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第1章
自由都市オルニアと夢見るおっさん
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俺が異世界転移して訪れたこの都市の名は自由都市オルニア。
都市は半径2kmの円形型で外壁に囲まれている。
その中心に冒険者ギルドがある事からもわかるように、自由を好む冒険者を象徴して自由都市という名がついている。
中心からは東西南北に大きなメインストリートが延び街を4分割している。
アリナに紹介された宿はオルニアの北東部にある。
北東部は飲食店や冒険者向けの宿が立ち並ぶ歓楽街となっている。
1日の労働で疲れた体に栄養を与えるように、豪快に肉をほおばる肉体労働者とおぼしき人達。
今日という日も無事に生き延びた事を感謝するように、笑いながら杯をかわす冒険者たち。
そんな街並みの喧騒の中に身を泳がせながら目的地である宿へ向かう。
アリナから渡された地図に書いてある宿屋【若葉のしずく】に到着し受付に向かう。
「すみません。ナツヒ=ミナミというものですがチェックインをお願いします。」
「ナツヒ=ミナミ・・。あいよ、確かに冒険者ギルドから聞いているよ。今日から1週間だね。食事は食堂に朝昼晩置いてあるから適当に好きなものをとって食べな。」
無愛想だが渋さを感じさせるおばちゃんから部屋の鍵をもらい部屋に入る。
ちなみに言葉はこの世界では言語魔法という魔法の力が働いており、お互いに“伝えようとする意志”があれば伝わるようになっているらしい。
部屋は少し年季を感じさせるが、雨風をしのぐには全く問題無さそうだ。
・・・とりあえず色々ありすぎて疲れた。
多少きしむが問題無く寝られそうなベッドに横たわり、異世界転移するまでの事を振り返った。
****************************************
俺、南夏陽(みなみなつひ)は34歳の独身サラリーマンだ。
日本の会社では与えられた仕事は、雑用や人がやりたがらないものだろうと真面目に精一杯とりくんだ。
その結果、去年33歳で課長に異例のスピード出世をした。
ただし、そこからが地獄だった。上からはチームの売上が達成できていないと俺のせいにされ怒鳴られる。
下からは、自分達ができないのは会社のシステムや方針が悪いから、ひいては管理職の力不足のせいだと言われる。
更には同期からの妬みにより足を引っ張られる。
会社内だけでなく世間も【サラリーマンのおっさん】に対する風当たりは強く、優遇される事もなければ、SNSなどでは若者から死んだような目をしているおっさん達と揶揄される。
テレビなどにとりあげられる事もなければ、子供たちから憧れる事もない。
もちろんモテる事もないし、楽しみは居酒屋で安酒に酔うか趣味くらいのものだ。
そんな俺の趣味はラノベやアニメ、ゲームなどで割とオタクよりだ。
このオタクよりな趣味も、現実世界でモテない事に拍車をかけているのかもしれない。
現実世界では【サラリーマンのおっさん】である俺は、ラノベやアニメの物語の中で剣や魔法を使ったり、美女たちと出会ったり、強大な敵を打ち倒したりする【英雄】に憧れている。
そして、ゲームの中では俺自身の分身がいくつもの世界を救って【英雄】を疑似体験できる。
そんな英雄に現実世界でなれないのはわかっているけど、昔から割と真面目な俺は与えられた仕事は頑張ってきたつもりだ。
この日も部下のミスのカバーの為に、残業をして資料作成をしていた。
素直で普段から頑張っている部下の為だし、会社のプロジェクトが成功する可能性も上がるなら頑張るかー!
なんて心の中でひとりごちたその時、オフィスの電気が消え外の喧騒も消えた。
ん?停電か?と思った次の瞬間に強烈な光に包まれたかと思うと、宇宙空間のような場所に俺は漂っていた。
『ナツヒ・・。あなたのような人間を探していました。どうかこの星を救ってください。』
そして頭の中に女の人の声が響き渡る。
なんだこれは・・?寝落ち?夢?
『私はガイア。あなたに星の力マナを授けます。まずは星(ほし)結い(ゆい)の儀(ぎ)を行うのです。』
「ガイア?誰だよ!おい、星結いの儀ってなんだよ?」
『待っていますよ。ナツヒ。』
―――――――再度強烈な光に包まれる。
*
少し時間が経っただろうか。
「おい。お前さん!大丈夫かね。」
今度は誰だ?知らないおっさんの声が聞こえる。
目をあけるとそこにはターバンのようなものを頭に巻いた商人風の中年男性。
周りはさっきまでいたオフィスでは無く、どこまでも澄み渡った青空と果てしなく広がる草原だった。
頬をなでる風の感触や、鼻にかすかに感じる草の匂い。
このリアル感は夢ではない気がする。
となると・・・!
もしかして、ラノベやアニメの世界でしかありえないと思っていた異世界転生か!!
だとしたら、嬉しいどころでの話ではない。
チートで無双して、ハーレムを作って英雄になる!そんな俺のばかげた妄想も現実になるのかもしれない!!!
とりあえず色々確かめたいので、目の前の商人に星の声が言っていた【星結いの儀】を行いたいと伝える。
商人のおじさんはそれなら冒険者ギルドでできると教えてくれて、親切にも冒険者ギルドまで連れていってくれた。
そこでアリナと出会い、星結いの儀を行ったところ俺の天職がはずれジョブであるおつかい士という事が判明したのだ。
****************************************
うん・・・。
こうやって振り返ると、おおむねプラスな1日だな。
・恐らくこれは夢では無くリアルに異世界に来られている。プラス10点。
・チートには恵まれず逆にはずれジョブを引いてしまっている。マイナス10点。
・アリナが可愛くて爆乳だった。プラス10点
合計プラス10点。
良き日だ!
明日は、とりあえず冒険者養成学園の試験にでも行くか。
いきなりチートが発覚して「千年に1人の逸材じゃ!」とか言われたらどうしよう。
同級生となる異世界美女と運命的な出会いも果たしてしまうのかな。
明日からの異世界の日々に想いを馳せながら俺は眠りに落ちるのであった。
都市は半径2kmの円形型で外壁に囲まれている。
その中心に冒険者ギルドがある事からもわかるように、自由を好む冒険者を象徴して自由都市という名がついている。
中心からは東西南北に大きなメインストリートが延び街を4分割している。
アリナに紹介された宿はオルニアの北東部にある。
北東部は飲食店や冒険者向けの宿が立ち並ぶ歓楽街となっている。
1日の労働で疲れた体に栄養を与えるように、豪快に肉をほおばる肉体労働者とおぼしき人達。
今日という日も無事に生き延びた事を感謝するように、笑いながら杯をかわす冒険者たち。
そんな街並みの喧騒の中に身を泳がせながら目的地である宿へ向かう。
アリナから渡された地図に書いてある宿屋【若葉のしずく】に到着し受付に向かう。
「すみません。ナツヒ=ミナミというものですがチェックインをお願いします。」
「ナツヒ=ミナミ・・。あいよ、確かに冒険者ギルドから聞いているよ。今日から1週間だね。食事は食堂に朝昼晩置いてあるから適当に好きなものをとって食べな。」
無愛想だが渋さを感じさせるおばちゃんから部屋の鍵をもらい部屋に入る。
ちなみに言葉はこの世界では言語魔法という魔法の力が働いており、お互いに“伝えようとする意志”があれば伝わるようになっているらしい。
部屋は少し年季を感じさせるが、雨風をしのぐには全く問題無さそうだ。
・・・とりあえず色々ありすぎて疲れた。
多少きしむが問題無く寝られそうなベッドに横たわり、異世界転移するまでの事を振り返った。
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俺、南夏陽(みなみなつひ)は34歳の独身サラリーマンだ。
日本の会社では与えられた仕事は、雑用や人がやりたがらないものだろうと真面目に精一杯とりくんだ。
その結果、去年33歳で課長に異例のスピード出世をした。
ただし、そこからが地獄だった。上からはチームの売上が達成できていないと俺のせいにされ怒鳴られる。
下からは、自分達ができないのは会社のシステムや方針が悪いから、ひいては管理職の力不足のせいだと言われる。
更には同期からの妬みにより足を引っ張られる。
会社内だけでなく世間も【サラリーマンのおっさん】に対する風当たりは強く、優遇される事もなければ、SNSなどでは若者から死んだような目をしているおっさん達と揶揄される。
テレビなどにとりあげられる事もなければ、子供たちから憧れる事もない。
もちろんモテる事もないし、楽しみは居酒屋で安酒に酔うか趣味くらいのものだ。
そんな俺の趣味はラノベやアニメ、ゲームなどで割とオタクよりだ。
このオタクよりな趣味も、現実世界でモテない事に拍車をかけているのかもしれない。
現実世界では【サラリーマンのおっさん】である俺は、ラノベやアニメの物語の中で剣や魔法を使ったり、美女たちと出会ったり、強大な敵を打ち倒したりする【英雄】に憧れている。
そして、ゲームの中では俺自身の分身がいくつもの世界を救って【英雄】を疑似体験できる。
そんな英雄に現実世界でなれないのはわかっているけど、昔から割と真面目な俺は与えられた仕事は頑張ってきたつもりだ。
この日も部下のミスのカバーの為に、残業をして資料作成をしていた。
素直で普段から頑張っている部下の為だし、会社のプロジェクトが成功する可能性も上がるなら頑張るかー!
なんて心の中でひとりごちたその時、オフィスの電気が消え外の喧騒も消えた。
ん?停電か?と思った次の瞬間に強烈な光に包まれたかと思うと、宇宙空間のような場所に俺は漂っていた。
『ナツヒ・・。あなたのような人間を探していました。どうかこの星を救ってください。』
そして頭の中に女の人の声が響き渡る。
なんだこれは・・?寝落ち?夢?
『私はガイア。あなたに星の力マナを授けます。まずは星(ほし)結い(ゆい)の儀(ぎ)を行うのです。』
「ガイア?誰だよ!おい、星結いの儀ってなんだよ?」
『待っていますよ。ナツヒ。』
―――――――再度強烈な光に包まれる。
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少し時間が経っただろうか。
「おい。お前さん!大丈夫かね。」
今度は誰だ?知らないおっさんの声が聞こえる。
目をあけるとそこにはターバンのようなものを頭に巻いた商人風の中年男性。
周りはさっきまでいたオフィスでは無く、どこまでも澄み渡った青空と果てしなく広がる草原だった。
頬をなでる風の感触や、鼻にかすかに感じる草の匂い。
このリアル感は夢ではない気がする。
となると・・・!
もしかして、ラノベやアニメの世界でしかありえないと思っていた異世界転生か!!
だとしたら、嬉しいどころでの話ではない。
チートで無双して、ハーレムを作って英雄になる!そんな俺のばかげた妄想も現実になるのかもしれない!!!
とりあえず色々確かめたいので、目の前の商人に星の声が言っていた【星結いの儀】を行いたいと伝える。
商人のおじさんはそれなら冒険者ギルドでできると教えてくれて、親切にも冒険者ギルドまで連れていってくれた。
そこでアリナと出会い、星結いの儀を行ったところ俺の天職がはずれジョブであるおつかい士という事が判明したのだ。
****************************************
うん・・・。
こうやって振り返ると、おおむねプラスな1日だな。
・恐らくこれは夢では無くリアルに異世界に来られている。プラス10点。
・チートには恵まれず逆にはずれジョブを引いてしまっている。マイナス10点。
・アリナが可愛くて爆乳だった。プラス10点
合計プラス10点。
良き日だ!
明日は、とりあえず冒険者養成学園の試験にでも行くか。
いきなりチートが発覚して「千年に1人の逸材じゃ!」とか言われたらどうしよう。
同級生となる異世界美女と運命的な出会いも果たしてしまうのかな。
明日からの異世界の日々に想いを馳せながら俺は眠りに落ちるのであった。
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