サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

文字の大きさ
11 / 62
第1章

美しい兎に恋するおっさん

しおりを挟む
何匹目かのステップラットを倒した時『スキル【刀】を獲得しました。』とガイア様の声でアナウンスが流れた。

おお!ついに!

「イセラさん!刀スキルを獲得しました!」

「おー!おめでとうございます!もう少し早く獲得するかと思っていたんですけど、敵とのレベル差とスキル適正が無いせいで遅かったですね!」

おめでとうと言いながらも心にダメージを与えてくるイセラ。

「それではその状態でまた、ステップラットと戦ってみて下さい。」

どうやらまだスキルの説明をしてくれる気は無さそうなので、言われるがままステップラットに相対する。

するとさっきまでとは全く違う感覚が身体から湧いてくる。

なんというか、刀の柄が手にすいつくように収まり、自分の重心の位置も感じられるようになる。

最小限の動きでステップラットへと接近し、刀の重さをうまく利用し自然な流れで右上から左下方向へ袈裟斬りにする。

「チュイー!!」

すると一撃でステップラットは光の粒となって霧散。

「うおーーー!!!すげーーーー!!!!」

急いでログを確認する。

俺は一撃で22ダメージを与えていた。

「うん!いい感じでしたね!これがスキルの力です。スキルもガイア様から授けられる力の内のひとつで使いこなすととっても強力な力になります。逆にいくらレベルが高くてもスキルが育っていないと、さっきまでのおつかい士さんみたいによわよわなままって事ですね!」

ぐはっ!褒められたかと思ったら落とされた・・。こんな高等な技術も使ってくるとは。イセラの毒舌には慣れなければ心が持たないぞ。

しかしスキルの重要性がよくわかったと共に、だからこそおつかい士の“スキル適正なし”というのが冒険者に向いていない所以なのかと思う。

ただ、星結いの儀の時にアリナからは“スキル適正なし”というのは、得意なスキルも無い代わりに不得意なスキルも無いと聞いた。

「イセラさん。おつかい士ってなんで冒険者に向いていないって言われているんですか?適正なしでもマイナスも無い分、色々なスキルをひと通りは使えてそんなに悪くない気がするんですけど。」

「あぁ。それは冒険者が基本パーティを組むからですよ!剣士は剣が得意だけど魔法が不得意、魔法使いは魔法が得意だけど剣が不得意っていうように、ジョブごとに得手不得手があるんです。そしてそれを補うようにパーティを組むことによって、結果強大な敵も打ち倒せるようになるって事ですね!」

そういう事か。確かに適正なしって事は、剣は剣士に勝てないし魔法は魔法使いに勝てない。

お互いの良い部分を伸ばして悪いところを補うのが冒険者パーティだというなら俺の居場所は無さそうだもんな。

でもそれなら・・。

「おつかい士はソロ向きって事ですか?」

「ソロにも向いていないですね。魔物つかいなどのパートナーを従える力を持つジョブだったり、聖騎士のように攻撃魔法は不得意でも剣と盾、回復魔法に適正があるジョブは比較的ソロ冒険者に向いていると言われています。」

冒険者ギルドでアリナから言われた“はずれジョブ”というのはそういう事だったのか。

スキルを覚えた今だからこそ逆にその言葉の意味を実感する。

冒険者にならないでおつかい士として、街のみんなの為に生きる道もあるのだろうし、あるいはその方が向いているのかもしれない。

だけど俺は日本のサラリーマン時代に、ゲームやアニメの中で自由に生きる冒険者や、世界を救う英雄に憧れた。

いや、サラリーマン時代というよりは小さい頃から悪を倒すヒーローというものに憧れてきた。

男なら誰しもが一度は抱いた事のある想いで、とても自然な憧れのようなものだと思う。

それがいつしか大人になるにつれ、「自分には無理だ。」と諦めるのが当たり前になってきた。

そんな俺が異世界に来られて、冒険者や英雄を目指せるチャンスがあるというのにどうして諦める事ができようか。

もしかしたらこの世界の人も俺と同じように小さい頃は英雄に憧れて、大人になりその夢を諦めたのかもしれないが、できうる限りの努力はしたいと思う。

それでもなれなかったら、潔く諦めて冒険者では無くおつかい士として生きていけばいい。

この世界の人達は今のところ気の良い人達が多く、人間関係には恵まれていると言ってもいい。

その中でなら例え冒険者になれなくても、楽しく生きていけそうな気がする。

それにギフテッドアビリティのお陰で、クエストをこなし依頼人の満足度を高めれば今のところレベルだけは普通の人よりも早く上げる事ができる。

「自分の長所を伸ばせ。人は自分の短所には気付きやすいが短所を伸ばしても凡人が完成するだけだ。誰にも負けない自分の武器で勝負しろ。」尊敬する上司の言葉だ。

俺はサラリーマン時代の経験を活かしてやれるだけやってみせるさ!

「もしも~し大丈夫ですか?なんだか神妙な面持ちですけど。」

イセラの呼びかけで我に返る。

「はい!大丈夫です!色々教えてくれてありがとうございます!」

その頃には夜が明けつつあり、遠くの空が薄紫に染まっていた。

「うちの戦闘レクチャーは、今日はこんなところですね!それでは香草を摘んで帰りましょうか!」

少し移動して、イセラに香草の種類を教えてもらう。

朝露が乾く前に摘むことによって香りが良くなり、食欲増進やリラックスの効果が増すという事だ。

こんなところにも、【山賊の隠れ家亭】のこだわりを感じる。

それに従業員がこういった食材も採りにいっているから、あの低価格で美味しい料理が出せているんだなと感心する。

いつもは明るく元気に接客をして、お客さんを虜にしているような姿しか見ていなかったが、こういう風に見えないところで地味な事も手を抜かずにやっていると知り、見る目が変わる。

朝陽を浴びながら香草を摘むその姿は、きらきらと光る朝露の中に現れた精霊のようで俺は見惚れてしまった。いや、恋に落ちたかもしれない。

しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

処理中です...