今のこの無力な僕への痛烈な皮肉となって、脳内で、何度も、何度も反響する。
言葉なんて、何の意味もなかった。誓ったばかりなのに、僕は、目の前で彼女の命が消えかかっているというのに。
僕は、指一本動かせない。
目の前の光景が現実感を失っていく。僕の身体だけが、この惨劇から切り離されて、安全なガラスケースの中から、それを眺めているかのようだった。
やがて、保健室の先生が担架を持って現れた。
七海はぐったりとしたまま、壊れかけの人形のように担架に乗せられる。閉じられた瞳、青白い唇。
その、あまりにもか弱い姿が、僕の心を、僕の昨夜の誓いを、粉々に打ち砕いた。
病院の屋上で見た、生命力に溢れた姿。昨夜、僕に涙と笑顔を見せ話してくれた姿。それら全てが、嘘だったかのように遠い。
遠くから、救急車のサイレンの音が聞こえてくる。
その、ピーポーピーポーという単調な音が、僕の無力さを全世界に嘲笑しているかのように、頭の中に不快に響き渡った。
体育の授業は、当然中止になった。
僕たちは重い沈黙の中、教室へと戻された。誰も、一言も話さなかった。様々に色づいていたはずの教室が、モノクロの世界のように、色を失って見えた。
しばらくして、青ざめた顔の村井先生が教室に入ってきた。彼女の表情だけで、クラスの誰もが、事態が、最悪のものであることを悟っていた。
先生は教壇の前に立つと、一度、深く息を吸い込んだ。その間が異様に長く、息が詰まるように感じられた。
「……みんなに、話しておかなければいけないことがあります」
その声は、明らかに震えていた。
「天野さんは、心臓に生まれつき、重い病気を抱えています」
その言葉が、まるで死刑宣告をされたかのように、しんと静まり返った教室に、響き渡った。
三ヶ月。
僕の脳裏で、彼女の自己紹介の言葉が、今、全く違う残酷な意味を持って思い出される。
彼女の、太陽のような笑顔の裏側に隠されていた、壮絶な、そして孤独な現実。
教室は、誰かが針を落としたら、きっとそれが聞こえるくらいの静寂に包まれた。聞こえてくるのは、誰かの息をのむ音と、椅子がきしむ小さな音だけ。
僕は机の下で、自分の拳を、爪が肉に食い込むほど、強く、強く握りしめていた。
無力感。後悔。
そして、こんなにも理不尽な運命を、光そのもののような少女に与えた、この世界の全てに対するどうしようもない巨大な怒り。
それらの感情が、僕の心の中で、激しい嵐となって吹き荒れていた。
だが、その嵐の中心にあったのは、やはりただ巨大な虚無感だった。
翌日の教室で、僕はそのことを、世界が生まれ変わったかのような鮮やかさで確信していた。僕と七海の間には、誰にも見えない、けれど僕たちだけにははっきりと見える、神社の星空で結ばれた光の糸のようなものが存在していた。時折、授業中に視線が合うと、彼女は神社で見せたのと同じ、秘密を分ち合う者のように、小さく、そして最高の笑顔で微笑みかけてくれる。そのたびに、僕の心臓は、甘く、そして少しだけ痛く、きゅっと締め付けられ、生きていることの実感が、胸いっぱいに広がっていくのだった。
柚希との間には、まだ、気まずさが解けないまま残っていた。目が合っても、お互いに針で刺されたようにすぐに逸らしてしまう。だが、その氷も、今日のこの太陽の下でなら、きっとすぐに溶けてしまうだろう。そんな何の根拠もない、しかし絶対的な楽観が僕の心にはあった。
なぜなら、今日は雲一つない、永遠に続いているかのように思える青空だったからだ。
三時間目の体育は、クラス全員でのドッジボールだった。
夏の始まりを告げる容赦のない日差しが、校庭の乾いた土を真っ白に照らし出している。むわりと立ち上る砂埃の匂い、校庭の隅の芝生の匂い。そして、クラスメイトたちの汗と興奮した笑い声の匂い。その全てが混じり合って、僕たちの日常という名の、二度と戻らない、かけがえのない時間を作り上げていた。
七海は、昨夜の涙の跡など微塵も感じさせない、太陽そのもののような笑顔で、コートの中を蝶のように軽やかに駆け回っていた。
「きゃーっ!」
「こっち来た!」
ボールを巧みによけながら、彼女は踊っているかのように楽しそうだった。その姿を見ていると、昨夜、彼女が僕にだけ打ち明けてくれた「時間が足りない」という悲しい告白が、まるで遠い世界の、悪い夢だったかのように思えてくる。
柚希もまた、水を得た魚のように躍動していた。彼女は男子顔負けの豪速球で、次々と相手チームを仕留めていく。その真剣な横顔には、昨日のような翳りは見えなかった。
僕はといえば、例によってコートの隅の方で、できるだけボールが飛んでこないように、石ころのように存在感を消していた。だが不思議と、今日の僕は、いつもより少しだけ勇敢だった。七海が、僕と同じチームだったからだ。彼女が敵のボールに狙われそうになると、僕は自分でも信じられないような速さで彼女の前に飛び出していた。赤いボールが、僕の腕を、灼けるように痛打する。痛い。でも、それ以上に誇らしかった。
「春樹くん、すごい! 大丈夫!?」
七海が駆け寄ってきて、僕の腕を心配そうにさする。その声援だけで、僕は、どんな屈強なヒーローにも負けていないような気がした。僕は、彼女を守れる。昨夜の誓いは嘘じゃない。
ゲームは白熱し、僕たちのチームに残っているのは、僕と、七海と、あと数人だけになっていた。敵陣に残るのは、最強のエースである柚希ただ一人。
僕がキャッチしたボールを、七海が「私にパス!」と、両腕を大きく上げ、僕に向かって叫んだ。
彼女にボールを渡す。七海は深呼吸を一つすると、柚希を、まっすぐに見据えた。その瞳には、真剣な、そして楽しげな闘志が、炎のように燃えている。
七海が、その華奢な身体の全てを使って、腕を大きく振りかぶる。その一瞬が、僕の目には、とても長いスローモーションの映像として焼き付いた。
風に舞う、彼女の柔らかな髪。宙を舞う、赤いボール。そして、ボールが彼女の手を離れたあとの、人生で最高の、一点の曇りもない輝くような笑顔。
――その、直後だった。
予兆など、何もなかった。
さっきまでの、あの太陽のような笑顔が、スイッチが切れたテレビのように、ぷつりと表情を失った。そして、彼女の身体から、全ての力が抜け落ちていく。糸が切れた操り人形のように、ゆっくりと白く乾いた地面に、彼女は崩れ落ちていった。
「えっ……?」
誰かが間抜けな声を上げた。その瞬間、僕の世界から全ての音が消えた。
クラスメイトたちの歓声も、先生のホイッスルも、遠くで鳴いている蝉の声も。全てが、分厚い壁の向こう側へと追いやられる。僕のいる世界は、完全な無音になった。
その、真っ白な頭の中で、僕の網膜には、スローモーションで再生される地獄の光景だけが焼き付いていた。
自分の胸を、小さな手で、強く鷲掴みにするように押さえつけ、か細い声にならない声で、何かを訴えるように喘ぐ七海の姿。
そして、その無音の世界に、たった一つだけ、鋭く、突き刺さってくる、恐ろしい音があった。
「ヒュッ、……ヒュッ、……カハッ、……ヒュッ……」
空気が、彼女の喉を、無理やり通り抜けていく。そんなおぞましい摩擦音。
命が、彼女の身体から、暴力的に引きずり出されていくような、絶望的な音だった。
止まっていた時間が、爆発したかのように動き出した。無音の世界が破られ、現実の音が、一気に僕の鼓膜を殴りつけた。
「きゃあああああ!」
誰かの絶叫。
「七海ちゃん!」
「どうしたんだ!」
「先生! 先生、早く!」
クラスは、一瞬で制御不能なパニックの渦に呑み込まれた。泣き出す女子生徒。どうしていいかわからず、うろたえる男子生徒。
「みんな、落ち着いて!」
「危ないから下がりなさい!」
体育主任の田中先生の怒声が飛ぶ。担任の村井先生が、血の気の引いた、しかし決して取り乱さない表情で七海に駆け寄る。その動きは、驚くほど冷静で、的確だった。
「七海さん、聞こえる? 大丈夫よ、大丈夫だからね」
その呼びかける声が、震えていることに気づいた者は少なかっただろう。彼女は、この事態をずっと恐れていたのだ。
「誰か、すぐに保健室へ連絡! 杉原、村下、お前たちで担架とAEDを取って来い!」
「もしもし、救急ですか!救急車を急いでお願いします!」
その、あまりにも手慣れた冷静な指示が、この事態が決して尋常なものではないことを、僕たちに残酷なまでに突きつけていた。
ボールを投げたまま敵陣で立ち尽くしていた柚希が、はっと我に返ったように七海に駆け寄ろうとする。その顔は、紙のように真っ白だった。彼女は、自分が投げたボールが、この惨劇の引き金になったのかもしれないという、恐ろしい罪悪感に苛まれているかのようだった。
「七海ちゃん! しっかりして! 七海ちゃん! あたしのせいだ、ごめん、ごめんね……」
その声は、恐怖と後悔で、みっともないほどに震えていた。
僕は。
神谷春樹は、その場で一歩も動けずにいた。
足が、まるで地面に根を張ってしまったかのように動かない。声を出そうにも、喉が凍りついて、何の音も発しない。
昨夜、僕は、彼女に何を誓った?
――「守る」と。
――「君のために書く」と。
――「いなくならないで」と。
その言葉たちが、今のこの無力な僕への痛烈な皮肉となって、脳内で、何度も、何度も反響する。
言葉なんて、何の意味もなかった。誓ったばかりなのに、僕は、目の前で彼女の命が消えかかっているというのに。
僕は、指一本動かせない。
目の前の光景が現実感を失っていく。僕の身体だけが、この惨劇から切り離されて、安全なガラスケースの中から、それを眺めているかのようだった。
やがて、保健室の先生が担架を持って現れた。
七海はぐったりとしたまま、壊れかけの人形のように担架に乗せられる。閉じられた瞳、青白い唇。
その、あまりにもか弱い姿が、僕の心を、僕の昨夜の誓いを、粉々に打ち砕いた。
病院の屋上で見た、生命力に溢れた姿。昨夜、僕に涙と笑顔を見せ話してくれた姿。それら全てが、嘘だったかのように遠い。
遠くから、救急車のサイレンの音が聞こえてくる。
その、ピーポーピーポーという単調な音が、僕の無力さを全世界に嘲笑しているかのように、頭の中に不快に響き渡った。
体育の授業は、当然中止になった。
僕たちは重い沈黙の中、教室へと戻された。誰も、一言も話さなかった。様々に色づいていたはずの教室が、モノクロの世界のように、色を失って見えた。
しばらくして、青ざめた顔の村井先生が教室に入ってきた。彼女の表情だけで、クラスの誰もが、事態が、最悪のものであることを悟っていた。
先生は教壇の前に立つと、一度、深く息を吸い込んだ。その間が異様に長く、息が詰まるように感じられた。
「……みんなに、話しておかなければいけないことがあります」
その声は、明らかに震えていた。
「天野さんは、心臓に生まれつき、重い病気を抱えています」
その言葉が、まるで死刑宣告をされたかのように、しんと静まり返った教室に、響き渡った。
三ヶ月。
僕の脳裏で、彼女の自己紹介の言葉が、今、全く違う残酷な意味を持って思い出される。
彼女の、太陽のような笑顔の裏側に隠されていた、壮絶な、そして孤独な現実。
教室は、誰かが針を落としたら、きっとそれが聞こえるくらいの静寂に包まれた。聞こえてくるのは、誰かの息をのむ音と、椅子がきしむ小さな音だけ。
僕は机の下で、自分の拳を、爪が肉に食い込むほど、強く、強く握りしめていた。
無力感。後悔。
そして、こんなにも理不尽な運命を、光そのもののような少女に与えた、この世界の全てに対するどうしようもない巨大な怒り。
それらの感情が、僕の心の中で、激しい嵐となって吹き荒れていた。
だが、その嵐の中心にあったのは、やはりただ巨大な虚無感だった。
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