サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

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第1章

ハーレムを作れないおっさん

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「ヒルダさんごちそうさまでした!まかない今日もめちゃくちゃ美味しかったです!」

「そうかい!今日もご苦労さん!あとはイセラに寮まで連れて行ってもらってゆっくり休みな。明日もまたよろしく頼むよ!」

ついに夢の花園へ!俺の期待と下心は最高潮に膨れ上がっていく。

「お疲れ様―!おつかい士さん、もう行けますか?準備できているなら寮まで一緒に行きましょう!」

「はい!もういつでも行けます!」

くうーーー!!異世界で美女と二人きりで帰宅。

ついに俺にもやってきたのか!ハーレムイベントの幕開けなのか!?

興奮をなんとか抑えつつ、前を歩きだすイセラの後をついていく。

目に入るのは180cmのスタイルを包むレオタード風のハイレグに収まらず、歩くたびにぶりんぶりんと揺れ動くお尻である。

・・・やばい、これはやばい。ぶりんぶりん。

「いやー、今日も頑張って働いていましたね!おつかい士さんのお陰で店の売上が上がってお頭も大喜びです!まぁその分厨房は大忙しみたいですけど。」

ぶりんぶりんぶりん。なんてケツだ!歩くたびにもはや芸術的とさえ言えるように艶めかしく動いている!

「寮は主にこの都市で暮らす人の居住区がある南東エリアにあるので少し歩きますよー!」

ぶりんぶりんぶりんぶりん。あぁ、あのお尻と太ももの境目に手を差し込みたい。

「しかし、うちらの寮に男が住むなんて。おつかい士さんは相当お頭から気に入られたみたいですね。でも、変な事したらうちの従業員に半殺しにされるかもしれないから気をつけて下さいよ。お頭にバレようものなら命の保証はできませんからね。前にも住んでいた男は何人かいましたけど、みんないなくなっちゃっいましたからー。」

ぶりんぶりんぶり・・ん?半殺し?命の保証?いなくなった?なんかとても物騒なワードが聞こえたぞ。

「え?半殺しって?」

「あぁ。うちらは元々【乙女(おとめ)繚乱(りょうらん)】という女山賊団だったんです。団の名前には女でも自分の好きな事で活躍して咲き誇ろうという意味が込められていたんですよ。特に山賊なんて男しかいない世界だったんですけど、お頭はそういうのが気に食わなかったんです。だから女だからって性の対象としか見ないような、舐めている輩には容赦しないんです。その為に血反吐を吐いて鍛えて、それなりにみんな腕っぷしも強くなったんですから!」

爽やかに笑い、腕の力こぶを見せながらイセラが言う。

「はは・・。なるほど!ですよね。そんな不届きな男はぶっ飛ばすに限りますよね!」

やばい・・。俺の頭の中をのぞかれたら半殺し候補にしかならないやつだぞ。

しかも俺弱いし下手したら死んでしまう。

せっかく女子だらけの花園でハーレム生活できるはずなのに何もできない、何かしたら追い出されるどころか死んでしまうかもしれない。

あぁ!なんてジレンマ!!

くっそ!何か打開策は?・・・ダメだ思いつかない。

何か課題をクリアするにはまず相手を知る事からだ。長いサラリーマン生活で学んだことだ。

取引先担当者の趣味の下調べ、身に着けているものから人となりを推察し商談の初めと終わり際にさりげなくその会話を織り交ぜる。

まずは【乙女繚乱】の事を知って何かヒントを得なければ。

「ヒルダさんは、なんでそんな山賊団を作ろうと思ったんですか?」

「あぁ。それは、やっぱり困っている女の子の為だと思います。この国にもまだまだ色々な文化や環境がありますから。例えば貴族と平民の間に生まれてしまった女の子や、男から使い捨てにされた召使い、他種族との間に生まれたハーフエルフだったり、どこにも行き場のない女の子の居場所を作ってあげたかったんだと思います。」

・・・。異世界にも色々不遇な境遇の子がいるんだな。

まだこの世界の事はよく知らないが、貴族や平民のような階級制度、獣人やエルフ、人間などの多種族がいる事によって日本よりも酷い差別などがあるのかもしれない。

「そんな風に行き場のない女の子は、体を売ってどうにか生き延びたり、人身売買の対象にされたり不幸になっちゃう事が多いんです。そんな子達を救って女でも強く生きていこうってのがお頭の信念みたいなものですね!」

やっぱりヒルダは思っていた以上にすごい人なのかもしれない。

ちょっと怖そうな面や豪快に衣装からはみ出す胸ばかりに目が行きがちだが、こんな何もない俺にも仕事と住む場所と食事を提供してくれているんだもんな。

改めて、姉御肌で面倒見の良い優しい女性なのだと思う。

しっかり感謝しよう。と言っても今の俺に返せるものは何も無いからな。

明日からも配達を頑張って仕事で恩返しをしよう!

俺はまた少しおつかいクエストに対するモチベーションが上がるのを感じた。

「さぁ!着きました!ここがうちらの家!通称【乙女のオアシス】です!」

うわぁ!すごい!従業員寮と言うから、少しきれいめのアパートのようなものを想像していたが、黒い鉄扉製の立派な門構えで庭には整えられた植栽や噴水がある。

建物自体は、やや黄土色がかったレンガ造りで、アラビアンな雰囲気を感じさせる。

まさにオアシスという名が似合うような立派な建物に圧倒されてしまう。

「す、すごい・・。」

「あはは!すごいですよね!うちら【乙女繚乱】が現役時代にため込んだお金で買ったんですよ。今はここにお頭含め10人が住んでいます。おつかい士さんを入れたら11人ですね!とりあえずおつかい士さんの部屋を案内しますね。」

そう言われ案内された部屋は1階東側の一番端にある部屋だった。

部屋もギルドから案内された安宿とは違い、豪華なリゾートホテルのような造りで、床が大理石のような石で壁も立派な石造りになっている。

簡単なシャワールームとトイレもついており、生活には全く困らなそうだ。

「それじゃまた明日です!おやすみなさい!」

イセラは1階にリビングがあり居住者の交流の場になっている事と、大浴場もあり誰もいない時なら使っても良いって事と、2階はヒルダをはじめ女性の個室になっているから男は立ち入り禁止だという事を教えてくれた。

とりあえず部屋でシャワーを浴び、ふかふかのベッドに寝っ転がる。

・・・勝った。この家に住めているだけですでに勝っている。

それ以上のハーレムを望まなければ当面の生活は保証された。

ただ、それでもちょっぴりエロいイベントを期待してしまう。

要は相手が嫌がらなければ良いんだもんな。

せっかく異世界にきたんだ。できうる限りの美味しい思いをしたいじゃないか。

いても立ってもいられなくなり、リビングに向かう事にする。

ひとつ屋根の下に、美女たちがたくさんいるとわかっているのに、部屋でこのまま寝るなんて無粋な真似俺にはできない。

リビングに向かうと猫の獣人のシャウネとハーフエルフのレナの声が聞こえた。

晩酌でもしているのか。

「シャウネさん、レナさんお疲れ様です!今日から僕もここに住む事になったのでよろしくお願いしま・・・っ!」

「ぎにゃーーーーー!!!!!」

「あら!」

笑顔で話しかける俺と、大声をあげるシャウネと軽く驚くレナ。

お風呂上りだったのかシャウネは上半身裸で首からタオルをかけているのみ、レナは薄緑のネグリジェのような服。

最高だ!けどこの叫び声はまずい!早速追い出されかねない!

「うわーーーーー!!!すみません!!」

咄嗟に目を背け謝る。

が、バチン!と顔に衝撃を受け派手に吹っ飛び俺は意識を失った。



「ごめんにゃー・・。」

どうやら、シャウネのタオルによる一撃で気絶してしまったらしい。

「いえ、僕の方こそいきなり確認もしないで、リビングに入ってしまいすみませんでした。」

さすがに昼間は大胆に肌を露出している制服を着ていても裸は恥ずかしかったらしい。

レナはネグリジェの上からカーディガンのようなものを羽織っている。

水着は良くても下着は恥ずかしい的な女子の考えだろうか。

そしてシャウネも今は薄手の白いキャミソールにショートパンツを着ている。

ただ俺にはわかる。あの胸の先の膨らみや動いた時の揺れ具合は完全にノーブラだ。

だが、ここでこれ以上こじらせる訳にはいかない。

鉄の意志で視線を相手の目に固定する。

「しかし、わたしのタオルの一発で気絶してしまうなんてナツヒはよわよわだにゃー。」

「ええ。いくらおつかい士とは言えもう少し強くなった方がいいのでは?」

ぐっ・・。痛いところを突かれる。レベルが7に上がったにも関わらず戦闘モードに入っていない女子のタオル一発で気絶してしまうなんて我ながら情けない。

ただ、入学試験の革ベルトスキンヘッドおっさんのハンマーの一撃でも即気絶はしなかったのに。シャウネは相当強いのかもしれない。

俺はこの世界に来てまともな戦闘をまだした事が無い事や、冒険者になって英雄を目指している事、冒険者養成学園に来月から通う事をふたりに話した。

「だったら明日の早朝、街の外にイセラと香草を摘んでくるといいにゃ!朝採れの香り豊かな香草をイセラが摘みにいく予定だから、一緒についていってモンスターとの戦闘を教えてもらってくるにゃ!」

こうして俺は急遽明日の早朝に初のモンスターとの戦闘を行う事になった。
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