ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜

サムソン・ライトブリッジ

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~三章 復讐の乙女編~

十二話 傀儡

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「そうか! その手があったか!」

「隙を作ってちょうだいな! 勝負を決めるわよぉ!」

 男の影が迫る。同時に私めがけて勢いのついた右の回し蹴りが飛んできた。 まともに受けては大ダメージは確実であろうその蹴りを、私はあえて避けない──!

「流術『滝落たきおとし』ッ!!」

 通常、左右の回し蹴りに対してはほとんどの武術家なら手を下ろして肘でガードするのがセオリー! しかしそれは同じ力量ならではの話しであり、敵の攻撃力が大きければ無論多少のダメージは免れない。だからこその防御方法がある!

 乙女は相手に背を向けると、自身の背中でまずその蹴りを受け止める! 背中の強度は人体の中でも屈強を誇る固さ! さらに側面の広い背中で受けたことにより衝撃の波は背を流れ落ちる滝の如く、身体を駆け抜け地面へと叩き落ちるのだ! 敵からのダメージはほぼ皆無へと分散し、この攻撃の打ち終わり──今こそが好機!

「もらった!」

 背中で受け止めた蹴り足を私はすかさず左手で巻き込むようにキャッチすると、男はぐらりとバランスを崩した。

「いまよ! バラコフ!」

「くらいなさいなぁ! 『流転の愛プリティー・ラヴ』!」

 バラコフは男の腕を掴んで能力を発動させた! しかし男の見た目に変化は無い! ただ腕を掴まれただけ、それだけに見える! だが、見た目こそわからないが実は男の身体にはある変化が起きていた!!

「もうあんたはボロボロよぉ! くらいなさいよぉ! ラブリー・パンチ!」

 バリィィィィンッ!!

 バラコフがそう言って敵を殴る。私が打っても硬くて倒せなかった敵は、彼のパンチ一つで粉々に砕けたのだ──!

「やった!」

「どんなもんよぉ!」

 敵はバラバラに崩れ去る。そう、バラコフの能力は見た目にはわからない変化の極意! 彼は触れた物のその"硬度"を自由自在に変化させる事ができるのだ! 硬き物は柔らかく、柔らかき物は硬くなる世にも珍しき能力! 私達の村は逸脱と共に暮らす村であり、彼もまたその一人であるのだ!

「これは──」

 私達は砕けた敵の正体を見て驚いた。

「こいつ……木と鉛で作られてるわ!」

「どうりでねぇ。あんたの攻撃が効かない訳だわぁ」

 敵は人に非ず。全身が血の一滴も通わない作られた人形だったのだ。

「なるほど。……ということは、これを操ってた奴がいるってことよね。──そこにいるんでしょ。出てらっしゃい!」

 私は僅かに何者かの気配がする方向を見て言うと、

「……まさかあんた達も能力持ちだとは油断したよ」

 一際大きな木の影から小柄な金髪の少年がひょこりと顔を出した。

「あらやだぁん。かわいい坊やねぇ」

「緊張感ないな……」

 私は相変わらずの相方にぼやく。

「少年! なにが目的? ちゃんと謝るならゲンコツ一つで許してあげるわよ」

「ふっ。お姉さん中々強いね。ぼくの『ロカベル』の攻撃をあんなふうに受け止めるとはびっくりだ。あとそこのオカマ、お前は許さないよ。ぼくの大事な傀儡くぐつを壊したからには相応の罪を償ってもらうよ」

 悪びれた様子も無く生意気に少年は答える。

「……反省する気はないようね」

「ちょっと坊や。お姉さん達を怒らせると恐いわよぉん」

 私は少年の元へ一歩踏み出す。しかし少年は人形を失ったというのにニヤリと笑い、余裕をさらしている。

「なに勝った気になってるの? ぼくの傀儡は一体だけじゃないよ。さあ! 出てこい! 『マローリオ』!!」


 少年が手を振りかざすと、木の上から何かが飛び降りてきた。土煙を巻き上げながら姿を現したそれは──新たな人形であった。先ほどの人形とは違う私ほどの大きさで、メタリックな銀色の体と独特なフォルムの頭……そうそれは、


「あーーーーっ!! 『ガチガチくん』!!」


 盗まれた私の人形、ガチガチくんであった。

「あらやだぁん! 坊やがそれ盗んだのぉ?」

「は? 盗んだ?」

「それ私のよ!! 返しなさいよ!!」

 私の頭に盗まれた怒りの記憶が再び混み上がる。

「何いってる。こいつはぼくがこの近くで拾ったんだ。こいつはぼくが見てきた人形の中でも最高峰と言ってもいいくらいの素晴らしいできだ……。いったいどうやって作られたのか謎に包まれたこのパーツ! 美しき流線を描く銀のボディ! 重厚さを感じさせる全体は人間と間違えるかのようなもっとも人に近い完璧なる人形だ。あんた達のような価値のわからん奴等には勿体無い代物だよ」

 銀色の人形をなでながらうっとりとする少年。そして遠回しに馬鹿にされた私はさらに眉間にしわをよせて鉄拳制裁する一歩手前だ。

「よくわかったわ……。なら少年、お姉さんがあんたを反省させてあげるわよ」

「も、燃えてるわ……。怒りの炎が見えるわぁ……」

 盗んだ拾ったはこの際どうでもいい。私の怒りは私のセンスを馬鹿にされたことで燃え上がったのだ。そもそも私が最初にその人形のセンスを見出だしたのに馬鹿にするとはいい度胸だ。

「少しお灸を据えてあげるわ。覚悟しなさい。泣きべそかいても知らないわよ」

「お姉さんわかってないね。泣きべそかくのはそっちさ。ぼくの傀儡、マローリオは最強だ。今からそれを証明してやる! いけ! マローリオ!」

 少年が人形の肩を叩くと銀の体がゆらりと動き、視線がこちらへと向けられた。

「それがあんたの能力ね! バラコフ!」

「リリアンって呼びなさい! まかせなさいよぉ! さっきみたいにコンビネーションね!」

「違う! 手ぇ出さないで! あのガチガチくんは無傷で返してもらうんだから……!」

 私は冷静さを欠いたように手出し無用を宣言する。

「えっ!? だってあんたそんなこと言ったってどーするのよぉ!」

「絶対勝つ!!」

 バラコフは半ば諦めていた。こうなったヴィエリィはもう止まらないと昔から知っているからだ。

「へえ、言ってくれるじゃん。ならお姉さんから先に倒してやるよ!」

 鋼の人形が突っ込んでくる。それは先ほどの人形とは速度が段違いであった。恐ろしく速い打撃が私を襲う──!

「はああ!!」

 その速き打撃を私は受け流す。

「(少年の能力は人形を動かす力……! それなら!)」

 私は人形の攻撃をわざと肩で受ける。それが、反撃に繋がる──!

「流術『雪崩なだれ』!」

 肩に受けた敵のパンチ──その瞬間一気に全身の力を抜き、肩を引く! これこそは威力を後方へと流す受けの極意!

 力の行き場を完全に失った相手は、崩れ落ちる雪崩のように前方へと倒れ身体のバランスを失うのだ!

 ガシャァンッ!

 豪快に倒れる人形。その隙を私は見逃さない。

「そこよ!」

 狙うは体制を崩した人形では無い。その術者である!

 私は倒れた人形を無視して少年へと突撃する。そして、手の届くあと一歩まで来たところで私は少年を掴もうと手を伸ばすと、急に私の横から速き影が忍び寄った。

「マローリオ!」

「なっ! 速い!」

 倒れた筈の鉄の傀儡は一瞬で私の横に並んでいた。少年を掴もうとした私の手を逆に掴まれると、その鉄の指が私の腕にみしみしと食い込む。

「は、速い! ヴィエリィ!」

「くっ……! やるわね! 少年!」

「ふー、危ない危ない。やるねお姉さん。でもぼくのマローリオはもっと速いんだよ。あんたを倒す前に一つだけ言ってやる。ぼくは傀儡使いの『ホビィ』。子供だからってなめたのが間違いだったね」





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