4 / 9
第一章
3話 緋色の瞳
しおりを挟む
―――それから四日後。
私は、スキップでもするかのような様子で二人目の兄メルリお兄様の部屋へと向かっていた。
「子猫ちゃん♪ 子猫ちゃん♪」
お母様との約束である安静をとり、医者からもOKがでたため、
助けた猫を預かってくれていたメルリお兄様の元へ引き取りにきたたのだった。
前世でもそうだが、今世でも猫はどうしても大好きで仕方ない私は、
可愛い子猫との再会を前にとても有頂天なのだった。
これまでも猫を飼いたいと思っていたが、
縁がなくなかなか飼えずにいた矢先、あの事件があり飼えることになったのだ。
これはもう縁でしかないと、大事に飼うと誓い名前も安静にしている間考えに考え抜き決めた。
部屋にはちゃんと子猫のための餌の器やベットなど準備は万全だ。
最初はマリアが全て準備しようとしてくれたのだが、自分がわがままを言ったのだからと自分がやるとお願いした。
張りきった様子のカメリアの様子をみて準備を手伝ってくれていたマリアに
微笑まれながら何度も『本当にお嬢様は猫がお好きなのですね』と言われたものだ。
「……っと、ダメダメ。少し落ち着かないと」
メルリお兄様の部屋の扉の前につくと一呼吸整え、コンコンと控え目にノックする。
「メルリお兄様、私……カメリアです。お部屋に入ってもよろしいですか?」
「ええ。もちろん。入って大丈夫ですよ」
メルリお兄様の返事を聞くと、扉を開けて部屋へと入る。
「ごきげんよう、メルリお兄様。ご心配とご迷惑をおかけしてしまいごめんなさい」
「謝らなくて大丈夫ですよ、リリ。それよりももう大丈夫ですか?」
「ええ、もうこの通り元気です!」
私を愛称で呼ぶメルリお兄様は、元気になったと笑顔をみせる私にふっと笑みを浮かべると優しく抱き寄せる。
「わ……っ、お兄様?」
「……我がワイズラック家の大切な小さなお姫様。本当によかった」
優しく大きな腕に閉じ込められながら聞いた安堵の声に
やはり自分が思っていたよりも周りに心配をさせていたのだと感じ心がとても苦しくなる。
「……ごめんなさい。お兄様」
「わかってくれたら大丈夫です。もうあんな危ないことをしないでくださいね」
「はい、もちろんです」
私が何度もうなずくと、
反省した気持ちが伝わったのかメルリお兄様は、身体を離して窓際へと向かい、すぐに何かをかかえて戻ってくる。
「……そんなお姫様が身を挺して守った子猫は此処にいますよ」
そういって差し出されたのは、確かに四日前に私が身を挺して守ったあの白い子猫だった。
窓際で寝ていたであろう子猫はみぃみぃとなく。
その可愛さに思わず感嘆の声が漏れる。
「ああ、なんて、可愛らしいのかしら……!」
「ふふ、相変わらずリリは猫が好きだね」
私が頬に熱を感じながら大事に大事に子猫を抱えると、メルリお兄様はクスクスと笑う。
「リリ、もうその子の名前は決めたのですか?」
「ええ。フェリクスと名付けようと思ってます」
安静にしていた三日間の間他の名前を考えたが、一番最初に頭をよぎったこの名前に決めた。
折角救えたこの命が、幸せな人生を過ごせるようにと願いを込めて。
自分の名前だとわかってか、子猫はごろごろと喉を鳴らし私に顔をこすりつける。
「あら、気に入ってくれたのかしら」
「そうかもしれませんね」
そう答えると、メルリお兄様と視線が合い思わず笑いあうのだった。
…
……
「――それでは、メルリお兄様。失礼いたします」
「ええ。リリ、また晩餐で会いましょう」
暫くの間メルリお兄様との時間を過ごした後。
メルリお兄様に訪問者が来るということで、私はフェリクスを抱きかかえて部屋を退室することにした。
部屋をでると廊下で控えていたマリアと部屋へと戻る。
メルリお兄様の来客がくるということだからか、慌ただしく使用人達が準備に追われていた。
(こんなに慌ただしくしているということは……また高貴な誰かなのかしら)
度々ワイズラック家には定期的に人が家を訪ねてくる。
その相手は、今日のようにメルリだったり、父や長兄であるローエンだったりするのだが
たいていは身体の弱く登城中々出来ないメルリを訪ねに来る人が多い。
そしてこの半年ごろから、2週間に1度定期的に訪ねてくる人が居る。
その人が来る日は、いつも以上に準備に追われているので勝手に高貴な誰かが来ているのだと思っている。
……そう、勝手に。
「マリア、今日の来客の方は一体どなたなのかしら」
「……さあ、わかりません」
「そう……さ、フェリクス。ここが今日からお前の部屋よ」
私がその返答に眉を寄せるも、追及せず連れてきたフェリクスにそう声をかけて床へと降ろすと
マリアは安堵した様子でフェリクスのお水をもってくるといって部屋を出ていく。
カメリアは少し警戒した様子で部屋を見て回るフェリクスを微笑ましく見守りながら、ため息をつく。
(……なんでいつも皆隠すのかしら)
そう。
勝手に予想しているのは、誰も誰が来ているのか教えてくれないのだ。
従者であるマリアが知らされていないわけがないのに、
来客がある際、誰が訪ねてきているのか聞いてもその高貴な方の場合は答えてくれない。
直接父や母、兄たちに聞いても皆『お前はまだ知らなくていいのだよ』と言って答えてくれない。
そう言われると余計に気になるというものだが、
何か失礼でもして家族に迷惑をかけてはいけないと部屋から出れずにいた。
「はぁ……」
ため息をつくとフェリクスが頬ずりをしてくれたため
私は機嫌を取り直すと、高貴な誰かのことは忘れてフェリクスと遊ぶことに集中することにするのだった。
…
……
「カメリア様、そろそろおやつはどうですか?」
「そうね。是非いただきたいわ!」
暫く部屋でフェリクスと遊んだり本を読んでいるとマリアから声を掛けられる。
その提案に頷くとマリアは、にっこりと微笑みおやつをとりに部屋を出ていく。
その一瞬の隙だった。
「フェリクス!」
マリアが扉を開けたタイミングでフェリクスが飛び出してしまう。
マリアの制止を振り切り、私は追いかけるために部屋を飛び出す。
廊下を歩いていた使用人達に驚いた様子でフェリクスは階段を下りて行ってしまう。
「フェリクス、待ってってば!」
(どこかまた飛び出しては大変!!)
途中で母や兄に出会っても怒られないような速度で歩きながら
慌てて階段を降りると、少し扉が開いていた書斎にフェリクスが入っていくのが見える。
その後ろを追いかけて書斎の扉を開けると、
興奮した様子のフェリクスを誰かが捕まえてくれているのが視界に入る。
「ああ、ごめんなさい!! その子は――」
慌ててその人物の元へと駆け寄ると、綺麗な緋色の瞳と目がかち合う。
その瞬間に胸がどくんと高鳴り、息をのむ。
「……こいつはお前の猫か?」
その返答にどうにか私はこくりと頷くと、
緋色の瞳の男性は捕まえてくれていたフェリクスを私に返してくれた。
そこで扉が開いた音が後ろで聞こえ振り返ると、入り口にメルリお兄様が立っていた。
「殿下、お待たせしました……と、どうしてここにリリが?」
「ああ、メルリ卿。この猫がこの部屋に入ってきたんだ」
驚いた様子のメルリお兄様は、こちらへと歩みを寄せると、
緋色の瞳の男性はフェリクスを指さし何も言えずにいる私の代わりに説明をしてくれた。
「なるほど、それはご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。
リリ、挨拶をちゃんとしましたか?」
怪訝な顔をしたメルリお兄様の言葉にはっと我に返ると、慌てて淑女の礼をその人へと向けて名乗る。
「私……ヴォワトール公爵家長女カメリアでございます。
ご挨拶が遅くなり大変申し訳ございません」
深々と頭を下げると、緋色の瞳の男性は首を横に振る。
「いや、気にするな。私がいると思わなかったから驚いただろう」
優しくそう答えると、本当に気にしていない様子でその人はメルリお兄様に向き直る。
「それと、メルリ卿が戻ってきたということは馬車の準備が出来たんだな」
「はい。こちらへどうぞ」
「ああ。わかった。……ではな。カメリア嬢。猫を大事にな」
「は……はい」
どうにかカメリアがそう答えると、
緋色の瞳の男性はこくりと頷くとフェリクスを私の掌にのせるとメルリお兄様と共に書斎を出ていく。
扉が完全に締まった後、気が抜けてその場に膝から崩れ落ちる。
(……心臓が止まるかと思った)
(ああ、何かがひっかかると思っていたのはこのことだったんだ)
三日前何か心にひっかかるものがあった「それ」が、
「何だったのか」彼と目が合った瞬間に気づいた。
「……まさかここが、オトセカの世界だったなんて」
前世の記憶が戻ったあの夜。
夢の世界へと落ちる間際に思い出した一枚絵の人物は、先ほどの緋色の瞳の男性――ランベルト殿下だった。
あの一枚絵の人物であるランベルト殿下――
――……この国、ボーべニア国の第一王子ランベルト・サンスラントルキ殿下は、
前世の私が死ぬ直前まで嵌っていた女性向け恋愛ゲーム「音色奏でる世界で~truth Kiss~」のメイン攻略相手。
あの一枚絵は、そんなメイン攻略相手のランベルトがヒロインと初めて出会うシーンででてくる絵で前世の私が一番気に入ってるスチルだった。
(……そんなことを、ランベルト殿下に直接会って気づくなんて)
「それもこれも、転生したのがこの微妙な立ち位置のせいだから?」
そう。私が転生した人物は、オトセカというゲームのメインメンバーである悪役令嬢でもヒロインでもない。
完全なモブでもない。そう、ゲーム中ヒロインの手助けやピンチにたまーに出てくる人物――ヒロインの親友という本当に微妙な立ち位置であるカメリアなのだった。
「嬉しいような……悲しいような……」
天井を見上げながら呟く私の声に反応するかのように
胸の中にいるフェリクスが不思議そうににゃぁんとなくのだった。
私は、スキップでもするかのような様子で二人目の兄メルリお兄様の部屋へと向かっていた。
「子猫ちゃん♪ 子猫ちゃん♪」
お母様との約束である安静をとり、医者からもOKがでたため、
助けた猫を預かってくれていたメルリお兄様の元へ引き取りにきたたのだった。
前世でもそうだが、今世でも猫はどうしても大好きで仕方ない私は、
可愛い子猫との再会を前にとても有頂天なのだった。
これまでも猫を飼いたいと思っていたが、
縁がなくなかなか飼えずにいた矢先、あの事件があり飼えることになったのだ。
これはもう縁でしかないと、大事に飼うと誓い名前も安静にしている間考えに考え抜き決めた。
部屋にはちゃんと子猫のための餌の器やベットなど準備は万全だ。
最初はマリアが全て準備しようとしてくれたのだが、自分がわがままを言ったのだからと自分がやるとお願いした。
張りきった様子のカメリアの様子をみて準備を手伝ってくれていたマリアに
微笑まれながら何度も『本当にお嬢様は猫がお好きなのですね』と言われたものだ。
「……っと、ダメダメ。少し落ち着かないと」
メルリお兄様の部屋の扉の前につくと一呼吸整え、コンコンと控え目にノックする。
「メルリお兄様、私……カメリアです。お部屋に入ってもよろしいですか?」
「ええ。もちろん。入って大丈夫ですよ」
メルリお兄様の返事を聞くと、扉を開けて部屋へと入る。
「ごきげんよう、メルリお兄様。ご心配とご迷惑をおかけしてしまいごめんなさい」
「謝らなくて大丈夫ですよ、リリ。それよりももう大丈夫ですか?」
「ええ、もうこの通り元気です!」
私を愛称で呼ぶメルリお兄様は、元気になったと笑顔をみせる私にふっと笑みを浮かべると優しく抱き寄せる。
「わ……っ、お兄様?」
「……我がワイズラック家の大切な小さなお姫様。本当によかった」
優しく大きな腕に閉じ込められながら聞いた安堵の声に
やはり自分が思っていたよりも周りに心配をさせていたのだと感じ心がとても苦しくなる。
「……ごめんなさい。お兄様」
「わかってくれたら大丈夫です。もうあんな危ないことをしないでくださいね」
「はい、もちろんです」
私が何度もうなずくと、
反省した気持ちが伝わったのかメルリお兄様は、身体を離して窓際へと向かい、すぐに何かをかかえて戻ってくる。
「……そんなお姫様が身を挺して守った子猫は此処にいますよ」
そういって差し出されたのは、確かに四日前に私が身を挺して守ったあの白い子猫だった。
窓際で寝ていたであろう子猫はみぃみぃとなく。
その可愛さに思わず感嘆の声が漏れる。
「ああ、なんて、可愛らしいのかしら……!」
「ふふ、相変わらずリリは猫が好きだね」
私が頬に熱を感じながら大事に大事に子猫を抱えると、メルリお兄様はクスクスと笑う。
「リリ、もうその子の名前は決めたのですか?」
「ええ。フェリクスと名付けようと思ってます」
安静にしていた三日間の間他の名前を考えたが、一番最初に頭をよぎったこの名前に決めた。
折角救えたこの命が、幸せな人生を過ごせるようにと願いを込めて。
自分の名前だとわかってか、子猫はごろごろと喉を鳴らし私に顔をこすりつける。
「あら、気に入ってくれたのかしら」
「そうかもしれませんね」
そう答えると、メルリお兄様と視線が合い思わず笑いあうのだった。
…
……
「――それでは、メルリお兄様。失礼いたします」
「ええ。リリ、また晩餐で会いましょう」
暫くの間メルリお兄様との時間を過ごした後。
メルリお兄様に訪問者が来るということで、私はフェリクスを抱きかかえて部屋を退室することにした。
部屋をでると廊下で控えていたマリアと部屋へと戻る。
メルリお兄様の来客がくるということだからか、慌ただしく使用人達が準備に追われていた。
(こんなに慌ただしくしているということは……また高貴な誰かなのかしら)
度々ワイズラック家には定期的に人が家を訪ねてくる。
その相手は、今日のようにメルリだったり、父や長兄であるローエンだったりするのだが
たいていは身体の弱く登城中々出来ないメルリを訪ねに来る人が多い。
そしてこの半年ごろから、2週間に1度定期的に訪ねてくる人が居る。
その人が来る日は、いつも以上に準備に追われているので勝手に高貴な誰かが来ているのだと思っている。
……そう、勝手に。
「マリア、今日の来客の方は一体どなたなのかしら」
「……さあ、わかりません」
「そう……さ、フェリクス。ここが今日からお前の部屋よ」
私がその返答に眉を寄せるも、追及せず連れてきたフェリクスにそう声をかけて床へと降ろすと
マリアは安堵した様子でフェリクスのお水をもってくるといって部屋を出ていく。
カメリアは少し警戒した様子で部屋を見て回るフェリクスを微笑ましく見守りながら、ため息をつく。
(……なんでいつも皆隠すのかしら)
そう。
勝手に予想しているのは、誰も誰が来ているのか教えてくれないのだ。
従者であるマリアが知らされていないわけがないのに、
来客がある際、誰が訪ねてきているのか聞いてもその高貴な方の場合は答えてくれない。
直接父や母、兄たちに聞いても皆『お前はまだ知らなくていいのだよ』と言って答えてくれない。
そう言われると余計に気になるというものだが、
何か失礼でもして家族に迷惑をかけてはいけないと部屋から出れずにいた。
「はぁ……」
ため息をつくとフェリクスが頬ずりをしてくれたため
私は機嫌を取り直すと、高貴な誰かのことは忘れてフェリクスと遊ぶことに集中することにするのだった。
…
……
「カメリア様、そろそろおやつはどうですか?」
「そうね。是非いただきたいわ!」
暫く部屋でフェリクスと遊んだり本を読んでいるとマリアから声を掛けられる。
その提案に頷くとマリアは、にっこりと微笑みおやつをとりに部屋を出ていく。
その一瞬の隙だった。
「フェリクス!」
マリアが扉を開けたタイミングでフェリクスが飛び出してしまう。
マリアの制止を振り切り、私は追いかけるために部屋を飛び出す。
廊下を歩いていた使用人達に驚いた様子でフェリクスは階段を下りて行ってしまう。
「フェリクス、待ってってば!」
(どこかまた飛び出しては大変!!)
途中で母や兄に出会っても怒られないような速度で歩きながら
慌てて階段を降りると、少し扉が開いていた書斎にフェリクスが入っていくのが見える。
その後ろを追いかけて書斎の扉を開けると、
興奮した様子のフェリクスを誰かが捕まえてくれているのが視界に入る。
「ああ、ごめんなさい!! その子は――」
慌ててその人物の元へと駆け寄ると、綺麗な緋色の瞳と目がかち合う。
その瞬間に胸がどくんと高鳴り、息をのむ。
「……こいつはお前の猫か?」
その返答にどうにか私はこくりと頷くと、
緋色の瞳の男性は捕まえてくれていたフェリクスを私に返してくれた。
そこで扉が開いた音が後ろで聞こえ振り返ると、入り口にメルリお兄様が立っていた。
「殿下、お待たせしました……と、どうしてここにリリが?」
「ああ、メルリ卿。この猫がこの部屋に入ってきたんだ」
驚いた様子のメルリお兄様は、こちらへと歩みを寄せると、
緋色の瞳の男性はフェリクスを指さし何も言えずにいる私の代わりに説明をしてくれた。
「なるほど、それはご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。
リリ、挨拶をちゃんとしましたか?」
怪訝な顔をしたメルリお兄様の言葉にはっと我に返ると、慌てて淑女の礼をその人へと向けて名乗る。
「私……ヴォワトール公爵家長女カメリアでございます。
ご挨拶が遅くなり大変申し訳ございません」
深々と頭を下げると、緋色の瞳の男性は首を横に振る。
「いや、気にするな。私がいると思わなかったから驚いただろう」
優しくそう答えると、本当に気にしていない様子でその人はメルリお兄様に向き直る。
「それと、メルリ卿が戻ってきたということは馬車の準備が出来たんだな」
「はい。こちらへどうぞ」
「ああ。わかった。……ではな。カメリア嬢。猫を大事にな」
「は……はい」
どうにかカメリアがそう答えると、
緋色の瞳の男性はこくりと頷くとフェリクスを私の掌にのせるとメルリお兄様と共に書斎を出ていく。
扉が完全に締まった後、気が抜けてその場に膝から崩れ落ちる。
(……心臓が止まるかと思った)
(ああ、何かがひっかかると思っていたのはこのことだったんだ)
三日前何か心にひっかかるものがあった「それ」が、
「何だったのか」彼と目が合った瞬間に気づいた。
「……まさかここが、オトセカの世界だったなんて」
前世の記憶が戻ったあの夜。
夢の世界へと落ちる間際に思い出した一枚絵の人物は、先ほどの緋色の瞳の男性――ランベルト殿下だった。
あの一枚絵の人物であるランベルト殿下――
――……この国、ボーべニア国の第一王子ランベルト・サンスラントルキ殿下は、
前世の私が死ぬ直前まで嵌っていた女性向け恋愛ゲーム「音色奏でる世界で~truth Kiss~」のメイン攻略相手。
あの一枚絵は、そんなメイン攻略相手のランベルトがヒロインと初めて出会うシーンででてくる絵で前世の私が一番気に入ってるスチルだった。
(……そんなことを、ランベルト殿下に直接会って気づくなんて)
「それもこれも、転生したのがこの微妙な立ち位置のせいだから?」
そう。私が転生した人物は、オトセカというゲームのメインメンバーである悪役令嬢でもヒロインでもない。
完全なモブでもない。そう、ゲーム中ヒロインの手助けやピンチにたまーに出てくる人物――ヒロインの親友という本当に微妙な立ち位置であるカメリアなのだった。
「嬉しいような……悲しいような……」
天井を見上げながら呟く私の声に反応するかのように
胸の中にいるフェリクスが不思議そうににゃぁんとなくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~
小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。
そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。
幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。
そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――?
「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」
鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。
精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~
深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。
皇帝とおばちゃん姫の恋物語
ひとみん
恋愛
二階堂有里は52歳の主婦。ある日事故に巻き込まれ死んじゃったけど、女神様に拾われある人のお世話係を頼まれ第二の人生を送る事に。
そこは異世界で、年若いアルフォンス皇帝陛下が治めるユリアナ帝国へと降り立つ。
てっきり子供のお世話だと思っていたら、なんとその皇帝陛下のお世話をすることに。
まぁ、異世界での息子と思えば・・・と生活し始めるけれど、周りはただのお世話係とは見てくれない。
女神様に若返らせてもらったけれど、これといって何の能力もない中身はただのおばちゃんの、ほんわか恋愛物語です。
無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!
カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。
脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。
石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。
ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。
そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。
真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる